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番外編『特定のデレ対象がなくてもツンデレと呼べるのか』

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番外編『特定のデレ対象がなくてもツンデレと呼べるのか』 ◆RFGz8y4N2E


ピンポーン。

南家のチャイムが鳴る。
千秋がドアを開ける前に、その向こうからは「回覧板でーす」という可愛らしい声が聞こえていた。
「はい」
「千秋ちゃん、こんにちは!」
薄く開いたドアの隙間からぴょこんと顔を出したのは、隣に住んでいる赤木イチゴウ。
変な名前とネコ耳・しっぽを持っているが、千秋も竜に変身できる身なので深くは考えない。
「ケーキ焼いたんだよ。一緒に食べよ」
にっこり笑う姿はとても愛らしい。
本人の兄と千秋の姉の事で張り合わない限りは、二人は仲が良い方だと言えるだろう。
回覧板のついで、というよりは大きさからすると回覧板がついでのようだ。
焼き立てのシフォンケーキはおよそ二人分には見えない。姉達にもお裾分け、と考えていいらしい。
「ありがとう…春香姉さまにも言っておくよ」
受け取りながら良い匂いに思わずうっとりとする。
「うん(こうしておけばライバルの腕前を見る機会も増えような)」
「え?」
「なんでもない。お邪魔しまー…あ」
比較的軽い足音が階段を上ってくる。イチゴウはその音にピクンと耳を動かすとそちらを見やった。
「ちっちゃいお兄ちゃん、おかえりっ!」
イチゴウの13歳の兄…勿論同じ名字のアカギである。
「…ただいま…何やってる」
「ん?回覧板だよー」
「おかえり顎弟」
「あぁ…」
千秋の身も蓋もないあだ名もいつもの事なので意に介さない。
そのまま扉の前を通り過ぎようとする…が、スポーツバッグが急に重さを増した。
「ね、ちっちゃいお兄ちゃんもお邪魔しようよ。ケーキあるの」
イチゴウがバッグの肩紐を引っ張りながらそう誘うが、アカギは溜め息をつく。
「また甘ったるいんだろう」
「今日のはちゃんと甘さ控えめだもん」
「気分じゃないんで…」
そもそもこのもふもふした手でよく作れるなとぼんやり考えながら軽く肩を竦めた。
もしまた姉だ兄だと喧嘩を始めたら止めるのは自分しか居ない(と言っても止める気もないが)。ただそれが面倒臭かった。


RRRRRR…

「あ」
電子音が響く。携帯ではない…南家玄関にある電話が音を立てている。
両手が塞がっている千秋は、ケーキを下足箱に置こうかどうしようかと一瞬焦った表情を見せた。
「あ、出てあげるー」
「あ」
「おい、人の家の…」
イチゴウは千秋とアカギの声も気にせずにつっかけを脱いで上がり、受話器を取って耳(ネコ耳?)に当てた。
「もしもし南です」
『……………』
無言だった。間違い電話か悪戯かと小首を傾げる。不審人物の息遣いが微かに聞こえるのみだ。
「もしもし?」
と、一拍おいて、
『……ハァハァお嬢ちゃん…パンツ何色ハァハァ』
受話器からキョンの…もとい、謎の変質者の声が聞こえ漏れてきた。
「…………」
イチゴウの自在に動くしっぽがピンと立ち、毛が逆立っている。不機嫌の印だ。
受話器からは依然ハァハァとキョンの…もとい変態の荒い鼻息がだだ漏れている。
アカギは下足箱に手をついて身を乗り出し、イチゴウの手から受話器をひょいと取り上げた。
「―――パンツ履いてません」
言い捨てて少々乱暴に受話器を戻すと千秋に視線を向ける。
「よく掛かってくるのか…?…今みたいなやつ…」
「よく、というか…まぁたまにな」
「ふーん…」
「聞いといてなんだその返事は」
「へぇ…」
アカギは尚も興味なさげに言いながらスニーカーを脱ぎ、自宅と同じ間取りの家へ入っていく。
「もー、ちっちゃいお兄ちゃん靴揃えなよ」
千秋からケーキを再び受け取るとイチゴウもぱたぱたとリビングへ駆けていった。
残った千秋は二人を眺めながらぼそりと呟く。
「…お邪魔しますくらいちゃんと言えバカ野郎」
そうしてドアノブ上のツマミを回し、鍵をかけた。

カチャン。

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