第375話:剣舞士、襲来 作:◆xSp2cIn2/A
「あー、あれだ……迷った」
人間失格は本日二度目の迷子になっていた。
景色はいつの間にか住宅街からビルなどになっていた。
「まいったな、一度来た道だと高をくくってたが。くそっ傑作だぜ」
人間失格は本日二度目の迷子になっていた。
景色はいつの間にか住宅街からビルなどになっていた。
「まいったな、一度来た道だと高をくくってたが。くそっ傑作だぜ」
人間失格が迷子になっていたころ、戯言遣いは人生最大の危機に面していた。
「や、やった! 勝ったぞ! やっとドクロちゃんに――」
シュッ!
高質量の物体が、勢いよく突き出される。それは、ぼくの頬をかすって――
ズドン!
ぼくがもたれていた木の幹に衝突。太くて頑丈そうな木の幹が、ミシミシと今にも折れてしまいそうに悲鳴を上げる。
頬についた、鋭利な刃物で切り裂かれたかのような傷口から、真っ赤な鮮血が流れ出る。
「……ど、ドクロちゃん? ぼ、暴力はいけないなぁ」
ぼくがそういうと、木の幹からゆっくりと鉄の棒――シームレスバイアスが引き抜かれる。
額に浮くのはいやな感じに粘ついた脂汗。
なすすべもなく、幹にもたれるぼくを見下ろすのは、金属鉄バットを構える撲殺天使。
たすけてっ! 凪ちゃんっ!
そう思って周りを見渡すも、凪ちゃんは見回り(といっても、零崎が帰ってこないので少し探しに行っただけだ)
に行っていて、近くにはいない。しまった! 計画的犯行かっ!
「わかった、わかったよドクロちゃん。換える、換えるから」
ぼくはそう言って、○と×と△が描かれた地面から×をひとつ消して、その隣に×を移動させる。
するとドクロちゃんはにっこり笑って、
「やったぁ! ボクのかちっ!」
二つ並んだ○の横に△を描いて言った。
シュッ!
高質量の物体が、勢いよく突き出される。それは、ぼくの頬をかすって――
ズドン!
ぼくがもたれていた木の幹に衝突。太くて頑丈そうな木の幹が、ミシミシと今にも折れてしまいそうに悲鳴を上げる。
頬についた、鋭利な刃物で切り裂かれたかのような傷口から、真っ赤な鮮血が流れ出る。
「……ど、ドクロちゃん? ぼ、暴力はいけないなぁ」
ぼくがそういうと、木の幹からゆっくりと鉄の棒――シームレスバイアスが引き抜かれる。
額に浮くのはいやな感じに粘ついた脂汗。
なすすべもなく、幹にもたれるぼくを見下ろすのは、金属鉄バットを構える撲殺天使。
たすけてっ! 凪ちゃんっ!
そう思って周りを見渡すも、凪ちゃんは見回り(といっても、零崎が帰ってこないので少し探しに行っただけだ)
に行っていて、近くにはいない。しまった! 計画的犯行かっ!
「わかった、わかったよドクロちゃん。換える、換えるから」
ぼくはそう言って、○と×と△が描かれた地面から×をひとつ消して、その隣に×を移動させる。
するとドクロちゃんはにっこり笑って、
「やったぁ! ボクのかちっ!」
二つ並んだ○の横に△を描いて言った。
「ん? どうしたんだ戯言遣い」
見回りから帰ってきた凪ちゃんが、僕の顔を覗き込むようにしていった。
「いや、なんでもないよ、凪ちゃん」
「そうか、とりあえず零崎はまだだったが……」
凪ちゃんは木の下で調子はずれの歌(ドクロちゃんのテーマだそうだ)を歌っているドクロちゃんを見て言った。
「なんであんなに上機嫌なんだ? あいつは……」
「……なんで、だろうね」
ぼくは先ほどのことを思い出し、ぶるりと体が震えた。ぼくはこれまで、何人もの頭のねじが二、三本外れている女の子を見てきたが、これほどの娘は……
「いるか、姫ちゃんとか、崩子ちゃんとか」
なんで僕の周りにいる女性はおかしな人が多いのだろうか。これではまるで――
ぞわり
唐突に、先程の震えとは比べ物にならないような悪寒が、ぼくの背筋を駆け抜けた。
これは、殺気。
純粋に殺すことだけを望む、殺気。
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
視線を伝わって、ただそれだけの感情が僕の体にまとわりつく。
ぞわり
僕の体は、半ば自動的に凪ちゃんを突き飛ばし、それに続くように自らも身を投げていた。
同時に風を切り裂く鋭い音が、ぼくの元いた場所に突き刺さり、続いて地面をえぐるような振動が、ぼくの元に届いた。
振り返る。
「ほう、あの一撃を避けるとは。今度はなかなか楽しめそうだ」
土煙が舞う中、ゆっくりと地面に突き刺さった剣を抜くのは、片手に椅子をぶら下げた銀髪の美男子。
「かっこいー! おにーさんだれー?」
「私はギギナ・ジャーディ・ドルク・メレイオス・アシュレイ・ブフ。ドラッケン族の戦士だ」
見回りから帰ってきた凪ちゃんが、僕の顔を覗き込むようにしていった。
「いや、なんでもないよ、凪ちゃん」
「そうか、とりあえず零崎はまだだったが……」
凪ちゃんは木の下で調子はずれの歌(ドクロちゃんのテーマだそうだ)を歌っているドクロちゃんを見て言った。
「なんであんなに上機嫌なんだ? あいつは……」
「……なんで、だろうね」
ぼくは先ほどのことを思い出し、ぶるりと体が震えた。ぼくはこれまで、何人もの頭のねじが二、三本外れている女の子を見てきたが、これほどの娘は……
「いるか、姫ちゃんとか、崩子ちゃんとか」
なんで僕の周りにいる女性はおかしな人が多いのだろうか。これではまるで――
ぞわり
唐突に、先程の震えとは比べ物にならないような悪寒が、ぼくの背筋を駆け抜けた。
これは、殺気。
純粋に殺すことだけを望む、殺気。
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
視線を伝わって、ただそれだけの感情が僕の体にまとわりつく。
ぞわり
僕の体は、半ば自動的に凪ちゃんを突き飛ばし、それに続くように自らも身を投げていた。
同時に風を切り裂く鋭い音が、ぼくの元いた場所に突き刺さり、続いて地面をえぐるような振動が、ぼくの元に届いた。
振り返る。
「ほう、あの一撃を避けるとは。今度はなかなか楽しめそうだ」
土煙が舞う中、ゆっくりと地面に突き刺さった剣を抜くのは、片手に椅子をぶら下げた銀髪の美男子。
「かっこいー! おにーさんだれー?」
「私はギギナ・ジャーディ・ドルク・メレイオス・アシュレイ・ブフ。ドラッケン族の戦士だ」
「戯言遣い、ドクロをつれて逃げろ! はやく!」
凪ちゃんが、半ば叫ぶようにぼくに言う。
その指示を実行することを、ぼくは躊躇する。
凪ちゃんの判断は的確だ、足手まといのぼくとドクロちゃんがいるより、二人を逃がして身軽になったほうが、勝てる確率も逃げられる確率も格段にあがる。
それでもぼくは一瞬ためらった。
これでもし、もし凪ちゃんが死んでしまったら、みくるちゃんに続いて凪ちゃんもぼくが殺したことになる。
そんなことはない。分かっている。でも――
「戯言だ」
ぼくはその一瞬のあと、ドクロちゃんの腕をつかんで走り出した。
「商店街だ! そこで零崎と合流しろ! オレもすぐに行く」
後ろから凪ちゃんの声が聞こえてくる。
「! ――まてっ」
銀髪の声も聞こえたが、無視。
ぼくは走る。
走って走って走って走って走って走って走って
森の出口近くまで走ったところで、引きずられるようについてきたドクロちゃんが口を開く。
「いたい、いたい、いたいよおにーさん。どうしたの?」
「逃げるんだよ、足手まといのぼくたちがいたってしょうがない」
そうだ、生き残れる可能性があるのにわざわざ死ぬなんてのは馬鹿のすることだ。
ぼくはまだちゃんと走れないドクロちゃんを背負い、全速力で駆け出した。体力には自信がある。
走って走って走って走って走って走って走って――――落ちた。
「あ、崖があったんだ」
ぼくは本日二度目の落下を味わった。
凪ちゃんが、半ば叫ぶようにぼくに言う。
その指示を実行することを、ぼくは躊躇する。
凪ちゃんの判断は的確だ、足手まといのぼくとドクロちゃんがいるより、二人を逃がして身軽になったほうが、勝てる確率も逃げられる確率も格段にあがる。
それでもぼくは一瞬ためらった。
これでもし、もし凪ちゃんが死んでしまったら、みくるちゃんに続いて凪ちゃんもぼくが殺したことになる。
そんなことはない。分かっている。でも――
「戯言だ」
ぼくはその一瞬のあと、ドクロちゃんの腕をつかんで走り出した。
「商店街だ! そこで零崎と合流しろ! オレもすぐに行く」
後ろから凪ちゃんの声が聞こえてくる。
「! ――まてっ」
銀髪の声も聞こえたが、無視。
ぼくは走る。
走って走って走って走って走って走って走って
森の出口近くまで走ったところで、引きずられるようについてきたドクロちゃんが口を開く。
「いたい、いたい、いたいよおにーさん。どうしたの?」
「逃げるんだよ、足手まといのぼくたちがいたってしょうがない」
そうだ、生き残れる可能性があるのにわざわざ死ぬなんてのは馬鹿のすることだ。
ぼくはまだちゃんと走れないドクロちゃんを背負い、全速力で駆け出した。体力には自信がある。
走って走って走って走って走って走って走って――――落ちた。
「あ、崖があったんだ」
ぼくは本日二度目の落下を味わった。
【残り81人】
【F-4/森の中/1日目・13:00】
【ドクロちゃん】
[状態]:頭部の傷は全快。左足腱は、杖を使えばなんとか歩けるまでに 回復。
右手はまだ使えません。
[装備]:愚神礼賛
[道具]:無し
[思考]:このおにーさんたちについていかなくちゃ
※能力値上昇中。少々の傷は「ぴぴる」で回復します。
[状態]:頭部の傷は全快。左足腱は、杖を使えばなんとか歩けるまでに 回復。
右手はまだ使えません。
[装備]:
[道具]:無し
[思考]:このおにーさんたちについていかなくちゃ
※能力値上昇中。少々の傷は「ぴぴる」で回復します。
【霧間凪】
[状態]:健康
[装備]:ワニの杖 制服 救急箱
[道具]:缶詰3個 鋏 針 糸 支給品一式
[思考]:こいつ(ギギナ)をどうにかして、いーちゃんたちと合流
[状態]:健康
[装備]:ワニの杖 制服 救急箱
[道具]:缶詰3個 鋏 針 糸 支給品一式
[思考]:こいつ(ギギナ)をどうにかして、いーちゃんたちと合流
【ギギナ】
[状態]:若干の疲労。興奮。
[装備]:魂砕き 、ヒルルカ
[道具]:デイバッグ一式
[思考]:自分の攻撃をよけたいーちゃんに興味あり。
[状態]:若干の疲労。興奮。
[装備]:
[道具]:デイバッグ一式
[思考]:自分の攻撃をよけたいーちゃんに興味あり。
【B-3/1日目・13:00】
【零崎人識】
[状態]:平常
[装備]:出刃包丁自殺志願
[道具]:デイバッグ(ペットボトル三本、コンパス) 砥石 小説「人間失格」
[思考]:惚れた弱み(笑)で、凪に協力する。F-4の森に帰る
[備考]:記憶と連れ去られた時期に疑問を持っています。
[状態]:平常
[装備]:出刃包丁
[道具]:デイバッグ(ペットボトル三本、コンパス) 砥石 小説「人間失格」
[思考]:惚れた弱み(笑)で、凪に協力する。F-4の森に帰る
[備考]:記憶と連れ去られた時期に疑問を持っています。
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