第371話:帰りを待つ者のために 作:◆RGuYUjSvZQ
「おや? ここは・・・」
保胤が気がつくと、そこは島津由乃の墓の前だった。
自分は確かフォルテッシモという人物と戦っていて・・・
そうだ、攻撃されそうになったセルティさんを突き飛ばして自分が攻撃を受けたんだ。
はっきりと記憶に残っていたのはその場面までだった。
どこか暗闇の中を歩いていたような気もするが、そのあたりの記憶は曖昧だ。
夢でも見ていたのかもしれない。
保胤が気がつくと、そこは島津由乃の墓の前だった。
自分は確かフォルテッシモという人物と戦っていて・・・
そうだ、攻撃されそうになったセルティさんを突き飛ばして自分が攻撃を受けたんだ。
はっきりと記憶に残っていたのはその場面までだった。
どこか暗闇の中を歩いていたような気もするが、そのあたりの記憶は曖昧だ。
夢でも見ていたのかもしれない。
「起きたようだな」
背後から声がかかる。
起き上がるとそこにはセルティと見慣れない男がいた。
「おや、貴方は・・・うがっ!?」
謎の人物に保胤が話しかけようとしたその時、突然セルティが保胤の顔面を殴りつけた。
セルティは一応手加減していたのだが、突然のことに保胤は反応しきれず軽く吹っ飛んでしまう。
「お、おい、突然どうした?」
予想外のセルティの行動に思わず声をかけたベルガーだったが、セルティは無視した。
セルティは文字を乱暴に紙に書きなぐると倒れこんだ保胤の目の前に掲げる。
『なんであんな無茶をした!? そんなに死にたいのか!
平安京のお前の家にはお前を待ってくれている人がいるのだろう!
そいつのためにも、もっと自分の命を大切に扱え!』
背後から声がかかる。
起き上がるとそこにはセルティと見慣れない男がいた。
「おや、貴方は・・・うがっ!?」
謎の人物に保胤が話しかけようとしたその時、突然セルティが保胤の顔面を殴りつけた。
セルティは一応手加減していたのだが、突然のことに保胤は反応しきれず軽く吹っ飛んでしまう。
「お、おい、突然どうした?」
予想外のセルティの行動に思わず声をかけたベルガーだったが、セルティは無視した。
セルティは文字を乱暴に紙に書きなぐると倒れこんだ保胤の目の前に掲げる。
『なんであんな無茶をした!? そんなに死にたいのか!
平安京のお前の家にはお前を待ってくれている人がいるのだろう!
そいつのためにも、もっと自分の命を大切に扱え!』
保胤とセルティは昨夜の砂漠で、お互いの身の上を話しあった。
その中で、セルティは恋人である岸谷新羅と同棲をしていることを半分ノロケながら話したことがあった。
平安時代の住人である保胤にとって、それは衝撃的なことだった。
当時の平安貴族社会では結婚ですら男が妻のもとへ通う妻問婚が主流である。
ましてや、婚前の男女が同じ屋根で住むなど通常では考えられない。
通常では考えられないのだが・・・
実は保胤も現在、一人の女性と同じ屋根の下で暮らす事態となっていた。
もっとも保胤の場合、その同居人とは恋人ではないし、その同居人の従者も一緒で二人きりというわけではない。
そもそも、仮住まいとして転がり込んできているだけでセルティのケースとは全く違う(と保胤は考えている)。
保胤はこのことを話の流れでついセルティに話してしまっていたのだ。
もちろん、上記のことを特に強調した上で。
その中で、セルティは恋人である岸谷新羅と同棲をしていることを半分ノロケながら話したことがあった。
平安時代の住人である保胤にとって、それは衝撃的なことだった。
当時の平安貴族社会では結婚ですら男が妻のもとへ通う妻問婚が主流である。
ましてや、婚前の男女が同じ屋根で住むなど通常では考えられない。
通常では考えられないのだが・・・
実は保胤も現在、一人の女性と同じ屋根の下で暮らす事態となっていた。
もっとも保胤の場合、その同居人とは恋人ではないし、その同居人の従者も一緒で二人きりというわけではない。
そもそも、仮住まいとして転がり込んできているだけでセルティのケースとは全く違う(と保胤は考えている)。
保胤はこのことを話の流れでついセルティに話してしまっていたのだ。
もちろん、上記のことを特に強調した上で。
セルティは保胤の同居人と自分とを重ね合わせていた。どうも他人事には思えなかったのだ。
保胤は恋人ではないと強調していたが、女が好きでもない男の家に転がり込むとは思えない。
保胤にしても、話をしている様子からその女性のことを少なからず思っているようである。
それなのに、保胤は身を挺して赤の他人のはずの自分を助けようとした。
もし仮に、自分の恋人である岸谷新羅が他の女性を身を挺して守り死んでしまったとしたら・・・
想像するだけでも恐ろしかった。自分はその時、正気を保っていることができるだろうか。
保胤は恋人ではないと強調していたが、女が好きでもない男の家に転がり込むとは思えない。
保胤にしても、話をしている様子からその女性のことを少なからず思っているようである。
それなのに、保胤は身を挺して赤の他人のはずの自分を助けようとした。
もし仮に、自分の恋人である岸谷新羅が他の女性を身を挺して守り死んでしまったとしたら・・・
想像するだけでも恐ろしかった。自分はその時、正気を保っていることができるだろうか。
保胤は殴られた時に口を切ってしまったが、不死者の効果ですぐに傷は癒えた。
「・・・ご心配をおかけして申し訳ありません。あの時は無我夢中だったのです」
セルティは今度は殴りはしなかったが、再び乱暴に書きなぐった文字を保胤に見せる。
『お前が死ぬのは勝手だ。だが、お前には帰りを待っている人がいるのだろう! そのことを忘れるな!』
セルティはかなり怒っているようだ。
顔がないので怒りの形相は見えないのだが、纏っている雰囲気だけでもかなりの迫力だ。
「申し訳ありません・・・」
保胤は再び謝った。謝るしかなかった。
「もうその辺にしておけ。この男も十分理解しているはずだ」
ベルガーの声に、セルティはやっと冷静さを取り戻した。
セルティは今度は静かに文字を書き、保胤に紙を渡す。
『もう二度とこんなことはするな。・・・まあ、お前に助けてもらったのは事実だ。
礼は言わせてもらう。ありがとう』
保胤もここでやっといつもの微笑を取り戻した。
「いえ、セルティさんも無事で何よりでした。しかし、僕は攻撃を食らってしまったはずです。
服はボロボロなのになんで無傷なのでしょうか? あと、そちらの方はいったい?」
保胤は自分のボロボロの服装とベルガーを交互に見やりながら疑問を口にした。
『そうだった、あの後のことを説明しよう』
セルティとベルガーは保胤が気を失っていた間にあったことを説明し始めた。
「・・・ご心配をおかけして申し訳ありません。あの時は無我夢中だったのです」
セルティは今度は殴りはしなかったが、再び乱暴に書きなぐった文字を保胤に見せる。
『お前が死ぬのは勝手だ。だが、お前には帰りを待っている人がいるのだろう! そのことを忘れるな!』
セルティはかなり怒っているようだ。
顔がないので怒りの形相は見えないのだが、纏っている雰囲気だけでもかなりの迫力だ。
「申し訳ありません・・・」
保胤は再び謝った。謝るしかなかった。
「もうその辺にしておけ。この男も十分理解しているはずだ」
ベルガーの声に、セルティはやっと冷静さを取り戻した。
セルティは今度は静かに文字を書き、保胤に紙を渡す。
『もう二度とこんなことはするな。・・・まあ、お前に助けてもらったのは事実だ。
礼は言わせてもらう。ありがとう』
保胤もここでやっといつもの微笑を取り戻した。
「いえ、セルティさんも無事で何よりでした。しかし、僕は攻撃を食らってしまったはずです。
服はボロボロなのになんで無傷なのでしょうか? あと、そちらの方はいったい?」
保胤は自分のボロボロの服装とベルガーを交互に見やりながら疑問を口にした。
『そうだった、あの後のことを説明しよう』
セルティとベルガーは保胤が気を失っていた間にあったことを説明し始めた。
(『集結に向けて』に続く)
【A-1/島津由乃の墓の前/1日目・12:25】
『ライダーズ&陰陽師』
【ダウゲ・ベルガー】
[状態]:心身ともに平常
[装備]:エルメス 贄殿遮那 黒い卵(天人の緊急避難装置)
[道具]:デイパック(支給品一式+死体の荷物から得た水・食料)
[思考]:保胤に刻印について聞く。 ムンク組の知人探し。
・天人の緊急避難装置:所持者の身に危険が及ぶと、最も近い親類の所へと転移させる。
【ダウゲ・ベルガー】
[状態]:心身ともに平常
[装備]:エルメス 贄殿遮那 黒い卵(天人の緊急避難装置)
[道具]:デイパック(支給品一式+死体の荷物から得た水・食料)
[思考]:保胤に刻印について聞く。 ムンク組の知人探し。
・天人の緊急避難装置:所持者の身に危険が及ぶと、最も近い親類の所へと転移させる。
【セルティ・ストゥルルソン】
[状態]:正常
[装備]:黒いライダースーツ
[道具]:デイパック(支給品入り)(ランダムアイテムはまだ不明)、携帯電話
[思考]:静雄の捜索及び味方になる者の捜索。ベルガーとの情報交換。
長期的には何をしていくべきか保胤と話し合う。
[状態]:正常
[装備]:黒いライダースーツ
[道具]:デイパック(支給品入り)(ランダムアイテムはまだ不明)、携帯電話
[思考]:静雄の捜索及び味方になる者の捜索。ベルガーとの情報交換。
長期的には何をしていくべきか保胤と話し合う。
【慶滋保胤】
[状態]:不死化(不完全ver)、疲労は多少回復、貧血状態(行動に多少支障あり)
[装備]:ボロボロの着物を包帯のように巻きつけている
[道具]:デイパック(支給品入り) 、「不死の酒(未完成)」(残りは約半分くらい)、綿毛のタンポポ
[思考]:静雄の捜索及び味方になる者の捜索。 島津由乃が成仏できるよう願っている
[状態]:不死化(不完全ver)、疲労は多少回復、貧血状態(行動に多少支障あり)
[装備]:ボロボロの着物を包帯のように巻きつけている
[道具]:デイパック(支給品入り) 、「不死の酒(未完成)」(残りは約半分くらい)、綿毛のタンポポ
[思考]:静雄の捜索及び味方になる者の捜索。 島津由乃が成仏できるよう願っている
- 2005/07/16 修正スレ122
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