宇宙で戦い破壊される、二大勢力の量産型MS。
一つのコロニーの独立運動に端を発した紛争が、地球全土を巻き込む全面戦争となったのだ。 |
地球に攻め込む「宇宙革命軍」は、数多くのコロニーを地球に落とそうとしていた。
それを阻止しようとする「地球連邦軍」のガンダムX部隊。
戦争が膠着状態となって8ヶ月……宇宙革命軍は、地球に甚大な被害を及ぼすコロニー落とし作戦を切り札に、地球連邦政府に対して降伏を迫った。 |
宇宙革命軍のMSに一斉攻撃するガンダムエアマスター、ガンダムレオパルドの部隊。
これに対して連邦軍は、極秘に開発していた決戦兵器、MS・ガンダムを導入。徹底抗戦の構えをとった。 |
そんな中、ガンダムX部隊がコロニー迎撃のためサテライトキャノンを放つ準備をする。
月面の太陽光発電施設からスーパーマイクロウェーブが受信され、コロニーに向けて全機が一斉にサテライトキャノンを放つ……。
だが……この一撃が人類史上最大の悲劇の引き金となった。 |
連邦軍のガンダムに想定外の脅威を感じた革命軍は、全てのコロニーを味方の犠牲も厭わず、地球に向けて全速前進させる。
勝利を焦った革命軍は作戦を強行……連邦軍も一歩も退くことなくこれに応戦。 戦いは泥沼となり、ついには人類全ての故郷である地球に、致命的なダメージを与えてしまった。 |
戦いの中、全てのコロニーは地球に落ちた。焼き尽くされる地球。
百億を誇った人口のほとんどは失われた。もはや、戦争に勝ちも負けもなかった。 |
大破寸前のガンダムXが命懸けでライフルを放ち、革命軍のMS・フェブラルを破壊するものの、爆発間際に放たれた攻撃によりガンダムXの頭部も破壊され相打ちとなる。
A.W.0015年、荒廃した地球。
コロニー落としの地球への影響は著しかった。 環境の激変や生態系の破壊が起こり、僅かに生き残った人々の安息はなかった。 だが、それでも人は生き続けた。いや……生きねばならなかった。 |
砂漠。あちこちに兵器の残骸が転がっている。
戦後15年、地球環境はようやく安定期に入った。人々は来るべき時代に望みを託して、今日を必死で生きている……。 |
突き刺さった戦艦の残骸周辺にある市街地、かつての戦いの傷跡を抱えながらも賑やかな人々。
その中で自称「戦争の生き残りのニュータイプ」が自分の過去を客に演説している。
偽ニュータイプA「前の戦争で超能力を使う兵隊がいたという噂を聞いたことがあるだろう!? あれは根も葉もない流言・デマのたぐいかと言うとそうではない! 実はこの男こそ、超能力兵士の生き残り。かの戦いでは自分と2人で15隻の戦艦を沈めたと言うのだから間違いない! 人は我らのことを、赤い二連星と呼んだ」
偽ニュータイプB「私こそ、宇宙時代を迎えた人類の進化すべき姿」
偽ニュータイプA「この混迷の時代、我らの力こそ必要なのである! どうだろう、我々を雇うなら今しかないぞ!」
客A「なんだぁ? ただの職探しかよ」
客たちの嘲笑と罵声が響く。
偽ニュータイプA「何を言う! 今はこうしてなりは汚いが、いざとなれば……」
偽ニュータイプAが怒る中、無法者のクロッカが操るMS・ジェニスが現れ攻撃し始める。
偽ニュータイプA「MSだ!」
クロッカ「へへへ、今日はいい仕事が出来そうだぜ」
住民「くそっ、野党め!」
人々が砲台で攻撃するとジェニスはよろける。
クロッカ「何も皆殺しにしようってんじゃねえんだ。そっちがその気なら容赦しねえぜ!」
ジェニスは抵抗する住民を攻撃し砲台を破壊、怯える人々。
住民「おい、どうにかしろよ! 赤い何とかなんだろ!?」
偽ニュータイプこと赤い二連星は怯え逃げる。
銃などの武器で抵抗する住民ら。
武装民A「くそっ……街もここまでやっと来たってのによ! MSを使える奴はなんでもありかよ!」
武装民B「コックピットを狙えば……喰らえ!」
武装民Bはジェニスめがげてロケット砲を発射するものの、装甲を破れない。
武装民B「しまった!」
武装民Bが狙われる寸前、マントを被った男……ガロード・ランが咄嗟に走り閃光弾を投げる。
クロッカ「く、くそっ! メインカメラが……野郎、一体誰が!?」
ガロード「俺だよ」
クロッカを怯ませた隙にワイヤーガンでコクピットまで登り、ガロードはジェニスのハッチを開ける。
ガロード「へへっ、いわゆるホールドアップってヤツ?」
クロッカに銃を向けるガロード。
クロッカ「きっ、貴様! いつの間に!?」
ガロード「おっと、動かない動かない! MSが俺を握り潰すより、こいつを撃つ方が速いよ? きっと」
銃を向けられ、冷や汗を流すクロッカ。
クロッカ「き、気に入ったぜ小僧。なんだったら俺の仲間にしてやっても……」
ガロード「寝ぼけたこと言ってないで。ホールドアップだってば!」
クロッカはガロードの手により追い出され、怒った住民たちに袋叩きにされた。
クロッカ「た、たっ……助けてくれ~!」
武装民A「やるじゃねえか、あのガキ」
ガロード「へへへ……ぶいっ!」
ガロードが自分を誇示する中、誰かが呼ぶ。
男「ガロード・ランさんですか?」
ガロード「はっ?」
男「やはりそうだ。私はライク・アント、あなたを探していた者です」
ガロード「仕事の話?」
ライク「はい!」
ガロード「だったら後にして! まずはこいつを金に替えるのが先だ」
クロッカから奪ったジェニスは民間に引き取られた。
ガロードとライクはホテルで話す。
ライク「無傷で手に入れたMSを流れメカ屋に売るとは、もったいないですな」
ガロード「でもないよ? 結構いい値で売れるしね」
ライク「お金のことではありません。あなたはMSのことを熟知していらっしゃる、パイロットとしてもかなりの腕をお持ちのはずだ」
ガロード「お断りだね。確かにMS乗りはいい商売だけど、代わりに命も狙われるでしょ? ま、MSは戦争を起こした最高のお宝だからね。MS乗り同士が相手のMSを狙って戦うって言うんだろ? あんなものに乗ってたら、命がいくつあっても足んないよ。それに……」
一瞬だけ顔を曇らせるガロードだが、すぐに元の調子に戻って話を切り出す。
ガロード「さてと! 仕事の話、しよっか」
ライク「はい」
ライクはデバイスらしきものをガロードに渡す。美しい少女の写真が写っている。
ライク「深い理由は言いますまい、尋ねられても答えられません。ただ、あなたの腕を見込んで、その写真の人物……ティファ・アディールと言いますが、彼女を助け出してほしいのです」
ガロード「助けるって?」
ライク「彼女は『バルチャー』どもに奪われてしまったのです」
バルチャーとは「禿鷹」の意味である。だがこの時代には、もう一つ別の意味があった。 大戦中の軍事施設跡を巡り、兵器の残骸や電子部品を漁っては、人々に売りさばく者たち。人々は彼らを禿鷹になぞらえて、バルチャーと呼んだ。 |
陸上戦艦・フリーデン。
そのブリッジにはリーダーのジャミル・ニート、操縦員のシンゴ・モリ、通信員のトニヤ・マームとサラ・タイレルがいた。
シンゴ「追手はどうにか振り切ったようです」
ジャミル「うむ。後は頼む」
シンゴ「はっ!」
席を立つジャミル。
トニヤ「女の子1人さらうのに、随分と手間かかったわよね」
サラ「キャプテン、何が目的であの少女を?」
トニヤ「さあ?」
ジャミルは収監されて眠っているティファを見ていた。
ティファは夢を見ている。
月を背に立つガンダムXがティファに手を伸ばした時、ティファは目覚めた。
夜の月を見るティファ。
停泊しているフリーデン。
メカマンのナインは給水のためホースを小池に入れる。
ナイン「よーし、OKだ! ポンプを動かしてくれ!」
クルー「了解!」
サラ「みんな急いで! このままじゃ、朝までにセントランジェに着けないわ」
そんな中、依頼を受けたガロードはフリーデンに忍び込んでいた。
パイプを登り中へ潜入する中、突然、シャワールームに入っていたトニヤが出てくる。
トニヤ「ちょっと! 給水まだ終わんないの!? シャワーの途中なんだから急いでよ!」
トニヤはガロードに気づかないままシャワールームへ戻り、ガロードはスケベな笑みを浮かべつつも安堵する。
ガロード「ふぅ~、ちょっと美味しかったかもしんないなァ。そうだ、美味しいついでに……」
ガロードは別の部屋の鍵を開け忍び込み、その中の金庫らしき箱に目を付ける。
ガロード「へへっ、なんだってバルチャーたちだもん。きっと金目のもんが……」
ガロードはハッキング装置を金庫にかざし解錠する。
ガロード「よーしっ!」
金庫を開けると、中には銃のような装置が置かれていた。
ガロード「なんだ、こりゃ?」
ガロードはそれを持つ。
ガロード「MSのコントロールユニット? ま、いいか、手ぶらよりましだし」
ガロードは船内でティファを探す中、人に気づき咄嗟に死角に隠れる。
シンゴ「そろそろ出発だ。総員準備!」
ガロード「まずいな……急がないと。はっ……」
その時、どこかから歌声が聞こえてきた。歌の聞こえる方を目指すガロード。
そこはティファのいる独房だった。ガロードは中へ入る。
ガロード「あのぉ……」
怯えるティファ。
ガロード「いやー、お、俺、そのぉ…… ちっ……違うんだ! ……って、何が違うんだ? あれ? 俺何言ってんだ!? あ、あの、だから…… そう! 俺、助けに来たんだ!」
ガロードは恥ずかしげに言うが、やがて真剣な面持ちでもう一度告げる。
ガロード「本当に、助けに来たんだ」
ティファの脳裏にガンダムXのビジョンが写る。
ティファ「待って……いました」
フリーデンが動き始めた。
シンゴ「メインエンジン始動! フリーデン、発進します」
サラ「待って! 4番ハッチ、開いたままです」
ジャミルが監視カメラのモニターを開くと、そこにはバギーを盗んでフリーデンから逃げたガロードとティファが映っていた。
サラ「8時方向から高熱源体接近!」
そんな中、無法者が搭乗するMS群がフリーデンを狙い攻撃してくる。
トニヤ「MSです!」
ジャミル「フリーデン、急速発進」
シンゴ「はっ!」
フリーデンが攻撃を逃れる中、ガロードはティファを連れバギーで走る。
ガロード「バルチャー同士の抗争……まっ、こっちに取っちゃ好都合だけどね。しっかり捕まってろよ!」
ガロードが所定の場所へ到着すると、ライクがいた。
ライク「流石ですな、時間もぴったりだ」
ガロード「仕事だもんね。さあ、ティファ……おっ?」
ティファはライクを見るなり怯え、震える。
ガロード「どうしたんだ?」
ライク「さあ、ティファ、こっちにおいで……」
ガロード「おい、どうしたんだよ?」
ライク「何をしている? こっちへ来るんだ」
ティファ「いやーっ!!」
ガロード「……えっ!?」
ライク「早く降りるんだ!」
ライクの豹変に恐怖の叫びをあげるティファ。ガロードはバギーで逃走する。
ライク「待てーっ!」
ガロード「これでいいんだな、ティファ!?」
ティファは肯定の頷きをする。
ガロード「ま、しゃーねぇーか。後はなるようになれだ!」
一方、ティファを逃したライクは無線で追手を要請していた。
ライク「緊急時代だ! 本社に連絡して、MSを回してくれ! えっ、バルチャー? そっちはいいんだ! そう大至急だ!」
バギーで逃げ続ける2人。
ガロード「この道でいいんだな?」
ティファは再び頷く。
ガロード「家があるのか?」
ティファは無言で否定する。
ガロード「それじゃ……」
ティファ「大切な、力」
ガロードがその言葉の意味を尋ねようとした時、ライクが呼んだ増援MSがバギーを攻撃してきた。
ティファは無理矢理ハンドルを動かして攻撃をかわす。
ガロード「ゲーッ、これってかなりやばいって感じ!?」
ティファ「このまま、まっすぐ」
ガロード「えっ!?」
ティファ「まっすぐ!」
ガロード「んなこと言ったって……」
ミサイルが再び飛んで来たが、直撃は免れた。
ガロード「逸れた!?」
ティファ「左!」
ガロードは命懸けで運転し攻撃を避ける。
ティファ「右!」
追手A「くそっ! あんなバギーの足も止められないなんて!」
追手B「駄目だ! 本気で当てるつもりでないと!」
ライク「先回りだ!」
追手A・B「はっ!」
ガロードは目の前の出来事に驚きを隠せないでいる。
ガロード(すげぇ……一体どうなってるんだ? ……そうか! もしかすっと、皆この力が狙いで……?)
ティファが道の先を指差す。そこには謎の施設があった。
ガロード「あれは?」
ティファ「あの中」
ガロード「わかった……」
ティファ「右!」
再び追手のMSが迫る。
ガロード「なめんなよォ!!」
ガロードは敵の攻撃を振り切り、なんとか施設に到着する。
ライク「ちっ……」
追手A「旧連邦の工場跡のようですか」
追手B「どうします、室長!」
ライク「我々の目的はあくまでティファだ。続け!」
ガロードは施設内を走る。
ガロード「諦めたのか? にしても、ここは? MS工場?」
ティファ「はっ!?」
施設の壁を突き破り追手のMSが出現。
バギーが攻撃の爆風で倉庫内に吹き飛ばされるものの、ガロードは無事であった。
ガロード「いてて……はっ、ティファ!?」
ティファも無事。
ティファがまた指を差す。ガロードがその方向に目を向けると、そこにはガンダムXがあった。
ガロード「こっ、こいつは……ガンダム!?」
ティファはよろけ倒れる。
ガロード「ティファ!」
ガロードはティファを抱える。
ガロード「ティファ……ティファ!?」
追手のMSが2人に迫ってくる。
ガロード「くそっ、あれさえ動けば……! やってみる!」
ガロードは咄嗟にガンダムXに向かって走る。
ガンダムXに驚愕するライク。
ライク「あれは……GX-9900!!」
ガロードはティファを抱え、ガンダムXのコクピットに搭乗する。
しかし、コクピットの中には操縦桿がない。
ガロード「動いてくれよ……あれ!? 操縦桿が!」
追手のMSがガンダムXを攻撃する。
ガロード「うわっ!」
攻撃の振動で弾むガロード。そのショックで、フリーデンから盗んだ銃らしき装置がポケットから吹き飛ぶ。
その装置……Gコントローラーに目を向けるガロード。
追手A「なんて装甲だ! ビクともせん!」
ライク「どうせ動けんのだ、取り押さえてコクピットをこじ開けろ!」
追手A・B「はっ!」
ガロードはいちかばちか、Gコントローラーをコクピットに差し込む。
ガロード「これで動いたら、俺神様信じる! どうだぁっ!?」
ガロードの読みは当たり、ガンダムXが起動した。
ガロード「やったぁ! ティファ、俺神様信じる!」
ガンダムXが立ち上がる。
ガロード「立てってんだよォ!!」
ガンダムXの目に光が灯る。
ガロード「よくも今まで追い掛け回してくれたな!」
追手A「喰らえ!」
追手のMSは再びガンダムXを攻撃するものの効かず。
ガロードは叫び声と共に追手の1機・ドートレスを殴り破壊する。
ライク「下がれ!」
追手B「はっ、はい!」
ガロード「待てっ!」
ガロードは追いかけるものの、残り2機のMSの射撃で崩れた岩に閉じ込められてしまった。
ライク「やったか?」
しかし、ガロードの叫び声と共に再びガンダムXが立ち上がる。
ライク「何っ!?」
追手の1機、キャノン砲を装備したドートレス・ウェポンは咄嗟に攻撃するものの、ガンダムXが取り出したビームソードで切り裂かれる。
最後にはライクの乗っていた指揮官機ドートレス・コマンドも破壊された。
ガロード「もう大丈夫だぜ、ティファ!」
ガロードが笑顔で言う。しかし、ティファの表情は晴れない。
ガロード「どうした、ティファ?」
新たな敵・ガンダムレオパルドとガンダムエアマスターが現れたのだ。
ウィッツ「ガンダムタイプか、相手にするには面白すぎるぜ!」
ロアビィ「フ……参ったね、どうも」
ガロード「ガンダム! しかも2機も!」
そしてフリーデンも姿を現す。
ジャミル「月は出ているか?」
クルーらはジャミルの言葉の意味が分からないようだ。
ジャミル「月は出ているかと聞いている!」
敵ガンダム2機に向けビームソードを構えるガンダムX。
その頭上を満月が不穏に照らしていた……。
PREVIEW NEXT EPISODE (次回予告)
ティファを守るため、ガンダムXを手に入れたガロードの前に2体のガンダムと彼らを狙うバルチャーたちが立ち塞がった。 迫り来る無数のMS。 ついにティファは、禁断のシステムを起動させた。
ティファ「あなたに、力を…」
第二話 「あなたに、力を…」 |
最終更新:2017年08月14日 22:26