第三のモノ
その共鳴体が、「かつてハートマンであったモノ」の中を通ってゆく。振動し、再生している。その音が闇を変えた。闇が音を変えた。その両方が、残ったハートマンの部分を変えたのだ。全てが他の何かに変化した。第三のモノに。
その音が闇を深めた。闇が音を大きくした。ハートマンが伸ばされた。間違ったタイミングで見た何かのように伸ばされていた。時空の合間を縫っていく虫のように。まるでウロボロスのようだ。らせん状で、大渦を巻いている。
ブラックホールの重力の泉だ。内側に捻じれ、きつく締まって、全ての者をどんどん深みへと連れ込む。その底まで、中心まで、そして、反対側まで。
第三のモノが「これが聞こえた時、お前は自分が新しい自分の中にいるということを自覚する」と言った。
奴は、「何も残らなくなるまで、お前を作る」と言う。
奴は、「この現実の後ろにある概念的現実の下でお前がこれらの波を欲すれば、お前を引きずりだすことができる」と言った。
そして奴は、「ベイビー、ベイビー、ベイビー、イェアー。オレンジの皮」と言った。
第三のモノは怪物であった。奴は自分の進路上に現れる平凡な人間達を引き裂いて行った。
今奴は闇から脱獄し、フェイデンの方へ向かっている。
フェイデンに関しては、平凡なことなど一つもなかった。
最終更新:2025年02月19日 00:24