「-CROSS OVER RESUME-再会-」
作者: 本スレ 1-710様
385 :-CROSS OVER RESUME-再会-:2013/12/07(土) 01:54:25
本スレ1-710 です
本スレ1-200様 の
お子様(設定スレ 2-014) と
うちの子(設定スレ1-036) の
スピンオフな二次SSを仕上げましたので、投下します 以下、属性表記です
・そんな描写は殆どないけど、現代風ファンタジー(獣人変化もの)
・設定スレ2-037 の共通設定ベース のSSです
・メインキャラクターは、シルヴィア(16歳)、シンさん(10歳位)、そして主任w
・でもシンさんの台詞は全くありません…
・またもや前振りだけといったところ、そして当然のごとくエロなし
・設定準拠ではない表記、設定矛盾のある表記を若干含みます
・キャラ&設定が1-200様の公式設定から外れている可能性あり
こんな感じですが、よろしかったらどうぞ
386 :-CROSS OVER RESUME-再会-:2013/12/07(土) 01:56:04
その瞬間を、彼は見過ごす事が出来なかったのだ。
彼は、その光景を目にした瞬間、アスファルトの地面を強く蹴って、大きく跳躍をかけた。
唯一、ただ一度だけ、出会った、あの少年のいる場所へと、移動するために。
自らの感情の赴くままに、その他一切の事柄について思考する事なく、彼は、即座に行動
を起こしていた。
※
その日も、彼は普段と変わらない時間を過ごしていた。
サファイアブルーの瞳と、短く切り揃えられた艶やかな黒髪を持つ少年――シルヴィア・
リオン・ウォルハートは、普段どおり、義兄と共に、自らが護衛対象として保護している
少年と一緒に、3人で帰宅する途中だった。少なくとも、あの光景を目にするまでは。
彼は、自らが護衛対象としている少年、アルシエルと、自らが義兄として心から慕う青年、
エイシアとともに、彼等が通う都内のインターナショナルスクールから自宅へと帰る途中
だった。
ただ単に、いつもどおり、3人で他愛も無い会話をしながら、少し交通量の多い、大きな
通り沿いに面した地下鉄の駅に向かう階段がある方向へと、歩いていただけだ。
でも、彼が、ふと、この大通りの道路の反対側の車線の方へと視線を移した瞬間に、それ
は普段とは違う時間になった。
彼が目にしたものは、ライトバンといった類のどこにでも良くある白い乗用車だ。
だが、その白いライトバンとともに、目に入った周囲の光景が――彼を普段とは全く違う
行動へと向かわせた。
その時、シルヴィアが、白いライトバンとともに、目にしたのは、彼がひと月程前に出会
った、自分と同じ――人工生命体だと推測される少年――シンの姿だ。
自分より年下の10歳位の年頃の、金色の髪とライトブラウンの肌を持つ、アイスブルー
の瞳の少年――。
多分、彼は、シルヴィア自身と同じ人工生命体の少年であるというだけではなく、自分達
よりも更に過酷な環境に身を置いている筈だと、義兄達は言っていた。
恐らくは、暁の翼という、時としてテロ行為さえも受け持つ組織に所属しているのだろう
と、一番年上の義兄であるウィルからも、そう聞かされている。
暁の翼は、シルヴィア自身や、彼の義兄にあたる青年等に加えて、彼自身が、今、護衛対
象として受け持っている、アルシエルや、アルシエルの想い人でもあるメサイアも含めて、
関係のある者、全てを広範囲に渡って、監視対象にしているのだから。
最悪の場合には、そうした関係者を全て捕縛する事を目的とした行動を起こす可能性さえ
もあるのだと。
だから、万一、再びシンに逢うような事があったなら、その時は、細心の注意を払うよう
にと、決して、自分一人で、独断的な単独行動を取るなと、そう言われていた。
にもかかわらず、シルヴィアの取った行動は、それらの事項を踏まえたものでは、全くな
いと言わざるを得ないものだった。
「……シン!」
シルヴィアは、シンの姿を目に留めた瞬間、その場で、大きく跳躍をかけた。
常日頃から、人目に付く場所で、自分自身に普通の人間とは異なる、並み外れた身体能力
がある事を示すような真似を軽々しくするなと、義兄達からも重ねて言われていたのに。
そうした言いつけを破った事など、これまでにも数える程しか無かったのに。
シンの姿を自らの視界に捉えた直後に、シルヴィアは、見覚えのあるその少年の姿がある
道路の反対側の車線の方へと向かって移動するために行動を移していた。
目の前の、それなりに交通量のある少し幅の広い、道路の反対側へと、シルヴィアは一気
に跳躍をかける。
その行動は、彼の行動をすぐ傍で真っ先に目にしていた、白銀の髪とアイスブルーの瞳を
持つ、義兄の青年――エイシアにさえ制止する間を与えないものだった。
「……っ!!」
エイシアはその場で跳躍をかけたシルヴィアの姿を目に留めた瞬間、声を詰まらせた。
彼が、エイシア自身が、シルヴィアの許へと、続いて移動しようにも、それが叶わなかっ
たからだ。
たった今、シルヴィアが行動を起こすこの直前まで、エイシア自身も、彼の護衛対象でも
ある少年、アルシエルに付き添っていたのだ。
自分自身が予期せぬかたちで、しかも、自らが間近に位置するこの場所で突然に行われた
シルヴィアの思い切った行動を目に留めながら、エイシアは、冷静な判断を即座に下して
いた。
今のエイシアには、自らの傍にいるアルシエルにも、共にこの場に留まるようにと、行動
を制止したうえで、ただ、事の成り行きを見守ることしか出来なかった。
自身が護衛対象として行動を共にしていた、長い漆黒の髪と藍色の瞳を持つ少年――。
アルシエルを伴って、今すぐに、この大きな道路の反対側の方へと移動するには、あまり
にもリスクが大きすぎる。
そう判断したエイシアは、シルヴィアが向かった方角へと、アイスブルーの瞳で強い視線
を送りながら、この場に留まった。
一方のシルヴィアは、そうした義兄の強い視線を背中に受けながら、軽やかな跳躍を幾つ
か経た後で、難なく道路の反対側へと渡っていった。
居合わせた、周囲の世間一般の人々も驚いて、その一瞬、一斉に彼の方へと視線を向ける。
それでも、彼はそうした周囲の状況については全く意に介する事なく、まるで何事もなか
ったかのように、その場所へと、殆ど音を響かせる事もなく、降り立たった。
「彼に手を出すのを止めてください」
シルヴィアは、その場で、シンの手を引こうとしていた、少々太り気味の恰幅の良い男の
間に割って入ると、彼にしては、珍しい、鋭い視線を相手に送りながらそう言った。
見ていられなかったのだ。
シンが、こんな、いかにも彼の事をただのモノ……消耗品として扱うかのような態度の男
に、手を引かれそうになりながら、無理矢理、ライトバンに乗せられそうになるのを。
それだけの事だ。
多分、シンは、余計な事をした自分に、少し驚き、苛立ちさえも覚えているかもしれない。
そう思いながら、それでも、シルヴィアは、自らの採った行動をここで、このまま止める
つもりなど、全く無かった。
シルヴィアは、自らの傍で、シンが息を詰めている様子をも感じ取りながらも、自らの前
に立っていたままの太った男から、次の言葉が発せられるのを待った。
目の前の男とシルヴィアが言葉無く対峙している合間にも、当初、周りに偶然居合わせ、
此方側へと視線を送っていた人々も、次第に彼等への興味を無くしていったように見えた。
やがて、その場に居合わせた殆どの人々が普段どおりに、ただ、平然と無言で通り過ぎて
いく。僅かに此方に視線を向けつつ、通り過ぎる人も居るにはいたが、この場で足を止め
る人など、もう、誰一人としていない。
その状況を踏まえた上での事かどうかは、解らなかったが、シルヴィアと対峙していた恰
幅の良い、太った男は幾分長めに感じる程の間を置いた後で、漸く口を開いた。
「これは驚いたなァ……ET04、君の方から、こっちに来てくれるなんてね。
ほら、ご覧のとおり、ここは他人の目にも良く付くだろォ?
だから、丁度、今日はもう、諦めようかと思っていたところだったんだよねェ……」
「僕は、そんな名前じゃありません。
僕には、シルヴィア・リオン・ウォルハートという、ちゃんとした名前があります。
貴方の上官は、ヘンリー・ディ・ソル・ライオット氏でしょう?
彼に会わせてください。これは決して悪い取引ではないと思いますが」
目の前の男から投げかけられた言葉に即応するかのように、シルヴィアは強い視線を崩す
ことなく、返答を返す。
ただし、それは、予め義兄達から聞いていた事項を基に、限られた短い時間の中で、それ
でも、その場において、でき得る限りの思考を重ねた上でのものだ。
こんな事をすれば、多分、少なくとも、自分の大切な義兄であるウィル達にも、多少なり
とも、要らない迷惑をかけるような顛末になるかもしれない。
そうは分かっていても、シルヴィアには、今、これが、彼とシンにとって、一番、最良の
選択に思えた。
「やれやれ、ET04、お前は見掛けと違って、結構、気の強そうなところがありそうだねェ。
さて、ここでボクが、ライオットに会わせてやると言ったら、お前はどうするのかなァ」
「僕がシンと一緒に、これから、このまま、貴方がたと同行します。
だから、僕を、シンと一緒に、ライオット氏に会わせてください。
僕が貴方がたと共に行くというのは、貴方にとっても有益な条件になるかと思いますが」
太り気味の恰幅の良い男が再び投げかけてきた問いに対し、シルヴィアは顔色をひとつ変
えることなく、そう答えた。
シルヴィアは、返事を返すと同時に、彼自身が身を置くこの場所から、ほんの少し後方に
位置する場所で、言葉無く立ち尽くしている、シンの方へと、最小限の小さな所作をもっ
て振り返る。
そのままシンの片方の手を取ると、シルヴィアは、自らの手を重ねて相手の手をしっかり
と、ぐっと握った。
そのシルヴィアの突然の所作を受けたシンの方は、驚きを隠せなかったようで、その一瞬、
ほんの少しだけ、僅かに身を竦ませる。
――シン、嫌な思いをさせてごめん。本当にごめん。でも、どうか僕を信じて。
相手の手を強く握ったまま、シルヴィアは言葉を発すること無く、自らの思念をシンへと
向けて送った。
自らの思念が、多分、ちゃんと、シンの心に届くはずだと信じていたから。
それはいずれも、シルヴィアがほんの僅かな合間に行った所作だった。
シルヴィアはそうした所作を終えると同時に、改めて目の前の太った男へと向き直った。
「ET04、お前も一緒にライトバンに乗ってもいいよ。
お前がそんなに言うんなら、望みどおり、ヘンリーの許に連れて行ってやるよ。
これはまた、なんか、面白いことになってきたかなァ……」
「シンと一緒にライオット氏に会えるというのなら、僕は貴方のご判断に従います」
男からの言葉を受けて、シルヴィアは自らの表情に感情を乗せることなく、返答を返して
から、傍に停められたままになっていたライトバンの方へと一度、視線を遣った。
それから、彼は自らと手を繋いだままにしていたシンの方へと、改めて視線を移していく。
シンは、その場でひと言も発さず、少し俯きながら、視線を地面の方へと投じたままだ。
その表情には、なんとも言い難い、苛立ちや、哀しみ、そして後悔の念さえも垣間見える
かのような感情が見て取れた。
――ごめんね、あと少しだけ我慢して……。
シルヴィアは、自らと繋いだままにしているシンの手をほんの少しだけ、強く握り直しな
がら、そんな風に思念を送ってから、再び目の前の男の方へと視線を投じた。
この男に対して、下手に出るつもりはないが、今、この場で、不用意に怒らせるというの
は、却って逆効果だ。
だから、自分は、今、この男に対しては、あくまでもシンの上官である人物に対する礼を
持って応じているだけだ。
その事自体は、甚だ不本意なことだと、心の底からそう思わずにはいられなかった。
でも、今、現時点において、この恰幅の良い、少々太り気味の男がシンの上官であること
は、ほぼ、間違いないのだから。
そんな事を思いながら、シルヴィアは相手の男へと真っ直ぐに視線を向けた。
「さすがにお前は、何処かの出来損ないのクズ共と違って、意外にも比較的人間に従順
なのかなァ、やはり創り手が違うと、中身も違うねェ。
ほら、ET04、そっちの後部座席に、シンと一緒に乗るといい」
相手の声を、自らの聴覚に捉えた瞬間、シルヴィアはほんの一瞬だけ、その表情を険しい
ものに変えながら、無意識のうちに、シンの手を握る自らの手に、より一層の力を込めた。
シルヴィア自身の事と比較をしながら、同意し難い、嫌悪感さえも生じる下手な思考経過
を辿って、シンの事を貶めようとする、その男の態度に我慢がならなかったからだ。
「解りました。貴方のご命令のとおりに」
それでもシルヴィアは、敢えてその事にはひと言も触れず、多分、この男が、充分に満足
するだろうと推測した上で、定型的かつ、当たり障りのない、従順な返答を返した。
今、この場で、この男の機嫌を損ねて、折角、シンと共に同行するという事自体には同意
を得た、その返答を無駄にするわけにはいかないと思ったのだ。
シルヴィアからの表面上は、全くもって従順であるかのように見受けられる返答を受けて、
相対していた太った男は、自らの手をもって、ライトバンの後部座席のドアを開ける。
それを目にしたシルヴィアは、ライトバンのドアの方へと自らの身体の向きを変えた。
それから、ずっと手を繋いだままにしていた、シンへと向かって、いつもどおりの平静な
感情を保つようにと心がけながら、できる限り、穏やかに声をかけた。
「シン、一緒に行こう」
その声に応じるように、シンは一度だけ、自身のアイスブルーの瞳の視線をシルヴィアの
サファイアブルーの瞳へと合わせた。
此方側へと視線を合わせたシンは、そのまま一言も発さずに、シルヴィアとともに、ライ
トバンへと乗り込む。
直後に、太った男がライトバンのドアを閉めた。
それから間を置く事無く、男は、助手席へと乗り込んできたと同時に、先程からずっと今
まで運転席で、ただ、黙したまま待っていただけの、もう一人の男に向かって、ライトバ
ンを走り出させるようにと、指示を出す。
乗りこんだライトバンの中でシルヴィアが見つめていた、道路の反対側に位置するその場
所には、義兄であるエイシアと、心配そうな面持ちをしている大切な友人、アルシエルの
姿が小さく映っていた。
一方の義兄のエイシアの方は、極めて冷静そうな態度ではあったが、酷く険しい表情と、
刺すような視線をもって、アイスブルーの瞳で此方側を見つめている。
大丈夫。義兄のあの様子なら、多分大丈夫だ。
エイシアは恐らく、この後で、残りの義兄達――ウィルとアルに連絡を取りながら、適切
な対応をしてくれる筈だ。
――エイシア……。それにアーシェも。
皆に……そうだよね、皆に迷惑をかけて……本当に、本当に、ごめんなさい。
こんな事をしたら、ウィルやアルにも、そうだよ、もしかしたら、メサイアさんにも……。
ほかにも沢山の人達に迷惑をかける事になるかもしれないのに。
それでも僕は、シンの事を放っておけなかったんだ。
だって、シンは僕の大切な義弟だから。
このまま、シンがたった一人で哀しい想いをするのなんて、絶対に嫌だったんだ。
自らの感情を思い返しながら、シルヴィアは、自らの隣で、自分の手を強く握ったままの
少年の小さな手を改めて強く握り返した。
シルヴィアには、今、自らの隣で、ただ一言も発する事なく、自分の手を強く握り続けて
いるこの少年――シンが、泣きだしそうにさえ思える表情をしているようにも見えた。
だから、シルヴィアは自分自身も、ただ、シンの手を強く握り締めたまま、敢えて一言も
発する事をしなかった。
――シン、どうか僕が、君にとって、少しでも良い結果を導き出せますように。
必ず君を助けるから。このまま、君一人が酷い目に合うなんて事は、絶対にさせない。
シルヴィアはその場で、そう思いを新たにしながら、自らのサファイアブルーの瞳の視線
を前へと上げた。
まるで、これから先も、ずっと、シンの事を、自分にとって、唯一人の義弟の事を、護り
通す為の覚悟を決めたかのように。
【END】
お読みいただきありがとうございました!
二人を再会させて、シルヴィアさんには、シンさんの事を少しずつ、特別な子だと意識し
てほしいな……と思ったら、こんなかたちになりましたw
またそのうち、もうちょい緩やかな感じの日常的エピソードも書けるといいな、なんて事
も目論んでいますので、今後ともどうぞよろしくお願いします!
※wiki収録後に、一部修正を加えました。
さらにおまけ:
このSSの後の大まかなエピソードの流れ?はこんな感じです、よろしかったらどうぞ
(以下、結構長いよ! ご注意を! いつもながら、誠に申し訳ないです…)
→ エイシアさんがウィルに連絡
→ ウィルがフィクス社のグレンさんを通してヘンリーの連絡先を入手
→ 暁の翼の日本国での拠点までウィルがシルヴィアさんを迎えに行く
→ 以下、更にその後…的なエピソードの候補ネタをいくつかご紹介w
・ウィルがシルヴィアさんの事を結構、辛辣に叱る(引っ叩くとかもあり?)
・後日、ヘンリー×ウィルの売り行為も?(何か交換条件的な流れで…)とか
・エイシアさんが気付いて、これまでの自分の事も、今回のウィルのことも含めて、
シルヴィアさんに全部ばらすw(シルヴィアさん相手にエイシアさんがふっ切れるw)
・更には何故かアルも含めて、4人で大ゲンカw
・シンさんの事はヘンリーが直に管轄(保護)するようにwシルヴィアさんと一緒の
学校に通うようにとの指示も出す
・ヘンリーとウィルの関係も選択したネタの状況に応じて深刻度に幅がありながらも、
何故か続くw
以上、派生的ネタ妄想の数々でした
今回のSSのエピソードから更に派生的に色々とネタが拡がって楽しかったです
とりとめもないネタの数々も含めてお付き合いただだき
本当にありがとうございました!
最終更新:2013年12月09日 23:16