「-INTERVAL-護りたいもの-」
作者:本スレ 1-710様
212 :-INTERVAL-護りたいもの-:2011/11/30(水) 00:26:26
以下、属性等の告知です
・そんな描写は殆ど出てこないけど、現代風ファンタジー(獣人変化もの)
・これだけでも何となく読めると思いますが、一応、
創作してもらうスレ 1-194の続き
・青年×青年(アルフレッド×エイシア)です
・エロなし、おまけに色々と詰めが甘い感じ
こんな感じですがよろしかったらどうぞ
213 :-INTERVAL-護りたいもの-:2011/11/30(水) 00:30:36
「エイシア、エイシア・ブラン・ディール」
「っ、あ!」
白銀の髪とアイスブルーの瞳を持つその青年は、自らの名を呼ぶ声に応じて瞳を開いた。
そうして、そのまま、咄嗟に利き手の左手をつき、ベッドから身体を起こそうとした瞬間、
その左腕にはしった鋭い痛みに声を思わず声をあげた。
エイシアと呼ばれた、その怜悧な風貌の青年は、ベッドに身体を預けたまま、声にならな
い程の痛みを堪えてから、自身の左腕の方へと、そっと右手を添えた。
彼が触れた左腕には、肘から下の辺りから、手首の少し前の方までの位置に、包帯が丁寧
に巻かれていた。
その下の傷は、彼自身が自分の右手で触れた感触を基に推察すると、未だに少し熱をもっ
て腫れているようで、先程のように腕に強く力を入れていない状態にあっても、重く、痺
れるような痛みを左手の指先にまで伝えてくる。
「無理しすぎだ」
自らが横たわるベッドの傍らに置かれていた椅子に座っていた碧い瞳と金色の髪の青年が
ほっとしたような安堵の表情を滲ませながら、そう言った瞬間、エイシアは、相手のその
表情を目に留め、ようやく我に返った。
「あ、ごめん……」
「傷の方は、とりあえず縫合を済ませてある。
それから、失血して倒れていたから、念のため輸血もしているよ」
「輸血って……ウィルが?」
「そうだ」
「ごめん」
改めて目の前の相手へと詫びる言葉を告げた後で、エイシアは、ベッドに横たわったまま
でいた自分自身の視線を一度、この部屋の天井へと戻した。
それから、この目の前の青年との遣り取りから、今現在の自分が置かれている、決して好
ましいとは言えない状況に至った経過をできるだけ早く思い出そうと努めた。
そう、自分は魔獣掃討作戦中に傷を負い、長い黒髪とトパーズブルーの瞳の青年――ウィル
が迎えに来た直後、彼の姿を自身の視界に留めた瞬間に、気を失って倒れたのだ。
「……っ! シルヴィアは!」
おぼろげな記憶を辿りながら、エイシアは、ウィルが迎えに来る直前まで、自らの腕の中
に抱き留めていた少年の事を思い出した。
それと同時に、自らの浅はかな行動の所為で涙を零していた、実際の年頃よりも少々幼く
見える藍色の瞳と黒髪の少年の胸を突くような表情が、エイシアの脳裏を過った。
「無事だよ」
先程から自分の傍らにいる、まるで宗教画の聖なる御使いのようにさえも見える容姿を持
つ、金髪碧眼の美しい青年が発した言葉に、エイシアは、ほっとした表情を見せた。
その青年の表情に改めて目を止めたエイシアは、ベッドに右肘をついて、自らの身体をゆ
っくりと起こしてから、目の前の相手に対して、改めて詫びる言葉を述べた。
「アル、本当に済まなかった」
「エイシア、あまり心配させるな。
君を失いたくないと思っているのは、あいつだけじゃない」
自らの名を呼ばれた金髪碧眼の青年は、上半身を起こした直後に再びふらつくように傾き
かけたエイシアの身体を優しい所作でもって抱き留めて、そう言った。
「アル」
エイシアは、相手の名前を小さな声で呼び、自らを抱き留めてくれたアルの背中へと右手
を廻してから、彼の服を強く掴むようにして握りしめた。
彼の名前を呼ぶほかに、その場で切り返す言葉が思いつかなかったからだ。
「ごめん、俺、どうかしてるんだ」
「構わない、君が落ち着くまでこうしてるから」
アルの肩へと自らの顔を寄せながら、エイシアは、俯くようにして、自らの瞳を閉じて、
小さく息をついた。
解らない。こういうことがある度に、解らなくなるのだ。
護るべきものを守ると決めた、自分の気持ちが。
自分が護るべきものを何と定めたのか、解らなくなる。
自分は、シルヴィアの事を必ず護り通すと決めている。
彼を穢し、彼の心を曇らせる奴は、
例え誰であろうと赦したりはしないと、固く心に誓っている。
けれども、こうしたことがある度に、自分が護りたいと思っている対象が、決して彼だけ
ではないことを改めて思い知らされる。
今、目の前にいる、この親友、アルの事も、自らが兄のように想っている、もう一人の青
年、ウィルの事も、自分にとっては、大切で護りたいものだ。
そんな想いに反して、エイシアは、作戦中に相対した相手を甘く見るという、自分自身の
浅慮が基になり、自分が護りたいと想う人々に、逆に護られる結果となった、この現況を
左腕の痛みとともに、実感していた。
同時に、他人に対しても、何とも気が多いようにも思える、自分自身の中に生じてきてい
た割り切り難い感情を受け止めながら、エイシアは、アイスブルーの瞳を再びゆっくりと
開くと、自嘲気味に淡く微笑んだ。
「ごめん」
「いいさ、君と同じ立場にいたら、きっと、俺も同じような事をしていた。
君が無事でいてくれて、本当に良かった」
小さな声で呟くように言ったエイシアの言葉に対して、返事を返したアルは自らの腕の力
を僅かに強め、相手をほんの少しだけ引き寄せた。
そして、そのまま、エイシアのしなやかな線を描きつつも、自分と比べると幾分、少年ら
しさを残す身体を包み込むようにして抱きしめ直す。
エイシアは、自らを抱き寄せるアルの腕の力に逆らうことなく、相手の体温が与えてくれ
る心地よい感覚と優しい感情に素直に身を委ねた。
その温かな感覚に身を委ねながら、エイシアは、相手から向けられている、この優しく、
温かい感覚に満ちた感情を決して無駄にしたくはないと改めて思う。
だからこそ、自分の中に残る複雑な感情の一切を振り切るようにして、エイシアは、今、
自分を抱き止めてくれている、大切な友人の美しい面ざしへと、いつもどおりの笑顔を向
けた。
「ありがとう。けど、俺の事をフルネームで呼びながら、叩き起こしておいて、
おまけに、この傷を完治させてくれていないっていうのは、ちょっと扱いが酷くないか」
「麻酔が効きすぎてた所為か、君、全く起きなかったしね、これでも起きなかったら、
頬を叩こうかと思ってたとこだ。
それから、傷の方は、最初から能力だけで完治させるには、
互いに負荷がかかるだろう。傷が塞がったら、傷跡位は消してやるよ」
アルの方も、その笑顔に応じるように、いつもどおりに軽口を交わし合うかのような口調
をもって返事を返した後で、目の前の相手に微笑みかける。
その笑顔を目にしたエイシアは、相手からの返答に応じるように、言葉を返した。
「相変わらず、色々とひどいな」
「お互いに、色々とね」
互いが発したその言葉で、二人はそれぞれ、相対する相手の胸の内をほぼ同時に理解した。
そうして、互いに相手の意図を瞬時に理解し合っていた事に気付いた二人は、見つめ合う
ように向き合ったまま、相手に向かって、どちらからともなく、再び微笑みを返していた。
【END】
アルとエイシアは、互いに色々と思うところもあるし、かなり辛辣な事を言い合うような
仲なんだけど、それでも、お互いの事は信頼しているっていう感じの関係性がテーマです
それにしても、もう少し色々と上手く書けるようになりたいw
最終更新:2012年09月04日 16:20