第2話(BSanother04)「新たなる訪問者たち」




Opening.1. 新たなる訪問者たち ~ミーシャ・ホムリィの場合~

ヴィルマ村復興も軌道に乗り始めたある日、異界のアイテム屋であるミーシャ・ホムリィがヴィルマ村を訪ねていた。

「実はですねー、この村の皆さんにちょっと美味しい儲け話を持って来たんですよー」
「まずは…じゃじゃーん! これを見てください!」

そう言ってミーシャが鞄から取り出したのは小さな石である。
一見すると、無色透明な石だが、くるくると回しながら眺めてみると、角度によってうっすらと赤や緑の光が中に浮かんでいるように見える。
グランにはこの石に見覚えは無かったし、同席していた(比較的、異界知識は専門分野と言える)サラにもなんとなく異界からの物品ということが分かるぐらいである。

「これは、『カレイドストーン』っていうんです。これはあんまり価値のないちっちゃな欠片ですが。」
「もちろんこのままでも綺麗なので、宝石としての価値はありますが、私のもともといた世界では、魔法の力を帯びたアイテムの作成に重宝されていました。魔力を宿したものを作るためのベース、とでも言いましょうか。」

確かに、異界からの投影鉱石で、そういった用途に使えるものならば、価値は大いにあるだろう。
グランが「なるほど…」と呟くのを見て、ミーシャはさらに続ける。

「これは、南の山の旧坑道の入り口あたりで見つけました。ということは、もしかしたら、坑道の奥にはまだこの鉱石が眠ってるかもしれないんです!」

つまりは、南の山にある貴重な鉱石が眠っている(かもしれない)坑道の探索に力を貸してほしい、ということのようである。
南の山に幾つか古い坑道があることは、グランたちも以前見つけている。(下図参照)


「これが安定して手に入るようになれば、ヴィルマ村にとってもいい話だと思いますよ。」
「それから、カレイドストーンで一儲けできれば、私としてもお店を出す資金になって幸せですし!」

「まあ、もともとその坑道については調べるつもりではあったからな。それを前倒しするってのは、俺としては構わないんだが。サラ、お前はどう思う?」

「そうですね、村の方も落ち着いてきましたし。」

グランたちとしては、比較的乗り気なようである。
とはいえ準備は必要である以上、探索決行はしばらく先になるだろうが、その時にはミーシャも同行する、ということでひとまずこの場の話はまとまる。

「ありがとうございます! 準備が出来たら声をかけてください! 折角来たのでしばらくはこの村を見て回ろうかなー、って思いますし。」

どうやら、それまではヴィルマ村に滞在するつもりらしい。
こうして、ヴィルマ村は1人目の「新たなる訪問者」を受け入れたのである。

Opening.2. 新たなる訪問者たち ~シェリア・ルオーネの場合~

ある日、ヴィルマ村の仮復興本部を、修道服をまとった1人の少女が訪ねていた。
仮復興本部のドアをノックしつつ呼びかける。

「こんにちは! 聖印教会の方から来ました! この村の領主様はいらっしゃいませんか!」

まあ、恐らくこれは、いわゆる宗教勧誘、というやつである。
ヴァレフールでは、聖印教会の影響力は都市や村によってまちまちだが、決して邪険に扱われているわけではない。
その点、得体の知れない新興宗教よりはましだが、その対応はいろいろな思惑だの都合だのが絡み、なんだかんだややこしい。

サラが、どう対応したものかと首をひねっていると、(たぶんそのあたりのややこしい事情をあんまり知らない)アスリィが声をかけてくる。

「あれ? サラさん、どうしたんですか? お客さんですか? 居留守ですか?」

修道服の少女はなおもドアをノックして、「あのー、誰かいませんかー?」と呼びかける。

「お客さんなら入れてあげましょう。」

アスリィに促され、「そうですねー」と答えて、サラはドアを開けて修道服の少女に声をかける。

「どちらさまですかー(棒読み)」

ドアの前にいたのは、20歳に満たないくらいの少女。
隣に、さらに幼い(12歳くらい)侍従服の少年を連れており、その少年からは邪紋の気配がする。
(彼は、ノアという、シェリアがかつてバルレアで出会い、自身の侍従として雇った少年である。)

「聖印教会、月光修道会の方から来ました、シェリア・ルオーネっていいます。一応、階級は司祭です。」
「新たにここに村を興された、ということで、この村での布教許可をいただきたく…」

やはり、思った通りの用件だったらしい。

「お見受けするに、そちらの方は魔法師でしょうか?」
「あ、ご安心を。 たとえ魔法師であろうと、月光修道会は共に混沌と戦う意思がある限り受けいれますので。」

サラの微妙な顔を察してか、シェリアはそう語る。

ちなみに、聖印教会の中では月光修道会は混沌に比較的寛容だと言われ、友好的な投影体の保護なども行っているが、魔法師に対する意見は個人によってだいぶ異なる。
偶然混沌を持ってしまった邪紋使いや投影体と異なり、自ら望んで混沌を用いる魔法師は悪だ、と考える者もいれば、「最終的に皇帝聖印にたどり着くために尽力するなら、その途上で魔法を用いるのは構わない」とする者もいる。
どうやら、シェリアは後者に近い立場のようだ。

さらに余談だが、この言葉はサラに向けられている。どうやら、アスリィの方はぱっと見で魔法師に見えていないようだ。
(過去にバルレアで常盤派の魔法師と会ったことがあるので、そういう魔法師がいることを知らないわけではないが、見分けられるかはまた別問題である。)

「あるいはむしろ、そういう聖印教会の過激な方たちが来られる前に私たちに布教許可をいただければ、その方が安全かもしれませんよ?」

…この司祭、意外とグイグイくる…

とにかく、ここは一度、領主であるグランも交えて方針を話し合わねばならないだろう。
その旨を伝えると、ひとまずここは「保留」とする。

「すぐにお返事がほしい、という訳ではないので大丈夫ですよ。」
「しばらくこの村に滞在させていただこうと思っているので、そのうちお返事をいただければ。」
「それから、この村は土地柄ゆえ混沌災害の類も多いと聞きました。これでも聖印持つロードですので、何かお困りの際は力になりましょう。」

こうして、ヴィルマ村は2人目の「新たなる訪問者」を受け入れたのである。

  •  ・ ・ ・

ここで、一度ヴァレフールにおける聖印教会の扱いを確認しておくと、ざっくり言って「村や街による」というのが現状である。

聖印教会の影響が強い街の筆頭はイカロスだろう。
騎士団前副団長グレン・アトワイトが治めていた街であるが、彼は熱心な聖印教会の信徒であった。
前領主の影響がいまだ残るのもあるし、現在その地を治めるグレンの孫であるマルチナ・アトワイトもまた聖印教会の信徒である。

他に、ソーナー村領主ダンク・エージュも、やや特殊な教義解釈を掲げているとはいえ、熱心な信徒として有名である。

古城クーンを治める現副団長レヴィアン・バーミンガムもまた、グレンの孫であり、月光修道会の運営するバランシェ神聖学術院に留学していたこともあって聖印教会とのつながりは比較的深い。
とはいえ、契約魔法師ロザンヌ・アルティナスを妻として迎えており、根っからの混沌排斥派ではない。

一方、ヴァレフールのトップであり、グランの主君であるレア伯爵としては、本人は(表向きにはなっていないが、パンドラの者たちに助けられたことがある、というのもあり)それほど熱心な信徒ではない。
とはいえ、前述のグレン・アトワイトを祖父に持ち、身内に信徒が多いこともあって、現状は緩やかに容認している。
各村での聖印教会の扱いに関しては、それぞれの領主の判断にある程度任されている。

  •  ・ ・ ・

シェリアが帰った後、サラたちはこの件を領主のグランに報告しに行く。

「グランさん、お忙しいところ、いいですか?」
「聖印教会から人が来てしまっていて… 過激派の方では無いんですけど…」

微妙に歯切れの悪そう(というか、嫌そう)なサラの言葉に、アスリィが「月光修道会って言ってましたよ。あと、邪紋を使える男の子連れてたんで、過激派ではないと思いますよ。」と補足する。

さて、グランとしては、とりあえず前述の通り、ヴィルマ村での布教許可を出す出さないを決める権利はある。
とはいえ、聖印教会という身元がはっきりしている分、(変な新興宗教よりは)いくらか許容できる面はあるのだが、正直あまり気乗りがしない、というのが本音である。
そのあたりの事情から、ひとまずここは「今は復興を優先する」ということもあり、布教許可については保留することとなった。

Opening.3. 新たなる訪問者たち ~アルバート・ラッセルの場合~

一方、アレックスの方にも新たな村への訪問者が現れていた。
作業中のアレックスに声をかけてくる眼鏡の青年が1人。

「あ、すいません。そこの方、1つお尋ねしてもいいでしょうか?」
「この村で、宿が取れる所はないでしょうか?」

ヴィルマ村にはまだ宿屋というものはない。
一応、仮復興本部にはある程度空き部屋が残っているので、そちらを紹介することはできる、という旨をアレックスは伝える。

「宿はないですけど、一応開拓するための施設はあるので、そちらに泊まることはできますよ。」

「うーん、そうさせて頂くしかないかぁ…」
「この村の話を聞いて、つい好奇心が先走って来てしまったが。」

ところで、わざわざこのような村に来るこの青年は何者なのだろう?
そう思ってアレックスが尋ねると、

「ああ、ごめん。自己紹介がまだだったね。」
「僕は、アルバート・ラッセル。考古学を学んでいる者だよ。特に英雄王エルムンド様の時代のボルドヴァルド大森林の周辺の歴史が専門でね。」

どうやら、かねてより興味があったものの危険で入れなかったこの村が復興されたと聞いて、いてもたってもいられずやってきたらしい。
(割と既に片付けられてしまったものの)村に残された焼け跡でも漁れば、何か出てくるかもしれない、ということで、しばらくはこの村に滞在したいと彼は話す。

「それでは、僕はこれで。宿のこと、教えてくれてありがとう。」

そう言って、彼は復興本部と逆方向に歩き出す。
どうやら、彼はこの世界に時折存在する、方向感覚が致命的に欠如している人間のようだ。

「あ、よかったら、連れていきますよ?」

見かねたアレックスが彼と一緒に復興本部に戻ることにした。
こうして、ヴィルマ村に3人目の「新たなる訪問者」が現れた。

  •  ・ ・ ・

アレックスとアルバートが仮復興本部に戻ると、「ん? 誰か来てるのか?」とグランが顔を出す。
互いに自己紹介をすると、近辺の歴史に詳しい学者と聞いて、グランはせっかくなので気になっていたことを切り出す。

「そういえば、あなたに幾つか伺いたいことがあるのですが、少々聞いてもよろしいでしょうか?」

グランは、アルバートを執務室に招き入れる。
ちなみにこの時点で、アレックスは興味を失って帰っていった。

さて、グランの聞きたかったことの1つは南の山の坑道についてである。

「この近くの山に坑道があったのですが、昔ここでは採掘とかされていたんですか?」

「僕の専門は、それこそ英雄王の時代だから、ここ最近の話はあまり詳しくないんだけど、知っている範囲でいいなら…」

そう前置きしたうえで、アルバートは答える。
曰く、鉄などポピュラーな資源を細々と採掘していた、ということはあるらしい。
また、それ以外にも、ちょくちょく坑道の奥に向けて調査はしていたようだ。

「というのもね。英雄王エルムンドの「6つの輝石」って知っていますか?」

ブレトランド出身ではない事もあり、その単語に聞き覚えがないグランに、アルバートが解説する。
「6つの輝石」とは、英雄王エルムンドの叙事詩に詠われる、身体や感覚を研ぎ澄ませる効果を持った、6つの宝石のことである。

・アントリア子爵に受け継がれ、現在はダン・ディオード子爵が所有する「火の腕輪」
・ヴァレフール伯爵に受け継がれ、現在はレア・インサルンド伯爵が所有する「風の指輪」
・トランガーヌ子爵に受け継がれてきたものの、旧トランガーヌ崩壊時に紛失された「山の髪飾り」
・聖地フォーカスライト大司教ロンギヌス・グレイの所有する「林の首飾り」
・バランシェ神聖学術院学長ブランジェ・エアリーズの所有する「陰の額冠」
・150年前に盗難によって紛失してしまった「雷の耳飾り」

以上の6つからなる。

「それで。この輝石を作成し、英雄王に献上した、と言われる人物がいます。」
「英雄王の侍従騎士を務め、後にヴィルマ村初代領主になるアーシェル・アールオンという方でして。」

彼が輝石を作成出来た秘密がこの山に眠っているかもしれない。
そういった噂か伝説かといったレベルの話を信じて、探窟していたこともあるのかもしれない、というのがアルバートの見解である。
(正直、徳川埋蔵金伝説…ぐらいのレベルの眉唾ものの話ではあるのだが。)

アルバートの解説に「なるほど」と思いつつ、グランは続いてもう1つの懸案を彼に尋ねる。

「以前、この村に流行ったという伝染病については何かうかがっていますか?」

「まあ、ドラグボロゥの魔法師さんたちが当時も調べて分からなかったことが僕に分かる、という訳でもないから、もう知られている話かもしれませんが。」
「始めにその病気を発症したのは、森林探検を生業とする冒険者の方々だった、とのことです。」
「直前にちょっと大規模な探検隊も組織されていたようだし、うっかり普段は踏み込まないようなところに踏み込んでしまったんじゃないか、と言われています。」
「その奥に何があったか、なんてなると流石に僕には知りようがないですけどね。」

流石に、ブレトランド最大の大魔境であり、その全容など分かりようもない。
ボルドヴァルド大森林のことを尋ねられたアルバートは、

「研究してる僕からしてもまだまだよく分からない、が現実ですね。」
「そもそも、400年前まで混沌に覆われていたこの地を拓き、ブレトランドの始祖ともいうべき英雄王ですら平定できなかった土地がここです。」
「それこそ噂レベルでは、伝説の大毒龍ヴァレフスはこの森から生まれた、なんて話もあるんです。」
「まあ、だからこそ、興味は尽きないんですけどね。」

少年のような無邪気に笑って、彼は話を締めくくる。
グランとしても、彼との話は色々とためになる話が聞け、実りあるものだったと思っていた。

Opening.4. 新たなる訪問者たち ~アストリッド・ユーノの場合~

「あら? そこにいるのはもしかしてアスリィさんでは?」

「あ、アストリッドさん! お久しぶりです!」

「覚えていてくれたのね。嬉しいわ。」

「うちの実家の方に来たことありましたよね!」

彼女の名はアストリッド・ユーノ。アトラタン世界中をまたにかける行商人である。(下図)


最近はブレトランドにも頻繁に訪れており、グリース子爵領の本拠であるラキシス村のミスリル交易を担っているほか、国を問わず交易にかかわっている。
もちろん、アスリィの実家があるハルーシアにも過去には訪れており、その時アスリィとも会ったことがある。

「ハルーシアみたいな南国や、ブレトランドみたいな島国には、ここでしか手に入らない特産品とかも結構あったりして、よく行き来してるの。」
「結構、お金になるのよ。」

わざわざヴィルマ村に来た理由を尋ねると、

「新しい土地はなんにせよ、儲け話の宝庫よ。」
「まだまだこれからの村だと思うけど、この村から新たな魅力が生まれた時に、誰よりも早く見つけたいじゃない。」

そういった話を聞いて、アスリィが思い当たったのは、アレックスの構想している香辛料畑である。
アストリッドにその話をすると、「商人としては良い商材なのだけど、育てるとなると難しいわね。」と。

「アスリィさん的には、この近くには大魔境もあるし、冒険者の酒場とか建てたいんですけどね!」

「それも期待しているわ。冒険者の皆さんが森から持ち帰ってくるようなものこそ、他では手に入らないものだから。」

「そうですね! そうしたらアスリィさんも、きっと魔境に行きやすくなる…!」

どうやら、よほど冒険に行きたいらしい。

  •  ・ ・ ・

そんな会話をしていたところに通りかかったのはアレックスである。
ちょうど先ほどの話題に出ていたこともあり、アスリィは「香辛料を育てようとしている人です!」と紹介する。

この村で商品価値の高い香辛料が育つようになれば、1つの商機になるかもしれないと思っていたアストリッドがアレックスに話を聞いてみることにする。
アレックスが持っていた、唐辛子の苗と(買ったときオマケでもらったけど、あまりアレックス的には興味がないので押し付けようと持ってきた)バニラを見たアストリッドは、

「うーん、これはちょっとこの村の気温では難しいかもね。」

と、バニラを見ながらつぶやくが、アレックスとしては、そちらは割とどうでもいい。むしろ要らないので押し付けたい。
一方で、唐辛子の苗については、

「こっちは良いわね。香辛料の類の中では比較的育てやすいって話よ。この村なら何とかなるんじゃないかしら。」
「今すぐじゃないけど、少し時間をくれたら、育て方とかの資料とかも用意できると思うわ。」

「じゃあ、ぜひお願いします。その代わり、そのバニラとかいうやつは持って帰ってくれていいので」

よほど、辛くない香辛料は要らないらしい。

  •  ・ ・ ・

一通りの話が終わったところで、アスリィが「あ、この村に留まるんだったら宿っぽいところ(仮復興本部のこと)に案内しますよ。」と切り出す。
アストリッドとしては、宿がない事も想定してそれなりの装備を用意してはいたのだが、泊まれるところがあるに越した事はないので、仮復興本部に厄介になることにする。

こうして、ヴィルマ村に4人目の「新たなる訪問者」が現れた。

Middle 1.0. ヴィルマ村開拓の日々

さて、現在のヴィルマ村には、まだまだ復興・開拓に向けてやることが山積みだ。
ヴィルマ村の仮復興本部の掲示板には、村の復興に向けてやりたいことが書き並べてある。

・昨今の状況、時事情勢について調べたい。
 ・ナゴン村について
 ・テイタニアについて
 ・南の山について
 ・ボルドヴァルド大森林について
 ・聖印教会について

・村の農業について
 ・ジャガイモ畑を拡大する
 ・他の穀物を育て始める
 ・香辛料の畑を作る
 ・既にある畑の見回り
 ・他に何ができるか考える

・村の施設について
 ・冒険者の店を建てよう
 ・壊れた橋を再建しよう
 ・ミーシャちゃんのアトリエを建てよう

・文献、資料を調べよう
 ・ボルドヴァルド大森林について
 ・ヴィルマ村の歴史について
 ・カレイドストーンについて
 ・焼き討ち事件について

・周囲の混沌を討伐しなきゃ
 ・村の周辺区域
 ・大森林の外縁部
 ・大森林のちょっと奥

これは、考えうることをどんどん書き並べていったものなので、すぐに全部をこなすことはできないだろう。
(正直、誰かが勝手に書き足していったのもある…気がする。)

とはいえ、1つずつ地道にこなしていけば、着実に村の活力になってくれるのは確かだ。
ここで、ヴィルマ村の面々の日々の風景を順に見ていこう。

Middle 1.1. 開拓Ⅰ:ボルドヴァルド大森林の調査

領主、グラン・マイアはボルドヴァルド大森林の調査に赴いていた。
大森林に向かうとのことで、アスリィが同行している。

理由は2つ。1つは村の安全を保つための見回りの必要性。
以前あったゴブリンたちの襲来以降、森林に住む投影体たちの方から村に現れる事は無い。
かといって、村の安全のためには、定期的な状況の確認が欠かせないだろう。
もう1つ、村の各施設の建設を始めるにあたって、必要な木材を森から切り出せそうかの確認である。
ボルドヴァルドの広大な大森林から、木材を切り出せれば、建設資材の多くはまかなえるだろう。

傭兵時代の経験も生かして、難なく森の中を抜けて、様子を見回っていく。
もちろん、大森林の中である以上、散発的に投影体は現れているようだが、以前のゴブリンたちのように組織だった動きはしていないようだ。
(むしろ、投影体というのは本来集団ではなく脈絡なくこの世界に現れるものなので、この世界で同族をまとめ、指揮していたゴブリンは例外的と言える。)
森林外縁部でみられるのは、ゴブリンの残党を始めとしたティル・ナ・ノーグ界の投影体、他にはエーテル界の下級精霊、といったところだろうか。

「ふむ、木を切り出す分には問題なさそうだな。」

一応、投影体対策として誰かを護衛につけるぐらいは必要そうだが、それで対応できないような投影体は外縁部では現れないだろう。
というのが、森を見回ったグランの見立てである。
こうして、村の施設建設作業の第一歩は踏み出された。

もう少し、奥に進むと、アビス界の悪魔など比較的強力な投影体が現れるようになる。
木を切り出すぐらいならここまで来る必要はないので、問題ないといえば問題ないが、一応気を付けておくに越したことはないだろう。

一通り見回ったところで、休憩ついでにグランは同行していたアスリィに気になっていたことを問いかける。

「そういえば、アスリィはこの森とかに付いてきたがるけど、冒険とか好きなのか?」

「そうですねー。好きですね、冒険。楽しいので。」

「そういや、なんでハルーシアからここまで来たんだ?」

「えー…、武者修行…ですね!」

実際これは微妙な回答ではある。
嘘ではないだろうが、アスリィとしては、とりあえず実家のあるハルーシアから離れたかった、という理由もある。

「いえ…、ええ…、うちの家はただの庶民なので、ええ…」

こちらは明確に嘘である。
それにグランが気付いたかは定かではないが、彼は「武者修行のために来た冒険好きの魔法師」ということにしておいて、言葉を続ける。

「もし、キミが契約魔法師として来てくれたら、この森の調査の責任者にすることを考えてるよ。」

これは確かにアスリィとしても魅力的な提案であるが…
アスリィがどうしたものかと考えていると、

「ま、とりあえず村に帰ろうか。」

といって、森からの撤収準備を始める。
この村の契約事情は、もう少し保留になりそうだ。

  •  ・ ・ ・

「そういえば…」

と、グランとアスリィは少し森の奥に踏み込んだ時に見かけたものを思い出していた。
傷を負ってぼろぼろになった投影体がいたのだが、どうにも他者から意図的な攻撃を加えられたように見えた。

あれは、投影体同士の争いか? それとも、奥まで踏み込んでくるような腕利きの冒険者でもいるのか? あるいは…?

「そういえば、この前、アイディさんみたいな人、いましたよね。その人の仕業かな?」

「それに関しては、どちらにせよ調べるなら本格的な準備も必要だし、現状の時点では後回しかな。」

心当たりは無くは無いが、あくまで推測の域を出ない。

Middle 1.2. 開拓Ⅱ:復興本部の建て替え(?)

さて、ヴィルマ村の面々が次の目標としたのは、皆の拠点となっている「復興本部」を建てることだ。
現状、仮復興本部に関しては、毎朝サラが《シェルタープロジェクション》の魔法で召喚しているものだ。
建物は十分な広さがあり、快適性では申し分ないのだが、そう多くないとはいえ、サラの魔力を消費するし、一応ちゃんとした村としては外聞があまりよくない。
(あと、建て替えるときには一度外に出る必要があるので、割とめんどくさい。二度寝しても建て替えの時間になると起こされる。)

幸い、グランたちの調査によって、森林から木を切り出すことはあまり問題なくできそうだと判明した事もあって、ログハウスのように木を主として使った建物を建てよう、という話になる。
この建築の指揮を執ったのはアレックスである。
木の切り出しや家の建築といった力仕事分野には向いているだろう、ということと、切り出しの時に森の中で投影体対策の護衛が必要だという判断からの人選であった。

アレックスは開拓民たちを率いて、森で木を切り出し、組み上げていく。
組み上げ作業に関しては、複雑で間違えそうなところは、都度サラが指示してサポートしていく。
こうして、《シェルタープロジェクション》の仮本部に負けない立派な、「ちゃんとした本部」は着々と組み上げられていった。

森の調査から考えれば、グラン、サラ、アレックス、アスリィ全員の関わった、新復興本部の完成であった。

Middle 1.3. 開拓Ⅲ:冒険者の店の建設

森林から切り出した木材で、村の建物の建築ラッシュが進む中、アスリィには建てたい施設があった。
それは、「冒険者の店」である。

ヴィルマ村と同じくボルドヴァルド大森林に隣接している都市、テイタニアは「冒険者の街」として知られている。
「冒険者」という言葉の定義は割とあいまいで、ざっくり「魔境に挑んでそこでしか手に入らない投影産物を手に入れることを生業とする」者がそう呼ばれている。
その中には、邪紋使いもいるし、ちょっと腕に自信のあるだけの一般人もいたりする。稀に領地を持たない流浪の君主も冒険者として活動していたりする。
そういった冒険者の人々をサポートするのが「冒険者の店」である。
宿屋として宿泊したり、食事処としての機能を持つ店も多いが、もっともその役割として期待されるのは、「依頼の仲介」だ。
「これを取ってきてくれ。」「ここを調査してくれ。」という形のこともあるし、適当に持ち帰った投影産物を買い取ってくれたりもする。(そして、必要としている人に売り渡すのだ。)
冒険者として活動するためにはなくてはならない施設で、現にボルドヴァルド大森林をはじめとする魔境近くの街では数店舗が営業している。

魔境に挑みたくて仕方がないアスリィとしては、是が非でもヴィルマ村に建てたい施設である、
建設ラッシュが進む村の中、周囲より一回り大きい建物の建設に携わっていたアスリィは、完成した建物に、最後の仕上げとして看板を掲げると、高らかに宣言する。

「はい!ここが冒険者の酒場です!」

そう、食事処として差し支えないだけの立派な厨房と、飲食スペース。そして何より、依頼を掲示するための真新しい大きな掲示板!
それはまさしく、「冒険者の店」であった。

  •  ・ ・ ・

ところで、この店は誰が運営するのだろう…?
建てたのはアスリィだが、(一応)魔法師であるアスリィ自らが店主となるような暇はなさそうなのだが…

なんだかんだ、掲示板や物置としては使われているものの、この店の本格的な活動開始は、店主が見つかるまでしばらく待たれることになる。
いずれ、とある人物が、この店の店主に着任するのだが、それはもうちょっと後の話である。

Middle 1.4. 開拓Ⅳ:小麦畑の開拓

ヴィルマ村にも施設が充実してきたところで、次に目を向けられたのは村の畑についてだ。
開拓が始まってすぐに育てやすいジャガイモを植え、それらは順調に成長してきた。

とはいえ、ある程度村の運営が軌道に乗ってくると、他のものにも手を出したくなってくるものである。
将来的には、せっかく立てた冒険者の店で出す料理としては、出来るだけ村のものを使いたい、ということもある。
(他所から来ることも多い冒険者の集まる店は、村の魅力のアピールのよい場となるのだ。)

こうして、フライドポテトとマッシュポテトしかヴィルマ村産の料理がない現状を打破すべく、他の作物も育て始めることにしたのである。
次に挑戦する作物として選ばれたのは小麦である。(香辛料、という案もあったが)

小麦は、アトラタン世界中で最も栽培されている穀物である。
特にヴァレフールは穀倉地帯として知られており、各村で広く栽培されている。
つまりは、ブレトランドの民の多くは小麦のパンを主食として育ってきた者たちであり、いずれジャガイモだけでは不満も出るだろう、という面もある。

小麦畑の開拓については、サラが指揮を執る。
この村に派遣されて以降、持ち前の勤勉さでコツコツと学を深めていたサラは、(エーラムで各分野の基礎教養を学んでいる魔法師たちの中でも)特に農業に詳しくなっており、そんな彼女の指揮により、小麦畑はつつがなく完成する。
無論、収穫までにはまだ間があるだろうが、小麦畑は概ね順調なスタートを切ったのである。

  •  ・ ・ ・

そこにちょうど、ヴィルマ村を訪れている来客たちが様子を見に来ていた。
ジャガイモ畑と、新たに出来たばかりの小麦畑を見たアルバートが感心したように領主のグランに語る。

「復興したばかりの村と聞いていましたが、これは見事なものですね。」

「まあ、みんなが色々協力してくれていますからね。何とかやってきていますよ。」

「以前のヴィルマ村も、このような感じでのどかな畑が広がる村でした。」
「もちろん、建物の配置とかこそ変わっては行きますが、着実に、この村は元の雰囲気を取り戻していっている、と思います。これは、懐かしい風景が見られるのもそう遠くは無さそうですね。」

一緒に畑を見に来ていた他の来客たち(ミーシャ、シェリア、ノア、アストリッド)も一様に感心しているようだ。

そこで、アスリィが1つ気付いた。
時折、シェリア司祭がアルバートの方をじっと見ているような気がしたのである。

「あれ? もしかして、お知り合いですか?」

「いえ、古い知り合いに似ていた、ような気がしたのですが、気のせいですね。そちらはバルレアでお会いした投影体の方なので、はっきり別人でしょう。」

この会話を聞いて、グランもついでに問いかける。

「バルレアですか…? そういえば、最近そちらの「瞳」の方でパンドラが起こした事件があったとか。」

この村に来る前はブレトランド外で傭兵稼業をしていただけあって、国外の情勢には割り合い耳ざとい。
特にパンドラ関連の情報を追っているグランとしては、そういった話を聞いたことがある以上、気になるものである。

「ええ、とはいえ、そちらの方は解決した、と言っていいでしょう。でなければ私はまだバルレアにいたでしょうからね。」
「むしろ、噂レベルではありますが、最近はブレトランドの方でも彼らの活動が活発化していると聞きました。」

「まあ、そんな噂もあって、私もここに売り込んできた、というのもありますけどね。」

この2人は共にパンドラを敵視しているという点では、かなり話の合う面がある。

Middle 2.1. 開拓Ⅴ:南の山の調査

さて、そろそろミーシャに依頼された南の山の坑道探索に向けても本格的に動き出さなくてはならない。
そのためには、もう少し詳しく南の山について知る必要があるだろう。

以前見に行った時の様子と、よくこの山に出入りしているというミーシャの情報提供により、大まかな地形は分かっている。(下図参照、再掲)


知られている坑道の入り口は3か所。
ボルドヴァルド大森林と南の山地の境目付近に位置する「森の坑道入り口」。山地中央付近の「ハガネの坑道入り口」。ナゴン村寄りの位置にある「古びた坑道入り口」。

グランは特に坑道周りについて、さらに詳しく調べていく。
それぞれ3か所の入り口は、以前坑道として使われていたようだが、内部の詳細は不明。
ただ、残っていた資料によると、「ハガネの坑道入り口」はその名の通り、以前は鉄鉱石採掘の中心となっていた坑道のようだ。
他の坑道については、鉄などについてはあまり採掘されていなかったようだ。
掘っても何も出なかったので、そのまま放置されてきた、という経緯のようだが、あくまでそれは当時掘っていた鉱石についてであり、当時の人たちが存在を知っていたかも怪しいカレイドストーンについては定かではない。

坑道以外だと、「古びた坑道入り口」に向かう山道の途中に「キラメキの泉」という綺麗な水を湛えた泉がある。
その近辺含め、最近の山中では野生動物も結構出没するらしい。
また、泉近辺ではちょくちょく人影を見かけることもあるらしい。
動物目当ての猟師が山に立ち入ったりすることは珍しくもないし、ミーシャのように独自の目的を持って山に入るものもいる。
そういう意味ではあまり気にするようなことでもないだろう。

Middle 2.2. 幕間:アドバイス

アレックスは、仮復興本部に滞在しているアストリッドを訪ねていた。
以前頼んだ、香辛料関連の資料について、聞いてみるためだ。

「おや、アレックスさんではないですか。」
「あ、そうそう。依頼されていた件ですね! こちらでどうでしょう。」

アレックスに尋ねられると、そう言って、アストリッドは1冊の本を手渡す。
どうやら、農業関係の専門書のようだ。
特に、一般的な作物ではなく、アトラタン各地方に特有の特徴的な産物についてまとめられた書物であり、栽培地域が限られている香辛料についてもそれなりのページ数が割かれていた。

(アストリッドはヴィルマ村に滞在している期間中も、ちょくちょく村を離れてドラグボロゥにも足を伸ばしていた。おそらく、そのついでに調達してきたのだろう。)

「私も目を通してみましたが、確かに、ものを選べば今のこの村でも栽培できるのではないかと思います。」
「多くはブレトランドよりももっと暖かい地域で育てられているものですが、例えば唐辛子などは、そこまで極端に暖かくなくても育てられそうですよ。」

「ほう、なるほど。初心者向け、というやつですね。」

「はい、それで上手くいくようなら、今後どんどんステップアップしていけば良い訳ですし。」

「ありがとうございます。 じゃあ、頑張って作ってみます。」

「ええ、期待しています。」

アストリッドとしては、ヴィルマ村に香辛料産業が根付いてくれれば、利になる話である。
もっとも、アレックスの主目的は、商品作物として作る事ではなく、自分で使うためのものなので、微妙にそのあたりすれ違ってはいるのだが。
(とはいえ、村の畑でそれなりに育て始める以上、上手く育たられれば流石にアレックスだけで使い切るような事もないだろう。商品とするだけの余力もいずれは出てくるはずである。)

  •  ・ ・ ・

アストリッドから本を受け取ったあと、アレックスはその足でサラのもとに向かっていた。
新たな作物を作るにあたって、今のヴィルマ村で最も農業知識に詳しいサラには、ぜひとも協力してほしいところである。

「サラ、アストリッドさんに調べてもらっていた香辛料の育て方なんだけど。」
「本をもらったので、これを。」

と言って、本をサラに手渡す。

この本は、いずれ村に香辛料畑を作るうえで非常に役立つことになるのだろうが、それはもう少し先の話である。

Middle 2.3. 開拓Ⅵ:宿屋の建設

次にヴィルマ村の面々がとりかかったのは宿屋の建設である。
現在、ヴィルマ村には、当初の想定を超えて来客が訪れていた。
ミーシャ、シェリア、アルバート、アストリッド…。
彼らは今は復興本部の一室を借りて寝泊りしているが、それにしてもいつまでもそういう訳にもいかないし、今後さらに来客が増える可能性もある。

となれば、村に一軒ぐらいは宿となる店が必要だろう、というのは至極まっとうな意見であった。

幸い、森で調達してきた木材で復興本部や冒険者の店を作った直後であり、建て方なんかは同じでよかろうし、木材にもまだ余裕があった。
冒険者の店を建て、建築作業も板についてきたアスリィが宿屋の建築に取り掛かる。
…指示を飛ばすよりも率先して作業をこなしていくその姿はあまり魔法師らしくは見えなかったが。

  •  ・ ・ ・

かくして、ヴィルマ村の宿屋は完成し、復興本部を仮の宿としていた客人たちは、新たな宿に移ることになる。
その折、1つ気付いたことがあったアスリィはつぶやいた。

「あれ? アルバートさんは?」

宿移りの準備をしながら、ミーシャが言葉を返すことには、

「アルバートさんなら、先ほど出かけて行きましたよ。」

「あ、そうなんだ。じゃあ、帰ってき次第お伝えしましょうか。」

どうやら方向感覚に疎いらしい彼のことは心配だが、よほど村の近くなら危険があることもあるまいし、流石にうっかり魔境に踏み込むようなことはないだろう。
(余談だが、アトラタンにおいて「方向感覚に疎い人」はうっかり魔境に踏み込んだりは、割とやらかすのだが、それの実例はまた別の話である。)
ひとまずここは、「まあ、大丈夫でしょ。」と結論する。

Middle 2.4. 開拓Ⅶ:橋の再建

次に取り掛かったのは、村の開拓を始めた当初からの懸案事項であった、ヴィルマ村とテイタニアの街の旧街道である。
ブレトランド屈指の大河であるカーレル川を超えてつなぐ重要な道であるが、肝心の橋がこの使われなかった数年のうちに壊れ落ちてしまっていた。

その結果として、現在のヴィルマ村が街道で隣接している村は南のナゴン村のみ、という状況となっており、交通の便には非常に難があった。
(アレックスも、この村に来るときに橋のことを知らずにテイタニア経由で来ようとして、結局遠回りをする羽目になっていた。)
もちろん物資を運び入れる、運び出すのに不便、ということもあるし、もし何らかの事情・事故などでその街道が使えなくなると村が孤立してしまう、という危機管理の観点からもあまり良くはない。

そこで、今のうちに橋の再建をし、テイタニアまでの街道を復活させることを決意する。

これはアレックスが担当することになった。
(現に橋が落ちていることの不便さを被っていたこともあってか。)
橋の作成は、家の立て方とは勝手は違うとはいえ、ここ最近続く村の建築ラッシュのおかげで、アレックスも村の皆も建築作業にはだいぶ慣れてきていた。

ほどなくし、無事に橋が完成した結果、ヴィルマ村の交通事情はまた一段階改善したのである。

Middle 2.5. 開拓Ⅷ:隣街事情

村の施設・農業などはこれまで村の皆の尽力あってだいぶ改善してきた。
少し余裕が出てくると、近隣の状況にも気を配りたくなってくるものである。

ヴィルマ村近辺には、隣接するナゴン村、テイタニアの街があるが、グランたちはあまりこれらの地の現状について明るい訳ではない。
無論、ボルドヴァルド大森林や南の山のことも気にかかるし、それはそれとして、聖印教会からの接触もあった以上、彼らの動きも要注意だ。
こうして考えると、意外とヴィルマ村の近辺の状況を知っていく必要性は高い。
(まあ、そもそも村を経営していくにあたって情報が重要なのは、どんな村でも当然と言えば当然だが。)

そこでまず、折角街道が新たにつながった、ということもあって、近隣随一の都市であるテイタニアについて調べてみることにする。

  •  ・ ・ ・

さて、ここでテイタニアについて少しおさらいしよう。

テイタニアはヴィルマ村から北に向かったところに位置する、リルクロート男爵家の治める都市である。
領主の名はユーフィー・リルクロート(下図)。


代々テイタニアの街を治めているリルクロート家の当代であり、ヴァレフール騎士団の七男爵の1人である。
先代男爵の第4子であり後継者とはみなされていなかったが、後継者候補であったユーフィーの兄2人が父である先代男爵と共に戦死したことで、急遽後継者として男爵位を継承することになった。
最近になって七男爵のうち3名が交代したことによって、七男爵としての在任期間がイアン・シュペルター、ファルク・カーリンに次ぐ(ロートス・ケリガンとはほぼ同時期)ことになり、いまだ領主歴は浅いにも関わらず「七男爵の中では中堅どころ」とみなされ始めている。

その契約魔法師はインディゴ・クレセント(下図)。


静動魔法を専門とする魔法師であり、成人後になってから魔法師の才に目覚めたという変わった経歴の魔法師である。
爵位を継承して日が浅いユーフィーの治世を堅実にサポートしていることには定評がある。

そして、テイタニアの街自体の概要としては、ざっくり言うならば「冒険者の街」である。
ボルドヴァルド大森林の外縁部に隣接し、森林に挑む冒険者たちが多く集まる。
当然、彼ら相手の商売の拠点にもなり、ヴァレフールでも10本の指に入る都市の1つとしてにぎわっている。
領主のユーフィーとしても、魔境の攻略には積極的であり、自ら魔境に挑むことも多い。
(ちなみに、元々彼女の聖印は「剣」の聖印と分類されるものであったが、最近は対混沌戦に特化した聖印の扱いを身に付けているようだ。)

それで、最近、特にヴィルマ村に関連するテイタニアの動きとしては、やはりテイタニア側でも街道の不備(橋の崩落)は懸案事項にあげられており、折を見て橋の再建に乗り出すつもりであったようだ。
とはいえ、ヴィルマ村にそれを伝える前に、ヴィルマ村の方から橋を再建してしまった、ということのようである。
テイタニアとしては、ヴァレフールの国主導の事業としてヴィルマ村復興が進められている以上、自分たちの街に関わる部分ぐらいの支援はするのが筋、と考えていたところもあり、ヴィルマ村による橋の再建は、図らずもテイタニアに対して恩を売ったような形になっていたようだ。

Middle 3.1. 南の山へ

こうして村の開拓が着々と進められる中、並行して坑道探索の準備も整えられてきていた。
村も開拓もひと段落し、そろそろ本格的な探索に向かおうか、ということで、グランは行動の情報を持ってきた本人であるミーシャを訪ねていた。

「ミーシャさん、今大丈夫ですか?」

「…。……。 っ! はいっ! 大丈夫ですよ!」

どうやら、最初に持ってきていたカレイドストーンの欠片を何やらいじくっていたようである。
割合集中していたようだが、流石に領主の訪問には作業を中断して向き直る。

「長らくお待たせしてしまって申し訳ありませんが、ようやくこちらも行く準備が出来ました。」

「ほんとですか!」

「今から準備が整い次第、出発する予定です。」

「では、言っていた通り、私も同行させて頂きます!」

グランたちよりも南の山に詳しい、ということもあるし、そもカレイドストーンは召喚魔法師のサラでもよく知らなかった代物だ。
ミーシャの同行は必須だろう。

  •  ・ ・ ・

「ところで、どこの入り口から入っていくつもりですか?」

準備も一通り整って、出発前にミーシャが聞いた。
現在知っているだけで坑道の入り口は「古びた坑道入り口」「ハガネの坑道入り口」「森の坑道入り口」と、3か所ある。

「カレイドストーンを見つけたのは、どこの坑道でした?」

ミーシャは地図の「ハガネの坑道入り口」を指さしながら、

「そこの坑道の入り口あたりですね。」
「でも、ちょっと入っていったところで早々に行き止まりとか障害物になっていましたよ。」

と語る。
グランは、その話と伝わっている入り口の名前を考えて、

「少なくとも、ここは鉄がメインだったみたいだしな。こっちから行ってみるのもありか。」

と「森の坑道入り口」を提案する。
最もヴィルマ村から近い、ということもあって、まずはここから探索を始めてみることにひとまず皆も同意する。

Middle 3.2. 西の山道

出発してからほどなく、ちょうど村と目的の入り口の中間あたり、「西の山道」と呼ばれているあたりに差し掛かったころだった。
一行が敵意を感じてあたりを見回すと、野生の狼たちが彼らに敵意を向けているのを見つける。
別に投影体などではないただの野生動物のようだが、どうやらこの近辺はその狼たちのテリトリーなのだろうか?

襲ってくる狼たちに、それぞれ武器を構えて応戦し(一部、特に武器を使わない人もいたが)、どうにか追い払うことに成功する。
サラに召喚されて応戦していたペリュトンが若干傷を受けたものの、大した被害もなくこの場は乗り切ったといえよう。

ところで、倒した狼を見ながら、アレックスがポツリとつぶやいた。

「これ、食べられるかな?」

あまり、狼の肉を食べる、という話は聞いたことがない。
恐らく美味しくないのではないだろうか…
(とはいえ、アレックスの味覚でどう感じるかは、また別問題かもしれないが)

「…私は、遠慮しておく。」

「…別に、他に食べ物あるからさ。」

「…食べたことないですけど、多分まずいんじゃないですか?」

他3人は、特に食べようとは思わないらしい。
流石に全員に反対されたので、アレックスも食べてみることを思いとどまったうえで、また彼らは行動に向けて歩みを進め始めた。

Middle 3.3. 坑道の中

それ以降は特に問題は起こらず、彼らは「森の坑道入り口」にたどり着いた。
改めて見てみると、確かに自然のものではなく、人工的に掘られたと思しき洞窟である。
ところどころ、木材を使って補強がされている。

入ってすぐのところで壁面を調べたミーシャが言う。

「うーん、この辺はさすがにまだ、ただの石みたいですね。価値がある鉱石、という訳では無いようです。」

まあ、こんな入り口に近いところで掘れるようなものはもう掘りつくされているだろうし、当然だろう。

中に入っていくと、当然だが洞窟の中は暗い。
用意してきた灯りをともして、(アレックスは自身に炎を纏わせることで灯り代わりにして)、先に進んでいく。

  •  ・ ・ ・

進んでいくと、左右への分岐路に出た。
左の道は方向的には「ハガネの坑道入り口」の方、右の道は奥の方へと続いている。(下図)


ここで、右の道の奥から、かすかに混沌の気配が漂っていることに気付く。

「なにか、敵の匂いがする!」

アスリィはその混沌の気配を察して心なしかウズウズしているようだ。
グランも多少理由は違えど、そちらに向かう方針には賛同する。

「こっち(左の道)に向かうにせよ、後ろから襲われるのは避けたいな。」

ということで、彼らは右の道に進んでみることにする。

  •  ・ ・ ・

しばらく進むと、またもや分岐路に出た。
思ったよりも、この坑道の中は複雑に分岐をしているらしい。(下図)


分岐点近くに差し掛かった時、少しばかり天井が崩れてくる。
運悪くその真下にいたのはサラであった。
とっさに避けきれずに、落ちてきた石に当たってしまうが、アレックスがとっさに元素の防壁を使ってサラを守ることで、大きなケガを負わずに済む。
まったくもって、坑道には危険がいっぱいである。

「大丈夫か? サラ!」
「長く使って無かっただけあって、だな。頭上とかにも気を付けて行こう。」

「大丈夫ですよ、サラさん! なんかフンッってやったら治るやつあるんで!」

アスリィの言う「フンッってやったら治るやつ」というのは、エーラムで言う基礎魔法《キュアライトウーンズ》である。

さて、改めて分岐路に目を向ける。
先ほど感じた混沌の気配はなおも右の道から漂っている。
同じ理由で、ここもひとまずその気配に向かってみるべきだろう、と判断した彼らは、更に歩を進める。

Middle 3.4. 守護者の門

道を進んでいくと、一行はあることに気が付いた。
だんだん周囲が明るくなっていく。どうやら外に続く出口があるらしい。
進んできた距離と方向から考えると、おそらくここは森の中につながっているのではないだろうか…?
確かに魔境である森につながっているのならば、混沌の気配がしてもおかしくはないが…

だが、その予想は裏切られた。
果たして確かに出口はあった。
だが、その出口を塞ぐように、巨大な人影が鎮座していた。

人影、といってもその材質は石だ。
巨大な石人形がそこにあったのである。
動く様子はないが、その巨体で周囲を威圧しているように感じられる。

召喚魔法師のサラの見立てでは、いわゆるゴーレム、というものだろう。
誰かがここに召喚したのか、他所から連れてきてここで機能を停止させたのか、それとも停止状態で投影されたのか。
そのいずれとも定かではない。
だが、どちらにせよゴーレムと呼ばれる類の行動は「入力されている命令による」としか言えず、見た目で判断するのは難しい。
下手に近づくと、突然動き出して襲ってくる可能性もある。

ここまでは、サラの知識による見立てであるが、もう1人の魔法師であるアスリィは対照的だった。
なんというか、それは冒険者(的なもの)の直感ともいうべきものだろう。
うすうすと、「このゴーレムは今の自分たちより格上だな。」と感じていた。

「あれ、戦ったらヤバいやつですよ。」
「いずれ、また力をつけたら挑戦したい!」

内心、このゴーレムにいつか再挑戦することを思いつつ、今回はひとまず引き返すことにしたのである。

Combat 1. 蜘蛛の襲来

1つ前の分岐点まで戻り、今度は先ほど選ばなかった方の道を進んでみる。(下図)


しばらく進んだところで、先頭を進んでいたグランとアスリィは、足元にキラリと光る石を見つける。
村でミーシャが見せてくれたものよりもさらに小さいが、どうやらカレイドストーンの欠片のようだ。

確認のため、グランはミーシャを呼ぶ。

「これは、もしかしてカレイドストーンなんですか?」

「うーん、だいぶ純度が低いですが、一応、そうですね。」

「じゃあ、このあたりにあるのか?」

「そうですね、かなり近づいてきたんだと思います。」

隣からアスリィも口を挟む。

「奥に行けば、もっと純度が高いのもあるんですかね。」

それに対して、ミーシャが返すことには。

「もしかしたら、ここで調べれば大まかな方向とかは分かるかも。ちょっとお待ちいただけますか。」

そう言ってミーシャが壁面を調べ始めたところで、ガサガサっと嫌な音が洞窟に響いた。
見れば、天井に巨大な蜘蛛が這いまわっている。
ジャイアントスパイダー、というやつだ。
蜘蛛としてはあまりに巨大だが、れっきとしたアトラタン世界もともとの生物だ。
そして、割合凶暴な性質でも知られていた。

グランたちがそれに気づいて戦闘態勢を取ったところで、今度はガキンッと別の音が響いた。
ミーシャが調査用と思しき機械を壁面に打ち込んでいた。
打ち込んだところで、彼女も、蜘蛛の存在に気付いたようである。

「え? ちょっ! ちょっと待って! これ、しばらく結果出ないんですけど! 目離せないんですけど!」

どうやら、ミーシャ(と機械)を守りつつ、蜘蛛を撃退しなくてはならないようである。

  •  ・ ・ ・

まずはサラの召喚したペリュトンが先陣を切って蜘蛛に襲い掛かる。
続けて、サラ本人は、蜘蛛が一団に集まっているところを見つけて、期を逃さず《サモン:ブラックドッグ》の魔法を撃ち込む。

ここで、サラは雷撃を撃ち込んだ時の蜘蛛の反応から、あることを察する。
どうやら、この蜘蛛たち、炎熱系の攻撃に弱いのではないだろうか?
そして、ヴィルマ村陣営には炎を操るアーティストであるアレックスがいる。
彼の活躍に期待がかかるところである。

蜘蛛が動くよりも一瞬早く、次に仕掛けたのはアスリィであった。
魔法による強化を掛けた拳を蜘蛛の一体に叩き込み、戦闘不能ぎりぎりまで追い詰める。

サラと(ペリュトンと)アスリィの連撃によって手痛い傷を負っていたが、ここで蜘蛛たちも反撃に出た。
先ほどの雷撃を脅威と見たか、蜘蛛の一体がサラに糸を吐きかけて攻撃する。
所詮は糸、攻撃の威力自体はさほどでもない。
だが、蜘蛛はサラに巻き付い糸をそのまま巻き上げる。
結果として、魔法師であるサラが敵陣の中に連れ込まれてしまう、という事態が発生してしまう。

そのサラに他の蜘蛛が近寄って、今度は糸ではなく毒の牙を使って攻撃を仕掛ける。
もちろん避けられる訳もなく、その攻撃を受けてしまうが、サラはそのタイミングで巨人ギガースを展開して守らせる。
それにより攻撃のほとんどは減殺され、毒を受けただけに被害をとどめられた。

一方、アスリィにも他の蜘蛛から毒の牙を仕掛けられていた。
一瞬偶然にも不意を取った蜘蛛の一撃に当たりそうになったものの、それを目敏く見つけたサラの《サモン:リャナンシー》の魔法で、蜘蛛の気をそらす。
そのサポートのおかげで、アスリィは自身に向けられた攻撃をさらりと避ける。

最後の蜘蛛はペリュトンに襲い掛かる。
これは、アレックスが炎の防壁を展開して、被害を最小限にとどめる。

かくして、蜘蛛たちの一斉攻撃をおのおの協力して、何とか乗り切った。
再びの反撃はまずグランの射撃から始まった。
聖印の力を込めた一撃で2体の蜘蛛を同時に狙う。
見事、これまでの攻撃で消耗していたこともあって、2体ともを撃ち倒す。

最後に、アレックスが炎をまとった攻撃を繰り出す。
炎に弱いこともあって、それをまともに受けてしまった蜘蛛はこんがり焼けてその場に転がる。

おのおの一通りの打ち合いが終わったところで、残っていた蜘蛛はわずかに1体。
もはや戦いの趨勢は決していた。
ほどなく、蜘蛛の次の攻撃を許すことなく、残りの蜘蛛をしとめるに至った。

ちなみに、その後ろでミーシャが、調査の終わったものから順に機械を回収しており、無事1つも壊されることなく、全ての機械の回収を終えていた。

Midlle 4.1. 隣村の領主

「んー、鉱脈はどうやらこっちに延びているみたいですね。」

回収した機械を眺めつつ、ミーシャが呟いた。
ちょうど分岐点になっているこの地点の右の道、入ってきた入り口から見てさらに奥の方に、鉱脈は伸びているらしい。
この道の奥に、更にカレイドストーンがある可能性があるだろう。

しかし、ここで一行はもう一方の道の方に目を向けた。
左の道の方から足音が近づいてくる。

敵とは限らないが、先に足音の正体を確かめる方がいいだろう。

左の道に進んでいくと、足音はだんだんと近づいてくる。
さらに距離を詰めていくと、足音は時折途切れ途切れになり、どうやら相手もこちらに気付いて警戒しているのだろうか。


次の分岐点近くまで出たところで、相手は人間だと判断し、グランは姿の見えない相手に声をかける。

「私はヴィルマ村領主のグラン・マイアだ。そちらは何者か?」

その声を受けて、岩陰で警戒していた青年が姿を現し、名乗る。

「ほう、何者かと思ったら、ヴィルマ村の!」
「ナゴン村領主、リヒター・レイゼルトだ。敵ではないようで何よりだ。」

現れたのは金髪の長髪を後ろでくくった20代後半ぐらいの青年。
比較的軽装であるが、しっかりした装備を身に着けており、なるほど領主と言われて納得はする。
またもう1人、見慣れない装束をまとった女性も青年に続いて姿を現す。

リヒターと名乗った青年は、グランに質問を投げかける。

「さて、キミたちもここの調査に来た、ということでいいのだろうか?」

「ということは、そちらも?」

リヒターは、「そうだよ。きっと、これのことだね。」と言って、ポケットからカレイドストーンの欠片を取り出す。
どうやら、彼らもカレイドストーンを探しにこの坑道を探索しているらしい。

「我々も、それを探しているのですよ。」

「ま、とにかくこの場において、これを探すってとこは協力できるだろう。」

ちょうどここは、地理的にはナゴン村とヴィルマ村のちょうど中間地点ぐらいにあたる。
鉱山利権の話ともなると、ちゃんとした話し合いが必要だろうが、少なくとも、ここで敵対する理由は無い。
そもそも、まだ本格的な鉱脈が見つかってすらいないのだ。

どちらかというと、それ以上に気になることをリヒターは問いかける。

「ところで、キミたちはこの石のことを誰に聞いたんだい?」
「そうそう、この価値に気付ける人がいるとは思えないんだけど。」

グランは、同行していたミーシャを指して、経緯を説明する。

「なるほど、確かに彼女なら。」
「ちなみにこちらは、とある旅の学者から聞いたんだが…、ま、あの食えなそうな男が隣村にも何食わぬ顔で情報を流していた、という訳でもなさそうだな。」

どうやら、情報の二度売りをされたのではないかと勘ぐっていたらしい。
(実際、素性の知れぬ情報屋の情報など、二度売りだのなんだのは決して珍しい話でない。
 だからこそ、それを決してせず、なおかつ情報の確度の高い「ヴァルスの蜘蛛」などは信用されているし、その情報は非常に高価なのだ。)

とかく、互いの事情が分かったところで、2人の領主はこの場でしばしの共同戦線を承諾する。

  •  ・ ・ ・

「あ、そうそう。紹介が遅れたね。こちらは僕の契約魔法師のモミジ・カンティネンだ。」

リヒターはそう言って、同行していた女性を紹介する。

エーラム出身であるサラも、彼女自身は知らなかったが、その家名には心当たりがあった。
その家名を持つ人物でおそらくもっとも生徒の中で有名だったのは、イクサ・カンティネン。
魔法学院の寮長を務めていた者であり、規則違反の学生にお仕置きの《フォースグリップ》をかますことで恐れられていた人物だ。
素行に問題がなかったサラは特にその被害に遭った事は無いが、同門のアテリオあたりは時折くらっていたかもしれない…
余談だが。

「変わった服装ですね。」
「どこの服なんでしょうか?」

そう言ってグランは問いかける。
普通は家名よりもそっちの方が気にかかる。

「私は、大陸の東にある島国の出身。そこの服装。」

モミジは、簡潔に問われたことに答える。
そこでリヒターが補足する。

「彼女は東の国で魔法の才を見出されてきて、エーラムで学んだんだ。で、卒業してからこの地に赴任してきたって訳さ。」
「ちなみに専門は元素魔法。僕に足りない戦闘力を補ってくれるのさ。」

続いて、グラン以外のヴィルマ村の面々も紹介する。
一通りの紹介を終えて、改めて、人数が増えて6人で、坑道の奥へと歩を進めるのであった。

  •  ・ ・ ・

道中にて。

アレックスは、モミジに、東の国のことで気になっていたことを問いかける。

「ちなみにモミジさん、"シチミ"ってお聞きしたことありますか?」

アスリィも口を挟む。

「"シチミ"ってなんですか?」

「どうやら、東国の方にある辛い香辛料を"シチミ"と呼ぶみたいなんですが…」

モミジが答える事には、

「"七味"ですね。私の故郷にそういったものはありました。」
「ですが、それは香辛料単品ではなくて、何種類かの香辛料を合わせたもの、では?」
「主成分は、こちらでもよく見る唐辛子、ですよ。」

こちらでもよく見るも何も、唐辛子なら現にヴィルマ村で育てようと画策しているところだ。

「そうだったんですね。」

納得するアレックスに、モミジは続ける。

「香辛料でしたら、私の故郷にもいろいろなものがありました。」
「唐辛子はこちらでも見かけますが、"山葵"や"芥子"となると、とんと見かけませんね。」 

「…"ワサビ"?」

さすがのアレックスでも、「東国に緑色の面妖な香辛料(?)があるらしい」と聞いたことがある程度だろう。
香辛料の世界はかくも広い。

ちなみに、"ワサビ"を栽培しようとなるとこれはなかなかに難しい。
繊細な管理を要するし、何よりも大量に綺麗な水が必要なのだ。

アレックスとしては、未知の香辛料に興味津々のようだが、そもそも取り扱っている商人を探すだけで一苦労だろう。
隣からアスリィも口を挟む。

「アストリッドさんなら持っているかもしれませんが、高そうですね!」

Midlle 4.2. 投影鉱石の鉱脈

こうして先ほどの分岐道に戻ったところで、改めて鉱脈に沿って奥へと進んでいく。


先ほど蜘蛛と戦っていたあたりでは、ちらほらと小片が見つかる程度だったカレイドストーンは、奥に向かうにつれて、その大きさを増していく。
心なしか、照らす灯りを受けて光る輝きも、先ほどより強まってきたように思える。

「ここら辺のは良いですね。十分素材としては使えそうです。もちろん宝石としての価値も。」

ミーシャが壁面を見つつ語る。
今回の調査としては、この場所が見つかったところで及第点だろう。
ナゴン村との話し合いの必要などは残るものの、ここは一度引き返して良さそうだ。

そう思ったところで。
ちょうどその帰り道の方から、唸り声が響いた。

「GRrrrrrUUUuuuu!!」

どうやらまた、坑道に迷い込んだ生物がいるらしい。
今回は蜘蛛では無くて獣のようだ。

「ま、今回だけなら遠回りしてやり過ごすことも不可能じゃないだろうな。だが、いずれここで採掘を続けるなら…」

「…討伐してしまった方がいいだろうな。」

それが、リヒターとグランの一致した意見だった。
調査終了前の一戦を覚悟しながら、グランたちは元来た道を引き返していった。

Combat 2. 氷の白狼、現る

聞こえる唸り声を頼りに先ほどの分岐点まで戻ってきたところで、それは現れた。
白銀の毛皮が美しい、巨大な狼。混沌の気配を感じるところからすると、どうやら投影体だ。
周囲には、以前山道で見た狼たちを何匹か従えている。

投影体のスペシャリストであるサラが記憶をたぐるが、その姿に心当たる名はない。
(正直、いくら召喚魔法師といえど、数多ある異界の投影体全てを覚えようなど無理があるのだ。)
とはいえ、坑道の安全を脅かす以上、ここで成すべきことは決まっていた。

「こいつらには悪いが、俺たちの安全のために倒されてもらおう。」

「そうだね。じゃあ、始めよう!」

グランとリヒターがそう言って聖印を掲げ、戦いが始まった。

  •  ・ ・ ・

開戦と同時に、グランは弓に聖印の力を込める。
同じく動きを見せたのはモミジ。故郷の言葉を紡ぎ、長い詠唱を始める。
(彼女の故郷に伝わる伝統的な詩(和歌)を取り入れた魔法詠唱なのだが、彼女の魔法は精度と引き換えに、発動に非常に時間がかかる。)

まず、機先を制して動いたのはペリュトンとサラである。
ペリュトンの一撃が狼に打撃を与えたところに、サラの魔法の追撃。戦場を電撃の黒犬が走り抜ける。
その合間に、サラはグランたちに《ヴォ―パルウェポン》の魔法で強化を掛けることも忘れない。

続けてアスリィが魔法の力を込めて、白狼に拳を振るう。
拳が当たる瞬間に一気に魔力を込める。魔法陣を拳に展開し、更に威力を増し、白狼に痛手を与える。

そこで、聖印の力を込めたグランの矢が放たれる。
複数の矢を同時に放つ一射はそれぞれ聖印の輝きを尾に曳きながら飛び、まず1体の狼に命中する。
もう1体、白狼は卓越した反射神経で間一髪それを躱そうとする。
しかし、そこでリヒターが聖印を掲げた。
混沌に由来する者の力を弱め、妨害する聖印によって回避行動を邪魔され、白狼にも矢が迫る。

リヒターに感謝しつつ、改めてグランは聖印を構える。
突き立つ直前の矢にさらに聖印の力を注ぎ、威力に変える。
聖印と類稀なる天運に愛された者のみが使える絶技《閃光刃の印》である。

アレックスも、炎を纏わせて、1体の狼を相手取り、打撃を与える。

こうして、各自の初撃を与えたところで、白狼がひときわ大きく吠える。

「GRRRRRrUUUUUUu!!」

その声に合わせ、周りを囲む狼たちが一斉にとびかかる。
どうやら、この狼たちの指揮を完全に掌握しているようだ。

アスリィは狼の攻撃を流石の素早さで避ける。

しかし、それほど回避能力の高くないペリュトンに狼たちの攻撃が迫る。
始めにとびかかった狼の牙で深手を負ったところに、別の狼の追撃を受け、ペリュトンは消滅してしまう。

残る1匹の狼はペリュトンが消えたところで、術者であるサラに狙いを定める。
サラはとっさに巨人ギガースを召喚して、その攻撃を防ぐ。

詠唱を続けていたモミジは更に言葉を織り込み、和歌の陣を重ねていく。
リヒターは聖印の力を両手に集め、レイピアを形作り、詠唱中のモミジを護衛している。

狼たちの一斉攻撃を見届けた白狼は、次なる自身の攻撃を仕掛ける。
広範囲に広がる氷の息吹を敵陣に吐きかける。
が、その会心の攻撃に合わせてサラがリャナンシーを召喚し、気を散らせる。
精度を失った息吹をアスリィは軽々と避け、グランも《アシスト》の魔法の力を借りて回避する。

無防備な詠唱中のモミジにも氷の息吹が迫るが、そこはリヒターがかばいに入る。
モミジの分の攻撃も受けながらも、混沌の力を弱める防壁を展開し、踏みとどまる。

ここで、一通りの応酬が終わり、互いに態勢を整え直す。

一瞬の静寂を最初に破ったのは、ついに詠唱を終えたモミジであった。
まずは周囲に混沌を集めていく。もとより比較的混沌濃度の高い土地柄であるが、さらに混沌は濃くなっていく。
そして、一気に作り上げた陣を開放すると、白狼を中心に爆炎が巻き起こる。
炎の元素魔法《バーストフレア》をベースに、より広範囲を巻き込み、なおかつ味方を巻き込まない精密制御を加え、その爆炎は防御を貫く。
モミジの十八番ともいえる大魔術である。

爆炎が晴れた時、かろうじてその場に踏みとどまっていた白狼にアスリィの拳が追撃する。
ここまでの続けざまの攻撃で、かなりの体力を誇っていたと思われる白狼にもついに限界が見え始めた。

この期を逃さず、サラは《ヴァキュームプロジェクション》の魔法を発動させる。
真空そのものを召喚し、それに伴う暴風を戦場に叩き込む、浅葱派召喚魔法の大技である。
白狼と接近戦を演じていたアスリィも巻き込む形になってしまっていたが、そこはしっかり避けて、白狼たちだけに暴風が襲い掛かる。

「Gr…gu…u……」

それが決着の一撃だった。

統率していた白狼が倒れたことで、周囲の狼たちは、戦意を失くしたようだ。

アレックスがポツリと、

「飼える…?」

と言葉を漏らしたが、残念ながら、狼たちはそのまま森の方へ去っていった。
狼たちはもともと普通にこの辺りに住んでいた動物であるし、白狼という統率者がいなくなった状態ならそこまでの脅威ではないだろう。
そもそも、わざわざ坑道に入ってくるとも思えない。

かくして、坑道での激闘は幕を閉じた。

Ending.1. 村への帰還

戦いを終えて。

白狼の混沌核をグランと分け合って浄化し、聖印に取り込みながら、リヒターは尋ねた。

「それにしても、普通の狼の中に1体だけ投影体か。」
「こいつは一体、どこの何者だったんだ? モミジ、分かるか?」

モミジは申し訳なさそうに首を振る。

「私は、あまり投影体については学んでいなかったものでして…」

そのあたり、魔法師といってもエーラム時代に学んでいる事柄にはだいぶ差があるので、仕方ないと言えば仕方ない。
横から口をはさんだアスリィがサラにも尋ねる。

「サラさんは、何かご存じないですか? 召喚魔法師って異界について詳しいんですよね?」

とはいえ、召喚魔法師といっても、自身の召喚する投影体以外は知らないことも多い。
サラも今回の白狼については心当たりがなかった。

かくして、この白狼については、まだしばし謎とされることとなる。

  •  ・ ・ ・

帰り道は、せっかくなので「ハガネの坑道入り口」の方に向かって、未探索の方を回っていくことにする、。
途中で、かつて鉄鉱石を掘っていたと思われる鉱床を見つけた。
これも、しっかりと整備し直せば、村の資材として役に立ってくれるだろう。

それから、「ハガネの坑道入り口」と「森の坑道入り口」の間の坑道が地割れで通れなくなっていることも発見する。
なるほど、以前ミーシャは「ハガネの坑道入り口」から入って、この地割れを見て、あきらめて引き返したらしい。

最終的な探索結果は以下のようであった。(色付きは探索済み)


Ending.2. リヒターの訪問

坑道探索から帰って数日後。

ナゴン村領主、リヒター・レイゼルトが改めてヴィルマ村を訪ねてきた。
真新しい領主館(兼復興本部)に通されたリヒターが、グランに話しはじめる。

「やあ、久しぶり…というほどでもないか。」

「ここまでわざわざありがとうございます。」

「いやいや、一度来てみたかった、というのもあるしね。」
「開拓が始まってからの日数を考えれば、この短期間でここまで村を立て直したのは、賞賛に値するよ。」

「まあ、助けてくれる皆がいますからね。」

実際、サラは魔法師としてもかなり農業知識に長けているようであるし、アレックスやアスリィも建築方面などで活躍している。

「それから、今のところは、森の方から村に(投影体が)攻めてくることもないですしね。」
「おかげで、開拓に集中できていますよ。」

村の話を終えて、リヒターは本題である鉱山の話を切り出す。

「さて、本題だ。」
「まあ、手っ取り早くは共同で鉱山を開発して、得られたものは1対1分配。それが妥当だな。」

「こちらとしても、ここで揉めて時間をかけて、開発が止まるのも困りますからね。」

「ま、その点では、鉱山で予想外の投影体と戦う羽目になったのも、君たちと友誼を結べた、という面では結果的には良かったのだろう。」

これに関しては、すんなりと話がまとまる。
とはいえ、リヒターには気にかかることがあった。彼は話を続ける。

「それはそれとして、「何でこうなったのか?」ってとこは気になるんだよね。」
「こっちに石の情報を流してきた者も、それ以降姿を見せないし。」
「もしかすると、ミーシャさんがそっちの村に依頼を持って行ったのを見計らって、とかかもしれないね。」
「今回は結果的に丸く収まったけど、一歩間違えば結構な争いになっていたかもしれないだろう?」

  •  ・ ・ ・

かくして、リヒターはナゴン村に帰っていった。

グランとしては、今後状況によっては、魔境の方にも手を広げていく必要に迫られるかもしれない、というこの村の立地上、隣村と友好関係を築けたというのは大きい。
「もし必要があれば、遠慮なく僕らも頼ってくれ。」というリヒターの言葉は非常に心強いものであった。

一方で、北の隣であるテイタニアからも、新たな訪問者がヴィルマ村を訪れようとしていた。
それはまた、少し先の話である、が。

Ending.3. ミーシャのちょっとアルケミストな話

グランは、ミーシャの部屋を訪れていた。
坑道から持ち帰ったカレイドストーンを前に、ミーシャは呟いた。

「うーん、やっぱりこれの扱いは難しいですね。」
「私もまだまだ研鑽が必要のようです。」

「あなたでもやはり難しいのですか?」

「もともと、私はこちらの世界に投影された時点では見習いもいいとこですから。」
「向こうの技術なんてほとんど持ってきていませんよ。」

この辺りはグランたちも知らないことだが、ミーシャは生まれてすぐにこの世界に投影されており、あまり出身世界を見聞きしているとは言い難い。
(それがなんでアイテム屋としての技量を発揮できるのか、ということについてはもうちょっと複雑な話があるのだが、それこそ今のグランたちは知らない。)
とはいえ、アトラタン世界の人間では全くもって分からない代物である以上、ミーシャの知識は重要だろう。

「ただ、こちらの技術でもないものなんでしょう?」
「まあ、多少なら手助けできますし、何か必要なものがあれば準備させていただきますよ。」

「え、ほんと! それはちょっと、期待しちゃうな!」

ミーシャは瞳を輝かせる。
やはり、アイテム屋、錬成師としては、ありがたい話である。
一方で、カレイドストーンについては懸念事項もある。

「しばらくはこれ、宝石として売るだけでもそれなりの利益になると思うんだけど…」
「んー、リヒターさんの話とか聞くと、気になるんだよなあ。」
「この石のことをわざわざ言いに来る人がいたんでしょ? これを宝石として売り出すとどうなるんだろう?」

  •  ・ ・ ・

一通りのカレイドストーンの話が終わると、ミーシャは話を変える。

「さーて。私もそろそろこっちの村に移住してこないと!」
「まだ、もうちょっと目標金額には足りないんだけどね。」

「こちらは、ゆっくり待っていますよ。」

「じゃあ、楽しみに待ってて。」
「私は一度、ナゴン村に帰ろうかな。今回見つけたものをまとめなきゃいけないし。」

「そうですか、それではお気をつけてお帰りください。」

「じゃあね。また来るよ!」

こうして、ミーシャは一度、ナゴン村に帰っていった。
いずれまた、ヴィルマ村で会うために。

Ending.4. 時空魔法師の見解

ある日の復興本部。
ドラグボロゥのヴェルナから通信が入る。
《テレコミュニケーション》の魔法で映し出された映像が浮かぶ。

「お久しぶりです、皆さん。 あれ? 背景が変わりました?」

以前の報告の時はまだ、サラが召喚した仮復興本部だった。
今は、大森林で切り出した木を使ったログハウス風の真新しい復興本部(兼領主館)が彼らの背景に映っているのをヴェルナは見た。

「ええ、本格的に家、住居を用意する事が出来ましたからね。」

「早かったですね! それは素晴らしいです。」
「サラさんのシェルターの魔法は便利ですからね。しばらくはそれに頼るのかと思っていました。」

施設の建築を急いだのは、思ったよりも村を訪ねる人が多かったから、というのもある。
そのことも報告していく。

「確かに、新しい村はチャンスの宝庫です。」
「ちなみに、彼らの目当てであると思われる村の産業の方はいかがでしょう?」

それに関してはアスリィが元気よく返事をする。

「新しく小麦が作れるようになりましたー!」

加えて、サラが補足していく。
聖印教会の司祭のこと、橋の再建のこと、カレイドストーンのこと、ナゴン村との鉱山共同開発のこと、投影体の白狼のこと…etc
ヴェルナはそれぞれに関してコメントを返していく。

「聖印教会への対応は、そちらの村の方での判断にお任せします。」

「あとは、その白い狼のことですが…聞き覚えがある気がするんですが…何でしたっけ?」
「そもそも、洞窟の中にわざわざいたってのも気になりますね。何か作為的なものを感じます。」

「では、また何かあったらお伝えください。」
「引き続き、ヴィルマ村をよろしくお願いします。」

  •  ・ ・ ・

通話が切れる直前、アスリィは折角なので気にかかっていたことを尋ねてみることにした。

「あのっ…ヴェルナさん!」
「ワトホート・インサルンドって、誰かご存知です?」

そう、アスリィとしては自分にこの村を紹介してくれた謎の君主の正体を知らないままであった。
なんとなく周囲の反応から、「偉い人なんだろうな…」とは思っていたものの…

「前伯爵陛下ですね。」

「なんと!」

簡潔に返ってきた回答にアスリィは驚く。
驚くアスリィの横から、グランが補足する。

「アスリィはハルーシアで前伯爵陛下と会われたみたいで…」

今度はヴェルナの方も驚く番であった。

「あの方、何をされているんですか!」
「ま、まあ、ハルーシアに静養に行かれている、という話は伺っていたのですが…」

「偉い方だとは思ってましたけど、まさか前伯爵とはー」

「まったくヴァレフールの引退した方々は皆さん揃いも揃って!」

最近引退した前騎士団長ケネス・ドロップスは、齢60近くにも関わらず、エーラムに留学して学びを深めているという。
一方、前副騎士団長であるグレン・アトワイトも、ケネスとほぼ変わらない齢でありながら、こちらはバランシェの神聖学術院に留学している。
どうにも、ヴァレフールの騎士というものは引退してなお、よりアクティブになる者が多いようだ。

ここで、アスリィは、ハルーシアでワトホートが語っていた内容を思い出す。

「あれ? ということは、「私と同じぐらいの年の娘」って?」

「えっと、おそらくマイロード、レア・インサルンド伯爵のことかと思われます。」

Ending.5. 司祭の思惑

ヴィルマ村に新たに建てられた宿屋。
その真新しい一室で、聖印教会の司祭、シェリアは1通の手紙をしたためていた。

手を止めて、ふとつぶやく。

「もう少し、ちょっかいをかけてくるかとも思いましたが、どうやら大きな問題にはならなかったようですね。」
「とはいえ、こちらの目的も、未だ確信は持てません。」

再び筆を走らせ、完成した手紙を筒に入れて鳩の足にくくる。
宿屋の窓から放たれた伝書鳩は、どこか遠くの地に、翼はためかせとんでゆく。

「流石に、相手も一筋縄ではいきませんね。」

その意図は未だ知れない。

(ちなみに余談だが、この鳩はシェリアの侍従であるノアが獣人の邪紋の力《鳥獣の友》で協力をとりつけたものである。)

Ending.6. 森の奥で

森の奥に小柄な人影が立っていた。

「まったく、姿が見えないと思ったら、勝手に使われてたとはね。アレには結構な量を貯めてたんだけどなあ。台無しだよ。」
「ま、なくなっちゃったものは仕方ないさ。 また地道に集めていこうか。」

タタッと軽い足音を立てて森の中、少し開けたところに出る。
周りに投影体の気配。数は10に満たないぐらいか。

「キミたちに恨みは無いんだけど、ゴメンネ。」

そう言って、掲げた小さな手に紫電を纏わせる。
そして一閃。投影体を薙ぎ払い、次々と混沌核の欠片へと還してゆく。
その意図は未だ知れない。

Appendix.1. ヴィルマ村開拓状況

◆村の施設

  • 復興本部 ←New
 (ログハウス風の建物。領主館を兼ねる。《シェルタープロジェクション》が必要なくなった。)

  • ジャガイモ畑 
 (最初の収穫を迎え、村の食糧事情の柱となっている)
  • 小麦畑 ←New
 (順調に成長中。食べられるまでにはもう少しかかるだろうか?)

  • 炭焼き小屋 
 (1シナリオに1回、国資源の"森林1"を"資金1"or"技術1"に変換できる)

  • 宿屋 ←New
 (村を訪れる人のために。現在、シェリア、ノア、アルバート、アストリッドが滞在中。)
  • 冒険者の店 ←New
 (情報交換の場として。店主募集中。)

◆村周辺の調査

  • ボルドヴァルド大森林
 ・村近辺に影響はないが、相変わらず森の奥には多くの投影体が住み着いているようだ。
 ・森の外縁部は、ティル・ナ・ノーグ界やエーテル界の投影体が多い。奥に進むとアビス界の悪魔などもいるようだ ←New
 ・アイディ(?)は大森林に消えていった。どうやら森の奥にいるらしい?

  • 南の山岳地域
 ・無数の人工的な洞窟があるようだ。以前は鉱石を採掘していたのだろうか?
 ・カレイドストーンの鉱床を見つけた。現在、ナゴン村と共同で開発中。 ←New

  • ヴィルマ村-テイタニア間旧街道
 ・カーレル川の橋は再建された。テイタニアとの行き来もしやすくなっただろう。 ←New

◆ミーシャ's Comment

え? 今回はわたしが書くんですか!?

えっと、ヴィルマ村はどんどん発展していくので、すごいなって思います。
わたしが滞在している間にも、宿屋とか復興本部とか、建物も次々に建っていくし。
当たり前なんですけど、建物が全部真新しいですし。

ただ、食べ物は流石にまだまだバラエティは乏しいですね…
いずれはヴィルマ村産の小麦で焼いたパンとか食べてみたいですねー
あと、わたし、パイとか大好きですよ!アップルパイとか!

それから、なんといってもカレイドストーン!ですね!
無事見つかったので、ここから使い道を探していくのは私の仕事、です。
頑張ります!



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最終更新:2018年11月05日 13:13