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番外編『らき☆ロワ海鮮炒め・オムニバス風』

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番外編『らき☆ロワ海鮮炒め・オムニバス風』 ◆OQfaQnysJI


夏だ! 海だ!
というわけで、我々学生一同は臨海学校で海にやってきたのです!

「誰に向かって説明してるんですか、ウッカリデスさん」
「いや、お約束というかなんというか……。あんまり気にしないでいいよ」
「はあ……」

ウッカリデスの言葉に、困惑の表情を浮かべながらもうなずく十代。

「まあいいや。それよりウッカリデスさん、デュエルの審判頼むよ」
「ええ!? 海に来てまでデュエルやるの?」
「どこに行こうと、デュエリストはデュエルを忘れてはならない! そうですよね、遊戯さん!」
「そのとおりだ、十代!」
「おかしい! おかしいよ君たち!」

ツッコミを連呼しつつも、結局のところ付き合ってしまうお人好しのウッカリデスであった。

◇ ◇ ◇


「エアーマンで遊戯さんにダイレクトアタック!」
「そうはさせないぜ! 伏せカードオープン! 罠カード、六芒星の呪縛!」

「なんであいつら、臨海学校に来てまでいつもと同じことやってるんだお……。やる夫には理解できねーお……」
「まあ、そういう人種なんだろ」

浜辺で繰り広げられるデュエルを、やる夫は冷ややかな目つきで見つめていた。
その傍らには、ダブル圭一の姿もある。

「いくらなんでも、あいつらはわかってねーお! 男が海に来たら、することはただ一つ! ナンパしかねーお!」
「極論だが言いたいことはわかるぜ! 海は人を開放的にするからな!」
「そのとおりだお! いつも見慣れた同級生でも、海では五割増で魅力的に見えるお!
 この吊り橋効果を利用して、彼女をゲットだお!」
「いや、吊り橋効果はこういう時に使う言葉じゃないぞ」

圭一のツッコミを無視して、やる夫は女の子の物色を始めた。

「お! あのロリボディーはフラグビルドちゃんだお! まずは彼女にアタックしてみるお!」
「ちょ、やめとけ! あの子は……」

慌てて警告の言葉を発する圭一。しかしそれに耳を貸さず、やる夫はフラグビルドに駆け寄っていく。

「フッラー……あいたっ!」

フラグビルドに声をかけようとするやる夫だったが、その途中で転んでしまう。
その原因が誰かに足をかけられたためだと気づいたやる夫は、烈火の如く怒り始めた。

「何してくれるんだお! 謝罪と賠償を要求する……って、怒りのあまりキャラが変わってしまったお。
 とにかく、やる夫のナンパを邪魔するんじゃねーお!」
「無駄なんだ……無駄だから嫌いなんだ……無駄無駄……」
「え?」

頭上から聞こえてくるのは、静かだが自分よりも上の怒りがこもった声。
おそるおそるやる夫が見上げると、そこにはこめかみに血管を浮かべたChain-情の姿があった。


数分後、そこには顔面をボコボコに腫らして砂の上に横たわるやる夫の姿が!

「あーあー、まさに逆鱗だねえ。Chain-情くん、フラグビルドちゃんに危害を加える相手にだけは容赦ないから……」

やる夫の傍らに座り込み、そう呟くのは地球破壊爆弾である。

「ナンパは別に危害を加えてるわけじゃないお……」
「いやー、恋する純情青年にとっちゃ、危険度MAXの攻撃でしょ。
 まあ、私もやる夫君がロリスキーさんナンパしようとしたらたぶん殴るし」
「恐ろしいことをさらっと言わないで欲しいお! だいたい、同性愛なんて非生産的だお!
 おにゃのこ同士でくっつかれたら、その分男が余るんだお! やる夫はそんなの認めねえお!」
「ほほう……。ならば、これならいいのかな?」

やる夫の戯れ言を聞いた爆弾は、その姿を吸血鬼の真祖である男に変貌させる。
そして、鋭い爪をやる夫の喉元に突きつけた。

「悪かったお。ちょっと調子に乗りすぎたお。だから命だけは勘弁だお」

もともと白い顔をさらに蒼白にし、やる夫はものすごい勢いで後ずさりしていく。
爆弾はその様子を見てニヤリと笑うと、姿を元に戻した。

「さて、やる夫君も十分にからかったし……。ロリスキーさんに日焼け止めクリーム塗り直してもらってこよっと♪」

◇ ◇ ◇


「みんなー、ジュース持ってきたよー」
「サンキュー」
「ありがとうございます」

ビーチに並んで座る、奈緒、言葉、ヒナギクの三人。そこに、缶ジュースを抱えた春香が近づいてくる。
彼女たち四人は、先程までビーチバレーで汗を流していた。そして十分に楽しんだ彼女たちは、今はゆっくりと休憩しているところなのだ。
持ってきたジュースを全員に配ると、春香も仲間たちの横に腰を下ろす。
その後しばらく他愛のないおしゃべりを続けていた彼女たちだったが、ふと春香が何かに気づいたような表情を見せる。

「どうかしたの、春香」
「いや……。そういえばさっきから、アカギさんを見てないなと思って」

春香の変化に気づき質問をぶつけてくる奈緒に、春香はそう答える。その返答を聞き、奈緒は大きく溜め息をついた。

「あんた、本当にあいつと妹のことしか頭にないのね……」
「い、いや、そんなわけじゃ……」
「アカギくんなら、村雨先生と近くの堤防に釣りに行ったらしいですよ?」

春香が慌てふためく中、助け船を出すかのように言葉が告げる。

「釣り? アカギさん、釣りなんてやったことあるのかしら」
「あんたが知らないことを、私らが知ってるわけないでしょうが」

困惑の表情を浮かべる春香。その横で、奈緒はうんざりといった表情を浮かべていた。

「ほら、せっかく日常から離れるチャンスなんだから、あんな奴のこと気にしない! とりあえず泳ぐわよ!」
「え、ちょっと!」

春香の手を取り、半ば強引に海へと引っ張っていく奈緒。言葉は、その二人を笑顔で見送る。

「元気ですね、あのお二人は……。あれ、ヒナギクさん? 顔色が悪いようですけど、どこか具合でも?」
「いや、なんでも……。ただ、皆さんと一緒にいると微妙な劣等感が湧いて来るというか……」

憂鬱な表情を浮かべるヒナギクを心配する言葉。しかしかえってきたのは、彼女に理解できない答え。
言葉が首をかしげていると、突如としてこなたがヒナギクの背後に現れた。

「病まない病まない、需要はあるさ~」

◇ ◇ ◇


「しかし知らなかったな。お前が釣り好きとは」
「ん?」

堤防の上、隣で釣り竿を垂らす村雨にそう話しかけられたアカギは、一拍の間を置いた後忍び笑いを漏らした。

「別に釣りが好きなわけじゃない。ただ、みんなでわいわい海水浴、なんてのよりはこっちの方が性に合っているというだけのこと……」
「なるほど、お前らしい」

赤木から返ってきた答えに、村雨は若干のあきれを交えつつも納得の表情を浮かべる。

「まあ、魚を食うのは好きだがな。特にフグは旨い……」
「その若さでフグ食べたことあるのか、お前」
「一度だけさ。商店街の福引きで一等を当てて、その景品としてもらったんだ」
「ほう」

他愛のない会話を続ける二人。そこへ、帽子を目深にかぶった青年が近づいてくる。

「釣れますか?」
「まずまずだな」

お決まりの挨拶に、適当な返事をする村雨。だが青年の顔を見たとたん、彼の表情は一変する。

「お前か……。白々しい接触の仕方だな」
「どうも」

口ぶりからすると、どうやら二人は旧知の仲らしい。それを瞬時に察知したアカギは、わざとらしく立ち上がる。

「炎天下でずっと釣りというのも、なかなか堪えるものだな……。少し休んでくる。釣り竿は任せた」

そう言い残すと、アカギは足早にそこから立ち去る。
その行動に思わず溜め息を漏らす村雨だったが、すぐさま気持ちを切り替えて傍らの男に話しかけた。

「それでなんの用だ、ランキング作成人。もうお前のような人間とは縁がないものと思っていたんだが」
「おやおや、善良な私立探偵に向かってひどい言いぐさですねえ」
「よく言う……」

憮然とした表情を浮かべる村雨をよそに、ランキング作成人と呼ばれた男は先程までアカギがいた場所に腰を下ろす。

「それじゃあまあ、単刀直入に用件を言いましょう。かざ……いえ、あなたの先輩である、警視正殿からの伝言です」
「先輩から? どういうことだ」
「BADANの残党が、この近くの海でテロを企んでいるそうです」
「!?」

「BADAN」。忌まわしきその名を聞き、村雨はさらに表情を険しくした。

「残党だと……? そんな奴らが……」
「けっこういるんですよねえ、これが。あなたも知っていたはずだ。もっとこれまでは、散発的に小規模な活動をしているだけでしたが……。
 最近、新たなリーダーが現れたみたいでね。一気に活動が活発になってるんです。
 あなたの先輩たちが各地で対応に当たっていますが、それでも全てをカバーできてはいない」
「それで俺に、白羽の矢が立ったというわけか……」
「警視正も申し訳ないと思っているそうです。表の世界に生きる道を見つけたあなたを、再び裏のいざこざに巻き込んでしまって……」
「かまわないさ。表だろうと裏だろうと関係ない。俺は俺のやるべきことをやるだけだ」

真摯な表情を浮かべて、村雨は呟く。

「それに今の俺は、昔の俺よりもより具体的に守りたいものが出来た。
 生徒たちを守るためなら、俺はどんな戦いにも耐えられる」
「それを聞いて安心しましたよ」

穏やかな笑みを浮かべると、作成人はスッと立ち上がった。そして、足早に歩き出す。

「メッセンジャー業務、たしかに達成しました。今後ともごひいきに」
「……報酬は払わなくていいのか?」
「お代なら警視正からもらってますので。それに、あなた方が平和のために戦ってくれるのが一番の報酬ですから。
 ああ、そうだ。報酬っていうなら、さっき一緒にいた金髪の先生紹介してくださいよ。
 タイプなんですよねー、ああいう人」
「俺にそういうのを期待されても困るんだが……」
「あはは、冗談ですよ。堅物は相変わらずですね」

豪快に笑うと、作成人は完全に村雨へ背を向ける。そして、いずこかへと去っていった。
やがて彼の姿が見えなくなると、タイミングを見計らったかのようにしてアカギが戻ってくる。

「話は終わったようだな……」
「ああ」
「だいぶ深刻な話だったらしいな」
「なぜそう思う?」
「クク……簡単なことだ……。あんたの顔がいつにも増してこわばっている……。
 あんた、自分で思っている以上に表情が豊かだぜ……。ギャンブルには向いてないな」
「そうか……」

アカギに対し短く応えると、村雨は改めて釣り竿を握った。だが、その手に必要以上の力がこもっていることを、アカギは見逃さなかった。

(本当に……わかりやすい男だぜ……)

◇ ◇ ◇


翌日。

ざわ… ざわ…

村雨は、生徒たちから注目の的にされていた。というのも、彼が体中に包帯や絆創膏を貼り付けていたからである。

「ちょっと、どうしたのよ村雨先生……」
「なんでも朝に散歩してたら、遊泳水域に鮫がいるのを見つけて格闘の末追い払ったとか……」
「村雨先生マジパネェお……」

他の生徒たちが遠巻きに囲んで噂を語り合う中、アカギは一人村雨に近づいていく。

「お疲れ様、と言っておこうか……」
「……」

アカギの言葉に、村雨は応えない。だが、その口元はわずかに笑みの形を作っていた。


◇ ◇ ◇


「ただいまー」
「お帰りなさい、姉様」
「ピッ!」
「あら、夏奈は?」
「あのバカは昨日友達の家に財布忘れてきたとかで、朝一番で取りに行ってます。
 まったく、せっかく姉様が帰ってくる日だというのに……」
「まあまあ、ゆっくり夏奈が帰ってくるのを待ちましょう?」

隣の部屋から聞こえてくる、他愛もない姉妹の会話。それをベランダで聞きながら、アカギは臨海学校で控えていた煙草をふかす。

「今日も……暑くなりそうだな……」

END

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