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  • ラノベ・ロワイアル @ wiki
  • 半分の月さえのぼらない

ラノベ・ロワイアル @ wiki

半分の月さえのぼらない

最終更新:2008年02月26日 17:03

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だれでも歓迎! 編集

第523話:半分の月さえのぼらない 作:◆l8jfhXC/BA



 家屋の探索を終えて外へ出ると、緩やかな夜風が肌を撫でた。少し冷えるが、ざわつく思考を鎮めるにはちょうどいい。
 左手の懐中電灯を闇に向け、一通り周囲を見渡した後、キノは小さく息をついた。
 空を緋色に塗り潰していた太陽は既に沈み、分厚い雲が空を覆っていた。自分の足音以外の音はなく、自分以外の人影は未だ見つからない。
(すれ違ってるだけかもしれないけど……早めに情報が欲しいのに、まずいなぁ)
 時計が示す時刻は十九時五分前。もうすぐ新たな禁止エリアが増える。その区域は、このC-3の可能性もある。
 確実な情報である放送を聞き逃してしまった代償は、不安と焦燥となって精神を削っていく。
 結局、他の参加者に直接尋ねるしかなかった。ゆえに闇に隠れることはせず、堂々と懐中電灯を使っていた。
 出来る限り友好的に振る舞い、必要な情報を得る。その後は空いている右手で携行した銃器を抜くだけだ。
(でも、その出会った参加者が零崎みたいな人間だったらどうすればいい?)
 胸中で自問し、同時に浮かんだ虚無の瞳をすぐさま首を振って打ち消す。
 出会えば、誰であろうと殺すしかない。ここでは生き残るためには誰かの犠牲が必要なのだ。
 殺せるか否かを考えるのではなく、殺さなくてはいけない。師匠の死が無駄になることだけは絶対に避けなくてはならない。
 恐れの残滓を振り切ると、キノは懐中電灯の照らす先へと一歩踏み出した。
 現在地であるC-3東端から、特に店舗が密集している中央へと移動。その後周囲の大規模な建造物を優先して回る。
 そんな予定を立てていた。が。
「……え?」
 二歩目を踏み出そうとした直後。
 遠方の黒の視界に、突如銀の色が混じった。
 ちょうど目的地にしていた商店街の中央辺り。そこに、白銀の塊があった。
 よく見ると人の形をした、ここからでも目立つ巨大な何か。先程までは絶対に存在していなかった異物。
 疑問符だけが溢れるこちらの思考を裂くように、それは泣き声ともつかない雄叫びを上げた。


●


 叫びの後に叩きつけられた拳は、後方にあったはずの建造物を一瞬にして瓦礫の山にした。
 家の壁一枚隔てて迫る衝撃波に、パイフウは身を伏せて耐えた。窓ガラスが一斉に割れた音が、怒号に奇妙な彩りを加える。
 その音と振動が少し静まると、すぐに窓枠から身を投げた。防刃加工が施された外套がガラスの尖りを流し、硬い感触だけを肌に伝える。
 痛みを訴える左脚以外の四肢を無視して立ち上がり、しかしふたたび衝撃が生まれた。
 今度は少し離れていた。八百屋らしき建物が、地面に押し付けられてはぜる。
 陳列されていた一部の果物が転がり落ち、しかし空気の圧迫に耐えきれず汁をまき散らして潰れる。
 それをすべて見ることなく、全力で疾駆する。叫声と破壊音は途切れることなく続く。
 大地が震えるたび、身体が崩れそうになる。踏み締めた先の水溜まりから泥水が跳ね、靴に入る。
 髪が脂汗で頬に張り付く。身体を灼き、同時に凍えさせるような重圧が背中を蝕んだ。
(あれは、何?)
 答えのでない問いを胸中で繰り返す。
 店舗の列から外れた家屋に身を潜めていたときだった。突然何の兆候もなく、後方にあの巨人が現れた。
 まるで最初からそこにいたかのように自然に、しかし不自然すぎる銀色の巨体を隠そうともせずにそこに存在していた。
 それがつい先程自分に使われそうになった何かだと確信した直後、叫びを合図に蹂躙が始まった。
「っ──」
 飛んできたコンクリートの破片を紙一重で避け、動かない右脚を引き摺って前進する。
 銀の巨人はこちらなど見向きもせず、ただ目の前にある建物を手当たり次第に破壊し続けている。
 鎧のような滑らかな外殻が、夜に溶けることなく存在を主張している。その闇すら裂くように機敏に動き、まだ壊れていないものを見つけると両腕を振り上げる。
 その鉄槌に潰されるのが先か、あるいは建物の崩壊に巻き込まれるか。どちらも死ぬなら同じことだ。
 あの少女が放った糸と同じ異質な、しかし比較にならない程の強大な気が肌を粟立たせる。
 化け物としか形容できない、文字通り住む世界が違う怪物。
 その重圧に肩が僅かに震えているのがわかり、パイフウは少し笑った。こんな大怪我をするのも、恐怖を覚えるのも久しぶりだ。
 エンポリウムでの日常がどんなに温く甘く、そして愛おしいものだったかを知る。それを守るためにも、自分は生き残らなければならない。
 商店街の終端に辿り着き、雑貨屋らしき店の壁に身を寄せ、辺りを窺う。
 わざわざ探らなくとも感覚を塞ぐ気配は、先程からあまり動いていない。建ち並ぶ店舗を潰すのに没頭しているようだ。
 しかしその後方に目を向け、止まる。
 小柄な少女がそこにいた。自分が殺そうとして失敗し、今自分を殺そうとしている化け物の主。
 その表情は復讐の憎悪にも自暴自棄な狂気にも冒されていない。ただ足下の蟻でも眺めるように、熱を持たないぼんやりとした視線を巨人に向けている。
(あの子を殺せば、あれは止まる?)
 考えて、すぐに無駄な思考だと気づく。今の自分には彼女を殺傷出来る武器も力も残されていない。
 あの怪物はもとより、少女の謎の糸にすら自分は対抗する術を持っていない。逃げる以外の選択肢はなかった。
 と、ふいに少女の首が動いた。
 何も映さない白い左眼が弧を描くように移動し、こちらの前方にある建物付近で停止する。自分に気づいた様子はない。
 が。
「……っ!?」
 刹那、前方が銀色で塗りつぶされた。
 それなりに離れた位置から少女の視線の先へと、巨人が移動していた。音もなく、一瞬で。
 そして、咆哮。
 耳元を直接殴られたかのような轟音に、パイフウはただ唇を噛んで疾走した。裏口から雑貨屋内部へ滑り込み、衝撃波と飛来物を回避する。
 間近に迫った怪物の叫びが、こちらを急かすように空気を震わせる。刺すような重圧が肌を嬲った。
 軋む四肢を酷使して中庭に飛び込みかけ、しかしふたたび生まれた衝撃波が全身を打ち付けた。勢いのまま湿った大地に身体が突っ込む。
 頭部を打ち付け、世界が歪んだ。口に入った土の味と、立ち上がることを拒絶する両腕に不快を覚える。
 前方と、さらに後方に気配が近づいていたが、どうにもならない。耳に誰かの声のような反響を感じながら、銀の巨体を見上げることしか出来なかった。
 脳裏に浮かんだ最愛の人の名を乗せた喘ぎは、声にならずに大気に消えた。


●


 閉門式を唱え破壊を終えると、ふたたび辺りに痛いほどの沈黙が訪れた。
 見通しが良くなった鈍色の大地に冷たい風が吹きつけ、フリウは無意識に肩を抱いた。壊された世界をぼんやりと見つめながら、ゆっくりと歩き出す。
(いつの間にか、真っ暗になっちゃったね)
 文字通り“全部”壊してしまえば追いかける必要すらないことに気づいたのは、霧が晴れ夕陽が沈んだ後だった。
 それでも、全壊までには時間が掛かりすぎている気がした。破壊精霊の動きが鈍く、力自体も弱くなっているように感じる。
 実際に舗装された大地は砕けておらず、完全に破壊したはずの建造物は瓦礫──それなりに大きな塊として残っている。普段なら、それすら塵になる。
 早朝男に拳が受け止められたのも、異質な剣と彼の膂力に加えて、この弱体化のせいもあるかもしれない。
(でも、これだけ壊しちゃったなら結局同じだよね)
 様々な店が並んでいた、人殺しの場にはふさわしくない街は、今やただの廃墟となった。
 あの女も、どこかに埋まっているだろう。四肢の大半が使い物にならない人間が、この場から逃げ切れるとは思えない。
 制限されていようが、結果が期待通りならば同じことだ。どうでもいい。
 破損した家具や建造物の破片が散乱している大通りを歩く。目的地はない。前方の視界すら覚束ない。
 歩くしかすることがないので、ただ脚を動かしているだけだ。思考の空白を埋めるものはなく、ただ進む。
 だから足下の何かに靴が滑り、身体がひび割れた地面へと落ちゆく時も、フリウがしたのは左眼をかばうことだけだった。
 それすら身体が勝手に行ったことで、自分の意思ではない。そもそもイシとはどんな意味だったか。
 硬い大地に肌が擦れる痛みよりも、それを包む生暖かい液体の感触に顔をしかめた。
 地面に手を突こうとしてもそれがぬめり、なかなか立ち上がれない。
 いっそこのまま倒れたままでいようかとも思ったとき、滑らない地面を求めて彷徨っていた手が何かに触れた。
 同じく濡れていたが、堅くて掴みやすい。取っ手にと強く引っぱって掴み、ゆっくりと身体を起こす。
 やっとのことで座り込んだときには、全身が濡れそぼっていた。何かを掴んだ左手には糸のようなものが絡まり、気持ち悪い。
 身体の下敷きになっていたマントの内側で顔だけは拭い、小さく息をつく。
(明かりは、必要だね……)
 今更そんなことを思い、デイパックを肩から下ろす。手探りで懐中電灯らしきものを取り出し、明かりを点けた。
 視界に映ったのは真紅だった。
 瓦礫の山の一端から染み出した赤い液体が、鈍色の地面を飲み込んでいる。
 今自分の全身を濡らし、溶かすようにまとわりついているのも同じものだった。
 血、という単語が浮かぶまでには、ひどく時間が掛かった。その濃厚な臭いにすら、今まで馴染みすぎていて気づかなかった。
 その液体の漏れる先を見ると、瓦礫に真っ赤な塊が押し潰されているのが見えた。
 先程自分が掴んだ何かが大きくはみ出している以外は、大半が瓦礫に埋もれている。
(……死体?)
 それにしては赤が鮮やかすぎる気がする。全身がほぼ均一に染まっているのにも違和感と、何故か既視感を覚えた。
 手を伸ばし、それに触れる。
 指を滑らせ血を拭っても、それの表面は赤く滑らかなままだった。
「あ」
 撫でるうちに、それが肌触りのいい赤色の布地だと気づく。
 眺めるうちに、それが赤いスーツを着た長身の人間だと気づく。
 動かすうちに、自分の指に絡まっているのが赤い毛髪だと気づく。
 見入るうちに、自分が先程掴んだものが誰かの潰された頭部だと気づき、
「じゅん、さん?」
 理解した。
 この島に来て初めて出会った、自分を殺そうとしない人間。ミズー・ビアンカと似て非なる、鮮烈な赤を持った女性。
 その身体は瓦礫と血に埋もれ、頭部は半分砕けていた。小さく白いものが二つ、こぼれかけている。
 ふと見れば自分の左手には、頭髪と血液の他に奇妙な色の液体も付いていた。
 気がつけば吐いていた。午後に彼女らと食べた野菜類が、すべて地面にぶちまけられる。
 酸味しか溢れるものがなくなった後も、胃の収縮は止まらなかった。息を整え、改めて状況を把握するまでには大分時間が掛かった。
 やったのは、自分だ。
(でも、潤さんは、あたしがこうする前に、もう)
 死んでいたはずだ。
 断末魔の咆哮を聞いた。放送で呼ばれた。自分が壊さなくとも、結果は既に決まっていた。
 アイザックとミリアの死体もここにあるはずだった。
 二人も家屋の瓦礫に埋もれているのだろうか。あるいは知らぬ間に破壊精霊の拳で潰したか。どちらも結果は同じだ。
 そう、皆既に死んでいる。自分がこの島で関わった人間はすべて。
 自分を殺そうとした人間も自分を暖かく迎えてくれた人間も、自分が希望を抱いた彼女も、すべて。
 それが何故なのか、もはや問うことなどしなかった。この理不尽な世界に意味など無い。
 ただ、決まっていることなのだ。何をしようが同じこと。
 左眼を閉じていようと、自分の眼前に広がるのは壊された、あるいはこれから壊される世界。
 ゆえに、そこには破滅しかない。
 ──お前は間違っていない。もし間違っていたのなら、ここまで生きられるはずは無い。だから嘆くな悔やむな謝るな。
 いきさつを話した際、潤はそう言って頭を撫でてくれた。
 何の根拠もなく自分を信用し、肯定し、救いを与えてくれた。とても嬉しかった。
 その彼女は、何故死んだのか。断言した本人である、間違っているはずのない彼女が死んだのは何故か。
(きっと、壊さなかったからだ)
 自分と違い彼女は壊すために戦ったのではなく、おそらくアイザックとミリアを助けようとして戦ったのだろう。だから死んだ。
 その二人もきっと互いを守るために死んだ。要は自分をかばって死んだ。チャッピーは自分を止めようとして死んだ。
 自分を殺そうとしたあの三人は、自分が壊そうと──あるいは殺そうとしたから死んだ。
 ここでは何かを壊さなければ死ぬ。さらに、自分が壊すか殺そうとすると死ぬ。
 つまり壊すか殺すかしか出来ない自分がいれば、皆死ぬ。
 ならば、最初からすべて壊してしまえばいい。
 ただ進み、壊す。それはとても簡単なことだった。
「……あは」
 だからそれがわかって、フリウは笑った。
 嬉しくて笑った。おかしくて笑った。いままでの自分が馬鹿らしくて笑った。
 そのうち何故笑っているのかわからなくなってきて笑った。ただ笑った。
 そして。
「行こっか」
 滑らないようゆっくりと立ち上がった後、やはり笑んだままでフリウは呟いた。先程とは違い、確固たる意図を持った言葉で。
 すべてを壊し、島を破壊で埋め尽くす。
 もしそれでも、残っているものがあったならば。
 それがきっと、自分を壊してくれるだろう。


●


 唐突に現れた白銀の巨人は、やはり唐突にその姿を消した。
 異物のなくなった黒一色の闇を窓から眺めると、キノは大きく息をついた。
 遠方からでも感じる重圧に押し潰されそうになりながらも、逃亡のみに全力を注いだのが功を奏した。幸い禁止エリアも発動していない。
 避難先の近場のビルには誰もいなかった。役に立ちそうなものはなく、一通り探索した後はずっと窓の外を窺っていた。
(……今度はここが壊されるかもしれない)
 どちらにしろ禁止エリアの情報を得るために、人を探す必要があった。早めにこの周囲から離れるべきだろう。
 動くこと自体には、もはや不安を感じていなかった。
 思考は落ち着きを取り戻しており、あの巨人を見た際の恐怖も既になかった。振り切れたとも言うが。
(あんなもの、どうしようもない。……でも、だからこそどうにかなるかもしれない)
 頭部を潰しても死にそうにない、そもそも各部位が人と同じ働きをしているかどうかも怪しい化け物に、キノは一種の希望を抱いていた。
 あの存在ならば、零崎のような同じく“どうしようもない”存在に勝てるのではないか、と。
 化け物は化け物同士で殺し合ってくれるのが一番いい。自分が直接手を下す必要はない。
 このゲームの目的は“生き残る”事であって、“皆殺し”ではないのだから。
(確かに犠牲は必要だけれど、ボクが直接無理に生み出さなくたっていい)
 自分の被害は最小限に。降りかかる火の粉があれば振り払い、それが火の粉ではなく火の玉だったならさっさと逃げる。
 利になる機会があれば無駄にしない。猪突猛進に障害を壊すのではなく、冷静に頭を使って障害を利用する。
(なんだ、いつもと同じじゃないか)
 自分の命を守るためには、その場に即した最大限の努力をすること。
 昔師匠に教わったことであり、この島で彼女に遺言の形で残された言葉でもある。
 つまり、いつも実践していたことだ。
 常日頃の方針に、彼女の遺志という絶対的な楔が加わっただけでいつもの旅と何ら変わりない。もっと軽く考えればよかったのだ。
 そんな結論に小さく頷くと、キノはビルの入口からそっと滑り出た。
 再び吹いた冷たい夜風が、先の見えない暗闇が、自分を歓迎してくれている気がした。


●


「……終わったようですね」
 安心してそんな呟きを漏らすことが出来たのは、地下に避難してからおよそ一時間が経過した後だった。
 天井からこぼれた細かい岩の破片を払うと思いの外砂ぼこりが立ち、古泉は小さく咳き込んだ。
 放送終了後に商店街に移動し周囲の探索をしていると、突然あの巨人が視界の隅に出現した。
 事前にこの地下へと繋がる階段を見つけていなければ、今ごろは瓦礫の下に埋まっていただろう。
 参加者の何らかの能力か、あるいは支給品か。結局あれが何だったのかまったくわからないが、無傷で切り抜けられただけで御の字と言える。
(もちろん当事者から話が聞けるのなら、大歓迎なんですが、ね)
 中央に置いた懐中電灯に照らされた対面の壁。そこにもたれて座る人影に目をやると、無感動な、しかし鋭い視線が返ってきた。
 巨人に追われ、衝撃波に倒れたところを助けた女性だった。
 怪物が雑貨屋を標的に定める前に半ば強引に地下に引き寄せ、このD-4まで誘導した。
 しかし避難してから今まで彼女は一度も喋らず、ただ何もせず周囲を──特に自分を強く警戒していた。
(まぁ、当然ですが)
 彼女とはこれが初対面ではなかった。もちろん親しい間柄ではないし、かといって忘れてしまう程どうでもいい繋がりでもない。
 早朝の城で、彼女は自分を含む四名を明確な殺意を持って襲撃していた。一番最初に狙われたのが自分だった。
 こんな状況下で仇を恩で返すような行為などありえない。何か裏があると考えるのが普通だ。
 まぁ、本当にあるのだが。
「そろそろ、何か反応をいただけるとありがたいのですが。あなたも睨み合いを続けて時間を浪費するのは本意ではないでしょう」
「…………」
「休息を取るにしても、もう少しまともな場所に移動した方が安息を得られますし」
「……この島にまともな場所なんてないわ」
「少なくとも、焼死体のない地区はそれなりに残っていると思いますよ」
 初めて得られた、しかし素っ気ない返答に苦笑して言葉を返すと、彼女は目を背けて黙り込んだ。
 その彼女の奥、地上への階段がある部分に闇に埋もれた死体があった。
 実際に視認はしていないが、周囲に漂う強烈すぎる臭いで何があるのかは嫌と言うほどわかる。
 それに一時間近く耐えることは、吐き気を通り越して目眩を覚えた。
「どちらにしろ、その怪我の応急処置は必要でしょう。東の市街地になら救急箱などが──」
「あなたは何故、外に出たの? 何故すぐに地下を通って商店街から離れなかった?」
 言葉を遮り、彼女は強い視線をこちらに向ける。
 いくらでも嘘がつける“助けた”動機ではなく、いきなり“助けることが出来た”理由を問う辺り容赦がない。
「あの怪物のことが少々気になったので、落ち着き次第地上に戻ってみようと思いまして。
ですがなかなか静まらないので、最後に一度様子を見たら離れようかと扉を開けましたら、そこにあなたが」
「違うわ。あなたはずっと見てた。ずっと外に出ていて、あれに追いかけられている誰かを探していたんでしょう」
 首を振って顔にかかった髪を払いつつ、彼女は無表情で即答した。どこまでも愛想がない。
 実際、その通りだったが。
 能力の減退が施されているこの場で、あんな大規模な力を使う状況は限られる。
 是が非でも殺したい誰かがいるのか、あるいは単に使用者の気が狂ったか。
 前者ならば、その目を付けられた人間と協力体制が取れる可能性があった。
 あまりに無差別な破壊行為のため、共通の敵として共に協力し合うという建前が容易になる。
 しかしその建前すら必要ない──自分と同じ目的の、顔見知りの人間がその誰かだったのは予想外だった。
 もちろん見られている気配を感じ取られる可能性は予測していたので、指摘自体は驚くに値しない。
「ええ、確かに仰るとおり、逃亡者と接触するために顔だけ外に出していました。
ですがあの怪物が気になった、というのは虚言ではありませんよ。少し懐かしさを覚えたものですから」
「…………」
 あっさりと肯定し、ついでに一つ付け加えると彼女は僅かに眉をひそめた。
 無差別に建造物を破壊する謎の巨人──《神人》を倒すための力があったために、自分はSOS団に引き込まれ、ここに拉致されている。
 その《神人》自体も最近はあまり見ることがなくなったため、元の世界への追慕と合わせてそんな感情が浮かんでいた。
 人間が引き起こす現実的な危機には恐れが生じ、超常的な異物が暴れる惨状には驚きはするが動揺はしない。
 そんな自身に胸中で苦笑しつつ、続ける。
「本題に入りましょう。互いの利害が一致する間、行動を共にしませんか? この場合の“利害”は、“生き残る”という意味で。
あなたの折れた腕の、まぁ指三本分程度にはなれると思うのですが」
 媚びるわけではなく、若干冗談めいた口調で言う。それにも彼女は表情を変えず、強い疑念を抱いた目でこちらを見据えている。
 実際には、それ以前に足を引っぱる可能性の方が高いだろう。
 武器は一応、ナイフと雑貨屋の奥で見つけたライフルがあるが、どちらも“使える”と言うには程遠い。当然素手は論外。結局、頼れるのは頭の中身だけだ。
 だが、この状況において彼女がそう判断するのは難しい。
 あの巨人のように、ここには自身の世界の常識を超えた存在が多数存在している。
 そのためどこからどう見ても無力な人間に対しても、警戒を抱かざるを得ない。
 かつて殺されかけた相手にもかかわらず、何食わぬ顔で協力を申し出る人間などなおさらだ。胡散臭すぎるがゆえに、無下に切り捨てられない。
「……わたしは、誰であろうと殺すわ。
例えあなたの知人がいたとしても、わたしの──“知人”がいたとしても。いずれはあなたも、必ず。
わたしはさっきの化け物みたいに、壊す──殺すためにしか動かない」
「かまいませんよ。僕には幸か不幸か、捜すべき人はいませんし」
 決意した以上、長門には会わない方がいい。
 自分の極論行為に協力を求めることも考えたが、何となく彼女の場合、無謀であろうと最後まで抵抗を試みる気がした。
(探し人ではなく行きたい場所はあるんですが……時間をおかなければ危険でしょうね)
 島の西端にある学校。
 そこにハルヒの力によって生まれた空間が出現したことに、少し前から気づいていた。
 能力制限のせいか、感じ取れたのは周囲の地区に近づいてからだったが、彼女関連なのは間違いない。
 もちろんその事実が分かってすぐに移動を開始したが、その最中突然その建造物の一部が大爆発を起こした。
 ハルヒの力が干渉したものではない、人為的な現象。殺人者が暴れた可能性が極めて高い場所には足を運べず、やむなく後回しにしていた。
「わたしの怪我が治せる何かがあるなら、それを優先するわ」
「どうぞ。怪我の治療が出来るものは、他人には渡さない方がいいでしょうし」
「戦闘になったらあなたのことは考えないから」
「ええ。自分の身くらいは自分で守りますよ。作戦が事前に決まっているのなら、ぜひ教えていただきたいものですが」
 それに対する答えはなかった。
 彼女はしばらく沈黙した後、わずかにふらつきながらも立ち上がる。
「……なら、行くわ。潜り込めるチームがあるなら入るから」
 そして座ったままの自分を見下ろして、彼女は事実上の同盟成立を告げた。
「では、よろしくお願いします。
ああ、そう言えばまだお互い名乗っていませんでしたね。僕は古泉一樹と言います。あなたは?」
「パイフウ」
 それにも彼女は短く告げ、こちらが差し出した腕を一瞥もせず踵を返す。
 右脚を引きずりながら歩き出し、そのまま一言。
「最後に一つ。男はみんな嫌いなの。必要以上に馴れ合わないで」
「……了解しました」
 思わず苦笑混じりに肩をすくめると、古泉は闇へと消えゆく彼女に続いた。




【C-3/商店街跡/1日目・20:00】
【フリウ・ハリスコー】
[状態]:全身血塗れ。右腕にヒビ。正常な判断が出来ていない
[装備]:水晶眼(眼帯なし)、右腕と胸部に包帯
[道具]:デイパック(支給品一式・パン5食分・水1500ml)、缶詰などの食糧
[思考]:全部壊す。
※C-3全域の建物がすべて破壊されました。取り残された支給品等の状況は不明。

【C-4/ビル前/1日目・20:00】
【キノ】
[状態]:健康。色々吹っ切れた。
[装備]:折りたたみナイフ、カノン(残弾4)、森の人(残弾2)
    ヘイルストーム(残弾6)、ショットガン(残弾3)、ソーコムピストル(残弾9)
[道具]:支給品一式×4(内一つはパンが無くなりました)、師匠の形見のパチンコ
[思考]:商店街から離れ、潜伏先を探す。禁止エリアの情報を得たい。
    零崎などの人外の性質を持つものはなるべく避けるが、可能ならば利用する
    最後まで生き残る(人殺しよりも生き残ることを優先)
[備考]:第三回放送をすべて聞き逃す。

【D-4/地底湖近辺/1日目・20:00】
【古泉一樹】
[状態]:左肩・右足に銃創(縫合し包帯が巻いてある)
[装備]:グルカナイフ、ライフル
[道具]:デイパック(支給品一式・パン10食分・水1800ml)
[思考]:ひとまずパイフウと共闘。出来れば学校に行きたい。
    手段を問わず生き残り、主催者に自らの世界への不干渉と、
    (参加者がコピーではなかった場合)SOS団の復活を交渉。
[備考]:学校にハルヒの力による空間があることに気づいている(中身の詳細は知らない)

【パイフウ】
[状態]:不機嫌。両腕・右脚骨折。古泉を強く警戒
    ヒーリングによる左腕治療中(完治にはかなりの時間を要する
[装備]:外套(ウィザーズ・ブレイン)
[道具]:なし
[思考]:ひとまず古泉と共闘。傷の治療が最優先。潜り込めるチームがあるなら入り、隙を見て殺す。
    主催側の犬として火乃香を守るために殺戮を。
[備考]:外套の偏光迷彩は起動時間十分、再起動までに十分必要。
    さらに高速で運動したり、水や塵をかぶると迷彩に歪みが出来ます。


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第522話 第523話 第524話
第520話 時系列順 第546話
第490話 フリウ 第537話
第516話 キノ 第564話
第490話 パイフウ 第534話
第472話 古泉一樹 第534話
第490話 ウルトプライド 第537話



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