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NHKスペシャル『アジアの"一等国"』に対する非難・中傷の動きについての見解

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NHKスペシャル『アジアの"一等国"』に対する非難・中傷の動きについての見解

2009年7月7日
日本ジャーナリスト会議

4月5日放送のNHKスペシャル「JAPANデビュー」第1回『アジアの"一等国"』に対して、一部マスメディアと団体は、番組内容が一方的だなどとして非難・中傷を浴びせ、街宣車を繰り出すなどの行動を続けている。日本ジャーナリスト会議は、このような行為は単にNHKだけの問題に止まらず、日本における言論表現の自由そのものに対する恫喝と干渉にあたると考え、放送の自主性と自律性を尊重する立場から、直ちに中止されるべきだと考える。

この番組は、150年前に開国した日本が、西欧列強に伍して一等国の仲間入りをめざす過程で、日清戦争の勝利で手に入れた台湾における植民地統治の実態を、豊富な資料や当時を知る現地の人々の証言をもとに検証し、日本が今後アジアに対して向き合う手がかりを得ようとしたものだ。

ともすれば台湾が親日一辺倒だという誤った観念しかもってこなかった日本人に、改めて歴史認識の見直しを迫る優れた番組だったと言うことができる。

実際、視聴者からの反応も、「台湾近代化に功績があったといわれる後藤新平が、少数民族を匪徒刑罰令で取り締まった事実を初めて知った」など、番組を評価する声が多い。

しかし、一部の新聞や月刊誌、それにCS放送などの論者は、番組で使われた用語や取材手法を槍玉に挙げ、「"日台戦争"なんて捏造だ」「台湾を"反日国家"に仕立て上げ、台湾人の心を傷つけた」などと非難し、果ては、「台湾人の証言はやらせ」「日本人の善行は全く取り上げていない」「NHKは中国からカネをもらっている」など、根拠のない誹謗・中傷を繰り返している。

その一方、第二次大戦中、21万の台湾人が日本軍に徴兵され、3万人が戦死した事実などには目をつぶり、「台湾人は日本兵になることを誇りにしていた」など都合のいい証言を並べ立てている。こうした主張は結局、アジアにおける日本の植民地支配を免罪、美化する歴史修正主義の立場に他ならず、事実を直視しない歪んだ見方といわざるを得ない。

また、「日本李登輝友の会」などいくつかの団体は、NHKの番組担当者、経営者の辞任、シリーズ番組の中止を要求する集会やデモを繰り返し、この中でNHK関係者の制止を振り切って構内に乱入するなど非常識な行為も伝えられており、「この番組で精神的苦痛を受けた」として、8000人を超える賛同者による集団訴訟を起こすまでに至っている。

こうしたうごきに呼応するかのように、慰安婦問題のNHK番組に政治介入した疑いをもたれている自民党の安倍晋三氏らの国会議員が、番組が偏向していたという口実の下に、6月11日、「公共放送のありかたについて考える議員の会」を立ち上げ、番組内容に問題がないか検証すると決めたことは重大である。

政権与党の影響力を背景にしたこうした政治家の動きは、放送番組への干渉などを禁じた放送法第三条に違反する疑いが濃厚であり、今回特にNHKに的を絞って睨みを利かせ、ひいては日本の放送番組全体への萎縮効果を意図したものと言えるのではないだろうか。

これに対して、NHKは6月17日、問題にされた番組のねらいや用語、取材方法などについて説明文を発表し、問題にされている部分について、それぞれ事実に基づいた詳細な回答をした。こうした姿勢は、この問題に真摯に向き合おうとしているものとして評価できる。

視聴者の立場から番組に対する批評や、批判的意見を述べることは、当然の権利であり、番組の質を高めるためにも欠かせないものであるが、自分たちの主張を力で相手に押し付けようとする今回の一連の言動、威嚇的行為は、表現の自由と放送の自主性、自立性を脅かそうとするもので容認することはできない。

今のところNHK経営陣や制作現場に動揺は見られないと伝えられている。

日本ジャーナリスト会議は、NHKが、道理を欠いたこうした圧力に対して毅然とした姿勢をつらぬくことを求め、今後の番組作りにおいても決して萎縮することなく、「放送の自由と自主自律」の原則の下に、公共放送としての真実の追求と自由で豊かな番組づくりのために、さらに努力するよう心から願うものである。


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