-CROSS 2-


作者:本スレ 1-510様

125 :名無しさん:2011/08/11(木) 20:39:38
本スレ1-510の者です。
本スレ1-710様の作品のその後エピソードうちの子ver(ディオスとダフネ)を
妄想して書かせて頂きましたので、投下させてもらいますー
本スレ1-710様、萌えインスピレーションを授けてくださり本当に感謝です!

えっと、属性表記しておきます
 ・本スレ1-710様の作品(創作してもらうスレ 1-090)を
  お借りした派生二次(三次?)SSです
 ・西洋風ファンタジーっぽいです
 ・創作してもらうスレ 1-090の作品後、エル様シオン様に感化された、物騒なうちの子ペアがダベってるだけ
  リア充羨ましくなんてないんだから!本当なんだから!がテーマです(キリッ
 ・エロ無しシリアス、受け攻めすら確定できてません
 ・本スレ1-710様素敵設定(創作してもらうスレ 1-110)の素敵設定から外れてる可能性ありあり

宜しければ読んでやってくださると嬉しい!です

126 :名無しさん:2011/08/11(木) 20:40:45

夜が更ける。
賓客を迎えた晩餐の後、一通りの儀礼的な遣り取りを終えたディオスは、自室で1人になると、
正装の上着を椅子にかけて伸びをし、無意識の内に凝り固まっていた身体をほぐす。
そして、一つ息を吐く。
このような社交には慣れ親しんでいたが、どうも、今回の客人はいつもとは勝手が違っていた。
それは昼間に行われていた彼らの片割れとダフネによる試合の際にも感じた事であるが、一つには、恐らく文化が違うのだろう。
住まう世界が違うなら、それも当然であろう事ではあるのだが。
(…外交、という概念も違うのだろうか)
2人の客人の様子を思い浮かべながら、ディオスは考える。

一国の王と、他国の王位継承者という関係にありながら、2人はまるで兄弟のように親しげだった。
そして片や弟を見守る兄のように控えめな反面隙が無く、片や兄を誇りに思う弟のようにどこか幼い甘えが滲んでいる。
2者それぞれを立てる事なら如際無くこなせると自負するディオスも、彼らのように利害を超えて寄り添い合うような関係に見える
2者に対し、どのように接遇するのが良いのか、いまいち要領を得ることが出来なかったと顧みて思う。
それに、彼らの国々と自国では、相互不干渉が常態化している。
というのも、およそ考え得る利害関係が存在しないのだ。
これも、この世界の摂理であれば考えにくい事であった。
その為、今回の訪問にどういった思惑があるのか、和気藹々とした晩餐の最中で一人、ディオスはさりげなく目を見張らせていた
のだが、ようやく彼らが純粋に、知ったる他国の慶事を祝いに来ているのだと確信する至り、己のまるで見当外れであった懸念に
疲労感を覚えずにはいられなかった。

己もまだまだ未熟だと、自嘲の笑みを口元に刻みながら、ディオスは自室に備え付けられた戸棚に向かうと、
そこに並べてある酒瓶の中から目に付いた1本と、グラスを2つ取り、ベッドサイドの丸テーブルに置いた。
椅子に腰掛け、襟元を緩めながら片手で酒を2つ共のグラスに注ぎ、一方を自分に対する椅子の前に置く。
そして手にしたもう片方、ランプの薄明かりに煌く琥珀色を一息に呷る。
ディオスにとって、自室で口にする酒は酔えさえすれば良かった。
元々は耐性を付ける為に始めた飲酒習慣であったし、瑣末な味の違いに拘りは無い。
よって酒の調達は侍従に任せてあり、時折感想等は尋ねられるままに洩らすものの、銘柄までは把握していなかった。
が、恐らく上等な物なのだろう、濃厚な酒精と、果実の芳醇な香りが、疲れた心身に染み入る心地がした。
多少の好みを言うならば、もう少し甘くない方が良かったが、しかし“彼”にはこのくらいが丁度良いはずである。
対面に置いたグラスを眺める。
そろそろだろうか、と思ってみたところで、ドアを叩く音が響く。
そのタイミングの良さに、ディオスは思わず笑ってしまった。

「入れ」

何者か問う必要も感じず、ディオスはドアの前に佇む者に声を投げかけ招き入れる。

「夜分に、失礼致します」
「構わん。待っていた」

特に示し合わせた訳ではなかったが、相手も、自分が待っている事を見越していたのだろう。
恐縮した言葉に反して、ドアが開いた先にあるその顔には、いつも通りの朗らかで人好きのする笑顔が浮かんでいる。
どれだけ年齢を経ても、姿形が違おうとも、その笑い方は変わらない。
何故か、どこか眩しく映るその笑顔。
ダフネ。
思わず目を細めるディオスに、彼は仰々しく騎士の礼を取って見せる。

「殿下におかれましては、今宵もご機嫌麗しく…」
「ダフネ。略せ」
「は。では、無礼をお許しを」

2人だけの間では最早お決まりとなっている遣り取りを終えると、ダフネは慣れた様子で向かいの椅子に腰掛ける。
そして差し出されたグラスにグラスを合わせようとするも、相手のグラスが空である事に気付き、すぐさま傍にある
ボトルを取り上げて注いだ。

「おや、」
そのボトルのラベルに目を留めたのか、ダフネの目が意外そうに見開かれる。

「果実酒ですね。殿下は、甘い酒はお好みではないと思っておりました」
「ああ…これは、お前向けだな。侍従が気を利かせたのだろう」
「それはそれは。近頃は少々、殿下の私室に入り浸り過ぎましたかな。以後、改めます」
「ふん。大して気にもしていないくせに、心にも無い事を」
「いえいえ、そのような事は。殿下、ご勘弁を」

気心知れた軽口を叩きながら、満たされた杯で改めて互いのグラスを当てる。
キン、と硬質な音色が耳に心地よく響く。
ディオスは先ほど勢い良く呷ったばかりなので、少し舐めるだけに留めたが、今度はダフネが一息にグラスを干した。
そしてグラスを置く。
また注いでやりながら、ディオスはダフネの表情を窺う。
気の重そうな顔をしている。
ダフネは、耐性を付けるまでもなく、生まれながらの酒豪である。
よって、酒精に当てられたせいではないだろう。

ディオスは、仕方が無い、と一つ溜息を吐いて見せ、水を向けてやる。

「昼間の件だな?」

途端、ダフネは眉尻を下げて弱りきった顔を見せた。

「はい。醜態を晒してしまい殿下に申し訳なく」

中庭で繰り広げられていた打ち合いを脳裏に思い浮かべながら、ディオスは腕を組む。

「中々面白い見世物だったが…強かったのか?」
「ええ。あの通り、勝ちを譲られる有様で」

ダフネとあの客人は、同じような年頃のはずである。
にも関わらず互角以上の戦いをしてみせる事など、少なくともこの国の内では有り得ない話だった。
ダフネには、12歳まで武芸に関わらなかったハンデはある。
武才それ自体も、極めて優れているということもない。
が、ダフネはそれを血を流し骨肉を削るような尋常でない鍛錬でもって補っている。
そして僅か3年で、達人とまで謳われた者の首を、打ち合いの中で刎ね飛ばすほどの腕前を身につけたのだ。
幼少の頃より徹底的に体技心を磨いてきた己でさえも、経験の有利が無かったなら、今のダフネと互角以上に戦うことは
難しかっただろう。
それは決して卑下でも贔屓でも無い、確かな事実だとディオスは認識している。
そしてディオスのその認識を理解しているからこそ、ダフネは殊更勝利に拘り、敗北を恥じる。
ダフネの勝利はディオスの勝利であり、その敗北もまた共有されるものであるからだ。
しかし今回については、ディオスはダフネの腕を問う気にはならなかった。
華を持たせてくれた客人への礼もあるが、それ以上に、二人の打ち合いは賞賛に値する、見事なものだった。

「この世は広いものだな」
「全く。この世界だけでも十分に広いというのに、また別の世界など。私などにはサッパリ、訳が分かりませぬ」

聖霊の存在は西方の国では、信仰の対象として尊ばれているようだが、この帝国では伝統的に馴染みの薄い代物である。
それであるから、ディオスは書物から一通りの知識を得て、更に実際に目視した今でも、そこに人が住まうなど
何やら不可思議な印象は拭い去れない。
机上の学問を苦手とするダフネならば、尚更の事だろう。

「まぁいずれにせよ、あの者らと敵対する必要が無いのは幸いな事だ」
「左様でございますか」

ダフネはいつもと同じくにこにこと笑っている。
しかし、ふと感じるところあって、ディオスは問いかける。

「不満か」
「いいえ、誓ってそのようなことは。ただ…」
「ただ?」
「賓客と、それを受け入れる側では、真の勝負にはなりません」

相手にとっても、自分にとっても。
それが惜しいとダフネは笑う。

一点の曇りもない無邪気な笑顔であるので、知らぬ者からすれば、血気盛んな若者の好奇心、
あるいは競争心であると見るだろう。
それを微笑ましくも思うだろう。
が、ディオスは知っている。
以前ダフネはこの顔で笑った後、一人の男と果し合い、殺害した。
つまり、ダフネの言う真の勝負とは、そういうことだ。
しかし笑うダフネに、ディオスも呆れるでもなく笑って見せる。

「だが、勝てぬだろう?」
「はい。今は、相打ちが良いところでしょうな。騎士の作法に則るならば、ですが」
「随分不穏な事を言う。あれほど打ち解けていたのは、今日の日の事ではなかったか?」
「エル殿の事は、好ましく思います。しかし万が一があらば、私は何としても勝たねばなりません故」
「困った奴だ」

言いながら、ディオスはグラスを傾ける。
少なくなった中身に、ダフネが酒を注ぎ足すのを受けながら、
返答は想像に容易いのに、分かっていながら質問を投げかける。

「お前は誰彼構わず、敵対する事を想定するのか?」

目を伏せて、グラスを傾げながら、ディオスは問う。
ランプの炎が揺らめきながら、その顔に翳りを落とす。

「ええ。殿下以外の者に対しては、おっしゃる通りでございます。
 私は殿下の剣であり盾でありますからには、不届き者に遅れを取る訳には行きませんでしょう」

ダフネは淀みなく、さも当然の、分かりきった事であるかのように明朗な様子で答える。
それは確かに、ディオスが想像し、そして期待したものであった。
限りなく純度の高い忠誠心と、勇猛さ。
大望を抱く己の片腕に相応しい答え。
満足感が心を満たす。
しかしそれは、思いがけず、どこか薄暗さを帯びた。

「…殿下?」

ディオスは思う。
ダフネは、迷うことをしない。
打てば響くように反応する。
それも、己の為に誂えられたような、これ以上無い的確さで。
それが幼い頃からディオスには不思議で、そして堪らなく心地良かった。
自分たちは一緒になる為に生まれたのだろうと、そう考えた事すらあった。
そんな頃も、あった。
様々な事が変わってしまった今になっては、不毛な考えである。
これ以上は求められない。
かつて一度己が諦めた時に、ダフネは諦めなかった。
伴侶とはなれない二人が共に歩む事の出来る唯一の道、帝位を継ぐ者の片腕としての道を見出し、
その成就を約束した。
そして約束は果たされようとしている。
最上の結果だ。
これ以上は、無い。
それは分かっている。
しかしそれでも、若気は未だ消え去ってくれてはいないのだろう。
不毛と悟りながら、ただ、忘れられない。
ふと、ディオスは昼間の情景を思い出す。

「…彼らには…」
「?」
「…我々は、どう見えていたのだろうな」

他国の王家でありながら、兄弟のように、あるいはそれ以上に仲睦まじく見える二人。
ごく自然な様子で手を差し出し、抱き寄せ、ごく自然な様子で手を取り、身を任せる。
その有様。
まるで見せつけられたような気がした。
揺らがされる己の心を感じた。
それで、良いのだろうか。
不毛ではないのだろうか。
本心を殺す必要は無いのだろうか。
思うままに相手を気遣い、好意を寄せる事。
思うままに相手に執着し、独占する事。
それはどんな心地がするものだろうか。

(…否。私は、知っているな)

目を閉じれば、眼前に美しい自然が広がる。
その中で、暖かな陽光を受けて揺れる、薄桃色の柔らかな髪。
向けられる暁色の瞳。
軽やかな笑い声、その声に呼ばれ、伸ばされた手を取り、二人――

「……!」

そっと頬に触れる感触に、ディオスははっと我に返る。
掌が、頬に。
目の前には、あの頃と変わらない色彩がある。
未だあどけなさの残る顔も、あの頃の面影を色濃く残している。
それが悲しいのか腹正しいのか、胸をぎゅっと締め付けられるような心地がした。
しかし国を継ぐ者として鍛え上げた自制心は、その不明瞭な感情を表に出す事を許さない。
意図するまでもなく、不機嫌に相手を咎める表情がその顔に浮かぶ。

「…この手は、何のつもりだ?」
「申し訳ありません。…ダフネは酔ってしまったようございます。
 何となく殿下が、望んでおられる気が致しました」

酔いなど感じさせない真摯な顔つきで、ダフネは言う。
謝罪しながら、手を退こうともしない。
ディオスは半ば呆気に取られながら、少し卑怯だと思った。
そう思ったが、何も言えない。
頬に寄せられたダフネの掌を、ただ感じる。

これは、武器を握る者の手だ。
伴侶となる女の手では在り得ない、無骨で乾いた感触。
しかし、とても暖かい。
変わらない、その温もり。

「…ああ。酔っているな」

己も、とは言わず、不機嫌な表情のまま、ディオスも手を重ねる。
そして再び目を閉じて、考える。
あの頃から変わってしまったものとは、何だっただろうか。
変えたのは、誰だ。
不毛とは、何に対しての?
あの二人のような道も、あったのだろうか。
常ならばすぐに思いつくはずの答えも、今は浮かんで来ない。
(…どうしようもなく、酔っているからだ)

「甘い酒は、その飲み口に反して酒精が過ぎるな…」
「…ダフネは、甘い酒は好きでございます」
「…悪くは、ない」

遣り取りは次第に立ち消え、沈黙へ成り果てる。
しかしそれすら酔いの中にあって心地良い。
どうせ、望もうと望むまいと、翌朝には酔いは醒める。
だから今、この一時だけだ。
それなら、構うまい。
陶酔に身を任せながら、ディオスは自らに言い聞かせるように思う。
閉じた瞼の奥で、あの頃のままの愛しい気配が幸せそうに微笑んだ気がした。

【END】

以上、長々と失礼致しましたー

未成年が酒飲んでますが、ファンタジーということで。
酒のせいでーとか若気の至りでーとか、そういう言い訳がましいのが大好きなんです…
ちなみにSSには盛り込めませんでしたが、二人が割りと真面目?なのは、
お互い相手に嫌われたくないからで、
そのせいでお互いに素直になり難いというか…両片思いみたいな有様に。
この二人は自分で創って萌えてるくせに、
青年期をどうやってラブらせれば良いのか分からなかったのですが、
本スレ1-710様のお陰でラブらせる糸口が掴めた気がしますw
とまぁ、お陰様で大変楽しく書けました、ありがとうございました!



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最終更新:2012年09月04日 16:17