邪推SS/ダイナス(SC28~SC102)
銀河統一史においては、傭兵集団“八卦衆”創立者にしてその筆頭として知られる彼。
幼少の彼を一言で表すならば“エリート”であった。
幼少の彼を一言で表すならば“エリート”であった。
地球でも有数のエリート家系に、“シュンド”という名の男の子が生まれた。
長く男子に恵まれなかったその家においては、待望の男子の誕生であった。
ただ一人の男子であった彼に、両親は惜しみない時間と資金を注ぎ込み教育を行った。
そして、彼はたゆまぬ努力をもって見事にその期待に応えた。
武道においては戦略上手。学問においては博覧強記。
文武において隙のない優れた能力を持つ彼を、人は“天才”“神童”と称し
『彼こそ人の上に立つに相応しい』ともてはやした。
だが、知に聡い彼であるからこそ、彼は知っていた。
自分が“秀才”と呼ばれる器の人間であることを。
そして、この世には“天才”と呼ばれる人間がいることを。
“エリート官僚”という定められた人生のレールを順当に進みながらも、彼はそのことに悩み続けていた。
長く男子に恵まれなかったその家においては、待望の男子の誕生であった。
ただ一人の男子であった彼に、両親は惜しみない時間と資金を注ぎ込み教育を行った。
そして、彼はたゆまぬ努力をもって見事にその期待に応えた。
武道においては戦略上手。学問においては博覧強記。
文武において隙のない優れた能力を持つ彼を、人は“天才”“神童”と称し
『彼こそ人の上に立つに相応しい』ともてはやした。
だが、知に聡い彼であるからこそ、彼は知っていた。
自分が“秀才”と呼ばれる器の人間であることを。
そして、この世には“天才”と呼ばれる人間がいることを。
“エリート官僚”という定められた人生のレールを順当に進みながらも、彼はそのことに悩み続けていた。
そして、レールが終着点につくその直前、この道では天才を越えられないと考えた
シュンド青年はある決断を行う。
それが、彼の第二の人生の始まりであった。
彼は家を出奔し、エリートであった自分と決別するため“ダイナス”と名を変え、各地を回る傭兵となった。
そして、その傍ら、自らが見込んだ同じ志を持つ人材を集めて行った。
「秀才一人では天才には到底敵わないかもしれない。
だが、秀才の才能を結集すれば天才をも上回ることができるはず」
長い年月を経て考え付いた、秀才が天才を超えるための策。
その策の体現こそが、彼が立ち上げた、傭兵集団“八卦衆”であった。
シュンド青年はある決断を行う。
それが、彼の第二の人生の始まりであった。
彼は家を出奔し、エリートであった自分と決別するため“ダイナス”と名を変え、各地を回る傭兵となった。
そして、その傍ら、自らが見込んだ同じ志を持つ人材を集めて行った。
「秀才一人では天才には到底敵わないかもしれない。
だが、秀才の才能を結集すれば天才をも上回ることができるはず」
長い年月を経て考え付いた、秀才が天才を超えるための策。
その策の体現こそが、彼が立ち上げた、傭兵集団“八卦衆”であった。
世が戦乱に包まれるころ。ダイナスは八卦衆を率い生まれ故郷の地球に戻ってきた。
そして、そのまま当時の最大陣営であった地球へ士官する。
彼が地球に与した理由はただ一つ。“天才”と、敵として対するためである。
「恵まれた環境では天才は生まれえない。逆境こそが天才を生み出す環境を作り出す」
それは、彼が己の人生を通し、身をもって知ったことであった。
そして、そのまま当時の最大陣営であった地球へ士官する。
彼が地球に与した理由はただ一つ。“天才”と、敵として対するためである。
「恵まれた環境では天才は生まれえない。逆境こそが天才を生み出す環境を作り出す」
それは、彼が己の人生を通し、身をもって知ったことであった。
そして、彼の思惑通り、アキ陣営にラーという名の天才が現れる。
これを好機と見た彼は、自らの持論を試すべく
心躍らせながら八卦衆の全力をもってザクソン攻略に当たった。
これを好機と見た彼は、自らの持論を試すべく
心躍らせながら八卦衆の全力をもってザクソン攻略に当たった。
SC93年から始まったザクソン攻略戦。
攻略のための戦力は充実しており、彼自身や八卦衆の面々も十分すぎるほどの戦果を上げた。
しかし、なぜか最後には戦力不足でザクソンを攻めきれない。
そんなことが何度も続き、“秀才”ダイナスは焦った。
「やはり、秀才では天才を超えることはできないのか」と。
焦った彼は、ザクソンを攻め落とせない原因がラーの策ではなく
単にザクソン後方からの補給によるものだということを立証するべく
ザクソンを素通りして他のセントラル惑星から攻める飛び石作戦を立案した。
だが、その作戦は自らの存命中にセントラルを平定することに固執する覇王アグデッパに一蹴される。
かくして彼は、真正面から物量という後ろ盾に支えられた
“天才”ラーの策に挑み続けざるを得なくなったのである。
攻略のための戦力は充実しており、彼自身や八卦衆の面々も十分すぎるほどの戦果を上げた。
しかし、なぜか最後には戦力不足でザクソンを攻めきれない。
そんなことが何度も続き、“秀才”ダイナスは焦った。
「やはり、秀才では天才を超えることはできないのか」と。
焦った彼は、ザクソンを攻め落とせない原因がラーの策ではなく
単にザクソン後方からの補給によるものだということを立証するべく
ザクソンを素通りして他のセントラル惑星から攻める飛び石作戦を立案した。
だが、その作戦は自らの存命中にセントラルを平定することに固執する覇王アグデッパに一蹴される。
かくして彼は、真正面から物量という後ろ盾に支えられた
“天才”ラーの策に挑み続けざるを得なくなったのである。
ラーの策によるものか、それとも物量によるものか───。
ともかくも、結果としてザクソンを攻め落とせないまま年月が過ぎていった。
その間に自らの衰えを知ったダイナスは、大艦隊の指揮官を自ら退き
八卦衆筆頭の立場も、八卦衆最古参のメンバーであるチョーに譲った。
だが、彼は“天才越え”という自らの願望を果たすべく、なおも一艦長として
老体に鞭打ちながら前線で指揮を執り続けた。
ともかくも、結果としてザクソンを攻め落とせないまま年月が過ぎていった。
その間に自らの衰えを知ったダイナスは、大艦隊の指揮官を自ら退き
八卦衆筆頭の立場も、八卦衆最古参のメンバーであるチョーに譲った。
だが、彼は“天才越え”という自らの願望を果たすべく、なおも一艦長として
老体に鞭打ちながら前線で指揮を執り続けた。
SC102年、第六次ザクソン攻略戦。
揚陸艦隊の護衛を任されていたダイナスは艦隊ごと包囲され、戦場で孤立する。
一点突破で包囲網を切り抜けようとした彼は、乗艦シーゲイトと共に自ら先陣を切って突撃を行った。
その後、艦隊は辛くも包囲網を突破したものの、彼の乗るシーゲイトを見た者はいなかった。
かくして、生涯をかけて“天才”に挑み続けた“秀才”は、その願望を果たせぬまま
火花の煌めく星の海へと消えていったのである。
揚陸艦隊の護衛を任されていたダイナスは艦隊ごと包囲され、戦場で孤立する。
一点突破で包囲網を切り抜けようとした彼は、乗艦シーゲイトと共に自ら先陣を切って突撃を行った。
その後、艦隊は辛くも包囲網を突破したものの、彼の乗るシーゲイトを見た者はいなかった。
かくして、生涯をかけて“天才”に挑み続けた“秀才”は、その願望を果たせぬまま
火花の煌めく星の海へと消えていったのである。
「ワシはもう疲れた。後のことはチョーに任せる。お前の好きにするといい」
それが、通信記録に残されていた彼の最後の言葉であった。
それが、通信記録に残されていた彼の最後の言葉であった。
戦後、彼の日記が戦史の資料として出版される。
“秀才”と“天才”の違いに対する苦悩と原因追及が延々と綴られたその内容は
数多の才能研究者たちに大きな影響を与えたという。
“秀才”と“天才”の違いに対する苦悩と原因追及が延々と綴られたその内容は
数多の才能研究者たちに大きな影響を与えたという。