第3話 「奪われた槍」 5

465 : ◆OLze.DQMEw:2011/07/01(金) 22:17:26
【キラーホエール ブリッジ】
伊豆市街から生還した3人はキラーホエールのブリッジに集められていた。
「TEX-15、アートルムは中破、リオンTTは大破…」
3人の目の前に立つ男が言う。
狂犬と呼ばれているガルベスでさえ顔が青くなっている。
「私は無用な戦闘は避け、目的を達成したら早急に帰還しろと言ったはずだが?」
「も、申し訳ありません、少佐」
ガルベスが震えながら答える。
「我々の戦力は連邦と比べれば圧倒的に劣る。
 このようなところで無用な犠牲を出してどうする」
ガルベスはもはや言い訳すら言えない状態だ。


466 : ◆FB0Vu0hpIc:2011/07/01(金) 22:18:32
戦闘が終了する。
先程、勇敢にも本領発揮したブリューナクに突撃をかけ撃墜されたヒュッケバインMK-Ⅱのパイロットの事を他の機体の皆は探しているのだろう。
「さっきのお姉さん……無事だといいんだけど」
それは紫亜も気になっていた。あの機体が割り入ってくれていなかったら今頃、グングニールも無事では無かっただろう。


「あああ!?もう12時10分だよ~!ランチタイムにとっくに入っちゃってるよ……!」
戦闘の緊張感が解けると、ふと、自分がバイト中で買い出し中だったと言うことを思い出した。
紫亜は恐る恐る愛用のスマートフォンを取り出し、不在着歴が10件以上も入ってるのを確認した。
それらの履歴には全部『日ノ出★食堂』と入っていた。
……電話しておこう。クビにされる。
『もしもし、バイトの藤村です。……えっと、それが……赤ちゃんが産まれそうな妊婦さんを病院まで運んでて……本当にですよ?……お家の方が来るまで付き添わないとダメなんで、まだ帰れないです……だ、大丈夫です味噌も料理酒もちゃんと買いましたから』
紅白娘の紅い方が電話に出た。凄く怒っておられる。
街で戦闘に巻き込まれてあげくロボットに乗せられて戦ってたなんて言っても信じてくれないし、不安にさせるだけだろう。
とりあえず今思い付いたウソの事情を説明してみる。これでただのサボタージュだと思ってくれただろう。


467 : ◆hrBR6tpC7Y:2011/07/01(金) 22:24:48
>>464
しかし、懸命な捜査にも関わらずエレナを発見することは出来なかった。
損壊した機体の破片もあまり見つかってないのが疑問に残る調査結果であった。


>>465
カホル「ーーー話しと違ってTEX-14にパイロットがいたんだ。それに護衛にまるでTEX化したようなミロンガに大型特機までいた。これでも上々な方じゃないですかねえ・・・、少佐」

ガルベスと違い、カホルは彼に向かって口答えをした。それに彼は一つ気になっていた事があった。

カホル(だいたい、アンタが出りゃいいものをあんなガキや暴走機関車に任せるから・・・)


468 : ◆gnI8YzVxOo:2011/07/01(金) 22:36:59
>>465
ミツヤは下を見たままうつむいている。
グングニールを奪取できなかったこと。それ以上に、非正規のパイロットに一蹴されたことが堪えた。
上官からの耳を塞ぎたくなるような罵倒でさえ、これほどの屈辱を被りはしなかった。
「お、俺は……自分は、もっといい機体が欲しいです、少佐」
やっとそれだけを喉から絞り出す。


469 : ◆OLze.DQMEw:2011/07/01(金) 23:35:53
>>467
「今回の作戦ではTEX-14は奪取できれば奪取と言った。
 欲張った結果がこうなったことぐらいは貴官たちも分かっているだろう」
少佐と呼ばれた男は口出しされたにも関わらず表情を崩さず続ける。

>>468
「今の貴官の腕前ではリオン以上の機体であろうと結果は変わりはしない」
すでに精神的にもかなりまいっている若者にさらに追い討ちをかける。
「編隊を乱した上、敵への無謀な突撃…私は出撃前に何と言った?」
ガルベスも突撃をしていたがガルベスとミツヤでは経験が圧倒的に違うのである。
(しかも、ガルベスは単独で動くことを許されていた)
「次やれば貴官たちを待っているものは…分かるな?」

「次の出撃もそう遠くはないだろう。その時に備えて休め。解散」


【キラーホエール 高級士官室】
(私としたことが…ああなることを予測できなかったとは)
男は自分の判断を嘆いていた。
(TEXチーム…前大戦の英雄の筋書きは伊達ではないということか)

(奴等を沈黙させなければ我々の悲願は成就しない…)
男は煙草を口にくわえ、火をつけた。


470 : ◆hrBR6tpC7Y:2011/07/01(金) 23:51:36
>>468
カホル(TEX-14・・・、アレを一番欲していたのはアンタだろうに)

元々、連邦にわざと設定図を横流しして後に回収が予定されていたTEX-15を奪取するだけなら幾らでもタイミングはあった筈だ。しかし、現実にはTEX-14奪取計画の1フェイズとして組み込まれたカホルの潜入工作とTEX-15の強奪。

カホル(まぁ、俺はアレに乗って闘うだけだ・・・。それは何ら変わっちゃいない)

アルベルトに対して不満を持ちつつ、寝床に戻った


>>468
カホル「なら、俺のTEX-15を使うか?ま、サイダー坊やにはティータン・システムは使いこなせないだろうがな。」

ミツヤにはTEX-14を強奪するチャンスはあった。しかし、少年故の甘さがこの結果を招いたのだろう。


471 : ◆tL.I1Fkj/Y:2011/07/02(土) 00:25:57
>>466
『紫亜!? 貴方いったい今まで何処を……何? 言いたい事があるならハッキリ……ふぅん、へぇ……そう、そう言う事。で、何時になったら帰れるの? ……ああ、そう。それで? 頼んでおいた物は? ……そう、そっちはキチンと買えた訳ね。解ったわ……紫亜、帰ってきたら覚悟しなさいね?』

若干ドスの効いた声でそう答え、紫亜からの電話を切るエルトロス。
こんな様ではあるが、エルトロスは紫亜が無事だった事に内心ホッと一息吐いていた。
また、エルトロスは紫亜が何か隠そうとしている事も薄々感づいていた。
それ故に彼女は紫亜の望む方向に話を持っていく事にしたのである。

「……全く、今思い付いたような話ね」
「エル、紫亜は何だって?」

エルトロスの呟きが聞こえなかったのか、リュコスは先程の電話の内容を問いかけてきた。
ちなみに彼女達が何故このような会話を行えるかと言うと、早い話が『先程の戦闘の影響で客の入りが疎らになってしまったから』という話に尽きる。

「それがね……」

そんな姉に対して紅の少女は先程の電話の内容を一言一句余さず伝える。最後に『しょうがない子よね』という言葉を添えて。
しかし、その話を聞いたリュコスの意見は少々異なるものであった。

「そっか、そう言う事情じゃしょうがないよね」
「……あの、姉さん? さっきの話、信じるの?」
「当然だよ。あの子は意味の無い嘘を吐くような子じゃないし、それに……世の中有り得ないことなんて無いんだよ? 私達の存在が何よりの証拠じゃない」

……確かにそう言われると正直ぐうの音も出ないけれど。
エルトロスは内心頭を抱えつつも、取り敢えずその話はここまでと話を切り上げた。
と、その時再び電話が鳴り響く。

「今度は誰からよ……はい、もしもし?」

この時エルトロスは、この電話が後にあんな事態を招くとは思いもよらなかったのである。


472 : ◆vGTe9D4z5Y:2011/07/02(土) 00:48:56
>>467
ケイトは懸命に捜索をした、それこそ草の根をかきわけるほどに、だ
それでも、エレナを見つけ出すことは出来なかった
しかし、ヒュッケバインの残骸すらもほとんど見つからないこの状況は明らかに異常だった
そんなことに気づくはずもないケイトであったが、姿がないということはどこかで生きているに違いない
ケイトは前向きにそう考えることにした。
そうでもしないと、悲しみが彼女を飲み込んでしまうかもしれなかった。


473 : ◆FB0Vu0hpIc:2011/07/02(土) 01:13:59
>>471
「あはは……やっぱり怒られちゃったか。……うーおっかないなエルちゃん先輩は。帰ったら、何が待ち受けてるんだろ」
紅い方は恐い。出来れば白い方に出て欲しかった。
エルトロスの怒りが電話越しでも伝わって来る。紫亜はただ、ひたすら苦笑いするしか無かった。
もっとも、少しは心配してくれてたんだろうって事が何となくわかって嬉しくなる。一刻も早く戻ってやりたくなった。

「さっきの少佐さんは大丈夫なのかな……?他の兵隊さんが運んでくれたのは確認したけど。早くこのグニグニールだっけ?も返したいんだけどな」
クーガー少佐の指示があるまでは待機しているつもりだが、余り長居する気は無い。明日からはまた学校があるし、頼まれた物を日ノ出食堂に持って行かないといけない。
その後は夜までバイトして、ぐっすり眠って明日にはきっぱり今の事を忘れてしまおう。
そんな考えだった


474 : ◆YZUHAnFXK6:2011/07/02(土) 02:29:57
「っ!!」
自らの体にかかっていた白い布を弾き、飛び跳ねるようにその体を起こす。
その衝撃で頭痛が悪化したのか、体を支えていた右腕はすぐさま頭に置かれた。

「……ま、さか……自分が動いた衝撃で頭が痛むなんてな……」
自らの額は汗で湿っていた、体もなんとなく重い―――びっしょりと寝汗で制服が濡れている。
そして、自分が何故ここに居るのかを考え始めた。
そうだ、カラヴィンカに伊豆基地まで輸送され、そのままここに―――

「意識が飛んでたのか……まぁそうだろうな、人間の関節はロールなんてしない……」


478 : ◆hrBR6tpC7Y:2011/07/02(土) 14:25:53
>>474
レイカ「Zzz・・・」

ふと彼が膝の辺りに重りを感じ目をやると、ピンクのドレス姿のお姫様が疲れきったように上半身をユーリのベッドの布団に預けて眠り込んでいた。

エドガー「お目覚めで御座いますかな、ユーリ曹長。」

病室にはスーツを着た初老の男性がテーブルで林檎を剥いている。そのテーブルにはティーポットもあり、いい香りがしていた。


479 : ◆gnI8YzVxOo:2011/07/02(土) 23:46:10
サクラ・F・エスクード少尉によりもたらされた報告は、クーガー少佐にとって決して愉快な物ではなかった。
ジュワユーズによりブリューナクは奪取され、エレナ・キサラギ大尉はMIA、か」
MIA――Missing In Action。作戦中行方不明。「屍体未発見」の言い替え。
サクラは少佐の怪我の具合を尋ねた。自分は大丈夫だと応えた。痛むし無理をすれば出血は伴う。しかし直接生命に関わらない以上、少佐にとっては取るに足らない傷でしかない。
「時間が惜しい。おちおち寝てはいられない。TEXメンバーに招集を掛ける。藤村紫亜もだ。彼女とグングニールが必要だ」
アイノクス・クーガーには珍しいほどに露になった感情――激情。
「キサラギ少尉とは縁は薄かったが、俺の部下には違いない。貸借は必ずチャラにする。それが例えあんたでもだ、アルベルト少佐」


480 : ◆FB0Vu0hpIc:2011/07/03(日) 00:09:02
>>479
「ふぇ??私もなんですか……!?」
グングニールを降りて、安堵したのも束の間。クーガー少佐の部下からこのままテロリスト追撃に協力する様に通達が有ったのだ。
どうしたら良いか一拍、思考を巡らせ
「……はい。もちろんです……私も手伝わせて下さい!」
真剣な面持ちで意外にもあっさり協力を約束する。
先程、敵の攻撃から紫亜を守ってくれたヒュッケバインMK-Ⅱのパイロット。心配になって容態を聞けば、戦闘中行方不明になった事が解った。
もちろん街を危険に曝した連中は許せない。だが生意気にも紫亜は彼女の敵を討ってやりたい気もあった。
「ごめん。今日はバイト入れないかな?……その代わり、がんばるよ」
気合いを入れる。腕前の未熟な分は気持ちでカバーだ


481 : ◆gnI8YzVxOo:2011/07/03(日) 00:49:10
>>480
夜。
藤村紫亜を伍長待遇でTEXチームに配属する段取りを終える。事前に用意は整っていたから手間はかからない。
「後は母艦だ」
敵艦の追跡という任務の特性上、母艦は一隻が望ましかった。しかし今の伊豆基地にはTEXチームを丸ごと運輸出来る規模の艦艇はない。
一挙にTEXチームが膨れ上がったためにかつての機動力が保てなくなっていた。L5戦役での母艦桜花が解体されてしまったのが今更になって惜しまれる。
フランスの老人に頼るしかなかった。
問題は時間だ。彼との直接通信は禁じられており、電子メールも例外ではない。今、この状況で許される連絡手段はエアメール。旧世紀と比較しても格段に早くなったとは言え、どんなに甘く見積もっても往復で二日。艦艇を探す時間も含めれば、どれほどになるのか少佐は考えるのも嫌になった。
しかしそれしか術はない。少佐が文面を端末に入力しようとした時のことだった。
基地が騒がしい。外に出て、唖然とした様子の下士官に何事か尋ねる。その必要もなかった。理由がすぐに分かったからだ。
上空に大型艦艇が浮かんでいた。明らかに連邦軍のデザインライン上にはない艦艇が。白銀の艦体を煌めかせて。
携帯端末を持った者が少佐に画面を見せた。
<こんばんは。夜分空よりお騒がせします。アイノクス・クーガー少佐がおられましたら下記の番号にお掛け下さい。なお勝手ながら、当方が迷惑コールと判断した場合、即座に端末にウイルスを流した上その番号をネットワーク上に開陳させて頂きます。>


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最終更新:2011年07月03日 17:56
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