日記1
俺は昔、日本の人里離れた山奥の小さな村で暮らしていた。そこで仲の良い友人とその妹に出会った。俺たちは家族のように一緒に過ごし、その兄妹は俺にとって数少ない大切な存在だった。
やがて成長し、俺は将来を考えて村を出て警察官を目指すことにした。だが、都会に出ると状況は一変した。俺が「獣人」というだけで差別され、罵られ、「亜人」と呼ばれて蔑まれるようになった。少し場所が違うだけで、こんなにも人の目が変わるのかと、深く絶望した。
それでもなんとか警察官にはなれた。だが、見た目を理由に批判され続け、最終的には上からの命令で職を辞めさせられた。
そんなある日、偶然「ポコランド行き」のチケットを手に入れた。このままじゃ終われないと思い、心機一転、新たな場所で人生をやり直すため、その街へ向かった。
最初は不安もあったが、ポコランドの人たちはこんな俺でも温かく迎えてくれた。中でも「ぷわちゃん」という子が特に印象に残っている。よく話しかけてくれたり、仲良くしてくれたり、俺のことを「推し」だと言ってくれたりして……まるであの頃の、あの友人の妹を思い出させるようだった。
「ファンサ」だとか言っていろいろやっていたけど、今思えば、俺自身が彼女にかつての妹の面影を重ねていただけなのかもしれない。
日記2
『蒼瀬 ぷわ』が警察に入った。
嬉しい気持ちがある反面、正直なところ心配でもある。
弟の件、契約書の内容……彼女がこのまま潰れてしまわないか不安だ。
でも、以前より距離が近くなったからこそ、自分が彼女の居場所になれたらと思う。無理をさせないように、そばで支えたい。
それから、ここ数日ずっと気になっていることがある。
『神田 れお』――警察内の上司にあたる彼に、妙な違和感を覚えるようになった。
というのも、彼の名札が消えているのだ。
いつからかはっきりとはわからないけれど、最初は見落としかと思った。だが、毎日見ているうちに、これはただの偶然じゃない気がしてきた。
何か理由があるのだろうか。
それとも、単に紛失してしまっただけで、本人も気まずくて隠しているのかもしれない。
上司という立場の人に気軽に聞ける話でもないし、今はまだ様子を見ることにする。
注意深く、静かに観察していこうと思う。
日記3
彼女は今日も研修生として、他の警察官たちと同行しながら、一生懸命に研修に取り組んでいるようだ。
黒側だったこともあり、警察内部で何か言われるのではないかと少し心配していたけれど、研修を担当してる警察をはじめ、彼女に対して優しく接してくれているみんなには、本当に感謝している。
そして、連日観察を続けている『神田 れお』について、今日は同じ警察の『飲酒盃 猫介』と話してみた。
『神田 れお』の名前の件については、彼はまだ気づいていなかったようだが、彼にもそのことについて調査してみようと提案した。
これから、少しずつ明らかにしていきたい。
日記4
警察が二人辞めた。
何があったのか、詳細はまだ分からない。
だが、そのうちの一人『神田れお』については、奇妙な話がある。
今日、署長にそれとなく聞いてみたところ、「あいつは亡霊だ。死んでる。」と、正気とは思えない返答が返ってきた。
意味が分からない。いや、理解しようとするほど頭がおかしくなりそうだ。
もし、今まで感じていた違和感に対する答えが「死んでいる」だとしたら、じゃあこれまで我々と話し、事件を追い、笑っていた『神田れお』は一体何だったのか?
本当に生きていたのか?
あれは幻だったのか?
考えれば考えるほど謎は深まり、思考が空回りするばかりだ。
今日はもう、頭を休めよう。
買ってきた酒を開けて、一人でやる。
酔ってでもいなければ、今夜は眠れそうにない。
日記5
今日はぷわちゃんとデートをした。
急に誘われたのでOKはしたものの、何の準備もしていなかったため、急いでチャギントンに連絡をしてパラゴンを貸してもらうことに。
遊園地ではアトラクションを楽しみ、街中をドライブしながらいろんな話もできて、あっという間に時間が過ぎていった。
その後、警察署に戻ってから『神田 れお』のことを少し話していたら、突然ぷわちゃんが彼に電話をかけ始めてびっくりした。
電話が終わってから様子を聞いてみると、どうやら普段の彼とは話し方が違ったり、「またね」に対して「さようなら」と返ってきたりと、不自然な点が多かったらしい。
警察を辞めている彼について、こちらとしては手掛かりがほとんどないと思っていたけれど、ぷわちゃんの行動力のおかげで、何か掴めるかもしれないという希望が湧いてきた。
やはり『神田 れお』はもう死んでいるのだろうか?
だとしたら、今の彼は一体何者なのか……謎は深まるばかりだ。
時間ができたときに、自分からも連絡を取って、いろいろ聞いてみようと思う。
日記6
ここ最近、なんだかよくわからない感情が芽生えてきた気がする。
『蒼瀬 ぷわ』に対する想い――今までは「友達として」「家族のような存在として」好き、そんなふうに自分の中で整理できていた。
でも今は、どうもそれだけじゃない感情がある気がする。
今まで感じたことのない、どこか説明のつかない気持ちが胸の奥にある。
言葉にしようとすると、うまく出てこない。ただ、彼女のことを考える時間が増えたのは確かだ。
これは一体、なんなのだろうか。
ただの心配なのか、それとも……。
自分の気持ちなのに、自分でもよくわからない。
日記7
街が終わる数分前、ぷわちゃんに問いかけられたあの質問。
どうしても、上手く答えることができなかった。
言葉が詰まったのは、きっと彼女に対する――
名前のつかない、まだ自分でも整理できていない感情のせいなんだと思う。
戸惑う自分に、少し驚いた。
でもそれ以上に、あの時の自分の返しが、
彼女を不安にさせてしまったんじゃないかと、心配でならない。
何かを伝えたい気持ちは確かにあるのに、
それをどう説明すればいいのかが、わからない。
もどかしさだけが、胸の奥に残ったままだ。
日記8
昨日、街の終わり際にぷわちゃんが言いかけていたことを、改めて聞いた。
それは——俺のことが好きだ、という告白だった。
正直、とても嬉しかった。
でも、今の自分の気持ちがまだはっきりしなくて、彼女にどう返せばいいのか分からなかった。
中途半端な返事はしたくない。
だから、ちゃんと自分の気持ちを整理するまで、もう少しだけ時間をもらうことにした。
ぷわちゃんは、「いつまでも待ってる」と言ってくれた。
その言葉に甘えすぎないようにしないと——ちゃんと向き合おう。
日記9
今日はくぅちゃんに、昨日のぷわちゃんからの告白のこと、そして自分の気持ちについて相談した。
くぅちゃんは真剣に話を聞いてくれて、言葉を選びながらいろいろ助言をくれた。やっぱり、こういうときに頼れる友達がいるのはありがたい。
そのあと、一人でバイクに乗って、風にあたりながらいろんなことを考えた。
ぷわちゃんのこと、自分の気持ちのこと、そしてこれからのこと。
走っているうちに、少しずつ気持ちが整理されていった気がする。
たぶん——いや、おそらくきっと、この感情は「好き」なんだと思う。
みんなが言うような、特別な誰かに対する想い。自分も、きっとそうなんだ。
ようやく決心がついた。
次にぷわちゃんに会ったときは、ちゃんとこの気持ちを伝えよう。
日記10
今日は、この前の返事をした。
自分も「好きだ」という気持ちを伝えた。
その後は、ぷわちゃんと二人で街の夜景を眺めながら、楽しく会話した。
好きという自分の気持ちに気づけて、本当に良かった。
そして、「好き」にさせてくれたぷわちゃんには、感謝の気持ちしかない。
今日は、大切な一歩を踏み出せた。
日記11
付き合ってからというもの、何もかもが初めてで、どう接したらいいのか最近ずっと悩んでる。
ちゃんと会えていない日が続くと「寂しい思いさせてないかな」とか、「次はどこにデートに行けば喜んでくれるかな」って、そんなことばかり考えてしまう。
彼女のことを大切に思っているのに、それを上手く伝えられていない気がして…。
俺は本当に彼女にふさわしい彼氏になれているんだろうか。そんな自問自答ばかりしてしまう。
情けない...
日記12
今日は久しぶりに彼女をデートに誘った。
最近なかなか会えていなかったから、顔を見て話せたのが素直に嬉しかった。
少しお酒も入っていたせいか、いつもより色んなことを話した気がする。
ちゃんと変なことは言ってない……はず。まあ、彼女の表情も穏やかだったし大丈夫だと思いたい。
でも何より、話していて楽しかった。
直接言葉で「好き」って伝えられたのも、自分の中では大きな一歩。
今日はそれだけで十分満足。会えてよかった。
日記13
最近、栗山りつかと話す機会が増えてきた。その度に、自分って案外寂しがり屋なんじゃないかって思うようになってきた。
ぷわちゃんと付き合い始めてから、彼女の声が聞けるだけでも嬉しい。でも、それだけじゃ物足りなくて、「もっと一緒にいたいな」「もっと話したいな」って思うことが前より増えてきた気がする。
……でも、こういう気持ちって、いざ本人に言おうとするとすごく恥ずかしい。言ったら重いって思われたりしないかなって、ちょっと不安にもなる。でも、こうやって日記に書いておけば、少しは素直になれた気がして、少しだけ気が楽になる。
日記14
今日は街に出てすぐに、ぷわちゃんが落ち込んでいると聞いてすぐ連絡を取った。保護観察の件で副所長の対応がひどくて、すれ違いが原因のトラブルにも巻き込まれたと知り、俺がその場にいなかったことを心から後悔している。
少しでも元気になってほしくて、一緒に髪型を見に行ったり、服を選んだり。ぷわちゃんの笑顔が少しでも戻るように、精一杯寄り添った。
今回の出来事は、俺の方から上に報告するつもりだ。
日記15
今日は驚きと戸惑いが胸をよぎった。無線で彼女の「デート行ってくる」という声が耳に入り、動揺が収まらなかった。事情を聞いて納得はしたものの衝撃的な発言だったため情緒がどうにかなりそうだった。ぷわちゃんにはこれからはこういうことはしないでと約束した。
|