雄介が小学校時代の恩師の神崎昭二と再会を約束した日。
グロンギ怪人ズ・ザイン・ダが出現し、多くの人々が犠牲になる。
雄介は、神崎先生との再会の代理を桜子に依頼し、ザインに挑む。
しかし雄介が変身したクウガは、怪力のザインに苦戦を強いられる。
ザイン「ゴセパ・ゾバンジャヅサ・ヂバグ」
一条がパトカーで、雄介のもとへと急ぐ。
一条「一条より県警本部。22号の状況は?」
通信『第4号が現れ、小貝川附近の工場で交戦中の模様。現在、詳しい状況を確認中です』
クウガとザインの激闘が続く。
ザイン「ヅギグ・ドゾレザ!」
ザインが突進。クウガはカウンターでキックを決め、ザインが倒れ伏す。
必殺のマイティキックが炸裂──と思いきや、ザインは爆発せずに、平然と立ち上がる。
ザイン「ゴンバベシ・ゴセビパ・ヅグジョグギバギ」
そこへグロンギのメ・ビラン・ギが割って入り、ザインともみ合いになる。
ザイン「ビラン!? ゴセパ・ゲゲルゾ・ギデギ・ザベザ!」
ビラン「ゴラゲビ・ゾン・ギバブパ・バギ!」
ザイン「ゴセパ・ボンゴセグ・ビレス!」
ビラン「ガゲヅバ! ボギ!」
ビランがザイン共々、眼下の川に落ち、水中に姿を消す。
変身を解いた雄介のもとに、一条が駆けつける。
一条「五代!」
雄介「すみません。戦ってる途中に、別の奴が割り込んで来て、両方ともここから落ちました」
一条「別の奴?」
雄介「でも、そいつは何か、22号の邪魔しに来ただけって感じだったから、取敢えず倒すのは22号だと思います」
一条「川の下流を調べてみるか」
雄介「でも、どうやって倒せば……」
神奈川県 山北町内 谷峨駅前 01:38 p.m. |
桜子がバス停のベンチで、バスを待つ。隣に、神崎が腰を下ろす。
鞄の「神崎」の名が書かれた名札に、桜子が気づく。
桜子「あの……」
神崎「えっ?」
桜子「神崎先生、ですよね?」
おやっさんと奈々が洗い物をしているところへ、みのりが来店する。
みのり「こんにちは」
おやっさん「おぅ、みのりっち!」
奈々「いらっしゃいませ!」
みのり「あ…… どうも」
おやっさん「今日からバイトすることになった、俺の姪っ子」
奈々「朝比奈奈々です。よろしくお願いします!」
みのり「五代雄介の妹の、みのりです」
奈々「えっ、妹はん?」
みのり「お兄ちゃん、ちょくちょくお店抜けると思うけど、よろしくね」
奈々「バッチリです! 私、五代雄介ファンクラブ、会員第1号ですから」
おやっさん「……いつの間に?」
奈々「ここんとこのホクロ、キュートやもん! あ、でも、ちょくちょく抜けるということは、やっぱモテモテやからですか?」
みのり「違う違う。今日は、小学校の時の先生に逢いに行ったの」
奈々「そうですか? あぁ、良かったぁ!」
おやっさん「何だかねぇ~」
みのり「ちゃんと逢えてるかなぁ、お兄ちゃん……」
ザインが人間態に戻り、川から姿を現す。
ザイン「ジャラ・ギジャガデデ・ビラン!」
頭上では、トラックがアイドリングし、排ガスを吹かしている。
ザイン「ヅギン・ゲロボザ!」
小学校へと向かいバスの車内、神崎と桜子。
神崎「そうですか、五代の代りに」
桜子「はぁ、何だか、そういうことになっちゃって」
神崎「ははっ。相変らずなんだなぁ、あいつ」
桜子「フフ……」
神崎「来ますかね、あいつ」
桜子「えっ?」
神崎「来てくれると、嬉しいんだが……」
一条「五代雄介! 川の流域に絞って、22号の捜索が広範囲に開始されている。発見されるのも、時間の問題だろう」
雄介「……そうですか」
一条「そう言えば、今日は大事な人に逢うんじゃなかったのか?」
雄介「はい、その通りです」
一条「そうか……」
雄介「でも、大丈夫。間に合わなくても、約束は果たせますから」
雄介は笑顔で、サムズアップを見せる。
雄介「ところで一条さん。俺、ちょっと別行動していいですか?」
一条「えっ?」
雄介「さっき戦ってるとき、とっさにキックを決めたんです。けど、奴はかなり強くて、通じなかった。いつもみたいに、足も熱くなったのに」
一条「……」
雄介「キックはキックでも、もっと強いキックじゃなきゃ倒せないのかなって。それをずっと考えてて、何とか答が出そうなんです」
一条「答?」
雄介「はい。俺の107番目の技を応用すれば、もしかして、って」
一条「──わかった」
雄介「じゃあ、奴が見つかったら連絡してください。すぐ行きますから」
神崎「しかし、あいつ、よく憶えてたなぁ……」
桜子「えっ?」
神崎「実は私は今日、たまたまこれを見つけましてね」
神崎が鞄から、メッセージ帳を取り出す。
神崎「13年前、五代が小学校を卒業するときに書いたものです」
雄介のページには、今日この日に、神崎に約束の結果を見せると書かれている。
桜子「あの、たまたま、これを見つけてなかったら?」
神崎「当然、来なかったでしょうね」
桜子「そんな……」
神崎「いや、失礼」
桜子「……先生も、それでよく、いらっしゃる気になれましたね。普通、来ないですよ。私なら、絶対来るわけないって思っちゃう」
神崎「フフ、それが良かったんです」
桜子「えっ?」
神崎「願掛けするには、ちょうど良かった」
バラのタトゥの女ことラ・バルバ・デが、ズ・ゴオマ・グを従え、廃工場に潜むグロンギ、ヌ・ザジオ・レのもとを訪れる。
バルバ「ゼビダバ?」
ザジオ「ギギジョグ」
ゴオマ「ガギショパ・ゴセビ・ヅバパゲデブセ!」
バルバ「ボシバギ・ゴドボザ」
雄介が、木々の立ち並ぶ中に到着する。
神崎と桜子が、バスを降りる。
神崎「こっちです」
桜子「あの、願掛けって?」
神崎「もうすぐです。その坂を上ると、小学校ですよ」
雄介の母校、立花小学校。校舎は金網で封鎖され、じきに取り壊されるとの看板がある。
桜子「取り壊し……?」
神崎「ここも、無くなってしまうのか…… 私が信じていた物は、どうやら消えてゆく運命のようです。五代に連絡、とれませんか?」
桜子「えっ?」
神崎「これでは、帰るしかないでしょう」
桜子「……この門、乗り越えてみませんか?」
神崎「えっ?」
桜子「五代くん、絶対来ますから」
パトカーの一条に、警視庁捜査一課の杉田刑事からの通信が入る。
杉田『一条、聞こえるか!?』
一条「はい、一条です」
杉田「各県警からの情報を総合すると、被害に遭った大型車はすべて、アイドリング中だってことがわかった」
一条「アイドリング中?」
杉田「あぁ。その音が22号を興奮させ、犯行に結びつかせた可能性が高い。すでに各方面には、大型車のアイドリングをやめるよう、指示を出した。これで取敢えず、被害は減るだろう。後は奴を、どうやっつけるかだ」
一条「そうですね」
雄介は地面に棒で絵を描きつつ、イメージトレーニングをしている。
雄介「違うなぁ…… ──これだ!」
立花小学校の教室。
桜子「五代くん、この教室で学んだんですね」
神崎「かつてはそこに、子供たちの明るい声がありました。皆と遊ぶ五代の人懐っこい笑顔を、今も覚えています」
神崎が、雪の残った校庭を見つめる。子供たちの笑い声が、耳に甦る。
神崎「まさか、来るはずはない── そう思いながら、私はあの笑顔に、どこか期待していたのかもしれない」
桜子「えっ?」
神崎「私はね、教育というものが、わからなくなったんです。上からは『子供たちにゆとりを与えろ』と言われる。親たちからは『成績を上げろ』と言われる。子供たちは『別に未来に期待はない』と言う。だったら私は、子供たちに何を与えたらいいのか? それとも、与えるものなんてないのか…… 何のために教師でいるのか、わからなくなりました。もう教師を辞めようかとさえ、思ったりしました…… だから、願掛けをしたんです。もしも今日のことを五代が憶えていて、連絡などしなくても来てくれたなら、私が教師でいた意味が、少しでもあるんだと考えて、このまま続けてみよう。その代り、五代に逢えなかったら…… 教師を辞めよう。フフ、教師らしくない、いい加減な考えです」
桜子「たまには…… いいんじゃないですか? 五代くん、先生に逢うのを、本当に楽しみにしていました。すごく、尊敬しているんだと思います」
神崎「私なんかの、どこが良かったのか…… 今の私は、それが知りたい」
雄介が、キックの強化の練習を始める。
立ち木の枝に標的を定め、全力で突進、大ジャンプ、空中で1回転し、キックを決める。
一条の運転するトラックが1本道に停まり、アイドリングで排ガスを吹かし始める。
一条「五代雄介、今どこだ?」
雄介「一条さん!?」
一条「22号を、俺の運転している車におびき寄せる。君の方はどうだ? ──うわぁっ!」
雄介「一条さん!? どうしたんですか、一条さん!? 一条さん、どうしたんですか!?」
一条の目の前にザインが現れる。怪人態に変身し、窓ガラスを割り、彼を引きずりおろしにかかる。
桜子「五代くん、今頃きっと、2000番目の技を使って、一生懸命やってると思います」
神崎「2000の技…… そうかぁ!」
神崎が再び、メッセージ帳を目にする。
神崎「約束というのは、そのことです! 2000年までに、2000の技を身につける。あいつは確かに、そう約束しました!」
桜子「じゃあ、守ったんですね! 五代くん」
神崎「ハハッ…… とんでもない奴だぁ!」
桜子「たぶん、それができたのは、みんなの笑顔のために頑張りたいって、いつも五代くんが思ってきたからだと思います」
神崎「……」
桜子「これ、知ってますか?」
桜子が、サムズアップをして見せる。
神崎「これは…… これは……!」
桜子「どうしたんですか?」
神崎が、雄介の担任だったときを思い返すかのように、教壇に立つ。
神崎「五代雄介、こういうのを知っているか?」
神崎が、教室の雄介に見せるように、サムズアップを示す。
神崎「古代ローマで、満足できる、納得できる行動をしたものにだけ与えられる仕草だ」
一条を襲うザインのもとに、雄介が駆けつける。
神崎「お前も、これにふさわしい男になれ!」
雄介がトライチェイサーで体当たりし、ザインをトラックから振り落とす。
神崎「お父さんが亡くなって、確かに悲しいだろう。でもそんなときこそ、お母さんや妹の笑顔のために頑張れる男になれ」
雄介「変身!」
神崎「いつでも誰かの笑顔のために頑張れるって、すごく素敵なことだと思わないか!? 先生は、先生は…… そう、思う」
神崎のメッセージ帳には、雄介の「先生の言葉に大かんどー」のメッセージ。
その文面に、神崎の涙の滴がポタポタと落ちる。
桜子「先生……」
雄介がクウガに変身し、怪力を誇るザインに、トライチェイサーのアクションで挑む。
ザインが腕力にものをいわせて、クウガを引きずりおろし、格闘となる。
クウガのパンチでザインが吹っ飛び、間合いが空く。
ザインが突進してくる。クウガもザインを目掛けて疾走する。
クウガが大ジャンプから空中回転し、渾身のキックを繰り出す。
クウガ「でりゃああぁぁ──っっ!!」
強化されたマイティキックが炸裂──!!
ザイン「グワアアァァ──ッッ!!」
ザインが爆発四散し、最期を遂げる。
とうに陽の落ちた中、神崎と桜子が校舎を出る。神崎がメッセージ帳を眺める。
神崎「これを見つけて、本当に良かった」
桜子「えぇ!」
神崎「こんなものありましたよ。あいつらしいでしょう?」
自筆の雄介の似顔絵。「だいじょーぶ」とサムズアップを決めている。
桜子「フフ、五代くんですね。フフッ」
神崎「本当に、五代雄介です。ハハハ!」
笑い合う2人に、バイクの音が近づいてくる。
桜子「五代くん……!」
雄介がトライチェイサーでようやく、駆けつける。
雄介が神崎の姿を見つけ、笑顔を携えて、夢中で駆け出す。
校門を乗り越え、転倒しそうになりつつも、白い息を弾ませながら神崎へと駆ける。
恩師と教え子の、13年ぶりの再会。
雄介と神崎が互いにサムズアップを決め、満面の笑顔を交わす──
最終更新:2018年08月24日 12:52