これは、眠れる嬰児の夢の中にて語られる小休止
これは、刑期が始まる数日前に語られた読み聞かせ。
夢遊病のアリスが新世界の嬰児に語る世にも不思議なお伽噺。
皆様、どうぞご観覧あれ。
☆
からん、ころん。からん、ころん。
きれいなお日さま。きれいなあおぞら。
帽子屋さんとウサギさんと、そしてあの娘とのたのしいお茶会。
わたしはいつも夢の時間にここに来る。
たのしい夢の中、たのしい時間。
「メアリー、待ってたよ!」
そしていつもの時間、いつものようにあたしは振り返る。
わたしの後ろに、女の子。
うきうきウサギさんのように飛び跳ねて、懐中時計を気にしながら。
「ありす!」
ありす、夢巡ありす。
わたしよりも前からこのアビスにいる子。
おねむの時間になると、わたしを夢の中のお茶会にいつも誘ってくれるの!
怖い大人たちは気づかれない、わたしたち二人だけの秘密のお茶会!
「メアリー、早く座って、今日のおやつは美味しいドーナツよ!」
わたしが席に座って、ありすも席に座る。
そうしたら、魔法のように机の上にお茶とおやつと現れるの!
まえのお茶会のデザートは大きなショートケーキだったわ!
あれはとても美味しかった!
出てきたドーナツは色鮮やか!
手にとって口にいれると、甘くて甘くてほっぺがとろけ落ちそう!
おててがベタベタにならないように、ウサギさんが濡れタオルも用意してくれるの!
れでぃ・ふぁーすと? がちゃんとしているのね!
「メアリー、今日はとても面白いお話も用意しているのよ!」
「ええっ! ほんとう!?」
今日のお茶会はおいしいドーナツだけじゃないみたいなの!
たまにあるありすちゃんが見せてくれるおはなし、ありすちゃんが知ってるおはなし、ありすちゃんが考えたおはなし!
前にきかせてくれた紙芝居は、アイドルが別の世界にてんせい?する物語だったの!
あれはとても楽しかった!
「聞かせて!早く聞かせて!」
「そうあせらないでメアリー、おはなしはちょうちょさんみたいに遠くへはいかないわ!」
ドキドキがとまらない、そんな私をありすはなだめてくれる
ありすちゃんが指をふったら、大きなテレビが現れてくれる
たのしいたのしいものがたり、たのしいたのしい二人の時間はまだ続くの!
「ちょっとむずかしいお話だから、あざかお姉さんにてつだってもらったの。きゃくしょく?をしてもらったわ!」
「それでも、ありすちゃんのお話だからわたしは大丈夫だよ!」
「そう!それはよかったわ! 今から始まるものがたり、どうぞ楽しんでいってほしいわ!」
『始まるよ! ありすのお話始まるよ!』
『始まるよ! 大声べちゃくちゃ厳禁よ!』
『始まるよ! ものがたりの、はじまりだ!』
お花さんや太陽さんが顔を出して、喋り始めて!
そうやってありすのものがたりが、また始まるの!
☆☆☆
『タイトル:ありすの冒険 光とやみのアリス』
脚本:夢巡ありす、あざかお姉さん
ある山おくの、さびれた家にありすという少女がいました。
ありすはゆかいな家族たちと、今日も明日もあさっても、楽しく楽しく暮らしていました。
それでもたのしい日々がずっと続くと、飽きがきてしまうものです。
ある日、ありすはそんな退屈な日々に嫌気が差して、外へ冒険にいくことにしました。
みんな心配しますが、ありすにはいつでも呼べる頼もしい従者たちがいるのです。
なので心配しないでと、ありすは家族のみんなに笑顔で答えて、すたこらさっさと冒険に行ってしまいました。
たんたんたたん、森をこえ、山をのぼり、誰もみたことのない場所を探して、ありすは歩きます
冒険の途中、ありすは一人のおじさんと出会いました。
「シビト」と名乗ったおじさんは旅を続けており、"かみさま"のためにここに訪れたとのことです
ありすはかみさまのことは知りません、でも、かみさまのために頑張るおじさんに、ありすは拾った木の実をおじさんにあげました
おじさんはありすにありがとうと言いました。お礼にありすの旅についてきてくれるそうです
ありすは喜びながら、おじさんと一緒に再び歩き始めました。
冒険のなか、おじさんが通りかかりのおにいさんからあるうわさを聞きました
「この先には、入ったら二度と戻ってこれない場所がある」とのことです
なにやらあぶない場所みたいですが、ありすの好奇心はとまりません
ありすは目的地はそこに決めました
なん日も歩いて、ありすとおじさんは、目的地へとたどり着きました。
ちいさなちいさな、何のへんてつのない場所でした。
でも、耳をよくかたむけると、たのしい歌が聞こえるのです
ここはえいえん、ここはえいえん、みんな楽しく暮らせるよ!
どんちゃん踊れ、どんちゃん歌え、ここはたのしいネバーランドだ!
そこは一つの村だったのです!
かつてありすが絵本で読んだ、子供たちばかりがいるネバーランドのように
ネバーランドは本当にあったんだ!とありすはおおはしゃぎです
たのしいありすとは別に、おじさんは何やらむずかしい顔をしていました
みんなありたい自分でいられるんだ!
しぬことも、おいることもない! たのしいたのしい一日だよ!
ばんざいばんざい、女王さまばんざい! アリスバンザイ!
どうやら、アリスという名前の女王さまがこの村のおひめさまみたいです
そして死ぬことも老いることもない、みんなその気になれば子どものようにずっと遊ぶことが出来るたのしい国なのです!
ずっとおまつりをやっているような村のみんなを見つめながら、ありすとおじさんは進みます
すると、みんなから置いてけぼりにされているみたいな、眠った女の子と、そんな女の子をながめているおねえさんがいました
おねえさんは「あーし」みたいに、おかしな言い回しをする、「ギャル」の"まほうつかい"でした。
どうやら、まほうつかいのおねえさんも噂を聞いてここにやってきたそうです
おねえさんは、まほうのためしうちをして、この女の子がいた場所を吹き飛ばしてしまってちょっとこまっていました
どうしよう、どうしよう! ありすは何とかこの子を助けたいと思いました
すると、おじさんがポケットからちいさな木の棒を取り出して、眠った女の子の方へ向けました
木の棒がちいさく輝いたと思えば、なんと女の子の傷はみるみるとふさがって、目を覚ましたのです!
目を丸くする女の子は、まるで本当にふしぎの国のアリスのように綺麗で可愛いものでした
そう、ありす。光り輝いてるように思える女の子。
女の子は自らを「あになんとか」だかと名乗っていましたが、ありすには「アリス」と聞こえてしまったのでしょう
あなた、光のアリス? ありすは女の子をそう勝手に名付けてしまいました。
ありすの光のアリスという呼び方に、おじさんもまほうつかいも面白がって呼び始めてしまいます。
仕方がないので、女の子は当分、自分から「光のアリス」と名乗ることにしました。
ここは、たのしい村なの? とありすは訪ねます
すると「光のアリス」少し考え込んだあとに、むずかしい顔をして否定しました
そして「光のアリス」はかつてこの村で起こったことを語り始めました
とおいむかし、この村はわるいかみさまがみんなにひどいことをしようとしていました
それを「光のアリス」とその仲間たちが力を合わせて退治したようです
ですが、わるいかみさまを倒したあとに、仲間の一人がみんな裏切って、わるいかみさまの力を独り占めしてしまったのです
そのうらぎった仲間が、なんとこの村の女王さま「アリス」だったのです
そんなの、ひどいわ! それじゃあここのみんなは悪い王女さまにいいようにされているのね!
ありすはぷっくりお顔を膨らませて怒りました
光のアリスとせいはんたいの「やみのアリス」が支配するえいえんのくに
まほうつかいのおねえさんが言った、フック船長が支配しているネバーランドという例えが思わずハマってしまいました
こうしちゃいられない!わるいアリスを倒してみんなをたすけないと!
ありすの心は燃え上がります
おじさんとおねえさんも、ありすとは目的は違うそうですが、ありすのやろうとしていることを手伝ってくれるそうです
「光のアリス」は、また少し考え込んで、ありすに協力してくれると言ってくれました。
「やみのアリス」がいる大きなお城まで、そう遠くはありません
「光のアリス」の不思議な力も借りて、ありすたちは女王さまの下へと向かいます
だけど、それをさせないと、くにのみんなが立ちはだかります
女王さまに逆らうものは許さない!
あいつらもわたしたちの仲間にくわえてあげよう!
おまえたちも、わたしたちとおなじ永遠にしてあげよう!
まほうつかいのおねえさんと「光のアリス」がみんなを蹴散らしますが、きりがありません。
おじさんに何かさくせんがあるといい、襲いかかってくるみんなを、まほうつかいのおねえさんと一緒に何処かへ連れ去ってしまいました
ありすは「光のアリス」と二人ぼっちになってしまいましたが、迷ってる時間はありません
二人のありすは「やみのアリス」のお城に向かいます
大きなお城に入り、女王を守る兵隊さんたちを蹴散らします
そして、女王の間に繋がる大きな扉の前にたどりつくと、女王の声が聞こえました
あたしのえいえんの邪魔をする、おばかなにせもののありすたち
あたしの頼れる騎士サマの剣にサビにしてやろう!
扉がひとりでに開いて、玉座に座る女王「やみのアリス」が姿を表したのです
そしてその傍らには、剣を持った男の人のーー女王さまの騎士が立ちふさがりました
騎士さまの姿をみて、「光のアリス」が青ざめます
なんと、騎士さまの正体は、「光のアリス」のおもい人だったのです!
なんてひどい、ひどすぎるわ!ありすは憤ります
騎士サマは最初からあたしの騎士サマだ!「やみのアリス」はありすや「光のアリス」バカにするように笑いました
騎士サマと戦う「光のアリス」は苦しそうです
「光のアリス」は騎士サマのことが好きでした
なのにあまりにも残酷ではないでしょうか
そして、ありすもまた「やみのアリス」においつめられています
ここはあたしの村、あたしのえいえん!
誰もくるしまず、誰もしなない!
誰もつらいめに合わなくてすむのに!
なのにどうして? あたしの邪魔をするの?
「やみのアリス」はたからかに叫びます
ありすは、その言葉に勇気を振り絞って言い返します
違う違うわ! あなたの永遠はただの身勝手よ!
みんながみんなあなたと同じ永遠を望んでいない!
みんなにはみんなの欲しい永遠があるの!
みんなの命は、みんなの心はあなたの永遠のためにあるんじゃないの!
しかし、「やみのアリス」にありすの言葉は届きません
今の何も出来ないお前は無力だ! お前も同じくえいえんに加えてやろう!
逆にありすは「やみのアリス」自らの手で「えいえん」加えられそうになります
だれか!たすけて! ありすは叫びました
無駄だ、誰も助けにこない! 女王は嘲笑います
ですが、その時不思議なことが起こったのです!
女王を許すな! 女王を許すな!
よくもわたし達をだましたな!
おれ達の永遠を取り戻せ!
なんと、村のみんなが一斉に女王に反旗を翻し始めたのです
戸惑う「やみのアリス」やありす達の前に、何処かに行ってしまっていたおじさんとまほうつかいのおねえさんが現れました!
おじさんは、「光のアリス」を治した時のように不思議な力を使って、村のみんなを女王から解放してあげたのです!
そして女王の兵隊さん達を、まほうつかいのおねえさんがついででみんな倒してしまっていました!
同じくして、「光のアリス」と戦っていた騎士サマの動きも鈍くなりました
「光のアリス」はそんな騎士のスキをついて、何とか騎士サマを倒したのです
その時、「光のアリス」の目には涙が浮かんでいました
騎士サマがやられて、「やみのアリス」は狂ったように泣き叫びました
どうして、どうして、みんな「えいえん」が欲しいんじゃなかったの!?
女王が狂ったように喚き立てますが、にせものの「えいえん」を押し付けていただけの女王の言葉を、村のみんなは聞く耳を持ちません。
お城に怒り狂った村のみんながなだれ込んできました。
ありすと「光のアリス」は、おねえさんとおじさんに連れられ、城の外へと脱出しました
「光のアリス」はその寸前に騎士サマの持っていた"剣"を、形見として持ち去りました。
やめろ!やめろ!あたしは女王!あたしは女王だ!
だまれ!だまれ!悪い女王は俺達で食べてやる!
いやだいやだ!助けてお父さん!助けてお母さん!助けて騎士サマ!助けてかーー
城の中で、何が起こったのか、ありすたちは詳しくは知ることはありません。
ですが、悪い王女様は、正気に戻った村のみんなに裁かれたことでしょう
お城が燃えて、女王は倒され、この村に平和が戻りました。
おじさんは、村のみんなを連れてまた別のところへと向かうと言い、ありすに「神の祝福があらんことと」と言い残して再びたびに出ていきました
まほうつかいのおねえさんは、別れ際にありすのほっぺたにキスをして、風のように何処かに行ってしましました。まるで風のように自由なおねえさんで、もしかしたらピーターパンの生まれ変わりだとありすは思ってしましました
そして「光のアリス」は、自分探しの旅をする、この世界を見て回りたいと言いました。
まほうつかいのおねえさんから何かを聞いていたらしく、「やるべきことをしなくちゃ」とも言っていました。
最後にありすにお礼を言って、満面の笑みをありすに向けて何処かへ向かっていったのです。
そしてありすは家に帰ります
いろんな仲間と出会い、不思議な所に来て、悪い女王様と対峙した大変な冒険でした。
既にお空は真っ黒です
ですが、この冒険は、間違いなくありすにとって素敵な記憶となったのでした。
ーーめでたし、めでたし
☆☆☆
「すっごく面白かったわ!!!」
ありすの語ったお話は、とてもおもしろかった!
あざかお姉さんが多少「きゃくしょく」したみたいだけれど、どこをどうしたかは気にしない!
わたしは「光のアリス」と「やみのアリス」の今後が少し気になっちゃう
「よかったわ!よかったわ!! メアリーが喜んでくれるとわたしも嬉しい!」
ありすもすごく喜んでる!
ありすが嬉しいととわたしも嬉しくなるの!
ありすとわたし! わたしとありす!
ずっと、ずっとこんな日が続けばいいと思うことがある!
でも、夢の時間はずっとは続かないの!
ジリリリリ! ジリリリリ!
「あらあら! 名残惜しいけれどもう時間なのね」
夢の世界に目覚まし時計の音
これは、私とありすの夢の時間が終わる合図
夢は終わって、また現実が始まっちゃうの
「メアリー、もしかしたらメアリーに苦しいことが起こるかもしれない」
ありすが、何だか険しい顔でそんな事を言い始めるの
たしかに怖い大人がいっぱいいる現実は苦しい時もあるけれど
それよりもっと苦しいことが起きるのかな?
「その時は、私の名前を呼んで!」
ありすが、そう言ってくれます
ありすは友達、私の友達。
ありすと私は運命の赤い友情の糸で結ばれているの!
「絶対に、助けに行くから!」
そう言って、ありすは私と指切りげんまんします
嘘を付いたら針千本。
ですがありすがウソを付くことはありません
もしそんなことがあったとしたら、ありすに何かあった時だけ
そういう時は、ごめんなさいで仲直りしよう!
「約束、だよ!」
「うん、約束するよありす!」
指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ーます!
指切った!!
■
少女は未だ夢から目覚めず
少女は未だ現実に目覚めず。
そして世界は再び時を刻み始める。
世界はせまい 世界は同じ
世界はまるい ただひとつ
少女が目覚める時は、今はまだ遠き。
【F-6/岩山頂上/1日目・黎明】
【メアリー・エバンス】
[状態]:睡眠、少しご機嫌斜め
[道具]:内藤麻衣の首輪(未使用)
[恩赦P]:0pt
[方針]
基本.不明
1.朝まで寝る
※『幻想介入/回帰令(システムハック/コールヘヴン)』の影響により『不思議で無垢な少女の世界(ドリーム・ランド)』が改変されました。
より攻撃的な現象の発生する世界になりました。領域の範囲が拡大し続けています。
※麻衣の首輪を並木のものと勘違いして握っています
※メアリーがありすに助けを呼んだその時に、何が起こるかはご想像にお任せします
■
1035:以上、名無しがお送りします
おまえら、最近の都市伝説で面白いのある?
1036:以上、名無しがお送りします
面白いのだったら「光のアリス」ってやつがあるね
剣持って世界中旅してるんだって
1037:以上、名無しがお送りします
「光のアリス」って前に超力犯罪者が暴れてた時のことかな?
俺出会った事あるんだよなぁ
1038:以上、名無しがお送りします
まじかよ情報kwsk
1039:以上、名無しがお送りします
都内の雑貨屋の前で超力犯罪者が暴れてるところを超力使わず剣一本で鎮圧しちまったんだよ
話を聞くに、なんかヤマオリ絡みの何かの手がかり探してるらしい
あ、そういや「光のアリス」からサイン貰ったんだっけ俺
1040:以上、名無しがお送りします
最後になにか言い残すことはあるか? >>1039
1041:以上、名無しがお送りします
うらやまけしからん
最終更新:2025年04月21日 22:40