ガールフレンド(仮)の最終回

「ガールフレンド(仮)の最終回」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

ガールフレンド(仮)の最終回」(2019/03/13 (水) 13:57:40) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

#11「さよならア・ラ・モード」あらすじ 二学期終了を間近に控えたある日、クロエは元気が無かった。 それは彼女の元に届いた、父セルジュ・ジャン・ルメールからの帰国の手紙のせい。 帰国してほしくないと願う生徒たちの思いのこもったビデオレターや手紙も、全て却下されてしまった。 そんな中で始まった、クリスマスパーティーを間近に控えた喫茶コスモスでのお別れ会に現れたセルジュ。 彼に帰国の理由を聞いたところ、原因は何と日本の正月の風習に関するクロエの勘違いだった。 かくして、クロエはセルジュから留学を続けることを許され、パーティーも盛り上がりの末幕を閉じた。 ・ ・ ・ 冬休みのある日。 図書館は特別開館日として開放されていた。 文緒「望月さんが撮ったクリスマスパーティーの写真、見ます?」 心実「はい。見たいです」 明音「私も」 文緒「どうぞ」 写真の束を置く。 文緒「…」 黙々と写真をめくる文緒。 明音「すごく楽しかったですよね~」 心実「本当に…クロエさんが帰らずに済んで良かったです」 ケーキに夢中な明音、そしてクロエ・ユーリヤ・野々花・心実。 ユーリヤ・ヴャルコワ。ロシア人留学生でバレエ部所属の1年生。 バレエは3才から習っており、その美しい演舞は見る人を思わず引き付けるほど。 クロエとは大の仲良しで、日本文化について語り合っている((しかし、ナポレオンのロシア侵攻のことはお互いの間でタブーになっている。))。 心実「みんな本当に楽しそうでしたよね…」 心実と一葉、明音・由紀恵・文緒がそれぞれ乾杯を交わしている。 明音「"にゅーろん★くりぃむそふと"のライブも、盛り上がりましたし…」 ライブに見入る一同。 ステージ上のにゅーろん★くりぃむそふと。 心実「ケーキはちょっとヒヤッとしましたけど…」 ギターをケーキにぶつけてしまった&ruby(えとう){江藤}くるみ。 茫然とする&ruby(ひいらぎまこと){柊真琴}((人懐っこく甘えん坊な1年生。お菓子作りが趣味で、甘党なせいか体型がぽっちゃり気味。))・&ruby(なべしま){鍋島}ちより((3年生。料理部所属。料理だけに留まらず家事全般を得意とし、雰囲気はさながらお母さんのよう。))・&ruby(みしな){三科}&ruby(かほ){果歩}((1年生。ちよりと同じく料理部所属でパン作りが趣味。5話では真琴やちより、そして栢嶋乙女と一緒に学食の手伝いに参加した。))・&ruby(ゆかわ){湯川}&ruby(きせ){基世}。 文緒「見吉さんとクロエさんのコスプレも、可愛かったですし…」 サンタ衣装で並ぶ奈央とクロエ。 明音「プレゼント交換も…」 木乃子と基世は、きのこの森と三角フラスコ&ビーカーのセットを。 &ruby(ゆうきなえ){優木苗}((手芸部所属の1年生。あみぐるみやぬいぐるみを作るのが好き。純真な性格で素直すぎる故に周囲を凍りつかせてしまうような発言をすることも。))と一葉は、熊のあみぐるみとダンベルを。 &ruby(しののめ){東雲}レイと野々花は、PCの電源ユニットと陶芸部で作った猿(のような何か)の置物を、それぞれ交換し合った。 文緒が最後にめくった集合写真((上段:三科果歩、柊真琴、螺子川来夢、ミス・モノクローム、湯川基世、ユーリヤ・ヴャルコワ、蓬田菫、風町陽歌、黒川凪子、江藤くるみ、朝比奈桃子、葉月柚子、見吉奈央、八束由紀恵、相楽エミ、鍋島ちより、小日向いちご、重藤秋穂。))((下段:小野寺千鶴、夢前春湖、戸村美知留、優木苗、時谷小瑠璃、熊田一葉、不知火五十鈴、櫻井明音、村上文緒、クロエ・ルメール、望月エレナ、椎名心実、笹原野々花、姫島木乃子、東雲レイ、新垣雛菜、佐伯鞠香、夏目真尋、春宮つぐみ。))。 明音「またみんなで集まりたいですね~」 心実「そうですね」 文緒「ぜひ」 「こんにちは~、文緒サン?」 心実・明音・文緒「?」 クロエとユーリヤが入ってきた。 クロエ「お正月に関する本を貸して下さい」 文緒「お正月の本ですか?」 ユーリヤ「街からクリスマスが消えました。今全てお正月です」 明音・文緒・心実「え?」 クロエ「ヨーロッパでは、クリスマスツリーは、1月になっても飾られてることが多いですけど、こっちでは、クリスマス過ぎたら、突然無くなりますヨ?」 明音「へぇ~、ヨーロッパではそうなんですか」 文緒「ちょっと待って下さいね」 ユーリヤ&クロエ「?」 明音&心実「?」 心実「…あっという間にお正月ムードになりますよね。街の雰囲気とか、TVのCMとかも…」 文緒が本を持って戻ってきた。 文緒「お正月について知りたいのなら」 明音&心実「?」 文緒「これなんてどうでしょう」 クロエが本を手に取る。 クロエ「……」 ユーリヤ「?」 その"現代歳時記"という本には、正月に関連した用語が書かれていた。 クロエ「…」 ユーリヤ「漢字が多くて、少し難しいです…」 文緒「お2人には難しかったですかね…」 心実「…あ、クロエさん。ユーリヤさん」 ユーリヤ・クロエ・明音「?」 心実「良かったら、大晦日うちにいらっしゃいませんか?」 ユーリヤ「心実さんのお家に?」クロエ「心実サンのお家に?」 心実「はい。うちは普通の家ですけど、その分、普通の年越しを見て頂けるんじゃないかと…」 明音「おっ、いい考え! 私も行ってもいいかなぁ?」 心実「はい。もちろんです」 明音「村上先輩も、一緒に行きませんか?」 文緒「ご迷惑じゃなければ…」 心実「とんでもない! 是非、いらして下さい」 笑い合うユーリヤとクロエ。 ユーリヤ「楽しみです!」クロエ「楽しみでス!」 #center(){ &size(18){&bold(){&color(#ff3399){「ガールフレンドxxx」}}} } 12月31日、朝。椎名家・玄関前。 クロエ&ユーリヤ「門松! しめ縄! おお…」 初めて見るものばかりで、クロエとユーリヤは大感激。 ユーリヤ「日本の文化、素敵です!」 クロエもここぞとばかりにスマホを取り出し、興奮しながら写真を撮りまくる。 クロエ「こんなに美しいのを見たのは初めてですヨ! トレビア~ン!!」 心実「普通のお正月飾りなんですけど…」 明音「望月先輩は来られなかったんですか? 門松を見て喜ぶお2人とか、見たがりそうですけど…」 文緒「声はかけてみたんですけど…」 エレナ(回想)「え~!? 行きた~い!! けど、大晦日は野暮用があって…」 文緒「何かと忙しいみたいです…」 心実「残念ですね…入りましょうか」 ユーリヤ&クロエ「はい!」 そして5人は家の中へ。 クロエ&ユーリヤ「おせち!」 クロエ「お~! 素晴らしいですね! とっても、おいしそうでス!」 母「まあ。お世辞でも嬉しいわ。日本のお正月に、興味があるんですって?」 クロエ&ユーリヤ「はい!」 羽子板を見せる母。 母「こういうもの、知ってるかしら」 クロエ「それは素敵なインテリアですネ?」 ユーリヤ「ん~?」 母「違うの。これは…えーと、あ……ラケットよ」 クロエ&ユーリヤ「おお!」 明音「負けると、顔に×点を描かれるんですよね」 ユーリヤ「×点?」 文緒「墨で×マークを。ペナルティなんです」 クロエ「!?」 明音「村上先輩…」 ユーリヤ「?」 明音「きっとクロエ先輩、また日本文化を誤解するようなことを想像してますよ…」 ユーリヤ「お餅とかそうでした」 クロエ「…もう間違えませんヨ…」 母「うふふ…他にはね、凧揚げとか、いろはかるたとか。あ、お手玉とか」 クロエ&ユーリヤ「おお!」 クロエ「エミサンみたいですネ!」 母「ん? エミさんって…心実のクラスの相楽さん?」 心実「そうです。ジャグリングがとても上手なんですよ」 母「そうなの…だけど大勢でやるには、いろはかるたでいいかしら。ことわざも覚えられるし…みんなでやりましょうか」 クロエ「ウィ!」ユーリヤ・心実・明音・文緒「はい!」 町内会の餅つき会場。 つぐみ・一葉・鞠香が手伝いに来ていた。 鞠香「…春宮さん、熊田さん、お願い」 つぐみ「はーい」 一葉「よしきた」 一葉は杵を構え、つぐみは湯で両手を濡らす。 つぐみ「ばっちこい!」 一葉「はっ!」 つぐみ「ほいっ!」 一葉「ほっ!」 つぐみ「それっ!」 町内会一同。 そのうち1人は、喫茶コスモスを切り盛りする野々花の祖父。 野々花の祖父「いやー助かった…」 おじさん「この歳になると大変だね…」 野々花の祖父「腰に来るんだよなぁ」 一葉とつぐみの作業スピードがどんどん上がっていく。 町内会一同「…」 一葉「はいっ!!」 一葉の最後の一つきの後、つぐみが餅を軽く叩く。 つぐみ「…よしOK!」 鞠香「え? もう出来たの?」 一葉「ふっふっふ…体育会系の体力…!」 つぐみ「甘く見ないでよね!」 餅を食べにきた&ruby(ねじかわ){螺子川}&ruby(らいむ){来夢}。2年生にしてロボット研究会部長。人付き合いは苦手だが、ロボットと人間の共存を夢見ている。 そして彼女に同行してきたミス・モノクローム((原案はCV:堀江由衣氏がライブに登場させていたキャラクター。))。研究の一環として感情を学ぶために聖櫻にやってきた、正体不明の少女型ロボット。彼女のメンテナンスができるのは校内で来夢ただ1人。 来夢「……食べるかい? お餅」 モノクローム「いただきます」 来夢から渡された餅を手に取る。 モノクローム「お餅のような、粘度の高いものを…」 食べた途端、モノクロームは痙攣を起こして倒れてしまう。 来夢&町内会一同「!?」 鞠香がモノクロームに駆け寄る。 鞠香「モノクロームちゃん! …窒息!? 気道を確保しないと…」 来夢「いやいや心配ご無用ご無用。何しろモノクロームちゃんは呼吸してないからね~」 顔の左側に手をかけると、モノクロームの頭の左のユニットが開く。 来夢「息が詰まることも無い訳だよ」 それを操作し終えると、モノクロームの喉元が発光。そして口から煙を吐き出した後目が光り、再起動する。 町内会一同「!?」 モノクローム「食べるのは、初めてです」 安堵のため息を漏らす鞠香・つぐみ・一葉。 ~椎名家~ クロエ「お~! カワイイ~!!」 ユーリヤ「とても可愛いです!」 心実の幼少時代のアルバムをみんなで見ていた。 クロエ「お人形さんみたいでス!」 心実「そんなに見ないで下さい!」 文緒「隠さないでもいいじゃないですか」 明音「そうだよ~、凄く可愛いのに…」 クロエ「羨ましいですヨ」 赤面する心実。 ユーリヤ「私、着物着たことありません」 クロエ「ワタシもですヨ」 母「あら、2人共似合いそうなのにねえ」 文緒・クロエ・ユーリヤ「?」 母「着せてあげたいわぁ…」 クロエ&ユーリヤ「!?」 クロエ「…ノンノン! 照れまス!」 ユーリヤ「そんなの恥ずかしいです…」 母「あらそう?」 クロエ「そうですヨ…」 ユーリヤ「はい…」 母「奥ゆかしいのね。大和撫子だな?」 心実「お母さん」 母「?」 心実「うちに着物ありませんでしたっけ?」 母「心実のは親戚に譲っちゃったわよ?」 心実「…」 母「あっても小さい頃のだし、サイズも合わないわ」 明音「…そうだ」 クロエ・ユーリヤ・母・心実「?」 明音「不知火さんなら、着物をいっぱい持ってるんじゃないかな。お家じゃ、着物で過ごすことが多いって言ってたし」 文緒「お願いしてみましょうか」 不知火家。 五十鈴が電話で会話していた。 五十鈴「なるほど。私は構いませんが」 心実「OKですね」 明音「やったー!」 クロエ「お~、最高ですネ!」 文緒「良かったですね…」 ユーリヤ「本当にいいのですか?」 五十鈴「ああ。2人に似合いそうなものを出しておこう」 電話を切る。 「五十鈴ちゃんどうしたの?」 春湖が庭の手入れをしていた。 五十鈴「ちとやらねばならないことができた。春湖も手伝ってくれ」 春湖「は~い」 ~椎名家~ 母「じゃあ気をつけてね。あまり遅くなり過ぎないようにね」 一同「はい!」クロエ「ウィ!」 5人は徒歩で不知火家へ行くことに。 クロエ「五十鈴サンのお家行って着物着たら、その後どうしまショウ?」 文緒「クロエさんとユーリヤさんに、日本の年越しをお教えするのが目的ですから、お寺に行って、除夜の鐘を突いて、神社にお参りしに行きましょうか」 クロエ「ウィ~! 凄く楽しみですネ~!」 明音「クロエ先輩にはちゃんとしたことを覚えてもらわないと…また何かあるかも知れないですからね」 クロエ「…もう大丈夫ですヨ~! 煩悩は消すのですヨ~!」 笑う一同。 ユーリヤ「煩悩って、何ですか?」 文緒「煩悩とはですね、人間の持ってる悩みや欲のことです。それを払うために、お寺で除夜の鐘を突くんですよ」 クロエ「文緒サンは何でも知ってますネ! 歩く百科事典でス!」 一方、喫茶コスモスに客が来た。 野々花「いらっしゃいませ~!」 3年生の3人。 &ruby(ここのえしのぶ){九重忍}。見た目はクールだが大雑把で気さく。ビリヤードの腕はプロ顔負けで、自身が旗揚げしたビリヤード同好会を部に昇格させようと頑張っている。 &ruby(たまい){玉井}&ruby(れみ){麗巳}。さばさばした性格のゴルフ部員。勉強は全般的に苦手だが勝負事、とりわけゴルフになると俄然熱が入る。忍とは大の仲良し同士。 &ruby(ありすがわ){有栖川}&ruby(さえこ){小枝子}。合唱部部長でおっとりした性格。他人の恋愛話に目が無く、恋のキューピッドを自称し相談に乗ったりしているが、逆に自身の恋愛には無頓着。 小枝子「こんにちは」 野々花「お買い物の帰り?」 忍「そうなの。困った話でね。たまにはお正月の用意をっていうから、手伝いに行ったら、麗巳がほとんどダメにしちゃって…」 麗巳「あはは…いや~めんぼくない。でもどうして失敗するのかなぁ…書いてある通りにやってるのに」 忍「あれで? 書いてある通りって…麗巳、すぐアレンジするでしょ? 砂糖の代わりにマーマレード使ったりとか…」 麗巳「砂糖とカボスの代わりになるかな~って思って…間違ってないよね?」 忍「えーっと…」 野々花「どうぞ」 忍と麗巳にお冷やを差し出す。 忍・麗巳・小枝子「?」 野々花「玉井さん、砂糖の代わりにマーマレードなんて、素敵なアイデアね~。今度早速やってみようかしら」 忍・麗巳・小枝子「え?」 小枝子「…あ…野々花さん。マスターのおじい様、どうなさったの?」 野々花「町内会の集まりで、お餅をつきに行ってるの」 忍・麗巳・小枝子「え?」 小枝子「じゃあお料理は誰が…」 野々花「ご心配なく。私が誠心誠意作りますから」 忍・麗巳・小枝子「…」 野々花の料理の腕を知っているが故に困惑する3人。 その時、新しい来客が。 忍・麗巳・小枝子「?」 「野々花。帰ったぞ」 祖父が帰ってきた。 野々花「おじいちゃん!」 野々花の祖父「お、いらっしゃい。何だ? もしかして、町内会名物きなこ餅が目当てかな?」((ちなみに、きなこは麗巳の嫌いな食べ物である(きなこもちは真尋の好きな食べ物)。)) 風呂敷に包まれたきなこ餅を見せる。 野々花の祖父「つきたてだからおいしいぞ」 忍・麗巳・小枝子「…いただきます!」 柚子の蕎麦屋"そばよし"((原作での名前は”蕎麦処 月庵”。隣にある酒屋”朝比奈酒店”は桃子の家。))。 軽音部の5人によるガールズバンド"にゅーろん★くりぃむそふと"のメンバーが年越しそばを食べにきていた。 ボーカル:&ruby(かぜまち){風町}&ruby(はるか){陽歌}。作詞・作曲が趣味で、ふと思ったことを即興で歌にしたりする。ボーカルであるが楽器演奏も得意。 ギター:江藤くるみ。常に明るく前向きな性格。演奏テクもかなりのもので、華麗な速弾きが得意。 ベース:&ruby(くろかわ){黒川}&ruby(なぎこ){凪子}。普段は冷静だが、ベースを握れば人が変わったようにパンキッシュになる。 キーボード:&ruby(あさひな){朝比奈}&ruby(ももこ){桃子}。人を疑うことを知らない素直な性格で、柚子とは幼稚園からの幼馴染。 ドラムス:&ruby(よもぎだすみれ){蓬田菫}。小柄な体格に似合わずパワフル。名古屋弁混じりの珍妙な言葉遣いが特徴。 桃子「ユズちゃん家で年越しそばを食べてると、年末~って感じがする」 柚子「そう?」 陽歌「幼馴染だもんね~。いつも一緒に年越し?」 柚子&桃子「はい!」 菫「家の人放っぽっといていいがや?」 桃子「寒いから、出前で済ますって言ってました」 凪子「ふ~ん…? あれ湯川さんじゃないかい?」 陽歌「?」 凪子「陽歌のクラスの…」 菫「?」 くるみ・桃子・柚子「?」 凪子の目に留まったTVに、基世が映っている。 化学部副部長を務め、日夜実験に没頭している白衣とぐりぐり眼鏡が特徴的な2年生。 そんな彼女が、何と新物質を偶然発見したことでTV局の取材を受けていた。 基世「器具をそのままにして次の実験に取り掛かり、放置していたら思わぬ発見に繋がったというだけで、とても誉められたことでは無いのです…」 眼鏡を外して白衣の袖で拭く。 くるみ「素顔、初めて見た!」 桃子「わたしも!」 菫「お~、カワユスだのう!」 陽歌「ほんとに~!」 基世は身だしなみにはかなり無頓着だが、眼鏡の下の素顔は立派な美少女である。 凪子「つか、3人はさ…何でもりそばなの?」 くるみ・桃子・柚子は、もりそばを注文していた。 くるみ・桃子・柚子「?」 凪子「普通かけじゃない?」 菫・凪子・陽歌はかけそば。 それぞれ上にかきあげ、えび天・油揚げが乗っている。 陽歌「冬だしね~。かけそばの方があったまらない?」 柚子「江戸時代的な意味では、もりそばらしいですよ」 菫「なぬ!? そうなん!? 初耳だがや!」 くるみ「後かけそばって、後でトイレに行きたくなるかもだし~。年越しライブでそれはヤバいしね~」 凪子「別に行きたくならないけど…」 くるみ「! 裏切り者!」 凪子「裏切りって大袈裟な…」 柚子「どっちでもいいと思いますけど…」 凪子「?」 柚子「早く食べないとのびちゃいますよ?」 桃子・くるみ・陽歌・凪子・菫「!?」 そして…。 食べ終わって手を合わせる陽歌。 一同「ごちそうさまでしたー!」 陽歌「そんなこんなで、今年1年、色々あったけど…」 凪子「来年も…」 菫「よろしく!」 菫・凪子・陽歌・くるみ・桃子「お願いしまーす!!」 5人が円陣を組む。 同人誌即売会"コミコン"の帰り道、とぼとぼと商店街を行く2人。 &ruby(おのでら){小野寺}&ruby(ちづる){千鶴}。漫画を描くことが大好きなマンガ研究会の3年生で、大概原稿に追われており、煮詰っているかどうかでテンションが変わる。 &ruby(とむら){戸村}&ruby(みちる){美知留}。2年生。"トムトムミッチー"の名で活躍している有名コスプレイヤーで、その衣装制作のために日々アルバイトに精を出している。 お互い漫画を通じたオタク仲間である。 美知留「…お…先輩」 "そばよし"の前で足を止める。 美知留「おそばでも食べてきます?」 千鶴「あいにく軍資金がね~」 美知留「え? そんなに売れ残ったんですか?」 千鶴「いんや。実はさ、ちょっと見て回ったら今年はいいのが多くて、ついつい買い込んじゃってね~」 美知留「それは…良かったですね、というか、ご愁傷様というか…」 千鶴「えへ…」 千鶴の腹の虫が鳴る。 千鶴&美知留「? …はぁ…」 千鶴「心の満足感に比べたら、肉体の空腹感など!」 美知留「だっはは…あたしが奢る、と言いたいところなんですけど…あたしも今年のコスに結構注ぎ込んじゃって…」 千鶴&美知留「はぁ…」 千鶴「…? 待った」 美知留「?」 千鶴「いい匂いがするぞ」 餅つき会場で、お汁粉が振舞われていた。 それを食べにきていた木乃子とレイ。 レイは自宅に10台ものPCを持つ凄腕ハッカーで、学校に顔を出すことは少ないが出席日数は辛うじて守っている。 木乃子とは引きこもり仲間、且つゲームを通じた仲良し。 千鶴「あれ~? 姫島ちゃんと…」 木乃子「?」 レイ「?」 美知留「東雲さんじゃん」 木乃子「ああ」レイ「やあ」 木乃子「あは…どうだった、今年は…」 千鶴「売り上げ的にも収穫的にも大満足ってとこかねー」 おじさん「お嬢さんたちもお汁粉食ってきな」 美知留「?」 千鶴&美知留「はい!!」 2人にお汁粉が配られた。 千鶴&美知留「いただきまーす!」 美知留「…おいし~い!」 千鶴「あったまる~!」 美知留「あ…東雲さんとか姫島さんは、コミコン参加しないの? 好きなものいーっぱいあるでしょ?」 木乃子「いや~体力がのぉ…」 腰を叩く。 レイ「人混み面倒くさ~…」 木乃子「今日だってかったるいから、東雲ん家に食料タカリに行ったら、大晦日だってのに何にも買い込んでなくてな~。準備の悪~い」 レイ「大晦日だってのに、タカリに来るのも大概だろ…」 木乃子「同じ穴のムジナだな」 千鶴「それって、当事者同士が言うことじゃないよね…」 レイ「一緒にしないで欲しいけどなぁ…」 ・ ・ ・ 不知火家に着いた5人。 クロエ「とても日本的なお家ですネ~! 素晴らしいでス!」 扉を開けて出迎えたのは春湖。 春湖「いらっしゃ~い。支度はしてありますよ~。どうぞ~」 ユーリヤ「夢前さん、どうしてこちらに?」 春湖「幼馴染なので~。いつも一緒に年越しするんですよ~」 そして、その一室に招待された5人。 部屋を彩るように置かれた振袖に感嘆するクロエとユーリヤ。 ユーリヤ「これは、何かの美術展なのですか?」 五十鈴「ん? いや、単に似合いそうな着物を出しておいただけだが…」 クロエ「ワタシ、命が縮む気がしまス!」 五十鈴「?」春湖「え?」 文緒「クロエさん、こういう時は"縮む"ではなく"延びる"と言うんですよ」 クロエ「わ、スイマセン…命が延びる思いがします! 幸せですネ…」 五十鈴「それは良かった……クロエさんには、これはどうだろう」 黒い着物を勧める。 五十鈴「似合うと思うぞ」 クロエ「わぁ…!」 文緒「どれも素敵で、迷いますね…」 明音「柄と柄って、洋服だと合わせ辛いのに、着物だとどうしてこんなに綺麗なんでしょうね…」 心実「ほんとですよね…」 ユーリヤ「私はこれが好きです!」 ユーリヤが選んだのは青い花柄の振袖。 五十鈴「ふ~む。君は目が高いな。それは私の一押しだ」 明音「うん。それすっごくいいね」 クロエ「ワタシ今、さざれ石な気分でス」 五十鈴「さざれ、石?」 春湖「君が代ですか?」 明音「日本的な気分、ってことですか?」 クロエ「違います! こうやって、姉妹のお嬢さんが、仲良く美しいものを楽しむ小説がありましたヨ!」 文緒「それって、"細雪"ですかね?」 クロエ「そ、そうでした! 今日は、とりわけ間違い多いですヨ…舞い上がってますネ!」 文緒・心実・明音「うふふ…」 半纏を脱いで袖をまくり、春湖にたすきを締めてもらい、着付けの準備が整った五十鈴。 五十鈴「さあて、2人の着付けといこうか…?」 文緒がポケットからスマホを取り出す。誰かから電話が来たようだ。 文緒「?…もしもし。望月さん?」 コミコン会場のエレナ。 野暮用とは、ここでコスプレイヤーを撮影することだった。 エレナ「もうちょっとで終わりそうだから、合流できたら合流するね~」 ~不知火家~ エレナ「じゃあね~」 電話が切れる。 文緒「だそうです」 ガード下で誰かを待っている&ruby(すずかわ){鈴河}&ruby(りの){凛乃}。水泳部の2年生で心実のクラスメイト。 猫が大好きで言葉遣いも猫っぽく、学校に居付いている三毛猫"大将"といつも遊んでいる。 凛乃「う~寒いねぇ…ん? お、来た来た! &ruby(さとる){里琉}く~ん!!」 手を振って居場所を知らせる。 凛乃に呼ばれて駆け寄る少年のような少女…&ruby(きみじま){君嶋}里琉。1年生。 言葉遣いも立ち振る舞いも兄と弟に囲まれて暮らした影響で男性的。凛乃と同じく水泳部員で仲も良い。 里琉「すいません鈴河先輩。弟がついて来るって聞かなくて…」 凛乃「連れてきてあげれば良かったんじゃないかにゃ~」 里琉「…ダメですよ。弟は今風邪気味なんで…」 凛乃「そっかぁ。外に出て酷くなったら大変だもんね~」 里琉「それに、先輩に風邪がうつったりしたら困りますから」 凛乃「にゃははは…行こっか、里琉くん」 里琉の手を握って走り出す凛乃。 里琉「え…あ…」 とあるお寺。 凛乃「おや? もうあんなに並んでる」 里琉「ほんとですねー」 クロエとユーリヤに近づき…。 里流「綺麗ですね」 凛乃「そうだにゃ~」 クロエ「?」 ユーリヤ「?」 クロエ「凛乃サン…?」 凛乃「里琉くんだよ」 里琉「君嶋です」 文緒「こんばんは」 心実「お2人も、除夜の鐘を突きに?」 凛乃「うん」里琉「はい」 凛乃「クロエさんたちは、鐘突くの初めてかにゃ?」 クロエ「ウィ!」ユーリヤ「はい!」 クロエ「楽しみです! 煩悩を消すのですヨ!」 鐘が鳴る。 一方、ここは森園神社の本堂。 秋穂「お寺さんの鐘が聞こえてきたし…そろそろ行こうか」 巫女装束に着替え終わった秋穂。 「あ~、ちょっと待って。焦ったら余計、変なことになっちゃって…」 着付けがうまくできない&ruby(もりぞの){森園}&ruby(めい){芽以}。 彼女はこの神社に暮らしている1年生。掃除が大好きでのんびりした性格。秋穂とは従姉妹同士で、姉のように慕っている。 また秋穂も、時々神社に手伝いに来ることもある。 秋穂「はぁ…」 背後から芽以の帯に手をかけ…。 秋穂「ほら貸して。神社の娘が、いつまでもこれではダメだよ」 しっかり結び直す。 芽以「いつもありがとう。秋穂お姉ちゃん」 秋穂「もう…仕方無いねぇ…」 クロエ「お~しょうゆ!!」 叫びながら鐘を突くクロエ。 一方エレナは…。 エレナ「かなり遅くなっちゃったわ~。急いで合流しないと…」 ~森園神社~ 境内に立ち並ぶ屋台。 リンゴ飴を食べているクロエ。 ユーリヤ「クロエさん」 クロエ「?」 ユーリヤ「お寺と神社の違いは何ですか?」 クロエ「お寺は鐘が突けて、神社はお店が出まス」 ユーリヤ「そうですか…」 苦笑する明音。 文緒「本当は、仏教と神道の違いとか、色々言いたいところですが…今回は置いておきましょうか」 クロエ「…」 後で売っている破魔矢に目が止まった。 クロエ「…!」 ユーリヤ「?」 クロエ「悪魔を射る矢でス!」 心実「あ…」 明音「…」 心実「クロエさん!」 お守りやおみくじの売店で番をしている秋穂と芽以。 秋穂「ありがとうございました」 そこにクロエが駆け込む。 クロエ「わぁ~!」 芽以「?」 クロエ「素晴らしいですネ~!」 秋穂「おや? クロエ!」 心実たちも遅れて来た。 クロエ「こんばんは、秋穂サン芽以サン!」 芽以「わざわざ、うちに初詣に来てくれたんですね」 クロエ「ウィ! さっき、煩悩も消してきました」 秋穂&芽以「?」 芽以「あ…」 秋穂「あ…」 芽以「除夜の鐘のことですね」 秋穂「まだ、年が変わるまでは少しあるし…おみくじでもどうかな」 ユーリヤ「おみくじ?」 文緒「来年の運が良いか悪いか、教えてくれるんですよ」 ユーリヤ「そうなんですか…」 明音「私引きたいです!」 心実「私も…」 文緒が引いたおみくじは…。 文緒「『勉学 怠けず励めば実りあり』…うん」 ユーリヤ「これは何て読みますか?」 明音「? 『佳き人 遠方より来たる』…恋の予感かもね、ユーリヤさん」 ユーリヤ「!? Любов?」((lyubov? =ロシア語で「恋?」(本来はoの上に'が付く)。)) 心実「『探し物 すぐ近くにあり』…クロエさんはどうでした?」 クロエ「ん? 『嵐が吹きても やがて収まる』…これって、最後はいいコトがあるってコトですよネ!?」 心実「クリスマスは、まさにそうでしたね」 クロエ「うん! 本当ですネ! じゃあ、来年もきっといいことが起こるでショウ!」 秋穂「そろそろ年が明けるよ」 心実&クロエ「?」 時計は午前0時目前。 胸を躍らせながらそれを見つめる一同。 クロエ「10! 9!」 甘酒を飲んでいる凛乃と里琉。 凛乃&里琉「8!」 にゅーろんのライブ会場。 陽歌・凪子・くるみ&観客「7!」 不知火家の一室で、こたつに入っている春湖と五十鈴。 春湖&五十鈴「6」 鐘を突きに来ていた一葉・真尋・つぐみ。 一葉&つぐみ「5!」 喫茶コスモスで祖父とコーヒーを飲んでいる野々花。 野々花「4!」 コンビニで買出し中の木乃子とレイ。 木乃子&レイ「3!」 どこかで写真を撮っているエレナ。 エレナ「2!」 そして森園神社。 文緒・明音・ユーリヤ・心実・クロエ「1!!」 新年を迎え、喜び合う5人。 クロエ「明けまして、おめでとうございま~ス!!」 文緒・明音・ユーリヤ・心実「明けまして、おめでとうございます!」 鈴を鳴らし、願掛けする明音・ユーリヤ・文緒。 続けてクロエと心実も。 心実「クロエさん」 クロエ「?」 心実「この前、何を悩んでいるのか教えて下さいとお願いしましたよね?」 クロエ「ウィ」 心実「もう1つお願い事ができたのですが、いいですか?」 クロエ「? いいですヨ」 心実「私、クロエさんと来年も一緒に『おめでとう』って言いたいです」 クロエ「…もちろんですヨ~!!」 ・ ・ ・ 大きく遅れて合流したエレナ。 エレナ「は~い、撮るわよ~」 タイマーをセットしてカメラから離れる。 そしてすかさず文緒に抱きつく。 文緒「!?」 明音・ユーリヤ・クロエ・心実「!?」 シャッター音。 笑顔の6人がカメラのメモリーに焼きつく。 #center(){&bold(){<終>}}
#11「さよならア・ラ・モード」あらすじ 二学期終了が近づいたある日、クロエは元気が無かった。 心実はいつかの「クロエの頼みを聞く」約束を果たすためにそれを聞いたところ、家族から帰国するように言われていたからだった。 彼女にずっと学校にいてほしいと願う生徒たちは、思いを込めてビデオレターや手紙を贈ったものの、全て却下されてしまった。 それから、お別れ会を兼ねたクリスマスパーティーを間近に控えた喫茶コスモスに、父セルジュ・ジャン・ルメールがやってきた。 彼に帰国の理由を聞いたところ、原因は日本の正月の風習をクロエが間違って教えたせいだった。 文緒たちの補足もあって、もっと日本文化を学ぶようにとクロエはセルジュから留学を続けることを許された。 ・ ・ ・ 冬休みのある日。 図書館は特別開館日として開放されていた。 文緒「望月さんが撮ったクリスマスパーティーの写真、見ます?」 心実「はい。見たいです」 明音「私も」 文緒「どうぞ」 写真の束を置く。 文緒「…」 黙々と写真をめくる文緒。 明音「すごく楽しかったですよね~」 心実「本当に…クロエさんが帰らずに済んで良かったです」 ケーキに夢中な明音、そしてクロエ・ユーリヤ・野々花・心実。 ユーリヤ・ヴャルコワ。ロシア人留学生でバレエ部所属の1年生。 バレエは3才から習っており、その美しい演舞は見る人を思わず引き付けるほど。 クロエとは大の仲良しで、日本文化について語り合っている((しかし、ナポレオンのロシア侵攻のことはお互いの間でタブーになっている。))。 心実「みんな本当に楽しそうでしたよね…」 心実と一葉、明音・由紀恵・文緒がそれぞれ乾杯を交わしている。 明音「"にゅーろん★くりぃむそふと"のライブも、盛り上がりましたし…」 ライブに見入る一同。 ステージ上のにゅーろん★くりぃむそふと。 心実「ケーキはちょっとヒヤッとしましたけど…」 ギターをケーキにぶつけてしまった&ruby(えとう){江藤}くるみ。 茫然とする&ruby(ひいらぎまこと){柊真琴}((人懐っこく甘えん坊な1年生。お菓子作りが趣味で、甘党なせいか体型がぽっちゃり気味。))・&ruby(なべしま){鍋島}ちより((3年生。料理部所属。料理だけに留まらず家事全般を得意とし、雰囲気はさながらお母さんのよう。))・&ruby(みしな){三科}&ruby(かほ){果歩}((1年生。ちよりと同じく料理部所属でパン作りが趣味。5話では真琴やちより、そして栢嶋乙女と一緒に学食の手伝いに参加した。))・&ruby(ゆかわ){湯川}&ruby(きせ){基世}。 文緒「見吉さんとクロエさんのコスプレも、可愛かったですし…」 サンタ衣装で並ぶ奈央とクロエ。 明音「プレゼント交換も…」 木乃子と基世は、きのこの森と三角フラスコ&ビーカーのセットを。 &ruby(ゆうきなえ){優木苗}((手芸部所属の1年生。あみぐるみやぬいぐるみを作るのが好き。純真な性格で素直すぎる故に周囲を凍りつかせてしまうような発言をすることも。))と一葉は、熊のあみぐるみとダンベルを。 &ruby(しののめ){東雲}レイと野々花は、PCの電源ユニットと陶芸部で作った猿(のような何か)の置物を、それぞれ交換し合った。 文緒が最後にめくった集合写真((上段:三科果歩、柊真琴、螺子川来夢、ミス・モノクローム、湯川基世、ユーリヤ・ヴャルコワ、蓬田菫、風町陽歌、黒川凪子、江藤くるみ、朝比奈桃子、葉月柚子、見吉奈央、八束由紀恵、相楽エミ、鍋島ちより、小日向いちご、重藤秋穂。))((下段:小野寺千鶴、夢前春湖、戸村美知留、優木苗、時谷小瑠璃、熊田一葉、不知火五十鈴、櫻井明音、村上文緒、クロエ・ルメール、望月エレナ、椎名心実、笹原野々花、姫島木乃子、東雲レイ、新垣雛菜、佐伯鞠香、夏目真尋、春宮つぐみ。))。 明音「またみんなで集まりたいですね~」 心実「そうですね」 文緒「ぜひ」 「こんにちは~、文緒サン?」 心実・明音・文緒「?」 クロエとユーリヤが入ってきた。 クロエ「お正月に関する本を貸して下さい」 文緒「お正月の本ですか?」 ユーリヤ「街からクリスマスが消えました。今全てお正月です」 明音・文緒・心実「え?」 クロエ「ヨーロッパでは、クリスマスツリーは、1月になっても飾られてることが多いですけど、こっちでは、クリスマス過ぎたら、突然無くなりますヨ?」 明音「へぇ~、ヨーロッパではそうなんですか」 文緒「ちょっと待って下さいね」 ユーリヤ&クロエ「?」 明音&心実「?」 心実「…あっという間にお正月ムードになりますよね。街の雰囲気とか、TVのCMとかも…」 文緒が本を持って戻ってきた。 文緒「お正月について知りたいのなら」 明音&心実「?」 文緒「これなんてどうでしょう」 クロエが本を手に取る。 クロエ「……」 ユーリヤ「?」 その"現代歳時記"という本には、正月に関連した用語が書かれていた。 クロエ「…」 ユーリヤ「漢字が多くて、少し難しいです…」 文緒「お2人には難しかったですかね…」 心実「…あ、クロエさん。ユーリヤさん」 ユーリヤ・クロエ・明音「?」 心実「良かったら、大晦日うちにいらっしゃいませんか?」 ユーリヤ「心実さんのお家に?」クロエ「心実サンのお家に?」 心実「はい。うちは普通の家ですけど、その分、普通の年越しを見て頂けるんじゃないかと…」 明音「おっ、いい考え! 私も行ってもいいかなぁ?」 心実「はい。もちろんです」 明音「村上先輩も、一緒に行きませんか?」 文緒「ご迷惑じゃなければ…」 心実「とんでもない! 是非、いらして下さい」 笑い合うユーリヤとクロエ。 ユーリヤ「楽しみです!」クロエ「楽しみでス!」 #center(){ &size(18){&bold(){&color(#ff3399){「ガールフレンドxxx」}}} } 12月31日、朝。椎名家・玄関前。 クロエ&ユーリヤ「門松! しめ縄! おお…」 初めて見るものばかりで、クロエとユーリヤは大感激。 ユーリヤ「日本の文化、素敵です!」 クロエもここぞとばかりにスマホを取り出し、興奮しながら写真を撮りまくる。 クロエ「こんなに美しいのを見たのは初めてですヨ! トレビア~ン!!」 心実「普通のお正月飾りなんですけど…」 明音「望月先輩は来られなかったんですか? 門松を見て喜ぶお2人とか、見たがりそうですけど…」 文緒「声はかけてみたんですけど…」 エレナ(回想)「え~!? 行きた~い!! けど、大晦日は野暮用があって…」 文緒「何かと忙しいみたいです…」 心実「残念ですね…入りましょうか」 ユーリヤ&クロエ「はい!」 そして5人は家の中へ。 クロエ&ユーリヤ「おせち!」 クロエ「お~! 素晴らしいですね! とっても、おいしそうでス!」 母「まあ。お世辞でも嬉しいわ。日本のお正月に、興味があるんですって?」 クロエ&ユーリヤ「はい!」 羽子板を見せる母。 母「こういうもの、知ってるかしら」 クロエ「それは素敵なインテリアですネ?」 ユーリヤ「ん~?」 母「違うの。これは…えーと、あ……ラケットよ」 クロエ&ユーリヤ「おお!」 明音「負けると、顔に×点を描かれるんですよね」 ユーリヤ「×点?」 文緒「墨で×マークを。ペナルティなんです」 クロエ「!?」 明音「村上先輩…」 ユーリヤ「?」 明音「きっとクロエ先輩、また日本文化を誤解するようなことを想像してますよ…」 ユーリヤ「お餅とかそうでした」 クロエ「…もう間違えませんヨ…」 母「うふふ…他にはね、凧揚げとか、いろはかるたとか。あ、お手玉とか」 クロエ&ユーリヤ「おお!」 クロエ「エミサンみたいですネ!」 母「ん? エミさんって…心実のクラスの相楽さん?」 心実「そうです。ジャグリングがとても上手なんですよ」 母「そうなの…だけど大勢でやるには、いろはかるたでいいかしら。ことわざも覚えられるし…みんなでやりましょうか」 クロエ「ウィ!」ユーリヤ・心実・明音・文緒「はい!」 町内会の餅つき会場。 つぐみ・一葉・鞠香が手伝いに来ていた。 鞠香「…春宮さん、熊田さん、お願い」 つぐみ「はーい」 一葉「よしきた」 一葉は杵を構え、つぐみは湯で両手を濡らす。 つぐみ「ばっちこい!」 一葉「はっ!」 つぐみ「ほいっ!」 一葉「ほっ!」 つぐみ「それっ!」 町内会一同。 そのうち1人は、喫茶コスモスを切り盛りする野々花の祖父。 野々花の祖父「いやー助かった…」 おじさん「この歳になると大変だね…」 野々花の祖父「腰に来るんだよなぁ」 一葉とつぐみの作業スピードがどんどん上がっていく。 町内会一同「…」 一葉「はいっ!!」 一葉の最後の一つきの後、つぐみが餅を軽く叩く。 つぐみ「…よしOK!」 鞠香「え? もう出来たの?」 一葉「ふっふっふ…体育会系の体力…!」 つぐみ「甘く見ないでよね!」 餅を食べにきた&ruby(ねじかわ){螺子川}&ruby(らいむ){来夢}。2年生にしてロボット研究会部長。人付き合いは苦手だが、ロボットと人間の共存を夢見ている。 そして彼女に同行してきたミス・モノクローム((原案はCV:堀江由衣氏がライブに登場させていたキャラクター。))。研究の一環として感情を学ぶために聖櫻にやってきた、正体不明の少女型ロボット。彼女のメンテナンスができるのは校内で来夢ただ1人。 来夢「……食べるかい? お餅」 モノクローム「いただきます」 来夢から渡された餅を手に取る。 モノクローム「お餅のような、粘度の高いものを…」 食べた途端、モノクロームは痙攣を起こして倒れてしまう。 来夢&町内会一同「!?」 鞠香がモノクロームに駆け寄る。 鞠香「モノクロームちゃん! …窒息!? 気道を確保しないと…」 来夢「いやいや心配ご無用ご無用。何しろモノクロームちゃんは呼吸してないからね~」 顔の左側に手をかけると、モノクロームの頭の左のユニットが開く。 来夢「息が詰まることも無い訳だよ」 それを操作し終えると、モノクロームの喉元が発光。そして口から煙を吐き出した後目が光り、再起動する。 町内会一同「!?」 モノクローム「食べるのは、初めてです」 安堵のため息を漏らす鞠香・つぐみ・一葉。 ~椎名家~ クロエ「お~! カワイイ~!!」 ユーリヤ「とても可愛いです!」 心実の幼少時代のアルバムをみんなで見ていた。 クロエ「お人形さんみたいでス!」 心実「そんなに見ないで下さい!」 文緒「隠さないでもいいじゃないですか」 明音「そうだよ~、凄く可愛いのに…」 クロエ「羨ましいですヨ」 赤面する心実。 ユーリヤ「私、着物着たことありません」 クロエ「ワタシもですヨ」 母「あら、2人共似合いそうなのにねえ」 文緒・クロエ・ユーリヤ「?」 母「着せてあげたいわぁ…」 クロエ&ユーリヤ「!?」 クロエ「…ノンノン! 照れまス!」 ユーリヤ「そんなの恥ずかしいです…」 母「あらそう?」 クロエ「そうですヨ…」 ユーリヤ「はい…」 母「奥ゆかしいのね。大和撫子だな?」 心実「お母さん」 母「?」 心実「うちに着物ありませんでしたっけ?」 母「心実のは親戚に譲っちゃったわよ?」 心実「…」 母「あっても小さい頃のだし、サイズも合わないわ」 明音「…そうだ」 クロエ・ユーリヤ・母・心実「?」 明音「不知火さんなら、着物をいっぱい持ってるんじゃないかな。お家じゃ、着物で過ごすことが多いって言ってたし」 文緒「お願いしてみましょうか」 不知火家。 五十鈴が電話で会話していた。 五十鈴「なるほど。私は構いませんが」 心実「OKですね」 明音「やったー!」 クロエ「お~、最高ですネ!」 文緒「良かったですね…」 ユーリヤ「本当にいいのですか?」 五十鈴「ああ。2人に似合いそうなものを出しておこう」 電話を切る。 「五十鈴ちゃんどうしたの?」 春湖が庭の手入れをしていた。 五十鈴「ちとやらねばならないことができた。春湖も手伝ってくれ」 春湖「は~い」 ~椎名家~ 母「じゃあ気をつけてね。あまり遅くなり過ぎないようにね」 一同「はい!」クロエ「ウィ!」 5人は徒歩で不知火家へ行くことに。 クロエ「五十鈴サンのお家行って着物着たら、その後どうしまショウ?」 文緒「クロエさんとユーリヤさんに、日本の年越しをお教えするのが目的ですから、お寺に行って、除夜の鐘を突いて、神社にお参りしに行きましょうか」 クロエ「ウィ~! 凄く楽しみですネ~!」 明音「クロエ先輩にはちゃんとしたことを覚えてもらわないと…また何かあるかも知れないですからね」 クロエ「…もう大丈夫ですヨ~! 煩悩は消すのですヨ~!」 笑う一同。 ユーリヤ「煩悩って、何ですか?」 文緒「煩悩とはですね、人間の持ってる悩みや欲のことです。それを払うために、お寺で除夜の鐘を突くんですよ」 クロエ「文緒サンは何でも知ってますネ! 歩く百科事典でス!」 一方、喫茶コスモスに客が来た。 野々花「いらっしゃいませ~!」 3年生の3人。 &ruby(ここのえしのぶ){九重忍}。見た目はクールだが大雑把で気さく。ビリヤードの腕はプロ顔負けで、自身が旗揚げしたビリヤード同好会を部に昇格させようと頑張っている。 &ruby(たまい){玉井}&ruby(れみ){麗巳}。さばさばした性格のゴルフ部員。勉強は全般的に苦手だが勝負事、とりわけゴルフになると俄然熱が入る。忍とは大の仲良し同士。 &ruby(ありすがわ){有栖川}&ruby(さえこ){小枝子}。合唱部部長でおっとりした性格。他人の恋愛話に目が無く、恋のキューピッドを自称し相談に乗ったりしているが、逆に自身の恋愛には無頓着。 小枝子「こんにちは」 野々花「お買い物の帰り?」 忍「そうなの。困った話でね。たまにはお正月の用意をっていうから、手伝いに行ったら、麗巳がほとんどダメにしちゃって…」 麗巳「あはは…いや~めんぼくない。でもどうして失敗するのかなぁ…書いてある通りにやってるのに」 忍「あれで? 書いてある通りって…麗巳、すぐアレンジするでしょ? 砂糖の代わりにマーマレード使ったりとか…」 麗巳「砂糖とカボスの代わりになるかな~って思って…間違ってないよね?」 忍「えーっと…」 野々花「どうぞ」 忍と麗巳にお冷やを差し出す。 忍・麗巳・小枝子「?」 野々花「玉井さん、砂糖の代わりにマーマレードなんて、素敵なアイデアね~。今度早速やってみようかしら」 忍・麗巳・小枝子「え?」 小枝子「…あ…野々花さん。マスターのおじい様、どうなさったの?」 野々花「町内会の集まりで、お餅をつきに行ってるの」 忍・麗巳・小枝子「え?」 小枝子「じゃあお料理は誰が…」 野々花「ご心配なく。私が誠心誠意作りますから」 忍・麗巳・小枝子「…」 野々花の料理の腕を知っているが故に困惑する3人。 その時、新しい来客が。 忍・麗巳・小枝子「?」 「野々花。帰ったぞ」 祖父が帰ってきた。 野々花「おじいちゃん!」 野々花の祖父「お、いらっしゃい。何だ? もしかして、町内会名物きなこ餅が目当てかな?」((ちなみに、きなこは麗巳の嫌いな食べ物である(きなこもちは真尋の好きな食べ物)。)) 風呂敷に包まれたきなこ餅を見せる。 野々花の祖父「つきたてだからおいしいぞ」 忍・麗巳・小枝子「…いただきます!」 柚子の蕎麦屋"そばよし"((原作での名前は”蕎麦処 月庵”。隣にある酒屋”朝比奈酒店”は桃子の家。))。 軽音部の5人によるガールズバンド"にゅーろん★くりぃむそふと"のメンバーが年越しそばを食べにきていた。 ボーカル:&ruby(かぜまち){風町}&ruby(はるか){陽歌}。作詞・作曲が趣味で、ふと思ったことを即興で歌にしたりする。ボーカルであるが楽器演奏も得意。 ギター:江藤くるみ。常に明るく前向きな性格。演奏テクもかなりのもので、華麗な速弾きが得意。 ベース:&ruby(くろかわ){黒川}&ruby(なぎこ){凪子}。普段は冷静だが、ベースを握れば人が変わったようにパンキッシュになる。 キーボード:&ruby(あさひな){朝比奈}&ruby(ももこ){桃子}。人を疑うことを知らない素直な性格で、柚子とは幼稚園からの幼馴染。 ドラムス:&ruby(よもぎだすみれ){蓬田菫}。小柄な体格に似合わずパワフル。名古屋弁混じりの珍妙な言葉遣いが特徴。 桃子「ユズちゃん家で年越しそばを食べてると、年末~って感じがする」 柚子「そう?」 陽歌「幼馴染だもんね~。いつも一緒に年越し?」 柚子&桃子「はい!」 菫「家の人放っぽっといていいがや?」 桃子「寒いから、出前で済ますって言ってました」 凪子「ふ~ん…? あれ湯川さんじゃないかい?」 陽歌「?」 凪子「陽歌のクラスの…」 菫「?」 くるみ・桃子・柚子「?」 凪子の目に留まったTVに、基世が映っている。 化学部副部長を務め、日夜実験に没頭している白衣とぐりぐり眼鏡が特徴的な2年生。 そんな彼女が、何と新物質を偶然発見したことでTV局の取材を受けていた。 基世「器具をそのままにして次の実験に取り掛かり、放置していたら思わぬ発見に繋がったというだけで、とても誉められたことでは無いのです…」 眼鏡を外して白衣の袖で拭く。 くるみ「素顔、初めて見た!」 桃子「わたしも!」 菫「お~、カワユスだのう!」 陽歌「ほんとに~!」 基世は身だしなみにはかなり無頓着だが、眼鏡の下の素顔は立派な美少女である。 凪子「つか、3人はさ…何でもりそばなの?」 くるみ・桃子・柚子は、もりそばを注文していた。 くるみ・桃子・柚子「?」 凪子「普通かけじゃない?」 菫・凪子・陽歌はかけそば。 それぞれ上にかきあげ、えび天・油揚げが乗っている。 陽歌「冬だしね~。かけそばの方があったまらない?」 柚子「江戸時代的な意味では、もりそばらしいですよ」 菫「なぬ!? そうなん!? 初耳だがや!」 くるみ「後かけそばって、後でトイレに行きたくなるかもだし~。年越しライブでそれはヤバいしね~」 凪子「別に行きたくならないけど…」 くるみ「! 裏切り者!」 凪子「裏切りって大袈裟な…」 柚子「どっちでもいいと思いますけど…」 凪子「?」 柚子「早く食べないとのびちゃいますよ?」 桃子・くるみ・陽歌・凪子・菫「!?」 そして…。 食べ終わって手を合わせる陽歌。 一同「ごちそうさまでしたー!」 陽歌「そんなこんなで、今年1年、色々あったけど…」 凪子「来年も…」 菫「よろしく!」 菫・凪子・陽歌・くるみ・桃子「お願いしまーす!!」 5人が円陣を組む。 同人誌即売会"コミコン"の帰り道、とぼとぼと商店街を行く2人。 &ruby(おのでら){小野寺}&ruby(ちづる){千鶴}。漫画を描くことが大好きなマンガ研究会の3年生で、大概原稿に追われており、煮詰っているかどうかでテンションが変わる。 &ruby(とむら){戸村}&ruby(みちる){美知留}。2年生。"トムトムミッチー"の名で活躍している有名コスプレイヤーで、その衣装制作のために日々アルバイトに精を出している。 お互い漫画を通じたオタク仲間である。 美知留「…お…先輩」 "そばよし"の前で足を止める。 美知留「おそばでも食べてきます?」 千鶴「あいにく軍資金がね~」 美知留「え? そんなに売れ残ったんですか?」 千鶴「いんや。実はさ、ちょっと見て回ったら今年はいいのが多くて、ついつい買い込んじゃってね~」 美知留「それは…良かったですね、というか、ご愁傷様というか…」 千鶴「えへ…」 千鶴の腹の虫が鳴る。 千鶴&美知留「? …はぁ…」 千鶴「心の満足感に比べたら、肉体の空腹感など!」 美知留「だっはは…あたしが奢る、と言いたいところなんですけど…あたしも今年のコスに結構注ぎ込んじゃって…」 千鶴&美知留「はぁ…」 千鶴「…? 待った」 美知留「?」 千鶴「いい匂いがするぞ」 餅つき会場で、お汁粉が振舞われていた。 それを食べにきていた木乃子とレイ。 レイは自宅に10台ものPCを持つ凄腕ハッカーで、学校に顔を出すことは少ないが出席日数は辛うじて守っている。 木乃子とは引きこもり仲間、且つゲームを通じた仲良し。 千鶴「あれ~? 姫島ちゃんと…」 木乃子「?」 レイ「?」 美知留「東雲さんじゃん」 木乃子「ああ」レイ「やあ」 木乃子「あは…どうだった、今年は…」 千鶴「売り上げ的にも収穫的にも大満足ってとこかねー」 おじさん「お嬢さんたちもお汁粉食ってきな」 美知留「?」 千鶴&美知留「はい!!」 2人にお汁粉が配られた。 千鶴&美知留「いただきまーす!」 美知留「…おいし~い!」 千鶴「あったまる~!」 美知留「あ…東雲さんとか姫島さんは、コミコン参加しないの? 好きなものいーっぱいあるでしょ?」 木乃子「いや~体力がのぉ…」 腰を叩く。 レイ「人混み面倒くさ~…」 木乃子「今日だってかったるいから、東雲ん家に食料タカリに行ったら、大晦日だってのに何にも買い込んでなくてな~。準備の悪~い」 レイ「大晦日だってのに、タカリに来るのも大概だろ…」 木乃子「同じ穴のムジナだな」 千鶴「それって、当事者同士が言うことじゃないよね…」 レイ「一緒にしないで欲しいけどなぁ…」 ・ ・ ・ 不知火家に着いた5人。 クロエ「とても日本的なお家ですネ~! 素晴らしいでス!」 扉を開けて出迎えたのは春湖。 春湖「いらっしゃ~い。支度はしてありますよ~。どうぞ~」 ユーリヤ「夢前さん、どうしてこちらに?」 春湖「幼馴染なので~。いつも一緒に年越しするんですよ~」 そして、その一室に招待された5人。 部屋を彩るように置かれた振袖に感嘆するクロエとユーリヤ。 ユーリヤ「これは、何かの美術展なのですか?」 五十鈴「ん? いや、単に似合いそうな着物を出しておいただけだが…」 クロエ「ワタシ、命が縮む気がしまス!」 五十鈴「?」春湖「え?」 文緒「クロエさん、こういう時は"縮む"ではなく"延びる"と言うんですよ」 クロエ「わ、スイマセン…命が延びる思いがします! 幸せですネ…」 五十鈴「それは良かった……クロエさんには、これはどうだろう」 黒い着物を勧める。 五十鈴「似合うと思うぞ」 クロエ「わぁ…!」 文緒「どれも素敵で、迷いますね…」 明音「柄と柄って、洋服だと合わせ辛いのに、着物だとどうしてこんなに綺麗なんでしょうね…」 心実「ほんとですよね…」 ユーリヤ「私はこれが好きです!」 ユーリヤが選んだのは青い花柄の振袖。 五十鈴「ふ~む。君は目が高いな。それは私の一押しだ」 明音「うん。それすっごくいいね」 クロエ「ワタシ今、さざれ石な気分でス」 五十鈴「さざれ、石?」 春湖「君が代ですか?」 明音「日本的な気分、ってことですか?」 クロエ「違います! こうやって、姉妹のお嬢さんが、仲良く美しいものを楽しむ小説がありましたヨ!」 文緒「それって、"細雪"ですかね?」 クロエ「そ、そうでした! 今日は、とりわけ間違い多いですヨ…舞い上がってますネ!」 文緒・心実・明音「うふふ…」 半纏を脱いで袖をまくり、春湖にたすきを締めてもらい、着付けの準備が整った五十鈴。 五十鈴「さあて、2人の着付けといこうか…?」 文緒がポケットからスマホを取り出す。誰かから電話が来たようだ。 文緒「?…もしもし。望月さん?」 コミコン会場のエレナ。 野暮用とは、ここでコスプレイヤーを撮影することだった。 エレナ「もうちょっとで終わりそうだから、合流できたら合流するね~」 ~不知火家~ エレナ「じゃあね~」 電話が切れる。 文緒「だそうです」 ガード下で誰かを待っている&ruby(すずかわ){鈴河}&ruby(りの){凛乃}。水泳部の2年生で心実のクラスメイト。 猫が大好きで言葉遣いも猫っぽく、学校に居付いている三毛猫"大将"といつも遊んでいる。 凛乃「う~寒いねぇ…ん? お、来た来た! &ruby(さとる){里琉}く~ん!!」 手を振って居場所を知らせる。 凛乃に呼ばれて駆け寄る少年のような少女…&ruby(きみじま){君嶋}里琉。1年生。 言葉遣いも立ち振る舞いも兄と弟に囲まれて暮らした影響で男性的。凛乃と同じく水泳部員で仲も良い。 里琉「すいません鈴河先輩。弟がついて来るって聞かなくて…」 凛乃「連れてきてあげれば良かったんじゃないかにゃ~」 里琉「…ダメですよ。弟は今風邪気味なんで…」 凛乃「そっかぁ。外に出て酷くなったら大変だもんね~」 里琉「それに、先輩に風邪がうつったりしたら困りますから」 凛乃「にゃははは…行こっか、里琉くん」 里琉の手を握って走り出す凛乃。 里琉「え…あ…」 とあるお寺。 凛乃「おや? もうあんなに並んでる」 里琉「ほんとですねー」 クロエとユーリヤに近づき…。 里流「綺麗ですね」 凛乃「そうだにゃ~」 クロエ「?」 ユーリヤ「?」 クロエ「凛乃サン…?」 凛乃「里琉くんだよ」 里琉「君嶋です」 文緒「こんばんは」 心実「お2人も、除夜の鐘を突きに?」 凛乃「うん」里琉「はい」 凛乃「クロエさんたちは、鐘突くの初めてかにゃ?」 クロエ「ウィ!」ユーリヤ「はい!」 クロエ「楽しみです! 煩悩を消すのですヨ!」 鐘が鳴る。 一方、ここは森園神社の本堂。 秋穂「お寺さんの鐘が聞こえてきたし…そろそろ行こうか」 巫女装束に着替え終わった秋穂。 「あ~、ちょっと待って。焦ったら余計、変なことになっちゃって…」 着付けがうまくできない&ruby(もりぞの){森園}&ruby(めい){芽以}。 彼女はこの神社に暮らしている1年生。掃除が大好きでのんびりした性格。秋穂とは従姉妹同士で、姉のように慕っている。 また秋穂も、時々神社に手伝いに来ることもある。 秋穂「はぁ…」 背後から芽以の帯に手をかけ…。 秋穂「ほら貸して。神社の娘が、いつまでもこれではダメだよ」 しっかり結び直す。 芽以「いつもありがとう。秋穂お姉ちゃん」 秋穂「もう…仕方無いねぇ…」 クロエ「お~しょうゆ!!」 叫びながら鐘を突くクロエ。 一方エレナは…。 エレナ「かなり遅くなっちゃったわ~。急いで合流しないと…」 ~森園神社~ 境内に立ち並ぶ屋台。 リンゴ飴を食べているクロエ。 ユーリヤ「クロエさん」 クロエ「?」 ユーリヤ「お寺と神社の違いは何ですか?」 クロエ「お寺は鐘が突けて、神社はお店が出まス」 ユーリヤ「そうですか…」 苦笑する明音。 文緒「本当は、仏教と神道の違いとか、色々言いたいところですが…今回は置いておきましょうか」 クロエ「…」 後で売っている破魔矢に目が止まった。 クロエ「…!」 ユーリヤ「?」 クロエ「悪魔を射る矢でス!」 心実「あ…」 明音「…」 心実「クロエさん!」 お守りやおみくじの売店で番をしている秋穂と芽以。 秋穂「ありがとうございました」 そこにクロエが駆け込む。 クロエ「わぁ~!」 芽以「?」 クロエ「素晴らしいですネ~!」 秋穂「おや? クロエ!」 心実たちも遅れて来た。 クロエ「こんばんは、秋穂サン芽以サン!」 芽以「わざわざ、うちに初詣に来てくれたんですね」 クロエ「ウィ! さっき、煩悩も消してきました」 秋穂&芽以「?」 芽以「あ…」 秋穂「あ…」 芽以「除夜の鐘のことですね」 秋穂「まだ、年が変わるまでは少しあるし…おみくじでもどうかな」 ユーリヤ「おみくじ?」 文緒「来年の運が良いか悪いか、教えてくれるんですよ」 ユーリヤ「そうなんですか…」 明音「私引きたいです!」 心実「私も…」 文緒が引いたおみくじは…。 文緒「『勉学 怠けず励めば実りあり』…うん」 ユーリヤ「これは何て読みますか?」 明音「? 『佳き人 遠方より来たる』…恋の予感かもね、ユーリヤさん」 ユーリヤ「!? Любов?」((lyubov? =ロシア語で「恋?」(本来はoの上に'が付く)。)) 心実「『探し物 すぐ近くにあり』…クロエさんはどうでした?」 クロエ「ん? 『嵐が吹きても やがて収まる』…これって、最後はいいコトがあるってコトですよネ!?」 心実「クリスマスは、まさにそうでしたね」 クロエ「うん! 本当ですネ! じゃあ、来年もきっといいことが起こるでショウ!」 秋穂「そろそろ年が明けるよ」 心実&クロエ「?」 時計は午前0時目前。 胸を躍らせながらそれを見つめる一同。 クロエ「10! 9!」 甘酒を飲んでいる凛乃と里琉。 凛乃&里琉「8!」 にゅーろんのライブ会場。 陽歌・凪子・くるみ&観客「7!」 不知火家の一室で、こたつに入っている春湖と五十鈴。 春湖&五十鈴「6」 鐘を突きに来ていた一葉・真尋・つぐみ。 一葉&つぐみ「5!」 喫茶コスモスで祖父とコーヒーを飲んでいる野々花。 野々花「4!」 コンビニで買出し中の木乃子とレイ。 木乃子&レイ「3!」 どこかで写真を撮っているエレナ。 エレナ「2!」 そして森園神社。 文緒・明音・ユーリヤ・心実・クロエ「1!!」 新年を迎え、喜び合う5人。 クロエ「明けまして、おめでとうございま~ス!!」 文緒・明音・ユーリヤ・心実「明けまして、おめでとうございます!」 鈴を鳴らし、願掛けする明音・ユーリヤ・文緒。 続けてクロエと心実も。 心実「クロエさん」 クロエ「?」 心実「この前、何を悩んでいるのか教えて下さいとお願いしましたよね?」 クロエ「ウィ」 心実「もう1つお願い事ができたのですが、いいですか?」 クロエ「? いいですヨ」 心実「私、クロエさんと来年も一緒に『おめでとう』って言いたいです」 クロエ「…もちろんですヨ~!!」 ・ ・ ・ 大きく遅れて合流したエレナ。 エレナ「は~い、撮るわよ~」 タイマーをセットしてカメラから離れる。 そしてすかさず文緒に抱きつく。 文緒「!?」 明音・ユーリヤ・クロエ・心実「!?」 シャッター音。 笑顔の6人がカメラのメモリーに焼きつく。 #center(){&bold(){<終>}}

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: