5/23日。
それは世間的に?ネット的に?
とにかくその日は、キスの日って呼ばれてるらしい。
それは世間的に?ネット的に?
とにかくその日は、キスの日って呼ばれてるらしい。
まあ私には何の意味もない日で。……シロ姉はいのりとお砂糖してるから、私が手を出そうなんて無粋なことは思えないし。
「仔猫さん、今日はキスの日ですねっ!」
――そんなことを考えてたら。噂をしたらなんとやら。……バカ(いのり)が来た。
「キスの日って胸がワクワクしませんか?だってキスの日ですよ、キスの日!」
「それはいのりだけ。私は別にお砂糖相手なんていないし……」
「……あれ?じゃあよく遊んでるタチバナさんは違うんですか?」
「……あれ?じゃあよく遊んでるタチバナさんは違うんですか?」
タチバナさん。
その名前を聞いて――少しだけ心がズキリとする。
今日は5/23日。キスの日。
それなのにタチバナさんは――私の大切な人は、まだinして来ない。
その名前を聞いて――少しだけ心がズキリとする。
今日は5/23日。キスの日。
それなのにタチバナさんは――私の大切な人は、まだinして来ない。
「……知らない」
だから――私はちょっとだけ、モヤモヤしていた。
こんなこと理不尽だなんてわかってる。相手がなかなかinしないから拗ねるだなんて……幼稚で私らしくもないかもしれない。
こんなこと理不尽だなんてわかってる。相手がなかなかinしないから拗ねるだなんて……幼稚で私らしくもないかもしれない。
「……拗ねてる仔猫さんって珍しいですね。まあでもきっと――タチバナさんは来ますよ」
「どうしてそう思うの?」
「どうしてそう思うの?」
いのりに拗ねてることがバレてるのは――まあ恥ずかしいけど、いのりらしいとは思う。意外と本質を見抜くような一面があるし……。
それにしても、どうしてタチバナさんが来るなんて言えるんだろう。あの人はこんな大切な日に、まだ来ないのに――。
「うーん、そうですねぇ。やっぱり愛は、最強だからですかねっ!」
愛は最強、か――。
言いたいことはわかるけど――それでも事実としてタチバナさんはなかなか来ないわけで。
もしかしたら今日はこのまま来ない可能性すら――。
言いたいことはわかるけど――それでも事実としてタチバナさんはなかなか来ないわけで。
もしかしたら今日はこのまま来ない可能性すら――。
『ピッ』
その瞬間――私にインバイトが飛んできた。
ユーザー名は『タチバナ』。それは間違いなく――。
ユーザー名は『タチバナ』。それは間違いなく――。
「……たしかにいのりの言った通りだった」
「おっ、インバイトでも来たんです?」
「おっ、インバイトでも来たんです?」
「うん。……ありがとう、いのり。言ってくる」
「えへへ、仔猫さんが嬉しそうで良かったです。行ってらっしゃい」
「えへへ、仔猫さんが嬉しそうで良かったです。行ってらっしゃい」
私は笑顔で手を振るいのりに見送られて――タチバナさんが招待(インバイト)したワールドに転移した。
〇
(……すごい)
そこは、パステルカラーのワールドで。
マカロンや大きな飴。色々なスイーツが散りばめられた、ゆめかわ空間だった。
マカロンや大きな飴。色々なスイーツが散りばめられた、ゆめかわ空間だった。
「――ようこそ、仔猫ちゃん♡」
そして――笑顔のタチバナさんが私を出迎えてくれる。
その笑顔は眩しくて、暖かくて……。でもなかなか会えなかったから素直になれなくて……。
私はぷい、と首を横に向ける。
その笑顔は眩しくて、暖かくて……。でもなかなか会えなかったから素直になれなくて……。
私はぷい、と首を横に向ける。
「……もしかして仔猫ちゃん、拗ねちゃってます?」
「知らない。バカタチバナさん」
「知らない。バカタチバナさん」
――ほんとはタチバナさんと会えて、嬉しいのに。
どうして今の私は……素直になれないのかな。
どうして今の私は……素直になれないのかな。
タチバナさんと初めて迎えるキスの日に勝手に期待して。昨日は眠れず、夜更かしまでして。それでもなかなか会えなくて……。
勝手に期待した私が悪いとわかってるけど、でも――。
「……やっぱり待たせちゃったこと、怒ってますか?」
「別に……私は何も、待ってないから……」
「別に……私は何も、待ってないから……」
素直になれない私。
ゆめかわで、可愛らしい音楽の鳴ったこのワールドには似合わない……可愛くない私。
ゆめかわで、可愛らしい音楽の鳴ったこのワールドには似合わない……可愛くない私。
「今日は待たせちゃってごめんなさい。でもせっかく特別な日なので――仔猫ちゃんに似合う、可愛らしいゆるふわワールドに招待したいと思いまして♡
探してたら、思った以上に時間がかかっちゃいましたけど――」
探してたら、思った以上に時間がかかっちゃいましたけど――」
「特別な日?」
どうせタチバナさんはキスの日なんて知らないくせに。
そんなふうに強がる私は――お兄ちゃんが見たら『ダサいぞ、仔猫ちん』なんて言ってくるかもしれない。
そんなくだらないことを考えてる時――
そんなふうに強がる私は――お兄ちゃんが見たら『ダサいぞ、仔猫ちん』なんて言ってくるかもしれない。
そんなくだらないことを考えてる時――
「仔猫ちゃんも知ってるんじゃないですか?」
タチバナさんは、私の頬に優しく手を添えて――。
「キスの日、ですよ♡」
――ちゅ♡
柔らかな唇で、甘い口付けをしてきた。
……タチバナさんとVRCをするようになってからいつの間にか『VR感覚』を得ていた私は、ほんとにタチバナさんとキスをしてるようで。
嬉しくて、幸せで――。
柔らかな唇で、甘い口付けをしてきた。
……タチバナさんとVRCをするようになってからいつの間にか『VR感覚』を得ていた私は、ほんとにタチバナさんとキスをしてるようで。
嬉しくて、幸せで――。
「……今日は待たせちゃってごめんなさい。でも私は絶対に――仔猫ちゃんを離しませんから、安心してくださいね♡」
ぎゅ――♡
私の小さな体(アバター)を抱き締めるタチバナさんの柔らかくて、私よりも大きな体。そしてこうして身体を合わせることで感じる、タチバナさんの温もり――。
私の小さな体(アバター)を抱き締めるタチバナさんの柔らかくて、私よりも大きな体。そしてこうして身体を合わせることで感じる、タチバナさんの温もり――。
「……わかった。私の方こそ、勝手に期待して……拗ねちゃって、ごめんなさい」
「気にしないでくださいな♡サプライズとはいえ、時間が掛かった私も悪いですから。それにしても――仔猫ちゃん、期待してくれてたんですね♡」
「……うん。だってタチバナさんは大切な人だから」
「そうですか♡ほんとに仔猫ちゃんは、愛らしくて――そんな仔猫ちゃんだから、サプライズをしたいと思っちゃいました♡」
「そうですか♡ほんとに仔猫ちゃんは、愛らしくて――そんな仔猫ちゃんだから、サプライズをしたいと思っちゃいました♡」
タチバナさんは一度離れると――服装が変わった。昔のVRCはいちいちアバターを変える必要があったけど、今のVRCはすぐに服装を変えられる。便利な世の中になったと思う。
そしてタチバナさんは――いつものメイド服とは少し違う、猫がモチーフのメイド服に着替えていた。
「サプラ~イズ♡このメイド服――仔猫ちゃんにあげちゃいます♡」
「……え?」
「モデリングは大変でしたけど……仔猫ちゃんのためだと思ってがんばりました♡恋人らしく――お揃いです♡」
「モデリングは大変でしたけど……仔猫ちゃんのためだと思ってがんばりました♡恋人らしく――お揃いです♡」
タチバナさんの言葉の直後に、ディスコードの通知音。
XSOverlay――VRCにinしながらPCの画面を表示出来るsteamのアプリで、DMを確認。――そこにはタチバナさんからのファイルが添付されてた。
XSOverlay――VRCにinしながらPCの画面を表示出来るsteamのアプリで、DMを確認。――そこにはタチバナさんからのファイルが添付されてた。
「ありがとう、タチバナさん……!」
その事実がすごく嬉しくて。
さっきまで拗ねてたことがバカバカしいと思えるくらい――幸せで。
さっきまで拗ねてたことがバカバカしいと思えるくらい――幸せで。
「仔猫ちゃんが喜んでくれて良かったです♡ささ、私はここで待ってるので――早速導入しちゃってください♡」
「うん、わかった……♡」
「うん、わかった……♡」
タチバナさんの言葉に甘えてunityを開く。
そのメイド服はprefab化されてて、私のアバターに対応するようにサイズが調整されてて――導入はすごく簡単に終わった。
そのメイド服はprefab化されてて、私のアバターに対応するようにサイズが調整されてて――導入はすごく簡単に終わった。
そして早速――VRC上で着替えてみる。
メイド服の私を見て、タチバナさんはどう思うかな?
お揃いの服装になったというだけで――なんだか少しの緊張感と、幸福感。
メイド服の私を見て、タチバナさんはどう思うかな?
お揃いの服装になったというだけで――なんだか少しの緊張感と、幸福感。
「着替えてみたけど……どうかな、タチバナさん」
「すごく可愛いです♡そしてやっぱり私の恋人というだけあってメイド服が似合いますね♡」
「えへへ、ありがとう♡でもタチバナさんのお嬢様なのにメイド服って変じゃない?」
「何も変じゃないですよ。ほら、恋人同士でお揃いの服って――何かいいじゃないですか♡」
「うん。なんていうか……タチバナさんとお揃いって考えると、それだけで幸せになれる♡」
「それなら頑張った甲斐がありました♡」
「それなら頑張った甲斐がありました♡」
タチバナさんは優しく微笑むと――。
「ずっと一緒ですよ、仔猫ちゃん♡」
ぎゅ♡
私の背中に手を回して、抱き寄せて――。
私の背中に手を回して、抱き寄せて――。
「うん♡私たちはどんな時も絶対に一緒だよ、タチバナさん♡」
ちゅ♡
――今度は私からキスをして。
――今度は私からキスをして。
「絶対に――離さないから♡」
ちゅ♡れろ、れろ♡
情愛の赴くままに――タチバナさんの柔らかな唇を味わい尽くして。
情愛の赴くままに――タチバナさんの柔らかな唇を味わい尽くして。
「えへへ、これは仔猫ちゃんに一本取られちゃいましたね♡でも意外とそういう積極的なところも、大好きです♡」
ぎゅ♡
タチバナさんがあまりにも強く抱きしめるから――。
もう我慢が出来なくて――。
タチバナさんがあまりにも強く抱きしめるから――。
もう我慢が出来なくて――。
「ありがとね、タチバナさん♡」
タチバナさんをピンク色の床に押し倒して――。
「――いいよね?タチバナさん♡」
「~~♡♡ はい、もちろんです♡」
「~~♡♡ はい、もちろんです♡」
それから私たちはお互いの愛を貪り合った。
手と手を重ねて、優しく口付けをして、体を重ねて――。
タチバナさんの胸を揉む度に、彼女の可愛い声が響き渡る。
たった二人の空間を――贅沢にも極上の愛で埋め尽くした。
タチバナさんを抱き締めた温もりが――ずっと私を、包んでくれる。
手と手を重ねて、優しく口付けをして、体を重ねて――。
タチバナさんの胸を揉む度に、彼女の可愛い声が響き渡る。
たった二人の空間を――贅沢にも極上の愛で埋め尽くした。
タチバナさんを抱き締めた温もりが――ずっと私を、包んでくれる。
🐾
「えへへ。仔猫ちゃんがこんなにも私を求めてくれて、うれしいです♡」
積極的に私を求めてくれる仔猫ちゃんの温もりを感じて――私はニコリと微笑みました。
やっぱりメイドという職業柄――元々、誰かに求められるのが好きで。……男として執事だった時も『求められる』立場でしたからね。
しばらく誰にも求められることなく、孤独にこの世界を放浪していましたが――仔猫ちゃんと出会えたことで、私の人生は再び豊かになりました。
しばらく誰にも求められることなく、孤独にこの世界を放浪していましたが――仔猫ちゃんと出会えたことで、私の人生は再び豊かになりました。
それに――これは私がVRCで女の子になったからでしょうか?
私を求めてくれる仔猫ちゃんが、愛おしくて。大好きで。――ずっと離れてほしくないです。
私を求めてくれる仔猫ちゃんが、愛おしくて。大好きで。――ずっと離れてほしくないです。
いつまでも、こんな幸せな微睡み(ゆめ)を見ていたい。
仔猫ちゃんとなら、きっとどこにでも行けますから――。
仔猫ちゃんとなら、きっとどこにでも行けますから――。
「私も……タチバナさんが私を求めてくれてうれしい。これからもずっとお互いに求めて、求められて――そんなお砂糖関係でいたい」
「ふふ♡それは私もです♡」
仔猫ちゃんの私を抱き締めた温もりが――ずっと私を、包んでくれる。
5/23はキスの日。
それはとても幸福に満ちた――百合の日、ですね♡
そして甘い甘いミルクのように――私たちは、溶け合います♡
いつも、いつまでもずっと――傍にいますからね、仔猫ちゃん♡
それはとても幸福に満ちた――百合の日、ですね♡
そして甘い甘いミルクのように――私たちは、溶け合います♡
いつも、いつまでもずっと――傍にいますからね、仔猫ちゃん♡