仮面ライダークウガの第12話

雄介が小学校時代の恩師の神崎昭二と再会を約束した日。
グロンギ怪人ズ・ザイン・ダが出現し、多くの人々が犠牲になる。
雄介は、神崎先生との再会の代理を桜子に依頼し、ザインに挑む。
しかし雄介が変身したクウガは、怪力のザインに苦戦を強いられる。

ザイン「ゴセパ(俺は)ゾバンジャヅサ(他の奴らとは)ヂバグ(違う)


茨城県 つくば市 谷田部 01:10 p.m.

一条がパトカーで、雄介のもとへと急ぐ。

一条「一条より県警本部。22号の状況は?」
通信『第4号が現れ、小貝川附近の工場で交戦中の模様。現在、詳しい状況を確認中です』


クウガとザインの激闘が続く。

ザイン「ヅギグ(次が)ドゾレザ(とどめだ)!」

ザインが突進。クウガはカウンターでキックを決め、ザインが倒れ伏す。
必殺のマイティキックが炸裂──と思いきや、ザインは爆発せずに、平然と立ち上がる。

ザイン「ゴンバベシ(そんな蹴り)ゴセビパ(俺には)ヅグジョグギバギ(通用しない)

そこへグロンギのメ・ビラン・ギが割って入り、ザインともみ合いになる。

ザイン「ビラン!? ゴセパ(俺は)ゲゲルゾ(ゲームを)ギデギ(している)ザベザ(だけだ)!」
ビラン「ゴラゲビ(お前に)ゾン(その)ギバブパ(資格は)バギ(無い)!」
ザイン「ゴセパ(それは)ボンゴセグ(この俺が)ビレス(決める)!」
ビラン「ガゲヅバ(させるか)! ボギ(来い)!」

ビランがザイン共々、眼下の川に落ち、水中に姿を消す。

変身を解いた雄介のもとに、一条が駆けつける。

一条「五代!」
雄介「すみません。戦ってる途中に、別の奴が割り込んで来て、両方ともここから落ちました」



EPISODE 12 恩 師



一条「別の奴?」
雄介「でも、そいつは何か、22号の邪魔しに来ただけって感じだったから、取敢えず倒すのは22号だと思います」
一条「川の下流を調べてみるか」
雄介「でも、どうやって倒せば……」


神奈川県 山北町内 谷峨駅前 01:38 p.m.

桜子がバス停のベンチで、バスを待つ。隣に、神崎が腰を下ろす。
鞄の「神崎」の名が書かれた名札に、桜子が気づく。

桜子「あの……」
神崎「えっ?」
桜子「神崎先生、ですよね?」


文京区内 ポレポレ 01.46 p.m.

おやっさんと奈々が洗い物をしているところへ、みのりが来店する。

みのり「こんにちは」
おやっさん「おぅ、みのりっち!」
奈々「いらっしゃいませ!」
みのり「あ…… どうも」
おやっさん「今日からバイトすることになった、俺の姪っ子」
奈々「朝比奈奈々です。よろしくお願いします!」
みのり「五代雄介の妹の、みのりです」
奈々「えっ、妹はん?」
みのり「お兄ちゃん、ちょくちょくお店抜けると思うけど、よろしくね」
奈々「バッチリです! 私、五代雄介ファンクラブ、会員第1号ですから」
おやっさん「……いつの間に?」
奈々「ここんとこのホクロ、キュートやもん! あ、でも、ちょくちょく抜けるということは、やっぱモテモテやからですか?」
みのり「違う違う。今日は、小学校の時の先生に逢いに行ったの」
奈々「そうですか? あぁ、良かったぁ!」
おやっさん「何だかねぇ~」
みのり「ちゃんと逢えてるかなぁ、お兄ちゃん……」


ザインが人間態に戻り、川から姿を現す。

ザイン「ジャラ(邪魔)ギジャガデデ(しやがって)・ビラン!」

頭上では、トラックがアイドリングし、排ガスを吹かしている。

ザイン「ヅギン(次の)ゲロボザ(獲物だ)!」


小学校へと向かいバスの車内、神崎と桜子。

神崎「そうですか、五代の代りに」
桜子「はぁ、何だか、そういうことになっちゃって」
神崎「ははっ。相変らずなんだなぁ、あいつ」
桜子「フフ……」
神崎「来ますかね、あいつ」
桜子「えっ?」
神崎「来てくれると、嬉しいんだが……」


つくば市 高良田 02:07 p.m.

一条「五代雄介! 川の流域に絞って、22号の捜索が広範囲に開始されている。発見されるのも、時間の問題だろう」
雄介「……そうですか」
一条「そう言えば、今日は大事な人に逢うんじゃなかったのか?」
雄介「はい、その通りです」
一条「そうか……」
雄介「でも、大丈夫。間に合わなくても、約束は果たせますから」

雄介は笑顔で、サムズアップを見せる。

雄介「ところで一条さん。俺、ちょっと別行動していいですか?」
一条「えっ?」
雄介「さっき戦ってるとき、とっさにキックを決めたんです。けど、奴はかなり強くて、通じなかった。いつもみたいに、足も熱くなったのに」
一条「……」
雄介「キックはキックでも、もっと強いキックじゃなきゃ倒せないのかなって。それをずっと考えてて、何とか答が出そうなんです」
一条「答?」
雄介「はい。俺の107番目の技を応用すれば、もしかして、って」
一条「──わかった」
雄介「じゃあ、奴が見つかったら連絡してください。すぐ行きますから」


神崎「しかし、あいつ、よく憶えてたなぁ……」
桜子「えっ?」
神崎「実は私は今日、たまたまこれを見つけましてね」

神崎が鞄から、メッセージ帳を取り出す。

神崎「13年前、五代が小学校を卒業するときに書いたものです」

雄介のページには、今日この日に、神崎に約束の結果を見せると書かれている。

桜子「あの、たまたま、これを見つけてなかったら?」
神崎「当然、来なかったでしょうね」
桜子「そんな……」
神崎「いや、失礼」
桜子「……先生も、それでよく、いらっしゃる気になれましたね。普通、来ないですよ。私なら、絶対来るわけないって思っちゃう」
神崎「フフ、それが良かったんです」
桜子「えっ?」
神崎「願掛けするには、ちょうど良かった」


バラのタトゥの女ことラ・バルバ・デが、ズ・ゴオマ・グを従え、廃工場に潜むグロンギ、ヌ・ザジオ・レのもとを訪れる。

バルバ「ゼビダバ?(出来たか)
ザジオ「ギギジョグ(いいよ)
ゴオマ「ガギショパ(最初は)ゴセビ(俺に)ヅバパゲデブセ(使わせてくれ)!」
バルバ「ボシバギ(懲りない)ゴドボザ(男だ)


つくば市 沼田 02:37 p.m.

雄介が、木々の立ち並ぶ中に到着する。


山北町内 立花小学校前 02:48 p.m.

神崎と桜子が、バスを降りる。

神崎「こっちです」
桜子「あの、願掛けって?」
神崎「もうすぐです。その坂を上ると、小学校ですよ」

雄介の母校、立花小学校。校舎は金網で封鎖され、じきに取り壊されるとの看板がある。

桜子「取り壊し……?」
神崎「ここも、無くなってしまうのか…… 私が信じていた物は、どうやら消えてゆく運命のようです。五代に連絡、とれませんか?」
桜子「えっ?」
神崎「これでは、帰るしかないでしょう」
桜子「……この門、乗り越えてみませんか?」
神崎「えっ?」
桜子「五代くん、絶対来ますから」


パトカーの一条に、警視庁捜査一課の杉田刑事からの通信が入る。

杉田『一条、聞こえるか!?』
一条「はい、一条です」

千葉県内 野田警察署 03:18 p.m.

杉田「各県警からの情報を総合すると、被害に遭った大型車はすべて、アイドリング中だってことがわかった」
一条「アイドリング中?」
杉田「あぁ。その音が22号を興奮させ、犯行に結びつかせた可能性が高い。すでに各方面には、大型車のアイドリングをやめるよう、指示を出した。これで取敢えず、被害は減るだろう。後は奴を、どうやっつけるかだ」
一条「そうですね」


雄介は地面に棒で絵を描きつつ、イメージトレーニングをしている。

雄介「違うなぁ…… ──これだ!」


立花小学校の教室。

桜子「五代くん、この教室で学んだんですね」
神崎「かつてはそこに、子供たちの明るい声がありました。皆と遊ぶ五代の人懐っこい笑顔を、今も覚えています」

神崎が、雪の残った校庭を見つめる。子供たちの笑い声が、耳に甦る。

神崎「まさか、来るはずはない── そう思いながら、私はあの笑顔に、どこか期待していたのかもしれない」
桜子「えっ?」
神崎「私はね、教育というものが、わからなくなったんです。上からは『子供たちにゆとりを与えろ』と言われる。親たちからは『成績を上げろ』と言われる。子供たちは『別に未来に期待はない』と言う。だったら私は、子供たちに何を与えたらいいのか? それとも、与えるものなんてないのか…… 何のために教師でいるのか、わからなくなりました。もう教師を辞めようかとさえ、思ったりしました…… だから、願掛けをしたんです。もしも今日のことを五代が憶えていて、連絡などしなくても来てくれたなら、私が教師でいた意味が、少しでもあるんだと考えて、このまま続けてみよう。その代り、五代に逢えなかったら…… 教師を辞めよう。フフ、教師らしくない、いい加減な考えです」
桜子「たまには…… いいんじゃないですか? 五代くん、先生に逢うのを、本当に楽しみにしていました。すごく、尊敬しているんだと思います」
神崎「私なんかの、どこが良かったのか…… 今の私は、それが知りたい」


雄介が、キックの強化の練習を始める。

立ち木の枝に標的を定め、全力で突進、大ジャンプ、空中で1回転し、キックを決める。


茨城県内 封鎖地区 03:44 p.m.

一条の運転するトラックが1本道に停まり、アイドリングで排ガスを吹かし始める。

一条「五代雄介、今どこだ?」
雄介「一条さん!?」
一条「22号を、俺の運転している車におびき寄せる。君の方はどうだ? ──うわぁっ!」
雄介「一条さん!? どうしたんですか、一条さん!? 一条さん、どうしたんですか!?」

一条の目の前にザインが現れる。怪人態に変身し、窓ガラスを割り、彼を引きずりおろしにかかる。


桜子「五代くん、今頃きっと、2000番目の技を使って、一生懸命やってると思います」
神崎「2000の技…… そうかぁ!」

神崎が再び、メッセージ帳を目にする。

神崎「約束というのは、そのことです! 2000年までに、2000の技を身につける。あいつは確かに、そう約束しました!」
桜子「じゃあ、守ったんですね! 五代くん」
神崎「ハハッ…… とんでもない奴だぁ!」
桜子「たぶん、それができたのは、みんなの笑顔のために頑張りたいって、いつも五代くんが思ってきたからだと思います」
神崎「……」
桜子「これ、知ってますか?」

桜子が、サムズアップをして見せる。

神崎「これは…… これは……!」
桜子「どうしたんですか?」

神崎が、雄介の担任だったときを思い返すかのように、教壇に立つ。

神崎「五代雄介、こういうのを知っているか?」

神崎が、教室の雄介に見せるように、サムズアップを示す。

神崎「古代ローマで、満足できる、納得できる行動をしたものにだけ与えられる仕草だ」

一条を襲うザインのもとに、雄介が駆けつける。

神崎「お前も、これにふさわしい男になれ!」

雄介がトライチェイサーで体当たりし、ザインをトラックから振り落とす。

神崎「お父さんが亡くなって、確かに悲しいだろう。でもそんなときこそ、お母さんや妹の笑顔のために頑張れる男になれ」

雄介「変身!」

神崎「いつでも誰かの笑顔のために頑張れるって、すごく素敵なことだと思わないか!? 先生は、先生は…… そう、思う」

神崎のメッセージ帳には、雄介の「先生の言葉に大かんどー」のメッセージ。
その文面に、神崎の涙の滴がポタポタと落ちる。

桜子「先生……」


雄介がクウガに変身し、怪力を誇るザインに、トライチェイサーのアクションで挑む。
ザインが腕力にものをいわせて、クウガを引きずりおろし、格闘となる。
クウガのパンチでザインが吹っ飛び、間合いが空く。

ザインが突進してくる。クウガもザインを目掛けて疾走する。
クウガが大ジャンプから空中回転し、渾身のキックを繰り出す。

クウガ「でりゃああぁぁ──っっ!!」

強化されたマイティキックが炸裂──!!

ザイン「グワアアァァ──ッッ!!」

ザインが爆発四散し、最期を遂げる。


山北町内 立花小学校 09:23 p.m.

とうに陽の落ちた中、神崎と桜子が校舎を出る。神崎がメッセージ帳を眺める。

神崎「これを見つけて、本当に良かった」
桜子「えぇ!」
神崎「こんなものありましたよ。あいつらしいでしょう?」

自筆の雄介の似顔絵。「だいじょーぶ」とサムズアップを決めている。

桜子「フフ、五代くんですね。フフッ」
神崎「本当に、五代雄介です。ハハハ!」

笑い合う2人に、バイクの音が近づいてくる。

桜子「五代くん……!」

雄介がトライチェイサーでようやく、駆けつける。

雄介が神崎の姿を見つけ、笑顔を携えて、夢中で駆け出す。
校門を乗り越え、転倒しそうになりつつも、白い息を弾ませながら神崎へと駆ける。


恩師と教え子の、13年ぶりの再会。

雄介と神崎が互いにサムズアップを決め、満面の笑顔を交わす──


(続く)

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2018年08月24日 12:52