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涼宮ハルヒの雌伏

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涼宮ハルヒの雌伏 ◆DiyZPZG5M6



 空を見上げると漆黒の夜空が深い藍色に染まりかけていた。
 満天の星空と青白い月、そして一際星の中で明るく輝く明けの明星ももうすぐ太陽の光に掻き消されていくだろう。
 自力で輝くことの出来ない矮小な存在などそのまま太陽に飲み込まれてしまえ。
 太陽こそ神の象徴。燃え盛る業火で夜の闇を焼き尽くせ。
 あたしは神、あたしは太陽。

 けひひ、あたしは光射す大地に降り立ち、声高に新世界の神の再臨を宣言してやるわ。
 あたしこそ千年王国へ導く唯一神。
 錆付いた鉄の時代に終焉をもたらし再び黄金の時代を手にするのは真・神聖究極魔神HALなんだと。

 だけど今は雌伏の時。
 太陽は食に覆われ晴天から姿を消した。
 あたしの神の肉体は人の身へと堕とされた。
 その結果がただの人間如きに襲われ逃げる破目。
 忌々しい、忌々しい。忌々しいったらありゃしない。
 あの糞ったれのピエモンには神罰をくれてやる。
 その身体を八つ裂きにして地獄の最下層に投げ落としてやってもまだ足りないわ。

 あたしは走る足を止め、振り返る。
 背後に見える鉄橋、その向こうにやる夫がいる。既に戦いは始まっているだろう。
 いや、もう終わっているのかもしれない。
 あの白饅頭、変態のくせにあたしを逃がして一人で戦うなんて中々気概のある奴じゃないの。
 所詮下僕たるHAL厨にしておくのがもったいないわ。
 そうね……生きて戻って来たら、神に仕える最初の使徒にしてあげるのも考えて置こうかしら?
 神を守り抜いた使徒として聖人の座に着かせてやるのも悪くないわ。
 ああ、でも神より目立つなんてことしたら即座に 粛 清 するけどね。

 しかし……人間の身体とはなんて不便なんだろう。
 確かに涼宮ハルヒだった時は、その年齢の女子高生にしては身体能力の高いほうだった。
 でも所詮は人間の身体。走れば疲れるし、銃で撃たれればあっけなく死ぬ。
 脆弱にも程があるこの肉体。現に今のあたしは汗をかき息を切らしていた。

 あたしは手の甲で額を拭う。
 べっとりとした汗が手に伝わる。気持ち悪い。
 首にも汗が滴り落ちてはいるが首の枷が邪魔をして拭えない。
 これが前の世界と同じような仕様であれば乱暴に扱えば即爆発してしまう。下手に首は触れるのは危険だ。
 でもこの首輪をどうにかしない限りあたしは神の座に返り咲けない。
 地道に首輪を解除できそうな下僕を見つけるしかないだろう。

 あたしはふと川に目をやった。
 特に目的があったわけでもなく、ただなんとなく。
 凪いだ水面は鏡のように滑らかで、月の光を反射して青白く仄かに輝きを放っていた。
「ん? 何かしらあれ」
 月光が煌く川の縁に何か黒い塊のようなものがゆらゆらと浮かんでいた。
 折れた木にでも引っ掛かっているのか、それはいつまでも流されることもなくそこに存在していた。

 あれが何か確かめるべきだろうか?
 せっかくやる夫が稼いでくれた時間を無駄にしたくはない感もあるけど……
「ま、ここまでずっと走って来たし……休憩も必要かしら」
 最悪やる夫が殺され追っ手が来たとしても川べりには無数の葦が覆い茂っている。
 ここに身を隠せばそう簡単には見つからないだろう。
 あたしは土手を降りてその物体が何なのか確かめることにした。



 § § §



 土手を降りると小ぶりの石で覆われた川原の部分と葦が群生する部分が目に入る。
 どこにでもある川の下流域の光景。
 その物体は川原に流れ着いた朽木に引っ掛かかっていた。
「人……のようね」
 正体はうつ伏せになった状態の人間だった。
 おそらく死んでいる……はず。だけど確証は持てない。
 もしかしたら死んだフリをして油断した所を襲うつもりなのかもしれない。
 あたしは近くに落ちていた木の枝でそれを突いてみることにした。

 つんつん、つんつん。
 反応は無し、どうやら死んでいるようだ。
 この死体が何か役に立つ物を持っているかもしれない。
 あたしは死体を引き上げることにした。
 死体は着ている服がぐっしょりと水を吸い、思ったよりもずっと重かったけど引き上げる事ができた。
 これで何も無かったら承知しないからね。

 死体は女だった。あたしに比べると全然出ること出ていない貧相な体格の女だった。
 ピンク色の髪に黒いマント、白いブラウスに黒のミニスカートとニーソックス。
 死因は……うつ伏せ状態の彼女を仰向けにしたら一発で判明した。
 腹に大穴が開いていた。一体何をしたらこんな穴が開くのかというぐらいの穴。
 きひひ、大きすぎて地面が見えてるじゃない。
 ま、あたしが神の力を取り戻したらこれぐらい余裕だけど。

 結局の所、その死体から回収すべきものは何も無く、余分に疲れただけだった。
「ったく! 使えない奴! どうせ死ぬなら神の役に立ってから死になさいよ!! このっこのっ!!」
 げしげしと死体を蹴りつけて鬱憤を晴らす。
 でも死体は生きた人間と違って何の反応も無く、まるで人形を蹴っている感触なのですぐに空しくなった。
「アホらし……とんだ時間の無駄だったようね」
 あたしは死体に目もくれず踵を返したところで、足を止めた。
 ああそうだ。死体は死体なりに使える物があったんだから。

「けひひ……あんたの様な糞の役に立たない人間でも神に奉仕できる唯一の事があったわよ。喜びなさい!」

 あたしはデイバックからナイフを取り出した。
 このナイフで何をするかって? 決まってるじゃない。この女から首輪を外すのよ。
 もちろん首ごと斬って手に入れる。
 首輪さえ手に入れればあとは解析し、解除できる下僕を探す。
 どうせ死んでるんだし神の力を取り戻すための礎になって貰おうじゃないの。

 まずは柔らかい肉の部分に刃を入れる。
 死んでからそれなりに時間が経ってるせいか血はほとんど出ない。
 スーパーで買ってきた肉を切るように首の肉に切れ目を入れてゆく。
 ある程度ナイフを差し込むと硬い骨にぶつかる。
 さすがにナイフで頚椎を切るのは難しい。ノコギリでもあれば簡単なのだけど。
 骨は後回しにして周りの肉に切れ目を入れていく。
「肉の切れ目はこれ位かしら? あとは骨の隙間に刃を差し込んで……」
 赤い筋肉繊維と黄色い脂肪の間から白い骨が見えている。
 あたしは骨と骨の間の比較的柔らかい軟骨部分、いわゆる椎間板にナイフを挿し込んだ。
「後は……手ごろな石をっと」
 川原にこぶし大ほどの大きさの石が落ちていた。
 あたしはそれを拾い上げ、突き立ったナイフの柄に打ち付けた。
 ごりっと音がしてナイフが沈む。よし、成功。
 さらに打ち込みつつナイフの角度を変えては何度も打ち付ける。
 石に楔を打ちつける石工のような気分で打ち付けていくとやがてごとりと音を立てて死体の首が転がった。
 後は簡単、切断した首から首輪を抜けばOKよ。

 首輪を死体から取り外したあたしは首輪とナイフを川の水で洗っていた。
 手も洗い、首輪とナイフをデイバックにしまう。
 後に残るのは死体の首と胴体部分。
「ご苦労様、神の役に立ててあんたも幸せでしょ? けひひひひ。褒美として空を舞わせてあげる」

 長いピンク色の髪を掴み上げたあたしは―――

「そぉーーーれ! I can flyぃぃぃィィぃぃ!!! ヒャーハハハハハハハハハハハハハハ!!!

 その首を思いっきり川に向けて蹴り飛ばした。
 軽くスライスカーブを描きながら生首は月光の下を舞い、ちゃぽんと間抜けな音を発して見事川の中ほどに着水する。
 生首はしばらくの間ぷかぷかと浮かんでいたが、やがて沈み見えなくなった。
 見事なフリーキック。セリエAやプレミアリーグで活躍するのも夢じゃないわ。なにせあたしは神だもの。



「さてと……もうあんたには用は無いから。バイバイ」



 あたしは残された胴体には目もくれずその場を立ち去る。
 これで当初の目的の一段階目はクリア。
 後は……やる夫が生きていれば合流するに越したことは無いけど。
 まあ死んでたらそれまでだし、生きてたらこき使ってやるんだから。
 とりあえず今は北へ。あたしは土手を離れ、舗装された道路を北に向かって歩き出す。

 再び空を見上げると瑠璃色の空はいつのまにかに白くなり東の空が明るくなっていた。


【F-6/川辺/早朝】

【涼宮ハルヒ@ニコロワ】
【状態】疲労(小)、神(笑)、6/に対する怒り
【装備】無し
【持ち物】支給品一式、ナイフ@現実、マッチ@現実、ランプ@現実、青龍偃月刀@現実 ルイズの首輪
【思考・方針】
[基本方針]
主催者と邪魔者を殺して神として君臨する。
経験を生かし、慎重に立ち回る
1、北に向かう
2、外撲を集めて、情報を集めて、首輪を分解する
3、6/(神)をいつか神の力が戻って来た時、潰す


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061:神は神と出会い、神の武器を持つ 涼宮ハルヒ 078:もうどうにでもな~れ



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