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思い出依頼

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思い出依頼 ◆BUgCrmZ/Lk


私に支給された参加者候補名簿に載っていた名はそれはもう多種多様なものだった。

一国の女王や著名な企業家に軍人や研究者、果ては犯罪者や殺し屋などの裏社会の人間まで網羅しており統一性などありはしない。
強いて言うなら日本人が多いのが気になるところか。あと魔王ってなんだ。

知った名は、個人的な知り合いを含めても約3分の1と言ったところだ。
その中でも厄介なのはやはり裏社会の人間。
状況にかかわらず、襲い掛かってきそうな劉厳のような戦闘狂や快楽殺人者。
そして何より危険なのはプロの殺し屋だろう。
素人殺人鬼が相手ならば襲われたところで後れを取るつもりはないが、玄人相手となるとそうもいかない。
この名簿にある裏のプロは知る限り5人。

まず、未空澄鈴リリヤ・ハリラのコンビ。
実戦担当の未空澄鈴と後方支援担当のリリヤ・ハリラ。
警護から暗殺まで一通りこなす武闘派で、割と運河みたく何でも屋に近い。
単体であれば何とかならないこともない相手だが、連携を取られると厄介な相手だ。
だが、良くも悪くもプロフェッショナルである二人が、無意味に殺し合いに応じる可能性は低い。
乗るとしても状況に確証を持ってからだろう。

次に、香港マフィアの用心棒。王凰。
一時期失踪していたらしいが、その辺の詳細は不明だ。
中国武道の達人で、いわゆる戦闘狂。
弱者に手を出すタイプではないが、未空リリヤと違い積極的に戦闘行為に応じる危険性は高い。
一対一の格闘では勝ち目はないので、できれば出会いたくはない。要注意。

そして、過剰殺人者オーヴァー
この名簿に載っている中で、もっとも出会いたくない相手だ。
昔の仕事で一度だけ、奴の仕事が行われた後を検証したことがあるが、あれは人間の所業ではなかった。
屋敷は一面血塗れ、子供もペットも一切の隔てなく肉片と化していた。
現場後を見ただけで分かる、あれは目撃者の始末などという次元ではなく、目についたものすべて殺すキリングマシンだ。どう考えてもイカれてる。
彼が参加者候補どまりであることを祈るばかりだ。

最後に、フィクションだが。
残念ながら、かつていたとされている暗殺者ということ以外、彼に関してはほとんど情報がない。
言い訳するわけではないが、私の諜報能力がどうこうという話じゃない。
裏稼業に生きる者なら誰でもその名は知ってる。だが彼が何者であるかは誰も知らない。
一度も目撃されたことなく、髪の毛一本すら証拠を残したことがない。あまりの痕跡のなさに、人物像すらつかめない。
奴は幽霊だ、宇宙人説なんて暴論が警察や諜報部のあたりで真面目に飛び出す始末だ。今となっては笑えない話だが。
偶然起こった事故や、誰かが成し遂げた完全犯罪を我々が勝手に一人の犯行と断定し、フィクションという架空の暗殺者を作り上げたのではないかというモノすらいるくらいだ。
完璧すぎるまでの仕事の痕跡だけが彼がいたという証拠である。

要するに、フィクションとは実在を証明しただけで称賛されるUMAみたいな存在である。

「――――それで、ボクに何か用かい?」

そんなUMAみたいな存在が、今、私の目の前に立っている。
なぜこうなったのか、時は少しさかのぼる。

■■■■■■■■



行動を開始した直後、私はこちらに近づく人の気配を感じた。
慌てて茂みに身を隠すと、気配を殺し様子を窺った。

「…………です」

風に乗って僅かに声が聞こえる。
話し声だろうか?
だが、それはおかしい、感じられる気配も足音も一人分だけだ。
ならば、独り言だろうか?

「それから……になって…………で」

とぎれとぎれながら、言葉の内容が耳に入ってくる。
少し距離が遠いか。
そっと聞き耳を立てる。姑息などと言うなかれ。
盗み聞きも立派な情報取集の一つだ。

「……なんです……フィクションさん……」

フィクションさん?
予期せず聞こえた不穏な単語に思わずギョッとする。
いや単語としては不穏でもなんでもないのだけれど、名簿に目を通した直後ということもあり、この状況では驚くに値するものだった。

様子を確認するため、そっと茂みから顔をだした。
そこにいたのは制服を着た少女と和服姿の男の二人組だった。
先ほどの声は少女のモノだ。
つまりあの男がフィクションと呼ばれた男という事か。

あれがフィクションなのか?
あれが、あのフィクションか?
遠目から見る限り達人のような凄みや、殺人者特有の狂気といったある種の恐ろしさは感じられない。
というより、あの男からは何も感じない。
気配すらない。
本当に、何もない。

…………試してみるか?

あれが本物かどうか。
本来ならば関わるべきではない。
このまま身を隠してやり過ごすのが正解だ。
だが、正体不明の暗殺者の正体を明かせるかもしれない。
その好奇心に元諜報員の血が騒ぐ。

そっと足元から小指の爪くらいの大きさの小石を拾い上げる。
これなら当たったとしても大事には至らない。
これをぶつけてどう対処するかを見る。
まあ本物のフィクションかどうかの判断までは至らないとしても、少なくとも素人か玄人かの判別はできるだろう。



茂みに身を隠しながら、男に狙いを定める。
確実に当てれる距離まで三歩。
外さぬようしっかりと狙いを定める。
残り、二歩、一歩。
距離が近づく。
後、半歩。

「あ、加奈子ちゃん。ストップ」

だが、唐突に男が足を止めた。

「…………っ!?」

予想外の動きに思わず反射的に体が動いてしまった。
勢いよく放たれた石礫は狙いを逸れ、男を掠める事すら無かった。

やられた。
気付かれていたのか。
どう対処するとか、躱すとか躱さないとか以前の問題だ。
外させられた。

「いやまぁそんなに落ち込むほどでもないさ。
 攻撃に意識の行くまではうまく隠れてたと思うよ?」

明後日の方向を向きながら、何でもないような声で男が声を上げた。
それは明らかに私に向けられた言葉だ。どう考えてもバレている。
これ以上隠れても無駄だろうと観念し、素直に茂みから姿を出した。

「……私もまだまだということですね」

ひとまず両腕を上げて降参の意を示す。
好奇心猫を殺す。
彼が本物だというのならこの場で殺されてももおかしくはない。
何せ相手は冷徹で冷酷な伝説の暗殺者なのだから。
どう切り抜けたものか、と思案するが、意外にも相手は対して気にする風もなくこちらを見据える。
濁っても澄んでもいない、ただ底が見えないほど深い青い瞳。

「それで、ボクに何か用かい?」

■■■■■■■■


「先ほどは失礼しました。私はイリアム・ツェーンと申します」

改めて二人の間に姿を見せて頭を下げる。
男の正体の見極めはまだ保留だ。
先ほどの件から男が素人ではないのは確かだが、それがフィクションであるということと=という訳ではない。

「私は葉桜加奈子です。よろしくおねがいします」

そう言って、男の横にいた少女がペコリと可愛らしく頭を下げた。
その様子を観察する。
どこからどう見てもただの女子高生だ。
伝説の暗殺者の相棒としてはどう考えても不釣り合い。
私の疑惑に満ちた視線に気づいたのか、男の方が答える。

「協力者だよ、脱出のためのね」

協力者ねぇ。
いったいどんな思惑があるのか。

「脱出のための協力者ということは、あなたは脱出を考えているのですか?」
「当然。こんなところに長居する趣味はないんでね。
 さっさと終わらせて、いつも通り家に帰って寝るとするさ」

……本当だろうか?
平和的解決を望んでいるという話は、なんの力もなさそうな女子高生を連れていることから、多少信憑性のある話だが。
終わらせるにしてもあるかどうかも分からない脱出方法を探すよりもフィクションなら”正攻法”の方が早いだろう。
それもそう信じさせるための策かもしれない。
いや、あのフィクションがそんな回りくどい事をする必要があるか?
ちらりと視点を女子高生の方に向ける。



「加奈子さん、あなたは彼とはもともとのお知り合いか何かですか?」
「いえ、私もさっきであったばかりですよ?」
「では、彼の名はどうやって知ったのですか?」
「どうって…………普通に名乗られましたけど?」

何故そんなことを聞くのか、といった顔の少女。
その線は薄いと思ってはいたが、既知である可能性は消えたか。
というより、この加奈子という少女。
動きの素人くささといい、これまでの反応といい。
フィクションの事なんて何も知らない完全な一般人で間違いない。
仮にこの男がフィクションを騙る偽物だとしても、こんな相手を騙す必要があるだろうか?
虎の威を借るにも虎の存在をしらなければ借りたところで意味がない。
というか、本物だったとしても正体不明の暗殺者が普通に名乗るなよ。
ため息をついて、男に向き直る。

「単刀直入に訪ねましょう。
 あなたが"あの"フィクションなのですか?」
「さぁ? 君が言うのがどのフィクションかは知らないが、そう呼ばれていたこともあるね」

何ともつかみどころのない、はっきりとしない回答だ。
フィクションの模倣犯など星の数ほどいる。彼もその一人である可能性は否定できない。
だが、今のところここにフィクションがいるということを知っているのは、名簿を配られた私だけ。
この場で、その名を名乗る人物がいるという一致は偶然として片づけていいものではない。
もしかしたら本名フィクションさんなんて奇特な名前の人である可能性もあるだろう。
だが、この男は、反応からしてフィクションを識っている。

「それで、ボクが君の言うフィクションだった場合、どうしようっていうんだい?」

試すような声。
まあ、確かに知的好奇心が先行してその後はあまり考えていなかった、というのが正直なところなのだが。
伝説の暗殺者が目の前にいたら何をするか。
考えるまでもない。暗殺者にお願いすることなんて一つだろう。

「そうですね。ここはひとつお仕事でもお願いしましょうか」

■■■■■■■■



「仕事の話ねぇ。まあ今は臨時開店中だし、話くらいは聞くけど。
 加奈子ちゃんも待たせてるんだし、出来れば早く済ませてほしいかな」

内容が内容なだけに場所を変え、加奈子さんには少し外してもらった上で話を切り出す。
もちろん周囲の安全は確認したうえで、何かあってもどうにかなる場所に待機してもらった上でだ。

「劉厳という男をご存知ですか?」
「名前くらいは。確か指名手配中の格闘家だっけ?」
「ええ。では、その劉もこの場に参加者として呼ばれてることはご存知ですか?」
「初耳だね。で、その劉を始末しろと?」
「いいえ。ターゲットは劉ではありません。
 というより劉はもう死亡しています、つい先程すぐそこの広場で殺されました」
「へぇ」
「偶然ですが私はその現場を目撃したのですが。
 その下手人、殺してくれません?」

あえてストレートに告げてみる。
相手の反応を伺ってみるが、表情に変化はない。
つまらなさ気というか、どこか興味なさ気な顔のままだ。

「なんでその男を? 別に君は劉と親しかったってわけでもないんだろ?」
「身の安全のためですね。相手は人間とは思えない化け物でしたから
 はっきりって私ではどう逆立ちしても勝てる相手ではさそうですし」
「そんな化け物を殺せって? 無茶を言うね」
「ええ、ですからあなたに依頼するんです。
 私の知る限り、あの化け物に匹敵できそうなのはあなただけですから」

これはホント。
運河は……まぁ化け物退治の役に立つとは思えないし。
あの化け物相手だと他の殺し屋連中でも勝ち目は薄い。
というか、王凰やオーヴァーなんかとは直接交渉自体したくない。

「知る限り、か。
 まるでほかの参加者が誰なのか知っているような口ぶりだね」

流石に目ざとい。
まあここで変に勘ぐられても面倒だし、隠すようなことでもないか。

「ええ。私の支給品に参加者候補の名簿がありましたので。
 その中でもあなたの名前は少し抜けてる」
「なるほど、それは随分と過大評価だねぇ。ボク割と喧嘩弱いよ?」
「ご謙遜を。あなたほど高名な暗殺者はいないでしょうに」

私の世辞のような言葉に男は僅かに眉をしかめた。

「それ、あんまり嬉しくない評価だなぁ。名前が売れるなんて三流の証だし」
「あなたの場合は例外でしょう?」
「いや、どんな理由であれ名前が売れちゃったのは割とショックだったんだぜ?
 そんなつもりもなかったしね」

『フィクション』の場合名前の売れ方が他の三流とは理由が違う。
一度や二度ならまだしも、不可能犯罪に近い行為を繰り返されれば弥が上にも話題になる。
ほとんど都市伝説の扱いに近い。


「まぁそれでも依頼したいっていうんなら別にいいけど、自分で言うのもなんなんだけど、ボクは結構高いよ?」
「ええ、構いませんよ。ここから脱出できたらいくらでもお支払いしましょう」
「脱出したらってことは、つまり君がこの場で死んだらご破算ということだ。酷いね。
 それに生憎、前金制なんだ。それじゃ依頼は受けれない」
「……わざわざ前払いにしなくとも、あなた相手に支払いを渋る命知らずはいないでしょう?」
「そうでもないさ、取立ても面倒だしね」

そういう問題なのだろうか?
ともかく本人的には大真面目っぽいので、譲る気はなさそうだ。

「けど、この場で私に支払えるものなんてありませんよ?
 大抵のものは没収されてますし。まさか体で払えとでも?」
「それはいいね。ちょうど手は欲しい所だったんだ、キミは何が出来るんだい?」

つまり、私が使えるかどうか。有能さを示せということか。
彼の目的、脱出につながる成果を。
少し思案し、バックの中からあるものを取り出す。

「それは?」
「劉の首輪です」

どうやってとったのか、なんてくだらないことは互いに言わない。
わかりきったことだ。

「で? それをキミが解析すると。出来るのかい?」
「ええ、情報収集と解析が私の専門分野ですから」

機械工学は専門外だけど、それは言わない。
専門家を探しだすのも予定のうちだ。

「ふーん。まあいいや。前払い分としてはそれでいいよ。
 依頼を受けてやってもいい。ただし幾つか条件がある」
「条件?」
「まずひとつ、仕事をするにも道具がなければ話にならない。
 とりあえず君の持ってる武器を全部渡してもらおうか」
「武器って……私にこの戦場を素手で行けと?」
「ああ、情報収集が専門なんだろ?
 だったら武器なんてなくてもいいんじゃない?」

酷い。
この人酷い。
カツアゲかよ。

「……せめて護身用の武器くらい持っておきたいんですが。
 私が死んだらあなたにとっても不利益でしょう?」
「そう? 別にどっちでもいいんだけど、正直あまり期待もしてないし」

……正直過ぎるだろこの人。
いや、単純に私に対する期待感の現れか。
信頼されていない。
初対面なのだから当然と言えば当然なのだが、舐められてるのは癪だが仕方あるまい。



「わかりました。劉厳の支給品は回収してありますので、こちらは差し上げます。
 落としどころしてはこれでいいでしょう?」
「まぁそうだね。それでいいよ。
 あ、地図とか食料とかの日用品はいらないから」

意外と細かい。
しぶしぶながら荷から支給品を見繕う。

「あぁそうそう。君の支給品の参加者候補の名簿。
 それももらっていいかい?」
「……ええ、それはかまいませんが?
 私はもう確認しましたし中身はだいたい覚えてますから」
「ああ、ありがとう」

幾つかの支給品とともに参加者名簿を手渡す。

「次の条件だけど、依頼を受けたとしても、行動の優先順位としてはボクの目的を優先させてもらう。
 もちろん脱出の手掛かりを探しながら索敵はするが、索敵のための索敵はしない。かまわないかい?」
「ええ、それで構いません」

状況が例外的すぎるため、ある程度の妥協は必要だろう。
この場においては彼も巻き込まれた側だ。
この条件は仕方ないところだろう。

「じゃあ最後の条件、というか大前提なんだけど。
 実際相手を見て倒せないと思ったら、依頼からは手を引かせてもらうよ」
「ちょっと待ってください……それって、総合すると。
 索敵もしなければ見つけても勝ち目がなければ戦わない、ってことですか?
 それじゃ依頼を受けたって言わないんじゃないですか?」

というか、そんな話はない。
一つ一つの条件はともかく、積み重なると流石にない。



「うーん。そうだなぁ。キミはムサシ・ミヤモトを知っているかい?
 生涯無敗の剣豪なんだけど。何故彼が負けなかったか知っているかい?」

いきなり何の話だ?

「さぁ? 単純に強かったからじゃないですか?」
「違うね。それもあるけど、負ける相手と戦わなかったからさ」

……なるほど。
そういう話か。

「つまり、あなたも同じだと?」
「まあ、そんなところ。それがヘイホーってものだろう?
 ボクはできない依頼は受けないんだ。その是非を確かめもせず依頼を受けるなんて結構特例なんだぜ?」

特例。
特例ねえ。

「それに、君の条件だって似たようなもんだろう?」

む。確かに。
私が首輪を外すすべを手に入れられる保証はない。
曖昧な報酬に曖昧な報酬。
なるほど、これはイーブンなのだろうが、すでに支給品を渡してしまった分こっちが不利か。
渡してしまった以上、断っても得がない。契約が成立してから渡すべきだったなクソ。
そこまで相手の思惑通りなんだろうが、食えない男だ。

「そうですか…………そうですね。わかりました。その条件を呑みましょう。
 ちなみに聞いていいですか?」
「なんだい?」
「コレまで依頼を断った経験は?」
「ん? そうだなぁ、そういえばないね。ま、たまたまさ」

本当に、食えない男だ。

■■■■■■■■



「とりあえず、成果にかかわらず、正午に一度落ち合おうか。
 場所はそうだなぁ、なるべく人目に付かない方がいいかな」
「でしたら教会はどうです?
 市街から外れてますし、別段人が集まるような施設でもないですし」
「そうだね、そうしようか」

と、言うわけで、ある程度の情報交換の後、合流場所を決めてフィクションとはそのまま分かれた。
合流場所に現れてない場合は、まあそういう事なので言うまでもないことだ。
そしてしばらく行って完全に姿が見えなくなったところで息をついた。

「はぁー、緊張したぁー」

エージェントの顔を取っ払い緊張を解いたと同時に、どっと汗が出た。

途中まで訝しんでいたが、しばらく話してて分かった。
アレは、本物だ。
私だって普段の美少女イリアム・ツェーンちゃんとスーパーエージェントイリアム・ツェーンの顔くらいTPOに応じて使い分けてる。
けど、あいつにはそれがない。
あまりにも感情のぶれがなさすぎる。
多分あいつは、あの調子で人も殺せる。
表面はまともだが、根っこの部分で壊れてる。

「まったく、化け物だらけね…………この島は」

かと思えば葉桜加奈子のような一般人もいる。
本当に、選考基準が謎だ。

しかし、我ながらよくぞ度胸とハッタリだけであの交渉を切り抜けたものだ。

報酬はいくらでも払うといったものの、あんなもんもちろん嘘である。
というより、目下就活中の私に金なんてない。
だが、あの場ではあの回答で正しい。

化け物は化け物同士潰し合ってくれればいい。
相討ちになれば支払もせずに済んでさらにベストだ。


問題なのはフィクションが依頼を達成し、互いに無事に脱出できた場合にどうするかだが。
無事に脱出できてる時点で最悪とはいえない。
今後を考えられるだけ現状よりましだ。

うまくいかなかったらいかなかったでそれはそれだ。
フィクションが死んだところで私にはなんの痛手でもない。
殺し屋なんてそんなもの。
後腐れなくて結構だ。

渡した支給品の方も劉のモノをまるまる渡したっていうのは嘘で、使いやすいモノは確保してあるわけだし。
例えばこのM36レディ・スミス。女性向けの護身銃だ。
こんな豆鉄砲があの化け物を倒す役に立つとも思えないし、私が持っておくという判断は悪くない。

つまりどう転んでも損はない。
もっとも、取引がなくとも私は首輪を解除するために動くだろうし。
依頼がなくとも見の危険が迫れば彼はあの男を殺すだろうが。
彼の意識が少しでもそちらを向いて、少しでも早く危険要素を排除してくれるよう動いてくれれば御の字だ。
ちょっとした保険というより、伝説の暗殺者に依頼してみたという思い出依頼である。

どちらにせよとりあえず、私の動きに変わりはない。
首輪解除のために技術者を探して、後ついでに運河も探す。

ああそうだ、あのフィクションに会えたこと、運河に会えたら自慢するとしよう。

【一日目・黎明/C-5草原】
【イリアム・ツェーン】
【状態】健康
【装備】M36レディ・スミス
【スキル】なし
【所持品】基本支給品×2、不明スキルカード(確認済)、不明支給品0~1、首輪×1
【思考】
1.参加させられてるであろう逆井運河を探す
2.首輪を解析できる技術者を探す
3.正午に教会でフィクションたちと落ち合う
※参加者候補の名前は記憶しています

■■■■■■■■



「結局、イリアムさんと何の話をしてたんですか?」
「ま、大した話じゃないさ」

10分ほど二人で話した後、戻ってきたのはフィクションさんだけだった。
イリアムさんはそのまま行ってしまったそうだ。

「なんだかお互い知ってる風でしたけど、イリアムさんとお知り合いだったんですか?」
「いや、初対面だよ。少なくともボクは彼女のことなんて知らなかったし」

いつものことながら含みのある言い方だ。
相手を知らないが、相手は自分のことを知っているかもしれない。ということだろうか?

「……ひょっとしてフィクションさんって有名人?」
「ハハハ。いやいや、まさか。
 それより加奈子ちゃん、面白いモノも手に入れたんだけど」

そういってフィクションさんが取り出したのは一枚の紙切れ。

「? なんですかそれ?」
「参加者候補の名簿らしいよ。
 快く彼女に譲ってもらったものなんだけど、後で一緒に見ようか」

【一日目・黎明/C-5草原】
【葉桜加奈子】
【状態】健康
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品1~2
【思考】
基本:日常に帰る
1.フィクションと協力して脱出方法を探す

【フィクション】
【状態】健康
【装備】日本刀
【スキル】『ブラックアウト』
【所持品】基本支給品、不明スキルカード(確認済)、候補者名簿、不明支給品1~3
【思考】
基本:脱出してヨグスを始末する
1.とりあえず町に行って情報収集
2.板垣退助が見つかったら殺せそうなら殺す
3.正午に教会でイリアムと落ち合う
※板垣退助の外見的特徴を把握しています

17:片手だけつないで 時系列順 20:そして彼の受難は続く
17:片手だけつないで 投下順 19:魔法少女になりました!
12:元エージェントはどこへ行く? イリアム・ツェーン 24:僕たちの失敗
07:日常への帰還 フィクション 22:蛮勇引力
07:日常への帰還 葉桜加奈子 22:蛮勇引力


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