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歴史と裁判に誠実に向き合いながら

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「勝利判決」、そして新たな闘いに向けて

歴史と裁判に誠実に向き合いながら

岩波書店編集部副部長 岡本 厚

 沖縄戦「集団自決」訴訟の地裁判決は、ご承知の通り、私たち被告側の全面勝訴となりました。これまで何回も繰り返して申し上げてきたとおり、この裁判の原告側が求めたのは、「軍隊は住民を守らなかった」という沖縄住民の沖縄戦観の転換であり、皇軍、兵士の「名誉」回復であり、さらにいえば、戦後の否定、戦前・戦中の価値観の復活でした。

 その意味でいえば、被告として正面に立たされているのは、岩波書店と大江健三郎氏ですが、本当に狙われているのは、沖縄の住民であり、その経験と記憶と語りであり、また戦後の価値観を大切にしようとしているすべての人びとだったといえます。教科書検定をきっかけにして、沖縄の広範な人びとが怒り、語り始め、その証言の「具体性、迫真性」(地裁判決)によって、裁判の勝敗が決したのです。

 原告側は、裁判に対して、不誠実な対応に終始しました。原告は、裁判が始まる前に、訴えた本を読んでもいませんでした。原告側弁護団は、常に準備書面を遅らせ、時として公判前日か、その日に、法廷で私たちに手渡されました。名誉毀損の有無よりも、政治的なキャンペーンが目的だったのではないかと思わせる、様々なことがあったことは、多くの支援者の方々が目撃されたことと思います。判決後、原告弁護団は、4月2日の控訴に際して、アジびらと見紛う「控訴にあたって」という文章を発表し、「文学風まやかし論をはぎとられた被告大江」「進歩的文化人的な良心を気どる大江」と「正面から対決する」などと大言壮語しています。

 安倍政権でいわば頂点に達し、その自壊で退潮する「歴史修正主義」の、政治主張の過剰と歴史研究の粗雑さが裁判にもはっきり現れていましたが、この文章も同じ傾向です。高裁は、また新たな戦いになりますが、私たちは誠実に歴史と裁判に向き合い、冷静に戦いを進めていくつもりです。今後とも多くのご支援、よろしくお願いします。


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