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沖縄タイムス社説:[検定審報告]透明化が進むか疑問だ

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pipopipo555jp

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[検定審報告]透明化が進むか疑問だ


 透明性の向上を掲げつつ、その一方で、透明化の妨げになるような規制も打ち出す。

 たとえて言えば、「前に進め」という指示と、「後ろに下がれ」という指示を同時に出しているようなものだ。

 文部科学相の諮問機関である教科用図書検定調査審議会(検定審)は二十五日、総括部会を開き、「教科書の改善について」と題する報告をまとめ、塩谷立文科相に提出した。

 報告は二つの事項から成っている。一つは「教科書検定手続きの透明化」。もう一つは、新しい学習指導要領に対応した「教科書の改善方策」。このうち検定透明化は、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に関する検定が大きな政治問題に発展したことを踏まえ、沖縄側の要求に応える形で設定されたテーマだ。

 現状に比べ、どこが改善されることになるのか。

 教科書調査官が作成する調査意見書は現在、公開対象になっていない。これからは検定終了後に調査意見書を公表するほか、教科書調査官の役割を明確にし、氏名や職歴も公表していくという。

 実質審議が行われる部会や小委員会については、開催日や出席委員、決定事項、議事の概略を記載した議事概要などを検定終了後に公表することになった。

 ただし、注意しなければならないのは、調査意見書や議事概要の公表が検定終了後とされていることだ。議事概要にしても、委員相互のやりとりなどを具体的に記したものではない。いくらでも簡略化することが可能なのだ。

 文科相が検定審に対し、検定手続きの透明化に向け改善策を検討するよう要請したのは「教科書検定のあり方に疑念や不信を抱かれることがないようにする」ためである。

 しかし、審議会は非公開で、議事録も公開しないことになっている。

 検定終了後の議事概要の公表をもって検定透明化というのは「看板に偽りあり」というほかない。運用次第では、たやすく骨抜きにされるだろう。

 報告は、申請図書の内容や検定済図書の訂正申請の内容が外部に流出することがないよう、申請者に情報管理の徹底を求めている。

 これもまた、文科省や検定審の判断によっては、透明化の流れに逆行しかねない危うさを秘めている。

 教科書検定手続きの透明化と言いながら、それにブレーキをかける内容が同時に盛り込まれているのだ。

 文科省と検定審は「外部からの圧力を排除し静謐な環境を確保する」ことを検定透明化の前提条件に掲げている。検定が外部の騒音によって影響を受けることがあってはならない、との考えからだ。

 だが、思い出してほしい。安倍政権当時の政治的空気が検定作業の中に流れ込み、まさに「外部の騒音」によって教科書記述が変更されたのだということを。

 静謐な環境の必要性を頭から否定するつもりはないが、検定の透明性を確保する仕組みとしては、今回の報告は弱すぎるといわざるを得ない。



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