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東京:前空幕長の陳述 文民統制を何と心得る

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前空幕長の陳述 文民統制を何と心得る

2008年11月12日

 政府見解に反する論文発表で更迭された前空幕長が国会の参考人招致でも持論を展開した。組織的応募の疑惑も広がり、文民統制の根幹が大きく揺らぐ。政府が認識する以上に事態は深刻だ。

 上司・部下の関係だった浜田靖一防衛相と田母神俊雄前航空幕僚長が代わる代わる答弁する。日本の侵略戦争を正当化する論文をめぐって、浜田防衛相が「極めて不適切」と切り捨てれば、田母神氏は「間違っているとは思っていない」と主張する。十一日の参院外交防衛委員会であった異様な光景だ。

 田母神氏は自ら起こした混乱の責任を自覚していないようだ。

 「びっくりしたのは、日本はいい国だと言ったら解任されたことだ」「政府見解で言論を統制するのはおかしい」…。憲法九条についても「これほど意見が割れるものは直した方がいい」と改正を唱えた。

 つい先日まで実力部隊のトップだった人物である。政治が軍事に優先する、民主主義国家の基本である文民統制を「そんなの関係ねえ」といわんばかりの言動には驚がくを覚える。

 田母神氏は同趣旨の論文を昨年五月に隊内誌に寄稿。基地視察などの際にも講話していたという。幹部の教育機関である統合幕僚学校の校長も務めていた。政府見解に反する教育が自衛隊内で行われていた疑念を抱かざるを得ない。

 実際、懸賞論文には田母神氏のほか九十四人の航空自衛官が応募していた。田母神氏は募集の件を航空幕僚監部の教育課長に紹介し、教育課は全国の基地にファクスで通知した。田母神氏の主張を受け入れる土壌が自衛隊内にあるのではないか。

 防衛省は組織的背景の究明と隊員教育の実態調査を急ぐべきだ。

 “暴走”を放置してきた政治の責任も重い。自民党の国防関係合同部会では擁護論すら飛び出したという。何をか言わんやだ。

 懲戒処分にせず定年退職扱いにして、約六千万円の退職金が支払われる決着には違和感がある。田母神氏が「審理」での徹底論議を求めたため、迅速な対応を優先したというが、これ以上事を荒立てたくない思いも見え隠れする。安易な幕引きは許されない。

 その場しのぎの対応で、揺らぐ文民統制への危惧(きぐ)は解消されるはずがない。麻生太郎首相の口ぶりはあまりに人ごとすぎないか。こういう時にこそ、逃げない姿勢を見せてほしい。


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