第4話 僕はブレ

「やれやれ、こんな警戒心のない冒険者がいるとは…僕は呆れていますよ。」
「…誰なんだあんた一体!」
思わず口に出してしまった。まず礼を言うべきなのに…
「僕はブレと言います。流れの旅人です。」
あ、気にせず答えてくれた。
「…あなたたち、トリナーに行くんでしょう?ここにいるってことは分かりますよ。」
「ああ、そうだが…」
あ、ウレアが返してくれた。
「じゃあ、僕が案内してあげますよ。あなたたちでは少々力不足でしょうから…」
「にぃにを力不足って…!」
「あなたのことも言ってるんですよ、白魔導士さん。」
「なんてこと言うのさ!」
実兄を力不足と言ってると思ってる時点で同じだと思うぞ、アクリ。でも案内してくれるのはいいな。
「まあ、いいさ。案内してくれや」
「それにしても、すごいな。君みたいな子が旅をしてるなんて…」
「ふふ、【相棒】があるので僕みたいな少年でも…」
ん?こいつ、性別騙ってるのか?なんか事情があるのかもな。でも、嘘はよくないなぁ…!
「貴様に男は騙らせねぇっ!」
「!?(こいつ、僕の男装を見破った!?)」
「な!?こいつはどう見ても男だぞ!?」
え、気付いてなかったの?確かに女の体つきしてないし、顔も髪形も少年っぽいけど、性別がわかるとこあるぞ?
「相変わらずすごいねー、クルスー。」
「ふふ、私は気付いてたけどねぇ。」
あ、ブレイズさんも気付いてたんだ。さすがだな。
「あ゙あ゙あ゙あ゙…僕の男装がァ…ほとんど見破られなかった僕の男装がぁぁぁ…男と勘違いされてアブナイお店にも行けたこの僕がァァ…」
あ、なんかすごく落ち込んでる。ごめんね…
「ま、まあいいです。安全も保障しますよ、ついてきてくれませんか?」
ま、悪い奴じゃなさそうだし。
「よし、頼んだ。」
「な、信用するのか!?」
「そーだよ!よくないよ!」
「いや、ふつうに信用していいと思うけどねぇ…」
「じゃあ、行きましょう、付いてきてください。」
「いや、強引!まあ、付いていくけど。」
「な、俺はまだOKとは言ってないぞおおおおお」
「そうだよおおまってえええええ」
「にぎやかでいいこと。」
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この間、自己紹介とかした
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「さ、もう出口ですよ。」
それにしてもこいつは何者だ?やはり、俺と同じ異世界人…?
「よーし、太陽の光です。落ち着きますねー。」
それは素直に同意しとこう。あと、休みたいからそれも伝えておくか。
「ああ、そうだな、少し休みた…」
「ヒャッハー!冒険者がやってきたぞおおお!取るもん取って奴隷として売り飛ばせえええ!!」
!?いきなり盗賊!?つ、疲れてんのに…
「く…このままでは…」
「しっかりして!にぃに!」
ああ、みんなも戦えない状況だ…どうすれば…
「大丈夫です…安全は…保障すると、言ったでしょう?」
ん…?
「さて、掃除の始まりです。」
え、あいつらに銃を向けて…
「はい、一発目です。」
「ぐぁぁぁ!!」
う…撃ちやがった…!人間に容赦なく…!
「休んでる暇はありませんよ。そこの5匹、死んどいてください。」
「「「「「ごぁ!!」」」」」
い、一瞬で5人を…!なんてエイム力とフィジカルだ…!
「後三匹ですか。」
「な、なんなんだこいつはよおおおお!!」
「うるさいですね、死んでください。」
「ぎっ!?」
今度はナイフ!?いつの間に後ろに…?
「そこの一人もですよ。」
「うぐっ!」
さらにあれ、刀身を発射できる発射ナイフか…!どう考えても俺の世界の奴だ…!そうじゃないとあんなの持ってるはずがない!
「畜生!よくも俺の部下を!」
「はい、ホールドアップ。武器を捨てなさい。さっきの銃の弾は撃ち尽くしましたが、もう一丁持ってるんでね。」
「へっ!そんなの信じられるか!死ね…」
「ならはい、ズドン。」
容赦も…なにもねぇよこいつ…
「はい、安全になりました。さ、付いてきてください。町まで案内してあげますよ。」
「…こわいよ、この人…」
「…アクリ、無理はないぞ…」
「あら…」
…返り血を浴びながら…満面の笑みで…!
「何故だ!なぜ人間で、魔物でもない盗賊を殺した!」
つい、出てしまった俺の気持ち。
「襲ってきたからです。自分の命が危ないのに人を殺すのをためらうわけにはいきません。人間でも容赦なく撃ちます。」
「…言ってんだ…」
「?」
「何言ってんだ!ふざけるな!」
「!?どうした、クルス!」
「はは、ふざけてるのはそっちですよ。綺麗ごとで、生きてはいけません。誰もが死なず、誰もを救えるなんて…あり得るはずないじゃないですか。」
「はは…あり得ないかもな。だけどよ…あいつらは、牢屋にぶち込むだけでよかったんじゃねぇか?」
「加減なんてしてられませんよ!これは正当防衛です!僕は正しいのです!」
「過剰防衛!お前の腕なら気絶させて無力化するのも容易だったはずだ!」
「それが命取りなんですよ!人の命を奪うのをためらってたら逆に殺されます!」
…お前が言ってることも正しいな。だけどな…
「お前は…お前のその思考は…俺の敵だ!」
…全ての物を救えるとは思ってない。だけど…俺の傍にいる奴は…敵であろうと…味方であろうと…
「死なせてやらねぇぜ!バーン…ナックル!」
「無茶だ!その体で!死ぬぞ!」
ああ、本当に無茶だ。このままだと確実に死ぬ。
「…あなたのことは本当に気に入っていました。僕の旅の仲間に入れようとも…思ってましたが…仕方ありません。」
…うるせぇよ。
「…へへ…御託はいい。始めようぜぇ…!」
攻撃…開始!!
「食らいやがれ!」
「そんなまっすぐな拳が僕に当たるとでも?」
やっぱりそうか…
「ちっ、フレイムキック!」
「当たりませんよ、正直すぎます。」
想定内だが…これはやはり、きつい戦いになるな。
「こんな形であなたを失いたくない…降参しませんか?」
「黙っ…てろ!」
そういいながら、俺は距離を取り、とある物を取り出す。
…スタートゥでこっそり買っておいた弓だ。
「…それで僕と戦うつもりですか…?呆れましたよ…」
「後悔するなよ………チューニング…アップ!!!」
そういいながら、俺は弓に炎を注ぎ込む。一か八かの賭けだ。これで、弓が燃えてしまったら…考えたくない。
「弓よ!銃となれ!」
俺はそう高らかに叫ぶ…そういうと、炎に包みこまれた弓は…ライフルに、姿を変えていた。
「ど、どういうことなんですか!?」
「ク…クルス…?」
「なに…あれ…」
「面白くなって来たわねぇ…」
風…炎が出せなくなった代わりに…風が…使えるようになっている…!
「俺の銃は、嵐を呼ぶぜ!」
「こんな…ありえません!」
「ありえないことが起こるのも…楽しいじゃねぇかよ!」
「…ふざけないでください!そんなので僕を倒せるとでも?ロクに実戦もしてない素人が?笑わせないでください!」
「へへ…風は…常に俺の方に吹いてるぜ…!」
さ、showtimeと行こうか。
「ほい、まずは一発だぜ。」
「何処に撃ってるんですか?そんなところに撃ったら跳弾で跳ね返りもしませんよ。」
「へへ、風の力を見せてやる。」
俺がちょいと力をかけてやると、銃弾の軌道が変わり、ブレに向かっていく。
「そ、そんな!こんなこと…」
「さすがに避けるねぇ…じゃ、今度はお前に向けて撃つぜ?」
今度は単純に撃ってみる。もちろん、連射だ。
「そ、そんな…こんな…ありえない…!」
「はい、チェックメイト。」
うまく引っかかってくれた。もう、ブレは銃弾に囲まれている。
「そんな…この…ボクが…ありえない…!」
無数の弾丸が…体を貫いた。
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【ブレ目線】
…なぜ体がこんなに重いんだろう。はぁ…
死なせない、とか言ってたのに、僕を殺したんですかね。あの人は。
なんですか、アレ。反則でしょ。負けるわけないと思ったんですけどね…
うーん…家族にも会えないで、転校するはずの学校にもいけないで…僕の人生って、何だったんでしょうか。
17歳で死ぬなんて、絶対地獄に落ちちゃうなぁ…
ん?光?…あれがあの世?いや…あれは…照明?ま…さ…か…
「はぁ…宿屋…生きてます…か…」
あの人が言ってた死なせないっていうのは…本当だったんですね。
「にぃにー!クルスー!ブレちゃん起きたよー!」
かわいいな…健気な感じがする。僕も…昔は…
「はは、やめてよアクリちゃん。僕は君よりは年上だよ。」
「おぉ~。起きた直後にしゃべるなんて、すごいね~。」
「ふふ、仮死状態は…慣れてるからね。」
…本当に、死ぬかと思った。
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【クルス目線】
起きた…か。いろいろ、問いたださないとな。
「おい、ブレ。」
「いきなり…呼び捨てですか。ま、いいですけど。」
「聞きたいことがある。お前は何者だ?」
「…ただの根無し草の旅人ですよ。」
「そうじゃない!お前は…ポータルに吸い込まれたか!?」
「…あなたも…転生者?」
「…やはり、そうか。」
1つ、謎が解けた。こいつも…俺と【同じ】だ。
「…お前の本当の名前は?」
「【十時千歩】…じゅうときせんぽです。」
「…俺は【火理来水】。かりくるすいだ。」
「それでクルスですか…安直ですね。」
「お前の名前の由来は?」
「僕、臆病でして。だから、勇気が欲しくて。だから、ブレイブのブレです。」
「…お前の、あのとにかく襲ってきたやつを殺そうとするのも…」
「臆病だから…です。敵は…死んでないと、安心できないんです。」
…こいつにも…事情が…あるんだな…
「でも…あなたたちに勇気をもらいました。だから…僕を…連れて行って下さい!」
「…OK、一緒に行こうぜ。」
(なんでしょう…この感覚。僕は…この人を…好きに…?)
(この実力の奴が加われば心強い…いい奴だし、捨てても居られないな!)

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次回予告
「この国から、3個ほど国を超えたところに、メルグ国があるんです!僕、美味しい物食べたいです!」
「わかる!」
「食べにいこっ!」
「あ…メルグ国の先の…グリルグゥルデンは危険です…!行かないでくださいね!」
「みんな!いくぜ!」
「ウィンドライフル!」
「新しい武器、投げナイフですよ。スタイリッシュでしょう?」
「負けてられんな!行くぞ中級魔法剣!紅蓮爆斬!」
「癒しは…私の役目だから!」
「これが…消滅魔法よ!」
「だんだん乗ってきたぜ!」
「…やあ、久しぶりじゃん、ブレちゃん。私と、私の国に何の用?」
「ケタさん…僕はあなたを許しません…!」
次回「国・々・転・々」
次回も、心を熱く燃やして!



最終更新:2019年04月23日 01:38