元エージェントはどこへ行く? ◆yXlaa6e0uc
草原に死体が一つ転がっている。
強者を求めた末に敗北した男、名は劉巌という。
下手人は彼を葬る気はなかったようで、その死体はいまだに野ざらしになっている。
そして、そんな死体に駆け寄る影が一つ。
強者を求めた末に敗北した男、名は劉巌という。
下手人は彼を葬る気はなかったようで、その死体はいまだに野ざらしになっている。
そして、そんな死体に駆け寄る影が一つ。
「……いくらなんでも早すぎない?」
影は銀色の髪を揺らしながらつぶやく。
彼女の名はイリアム・ツェーン。現在就職活動中の元エージェントである。
彼女の名はイリアム・ツェーン。現在就職活動中の元エージェントである。
◆
イリアムが劉を見つけたのはこの殺し合いが始まってすぐのことだった。
殺気を隠そうともせず、血に飢えた獣のような目であたりを見回す男。
顔を斜めに走る傷跡もあり、男を国際的指名手配犯・劉巌だと見抜くのに時間はかからなかった。
顔を斜めに走る傷跡もあり、男を国際的指名手配犯・劉巌だと見抜くのに時間はかからなかった。
彼女の記憶が正しければ、この男、強者との戦いに目がないはずである。
もしかすると、強者同士で潰し合ってくれるかもしれない。
そんな期待も含めてイリアムは劉の動向を観察する。
もしかすると、強者同士で潰し合ってくれるかもしれない。
そんな期待も含めてイリアムは劉の動向を観察する。
それからしばらくの後、劉の表情が変わった。
口角をつり上げ、一点を見据える。
そして突如、走り出した。
口角をつり上げ、一点を見据える。
そして突如、走り出した。
イリアムはすぐに後を追う。
彼の行動次第では、姿を見せて手を組むのもやぶさかではないと腹の底で打算を巡らせながら。
彼の行動次第では、姿を見せて手を組むのもやぶさかではないと腹の底で打算を巡らせながら。
そして……、
「さらばだ。劉巌。貴様は自由を知らなすぎた」
劉巌は闘いを挑んだ相手に実にあっさりと殺された。
◆
「あの化け物は何だったのよ……」
一連の出来事を思い返し、イリアムは思わずため息をつく。
劉巌を殺した筋肉ヒゲ男は彼女が呆然としている間にいずこかへと去っていった。
はっきり言って追う気力も沸かない。
劉巌を殺した筋肉ヒゲ男は彼女が呆然としている間にいずこかへと去っていった。
はっきり言って追う気力も沸かない。
「まったく……、指名手配されるほど人に迷惑かけてるんだから、せめて私の役には立ってよ……」
ぶつぶつと文句を言いながらもするべきことはやっていく。
劉巌の死体のそばに落ちていたデイバックの中身を自分のバックに移し、スキルカードとやらも回収する。
劉巌の死体のそばに落ちていたデイバックの中身を自分のバックに移し、スキルカードとやらも回収する。
「まあ、でも考えてみれば私は運がいい方よね。うん、ついてるついてる。運河よりはずっとついてる」
そして劉巌が握りしめていた日本刀を引き抜くと改めて死体に向き直る。
「恨むんならあの筋肉ヒゲジジィを恨んでよ」
日本刀を首へと押し当てる。
「私は悪くないから恨むのは筋違い。それくらいは分かるわよね」
数分後、首と胴の離れた死体から首輪を抜き取る。
「はい、一丁上がりー」
鼻歌でも歌うかのようにつぶやき、首輪をデイバッグに投げ入れる。
サンプルは手に入った。後は解除することができれば、彼女は自由だ。
そして幸いにも、そのあては彼女の『武器』の中に既に存在している。
サンプルは手に入った。後は解除することができれば、彼女は自由だ。
そして幸いにも、そのあては彼女の『武器』の中に既に存在している。
「これが『武器』だなんて、あの宇宙人とは気が合いそうね」
彼女がバッグから取り出したのは一枚の紙。
「えっと、機械に強そうなのは……」
『武器』の名は『候補者名簿』。
「それにしても多いわね……」
連ねられた名前は74。
「それで、運河は当然呼ばれてるとして……」
そしてその中のいくつかの名前をイリアムはすでに『知っている』。
彼らとの面識はまだない。だが、彼女は『知っている』。
彼らとの面識はまだない。だが、彼女は『知っている』。
だがこれは別段不思議なことではない。
「うん、これくらいかしらね。呼ばれてるといいなー」
まるで、夢見る少女のようにイリアムはつぶやく。
そして同時に最悪の場面の想定も忘れない。
そして同時に最悪の場面の想定も忘れない。
「ま、呼ばれてなければ呼ばれてないで考えはあるんだけどね」
先ほどまでとは別種の笑顔を顔に浮かべる。
腐っても元エージェント。扇動、謀略はお手の物だ。
それに、プロには及ばないが、殺しの技術も持っている。
いざとなれば……、
腐っても元エージェント。扇動、謀略はお手の物だ。
それに、プロには及ばないが、殺しの技術も持っている。
いざとなれば……、
「……っと、こんなところでうだうだ考えててもしょうがないわよね」
先ほどの思考を振り払うかのように立ち上がる。
「そのときはそのときになって考えればいい。うん、運河もそう言ってたし」
自分の危うさは自覚している。転がれば元に戻ってしまわない自信はない。
「さ、まずは運河でも探そうかな」
今の生活は割りと気に入っている。わざわざ壊したいとも思わない。
「じゃあ出発!れっつ、ごー!」
イリアム・ツェーンは歩き出す。
心の底に一抹の不安を抱きながら。
彼女の未来は光か、闇か。
それは誰にも分からない。
心の底に一抹の不安を抱きながら。
彼女の未来は光か、闇か。
それは誰にも分からない。
【一日目・深夜/C-5 草原】
【イリアム・ツェーン】
【状態】健康
【装備】日本刀
【スキル】なし
【所持品】基本支給品×2、不明スキルカード×2(確認済)、候補者名簿、不明支給品×0~2(確認済)、首輪×1
【思考】
1.参加させられてるであろう逆井運河を探す
2.いざとなれば……?
※イリアムが『知っている』参加者の詳細については次以降の書き手に任せます
【状態】健康
【装備】日本刀
【スキル】なし
【所持品】基本支給品×2、不明スキルカード×2(確認済)、候補者名簿、不明支給品×0~2(確認済)、首輪×1
【思考】
1.参加させられてるであろう逆井運河を探す
2.いざとなれば……?
※イリアムが『知っている』参加者の詳細については次以降の書き手に任せます
11:せっかくだから今の内に自殺しとくか | 時系列順 | 13:Let's communication. |
11:せっかくだから今の内に自殺しとくか | 投下順 | 13:Let's communication. |
イリアム・ツェーン | 18:思い出依頼 |