D-5の中央エリアに位置する草原にとある男がいた。
彼はその場には似つかわしくない金ぴかの座り心地の良い豪華な椅子に
腰を下ろしまるで王様のようにふんぞり返っていた。

「ふん、シェリンの奴。エーアイだかアンナイだか知らねぇがこの俺をこんなとこに連れてくなんて生意気なんだよ」

彼の名は郷田薫。かつて君臨する魔王を倒すため、異世界に召喚された5人の勇者のうちの1人である。
勇者の力として彼が授かったスキルは創造魔術。この世のあらゆる物質を創造するチートスキル。
その力で大量の金を創造し、世界中の最強装備をかき集め魔王討伐に貢献したのだった。
薫が今座っているこの椅子もまた、自身の創作魔術で作った代物である。

「奴は『他の勇者と殺しあっていただきます。』だの言ってたが他の39人全員ちまちま探して
ぶっ飛ばすなんてやってられるかっつーの!」

メニュー画面に映るメンバーを見ながら薫は1人不平を口にする。

「それに何で俺達がぶっ殺した魔王の名前があるんだよ。意味わかんねぇ」

先ほど椅子に座りながらメニューの[[メンバー]]を見ていた薫は
「魔王ガルザ・カルマ」の名前があることに違和感を覚える。
この『New World』に来る前にいた異世界の魔王城にて、
薫は魔王ガルザ・カルマが魔物や人、あらゆるの命を取り込み、超絶的な力を得た
陣野愛美の一撃を受け、止めを刺され消滅する様を確かに目撃していた。
しかしいくら考えても答えが出ず、薫はすぐにそのことについての思考を止める。

「まぁ、いいや。まず今は子分が必要だな。あん時みたいにな」

薫は小学生の時を思い出す。ガキ大将として少年野球クラブのリーダーとして
他のメンバーをトレーニングの為ビシバシ鍛えていた日々。
薫が高校受験で失敗するまでの出来事で一番の思い出だった。

「とりあえずこいつで子分を作れるみたいだが、他にいる奴をぶん殴って言うことを聞かせるのが一番だな」

薫は[[アイテム]]から取り出した「W」の文字が書かれた黒い球体を見つめる。
説明によれば物にくっつけると、「ワルダーマ怪人」なる物が生まれる。というような内容が書かれてあった。

「それに愛美のこともあるしな。兆と誠の奴がここにいねぇのは気になるがむしろチャンスかもしれねぇ」

薫はかつて共に世界を救ったメンバーのことを思い出す。
特に異世界では大量の金や財宝、豪華なドレスなどを贈ってものらりくらりとかわしていた陣野愛美。
この殺し合いの場で自分のかっこいいところを見せれば彼女も自分に惚れ直すに違いない。
薫はそんな下心を隠せず、ニヤリと笑う。

「ったく、しょうがねぇ。めんどくせぇが行くしかねぇか」

薫は椅子のクッションの座り心地を惜しむようにゆっくりと立ち上がる。
そして、大きなため息をつきながら歩き始めるのだった。


[D-5/草原/1日目・深夜]
[郷田 薫]
[パラメータ]:STR:E VIT:E AGI:E DEX:E LUK:E
[ステータス]:健康
[アイテム]:ワルダーマ玉、不明支給品×2(確認済み)
[GP]:0→10pt(キャンペーンで+10pt)
[プロセス]:
基本行動方針:全てのものは俺のもの
1.自分の言いなりになる子分を見つける
2..陣野愛美を探す
3.優勝する
[備考]
D-5の草原に郷田薫が創造魔術で作った豪華な椅子が放置されました


【ワルダーマ玉】
「魔法少女エンジェル☆リリィ」の劇中にて敵組織「ワルダーマ」の幹部が使用する「W」の文字が書かれた黒い球体。
中に「ワルダーマウイルス」が入っており、物体に憑依させることで、その物体を「ワルダーマ怪人」にすることができる。
「ワルダーマ怪人」になった物体は5mほどの大きさになり、「ワルダーマー!」と鳴き声を発しながら
建物の破壊、生命体の精神や肉体を弱らせる胞子を撒き散らしながら暴れ回る。

023.偶像魔宴 投下順で読む 025.多分こいつは敵だと思う
022.お宝大作戦 時系列順で読む 033.検証:影の反対には太陽があるのか?
GAME START 郷田 薫 それは転がる岩のように

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最終更新:2020年10月14日 22:01