出典
2007年3月21日 東京新聞 デスクメモ
- 「日の丸・君が代」の強要は違憲だとした昨年の東京地裁判決から、初めての卒業式シーズン。東京都内で行われた都立高校の卒業式では、国歌斉唱時に初めて起立しなかった教諭の姿も目立った。
「『立ちなさい、歌いなさい』というやり方は教育行為ではない。これでは調教。戦前教育の再現だ」
都庁で記者会見した町田市立鶴川第二中学の根津公子教諭(56)は、語気を強めた。
「国歌斉唱」とアナウンスが入ると、根津教諭はおもむろに着席。式後に校長は根津教諭から着席を確認し、処分発令に向け動きだした。根津教諭に処分が下されれば、十三年前に卒業式で国旗を降ろして初めて減給処分を受けて以来、これが九回目となる。
「次は六カ月の停職か、免職か」。そんな思いが根津教諭の脳裏をよぎった。
都立八王子東養護学校でも河原井純子教諭(57)が卒業式で不起立だった。今月末にも処分発令が予想される二人は二十日、都などを相手に、処分発令の差し止めを求める訴えなどを東京地裁に起こした。
締め付けに根津教諭は「教員たちも変わってしまった。今や、論議することもなくなった」。
都庁で記者会見した町田市立鶴川第二中学の根津公子教諭(56)は、語気を強めた。
「国歌斉唱」とアナウンスが入ると、根津教諭はおもむろに着席。式後に校長は根津教諭から着席を確認し、処分発令に向け動きだした。根津教諭に処分が下されれば、十三年前に卒業式で国旗を降ろして初めて減給処分を受けて以来、これが九回目となる。
「次は六カ月の停職か、免職か」。そんな思いが根津教諭の脳裏をよぎった。
都立八王子東養護学校でも河原井純子教諭(57)が卒業式で不起立だった。今月末にも処分発令が予想される二人は二十日、都などを相手に、処分発令の差し止めを求める訴えなどを東京地裁に起こした。
締め付けに根津教諭は「教員たちも変わってしまった。今や、論議することもなくなった」。
ほぼすべてで卒業式が終わった都立高校では、三十人近くが不起立だった。「『日の丸・君が代』不当処分撤回を求める被処分者の会」の事務局長を務める葛西南高校の近藤徹教諭(58)によれば、約二十人が初めての不起立。そのうちの一人の男性教諭(53)は「一人で座っているのは簡単ではなかったけど、このために気持ちを整えてきた」と熱い思いを語った。
根津教諭は「教員として、おかしいことはおかしいと言い続けたい。それで免職まで覚悟をしなければならないのは異常。学校だけじゃなくて社会全体が異常になっている」と訴える。
本年度の都立高校の卒業式では、都教委の祝辞も教員の間で波紋を広げた。
都教委から卒業式に参列した職員のあいさつが、石原都政の「功績」をアピールする内容になっていたからだ。
都教委から卒業式に参列した職員のあいさつが、石原都政の「功績」をアピールする内容になっていたからだ。
このあいさつに違和感を覚えた職員も少なくなかったようだ。都立昭和高校定時制の鈴木毅教諭(45)は「あいさつは保護者に対する石原都政の宣伝だった。五輪、マラソン、奉仕は卒業生とほとんど関係ない。
都政を自賛する内容には、かなり違和感があった。都知事選直前の時期に、こういうことは控えるのが常識ではないか」と話す。
都政を自賛する内容には、かなり違和感があった。都知事選直前の時期に、こういうことは控えるのが常識ではないか」と話す。
その都知事選で主な立候補予定者は、日の丸・君が代強制問題について、どのような主張をしているのか。
石原知事の公約は、この問題には触れていない。ただ、昨年の地裁判決の後も「義務を怠ったわけだから、いきなりクビにするわけではないが、処分は当たり前ではないか」と発言している。
浅野氏は公約に「日の丸・君が代問題についての強制的な対応を改めます」と明示し、反対する教職員の処分はしない方針だ。
共産党推薦の吉田氏は「日の丸・君が代の強制や学校現場への干渉をきっぱりと改め、憲法に基づいた教育行政を推進します」と公約。建築家の黒川紀章氏は公約でこの問題には言及していない。
石原知事の公約は、この問題には触れていない。ただ、昨年の地裁判決の後も「義務を怠ったわけだから、いきなりクビにするわけではないが、処分は当たり前ではないか」と発言している。
浅野氏は公約に「日の丸・君が代問題についての強制的な対応を改めます」と明示し、反対する教職員の処分はしない方針だ。
共産党推薦の吉田氏は「日の丸・君が代の強制や学校現場への干渉をきっぱりと改め、憲法に基づいた教育行政を推進します」と公約。建築家の黒川紀章氏は公約でこの問題には言及していない。
日の丸・君が代の強制を拒否した教師に対する処分は、都知事選告示後の今月末にも予想されており、この問題が選挙の争点の一つに浮上する可能性もある。
前出の鈴木教諭は過去の行事で都教委の通達に従わなかったとして処分されたが、今月七日の卒業式でも起立を拒んだ。都知事選に向けては「日の丸・君が代問題はタブー視されているし、学校内だけの問題だと思われがちだ。知事選を通じて都民に自分の問題として引きつけて考えてほしい」と期待感をにじませた上で、こう言及する。
「ものが言いにくい世の中になりつつある。政治の側から見れば、日の丸・君が代は白を黒と言えと指示する道具だ。今の対象はわれわれ教員だが、それが違う道具を使い、別のテーマに広がる懸念がある。そこに気づいてほしい」
前出の鈴木教諭は過去の行事で都教委の通達に従わなかったとして処分されたが、今月七日の卒業式でも起立を拒んだ。都知事選に向けては「日の丸・君が代問題はタブー視されているし、学校内だけの問題だと思われがちだ。知事選を通じて都民に自分の問題として引きつけて考えてほしい」と期待感をにじませた上で、こう言及する。
「ものが言いにくい世の中になりつつある。政治の側から見れば、日の丸・君が代は白を黒と言えと指示する道具だ。今の対象はわれわれ教員だが、それが違う道具を使い、別のテーマに広がる懸念がある。そこに気づいてほしい」
<デスクメモ>宮内庁を担当していたころ、数多い公式行事で国歌斉唱時にいつも起立しない記者がいた。
ある時から、自分も習った。信条に従って…。そういえば、園遊会に招待された都教育委員に、陛下が「強制でないことが望ましい」と発言されたことを思い出した。異を唱える人が処分される社会は願い下げだ。(以上、抜粋)
ある時から、自分も習った。信条に従って…。そういえば、園遊会に招待された都教育委員に、陛下が「強制でないことが望ましい」と発言されたことを思い出した。異を唱える人が処分される社会は願い下げだ。(以上、抜粋)