「ぬわあああああ!!!」
酒場の表に見張りとして立たせていた手下の一人が悲鳴と共に飛んできた。
幾つかのテーブルと、その上に乗っていた酒瓶を派手にぶちまけながらそいつは店内の壁に大穴を開けて動かなくなる。
「なんだぁ!?」
余りの出来事に俺を含む数人の手下が武器を構えて店の入り口に目を向けると。
壊れた扉の先から姿を見せたのは、
クリスガーラス周辺で見られるような白い衣装に身を包んだマント姿の女だ。
その両手にはそれぞれ巨大なバスタードソードが握られている。
(この女…出来る)
俺は瞬時にその強さを認めた。そしてこの女はまだ実力を隠しているとも。
「何者だ…?俺達を狩りに来た冒険者…、では無さそうだが?」
手下達が武器を構えてその女を取り囲んでいるが、とてもどうにか出来る気が一切しない。
動いた瞬間にバスタードソードで両断されるのがオチだろう。手下達もそれを感じ取っているのか、動こうとする者は誰一人いなかった。
「なに、商談だよ」
女は無造作に剣の一本を床に突き刺し、酒瓶を拾うとその中身を飲み干して。
「近々、お前達相手にしたデカい戦があるんだろ?私を雇わないかい?」
「…まずは名前を聞こうか、話はそれからだ」
俺は平静さを装いながら聞く。
場合によっては
ボスを守る為、ここでコイツを消さないといけないだろう。
そうなれば勿論、ここで俺達の命は尽きるかもしれないが…。
女は俺の覚悟を看破したのか、ニヤリと笑って。
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最終更新:2022年12月20日 20:58