雪原に聳え立つ巨大な塔。
その頂上に置かれた白いオーブが光り輝き、雪の塔は制圧された。
「うーん。拍子抜け…というか興醒めネ」
頂に立つ男は落胆した表情で頬を掻く。
その頭や肩には雪が乗っている。
おそらくは長時間屋外にいたのだろう。
「まさカ誰一人塔を取りに来ないなんてネ」
このシャという男、最初に遭遇したけるぴーこと馬場堅介を殺害した後、スタートダッシュボーナスの期間中にもう1、2人殺しておきたいと思い参加者と接触しようとした…のだが。
姿を隠してみたり、逆に大声で叫んでみたり、大の字で寝転がってみたり、途中まで塔に登って上から眺めたり、少し塔から離れて探索してみたり、山に登ってみたり下りてみたり、中央エリアに渡る橋の前で仁王立ちしてみたり。
とまあ次なる獲物を求めてかなり頑張って動き回ったのだが、誰一人シャの前に現れることはなく、そうこうしている間にスタートダッシュボーナスが終わってしまったのだった。
「これだけ探して見つからナイとなるト、ココからはもう離れた方がいいだろうネ」
1時間以上近辺を探したが人っ子一人見つからない。おそらくこの辺りがスタート地点となった参加者自体が少ないのだろう。
それに中央や砂漠と比べればこのエリアはとにかく寒い。
仮に中央エリアで大規模な戦闘でも発生してくれればあるかもわからないが、こんな序盤では中央からわざわざ厳しい環境に流入してくることもないだろう。
となると雪の塔を制圧した今、もはやこのエリアにいても旨味はない。
中央エリアに移動すべきかとも考えたシャだったが、マップを見てあることに気づく。
「オヤ。砂の塔も制圧されたカ。」
雪の塔には支配者であるシャの名が記されている。
そしてその隣のエリアにある砂の塔。ここにも既に支配者の名が記されていた。
支配者の名はBrave Dragon。
先ほど出会ったけるぴーがリア友だと言っていたプレイヤーだ。
シャの口元が三日月のように歪む。
けるぴーとの戦いはそれなりに楽しめた。
彼のリア友だというのなら期待が持てる。
けるぴーからはBrave Dragonについて、脳筋プレイを好む人間で、FW3では大剣を抱えて敵陣に突撃してよく蜂の巣になると聞いている。
けるぴーとはまた違った戦いが楽しめるだろう。
「決まりだネ」
次なる目的はBrave Dragonとの交戦だ。
目標が雪の塔を制圧しにこちらに向かっている可能性もあるが、殺されたくない一心からどこかへ逃げ去ってしまっていることも考えられるし、案外彼が好戦的で砂の塔を制圧しに来る者を待ち伏せているかもしれない。
いずれにせよ己が向かうべきは砂の塔だ。
さあ――楽しくなってきた。
[A-5/雪の塔近くの雪原/1日目・黎明]
[シャ]
[パラメータ]:STR:B VIT:C AGI:B DEX:B LUK:C
[ステータス]:健康
[アイテム]:不明支給品×3、タリスマン
[GP]:100pt
[プロセス]
基本行動方針:ゲームを楽しむ
1. Brave Dragonとの交戦
2.砂の塔の制圧
最終更新:2020年10月14日 21:58