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『沖縄戦 強制された「集団自決」』 丹念な分析で「真相」に迫る

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『沖縄戦 強制された「集団自決」』 丹念な分析で「真相」に迫る

2009年7月26日

 慶良間諸島で起きた「集団自決」の命令の有無をめぐって、元戦隊長らがノーベル賞作家の大江健三郎氏と、その著書を発行した岩波書店を提訴し、現在係争中であることは周知の通りである。この事件以来、文科省による教科書検定問題も絡み、「集団自決」に政治的様相が濃くなった感は否めない。言い換えれば、歴史修正主義の理論に国家が与(くみ)し、「集団自決」の実相を歪曲(わいきょく)する動きが顕著だということである。

 今、私たち沖縄人に最も求められているのは、なぜ「集団自決」が起こったか、犠牲者の視点からその「真相」を究明することである。これまで、沖縄戦研究は高水準の域にあるといわれながらも、残念ながら「集団自決」の真相解明にまでは達しなかったように思う。しかし、この度、やっと待望の書が刊行された。

 米公文書館等で一級資料の発掘を重ね、戦争犯罪研究の第一人者として、これまで「集団自決」について多くの研究実績を積み上げてきた著者が、沖縄の地域ごとの特徴を凝視しつつ、日本軍と住民という支配、被支配の構図をベースに、「集団自決」に追い込まれていった背景や構造を徹底検証し、丹念な分析で「集団自決」の「真相」に迫った書を著したのである。

 著者は、証言者が異口同音に語ってきた「捕虜になることは恥」とか「米軍に捕まったら男は八つ裂きにされ、女は強姦(ごうかん)されてから殺される」など、住民の恐怖心を煽(あお)り「集団自決」へと追い込んでいった日本軍の言説の根拠を、具体的な資料を駆使して言及することにより、軍隊の駐屯する地域における「集団自決」の必然性を裏付けていった。その中には、1944年7月の「サイパン玉砕」以降、政府が意図的にメディアを通して米兵の「野獣性」についてのキャンペーンをはり、国民の恐怖心を煽っていったという、いわば「集団自決」の国家責任をも明確にした資料をふんだんに登場させている。

 著者は言う。「『集団自決』を決行させた決定的な要因は、やはり日本軍の存在と意思、特に死を強制する軍事的強制力の存在であった」と。本書に、そのすべての要因が網羅されている。

(宮城晴美・沖縄女性史家)





沖縄戦 強制された「集団自決」 275

なぜ「集団自決」が引き起こされたのか! その真相と構造を解き明かす!
著者 林 博史 著

ジャンル 日本歴史
日本歴史 > 通史・概説・歴史一般
シリーズ 歴史文化ライブラリー

出版年月日 2009/06/01
ISBN 9784642056755
判型・ページ数 4-6・270ページ
定価 本体1,800円+税
在庫 在庫僅少

目次


日本軍の強制が削除された教科書検定問題―プロローグ/
「集団自決」の実相(沖縄・慶良間列島/
沖縄本島と伊江島/
太平洋地域・中国東北/
「集団自決」がおきなかった島々)/
追い込まれていく道(住民が犠牲にされた沖縄戦/
自由の抑圧と監視/
沖縄における戦時体制/
「集団自決」が起きた地の特徴)以下細目略/
その背景―捕虜を認めない思想/
なぜおきたのか―「集団自決」の構造/
構造と個人の責任―エピローグ

内容説明


2007年の教科書検定で大きな波紋を呼んだ「集団自決」問題。生存者の証言・新資料などによる沖縄戦の検証から、その実態と全体像に迫る。「集団自決」の原因を〈天皇制国家の支配構造〉から解き明かした問題作。