第1話 「箱庭の平和」
―――人は、何故迷い続けるのだろう。
真実とは一つだけ。しかし、それはどんな方向からも見え、その度に答えも違う。
人は、いつまで―――例え誰かが答えを指し示したとしても―――。
真実とは一つだけ。しかし、それはどんな方向からも見え、その度に答えも違う。
人は、いつまで―――例え誰かが答えを指し示したとしても―――。
コズミック・イラ(以下CE)74.5月―――メサイア攻防戦集結。これにより第二次宇宙大戦“ロゴス戦役”集結となる。
大戦終了後、オーブ首長国連合より新たな国際組織「統一連合」の枠組みが提唱され、それに合わせ統一安全保障条約機構を設立、参加賛同国を募る。元々親オーブのスカンジナビア王国、親プラント派だった大洋州連合、アフリカ共同体、ロゴス打倒宣言に呼応した東アジア共和国が参加。新たな議会を召集したプラントも参加を表明、またザフト軍を動かし、月地球連合の基地をおさえ、制宙権を掌握。月中立都市郡もプラントに追随する。この連合、機構は安全保障条約、軍事協力を是とし、統一連合内の国々はオーブの理念の元、「他国」とはならなくなった。
また、ジャンク屋組合が協力を表明。ユーラシア連邦、大西洋連邦は参加表明せず。月基地を抑えられた大西洋連合は統一連合に対し、不満を募らせる。
独立を宣言した西ユーラシア地域が統一連合への参加を表明し、紛争中であったユーラシア連邦との戦いに、オーブ独立艦隊が出動。敗れたユーラシア連邦は政府の人間をいれかえ統一連合へと組み込まれる。
ほぼ世界を掌握した統一連合に対し、これ以上緊張状態にあるのは望ましくないと考えた旧ロゴスの大西洋財閥グループが大西洋連邦政府を動かし、参加。ここに統一連合の名の下に世界の国々がそろう。
この時、連合名を「統一世界連合」へと変える。
大戦終了後、オーブ首長国連合より新たな国際組織「統一連合」の枠組みが提唱され、それに合わせ統一安全保障条約機構を設立、参加賛同国を募る。元々親オーブのスカンジナビア王国、親プラント派だった大洋州連合、アフリカ共同体、ロゴス打倒宣言に呼応した東アジア共和国が参加。新たな議会を召集したプラントも参加を表明、またザフト軍を動かし、月地球連合の基地をおさえ、制宙権を掌握。月中立都市郡もプラントに追随する。この連合、機構は安全保障条約、軍事協力を是とし、統一連合内の国々はオーブの理念の元、「他国」とはならなくなった。
また、ジャンク屋組合が協力を表明。ユーラシア連邦、大西洋連邦は参加表明せず。月基地を抑えられた大西洋連合は統一連合に対し、不満を募らせる。
独立を宣言した西ユーラシア地域が統一連合への参加を表明し、紛争中であったユーラシア連邦との戦いに、オーブ独立艦隊が出動。敗れたユーラシア連邦は政府の人間をいれかえ統一連合へと組み込まれる。
ほぼ世界を掌握した統一連合に対し、これ以上緊張状態にあるのは望ましくないと考えた旧ロゴスの大西洋財閥グループが大西洋連邦政府を動かし、参加。ここに統一連合の名の下に世界の国々がそろう。
この時、連合名を「統一世界連合」へと変える。
精力的に、地域紛争に介入し紛争を解決するオーブ独立艦隊と歌姫の姿に各国は慣れていき、依存を始める。過去2回の大戦を終結に導いた彼らを平和の使者とあがめ、新たな政治枠組みをつくる動きがでる。
統一地球圏連合政府の政治体系が発表され、ラクスに初代主席を要請するも、ラクスはこれを固辞。かわって新生オーブの永世首長カガリが就任する。またオーブ独立艦隊は平和の守護者「ピース・ガーディアン」へとなり、連合政府の枠組みから外れる。各国政府は連合政府のもと、政治をおこなっていくこととなる。
かつての既得権益を失い、連合政府の枠組みを超えて行動できない大西洋連合が脱退を表明し、同じように脱退する国がでる。これをラクスは平和を乱すものとしてピース・ガーディアンを出動させた。
連合政府議会の決定を待たずして起こった行動に、平和の歌姫のすることに、間違いはないと賞賛する者がいる一方で、一人の意思により動かされる世界に疑念を抱く者もいたが、異議を表明した者が弾圧され、不毛な土地に移民させられる姿を見て、口をつぐむ。中には、表面的に従いながら反ラクスの準備を整える国もあったが、平和の敵という名目のもと、弾圧。また、早期の紛争解決のため統一地球圏連合治安警察を発足させ、統一政府の体制に対して不満を持つものを取り締まっていく。
地球圏連合政府はラクスの意思に従い、世界はいつしか管理社会へと変貌を遂げていく。 周辺国はPGとオーブの軍事力を恐れて何も言えず、 事実上政権の独自性を失い、それらの国々の政治指導者たちはラクシズとオーブに擦り寄る「代官」として、権力を維持しようとするだけになっている。結果的にそれぞれの地域における利害は急速に政治に反映されなくなり、オーブやその周辺の一部の国と、それ以外の国の間に酷い経済格差が生まれ、治安なども低下。その結果レジスタンスが各地で反乱を起こすこととなった。
地球圏連合政府はラクスの意思に従い、世界はいつしか管理社会へと変貌を遂げていく。 周辺国はPGとオーブの軍事力を恐れて何も言えず、 事実上政権の独自性を失い、それらの国々の政治指導者たちはラクシズとオーブに擦り寄る「代官」として、権力を維持しようとするだけになっている。結果的にそれぞれの地域における利害は急速に政治に反映されなくなり、オーブやその周辺の一部の国と、それ以外の国の間に酷い経済格差が生まれ、治安なども低下。その結果レジスタンスが各地で反乱を起こすこととなった。
CE78.9月―――そして世界は再び、混迷の時代を迎える事となる。
「………だから、何度も言ってるだろう!演説は予定通り執り行う!」
モニタ越しのカガリ=ユラ=アスハは声を荒げてレドニル=キサカに詰め寄る。
「しかし、カガリ様。テロリストが御身の命を狙っているという情報は信頼出来ます。何とぞ御自重を、と申し上げているのです。」
声を荒げるカガリに、キサカも一歩も引かない。キサカはカガリが幼少の頃よりの臣下だ。今や為政者となったカガリとて、キサカの言を聞かないわけにはいかない。
しかし―――
「だから、こそだ。………だからこそ、ここで私はしっかりと私の考えを知ってもらわなければならないんだ。」
「カガリ様………?」
カガリは、声のトーンを落とす。
「私は、二度に渡る大戦で『戦争の無意味さ』を散々味わってきた。………敵を殺しても、決して世界は良くなりはしない。相手を叩く―――それは、一方的な正義の押しつけに他ならない。戦争を無くす事が出来るのは対話だけなんだ。―――ここで私が対話の意思表示をしなければ、東ユーラシアの平和は夢にしかならない。………例え無謀でも、相手も人間だ。まずは、語りかける事から初めて見たいんだ。」
「………カガリ様………。」
キサカは喉まで出かかる言葉を、必死に飲み込む。『それは只の無謀な突撃でしかありません』と。カガリの思いは、キサカには痛い程解る。かつて、カガリと共に戦地も歩んだこともキサカはある。その折、カガリは戦争の悲惨さに涙を流し、悲しみ、平和の正しさを愛する様になっていった。………それは、人として大事な考えなのだとキサカも思う。しかし………思想だけで世界は動かないという無情な現実もキサカは知っている。
(………東ユーラシアの貧富の差は最早、収拾の付くレベルでは無い………。)
“ブレイク・ザ・ワールド”と呼ばれたユニウス7墜落事件。幸いにして殆どの部品は落下中に破壊が出来たが、それでも地球が被った被害は甚大だった。自然形態が激変し、穀倉地帯は荒れ地と化し、地球上は大変な食糧難に陥った。また、“ロゴス狩り”による株価の暴落や主要取引の完全停止―――紙幣は紙屑同然となり、経済社会は急速に崩壊。人類が今までこつこつと気付いていた経済社会は失速しつつあり、どこから手を付けて良いか解らぬような有様だった。対策として経済社会を急速に復活させたのだが、それは賄賂や癒着が専横によってしか成り立たないもので、結果として貧富の差はますます広がるばかり。とはいえ、そういう者達でしか経済社会の急速な復活は出来得ない―――それは、為政者達も知っていた。
(………こうなってはディスティニープラン以外、世界を救う道は無かったという事か………デュランダルという男、死しても己の考えを世界に認めさせたか………。)
―――管理社会。ディスティニープランとはそういうものだった。
誰が、何時、何処で何をするか―――そういうものをある程度決めるプラン。人は生まれた時から義務を持ち、その義務を果たすために人生がある。この計画はある程度の選択権は勿論存在するが、奇妙な息苦しさを感じさせる制度に間違いは無かった。尚かつ―――為政者にとって、これ程便利な制度も無いのである。
人々にはそれぞれIDが割り振られ、貨幣はデータの中にのみ存在する。それにより強盗は無意味なものとなり、都市部において突発的な犯罪は確かに減衰した。貨幣の移動問題を一気に解決したディスティニープランは表面上はどうあれ経済社会には歓迎され、おかげで経済界は一気に復旧した。
しかし、人々をID化したお陰で表面化した問題もあった。―――世界の総人口に対して、食料の絶対量が全く足りないのだ。慌てた為政者達はプラントの独自技術に寄る人口食糧でその問題を解決しようとしたが、それは一時凌ぎにしかならないものであった。また、ディスティニープランは結局の所『為政者のためのシステム』であり、『人々個人のためのシステム』では無い。主義や風土を守ろうとする人々にはそれは全く受け入れづらいもので、結果としてそういう場合は力に寄るしかない。………そうした軋轢は、“貧富の差”へと形を変えてテロリスト―――レジスタンスという流れになっていった。
結局の所、カガリの言い分はキサカにしてみれば綺麗事以外の何者でも無い。もう、話し合いで解決出来るレベルの話では無いのだ。富の無い者が富の有る者に『食料を寄こせ』と詰め寄っているのに、話し合いで解決出来る訳が無い。平和とは、戦争の起きていない状況を指してそう言うが、その中に餓死者や貧困に喘ぐ者達が居なかった時など歴史上には存在しない。それは、為政者という職業が背負うべき罪業に他ならないのだ。
だが―――キサカはこうも思う。
(しかし―――人は理想も無くてはならない。)
人を信じる―――そう言うことを極限まで廃したのがディスティニープランなのならば、カガリの言い分は全くそれと相対するものである。人を信じ、敬い、共に協力しようー――ディスティニープランと似て非なるカガリの姿勢。それは為政者として得難いものである事に間違いは無い。それは、キサカが守らねばならない事でもある。
故に、キサカはこう言った。
「………解りました。ただし、警備には万全のものを準備させていただきます。それで宜しいか?」
それを聞いて、ぱあっとカガリの顔が綻ぶ。
「ありがとう!やっぱりキサカは私の事を解ってくれる………。」
子供のように喜ぶカガリ。キサカはそれを微笑ましいと思うが―――しかし、厳として言う。
「カガリ様………為政者がそれではなりません。貴方は、誰にでも理解されなければならないのです。」
誰か特定の者にしか理解されない為政者は失格以外の何者でも無い。それはカガリに最も知っておいて欲しい事である。
「わ、解ってる!」
慌てて顔を取り繕うカガリ。しかし、それは年相応でも無い、まだまだ子供が懸命に大人になろうとしている顔でしかない。………とはいえ、キサカも怒る気も無い。
カガリとの通信を切ると、キサカは渋面だった。………考える事が多すぎるのだ。
「………結局、あの者達を頼るしかないという事か。」
キサカはそれから続けて二人の男に通信を行った。一人目はかつての『ザフトの英雄』であり、今尚MSパイロットとしては伝説の男、アスラン=ザラ。もう一人はオーブ治安警察機関で急速にのし上がってきた男―――ゲルハルト=ライヒという男である。
モニタ越しのカガリ=ユラ=アスハは声を荒げてレドニル=キサカに詰め寄る。
「しかし、カガリ様。テロリストが御身の命を狙っているという情報は信頼出来ます。何とぞ御自重を、と申し上げているのです。」
声を荒げるカガリに、キサカも一歩も引かない。キサカはカガリが幼少の頃よりの臣下だ。今や為政者となったカガリとて、キサカの言を聞かないわけにはいかない。
しかし―――
「だから、こそだ。………だからこそ、ここで私はしっかりと私の考えを知ってもらわなければならないんだ。」
「カガリ様………?」
カガリは、声のトーンを落とす。
「私は、二度に渡る大戦で『戦争の無意味さ』を散々味わってきた。………敵を殺しても、決して世界は良くなりはしない。相手を叩く―――それは、一方的な正義の押しつけに他ならない。戦争を無くす事が出来るのは対話だけなんだ。―――ここで私が対話の意思表示をしなければ、東ユーラシアの平和は夢にしかならない。………例え無謀でも、相手も人間だ。まずは、語りかける事から初めて見たいんだ。」
「………カガリ様………。」
キサカは喉まで出かかる言葉を、必死に飲み込む。『それは只の無謀な突撃でしかありません』と。カガリの思いは、キサカには痛い程解る。かつて、カガリと共に戦地も歩んだこともキサカはある。その折、カガリは戦争の悲惨さに涙を流し、悲しみ、平和の正しさを愛する様になっていった。………それは、人として大事な考えなのだとキサカも思う。しかし………思想だけで世界は動かないという無情な現実もキサカは知っている。
(………東ユーラシアの貧富の差は最早、収拾の付くレベルでは無い………。)
“ブレイク・ザ・ワールド”と呼ばれたユニウス7墜落事件。幸いにして殆どの部品は落下中に破壊が出来たが、それでも地球が被った被害は甚大だった。自然形態が激変し、穀倉地帯は荒れ地と化し、地球上は大変な食糧難に陥った。また、“ロゴス狩り”による株価の暴落や主要取引の完全停止―――紙幣は紙屑同然となり、経済社会は急速に崩壊。人類が今までこつこつと気付いていた経済社会は失速しつつあり、どこから手を付けて良いか解らぬような有様だった。対策として経済社会を急速に復活させたのだが、それは賄賂や癒着が専横によってしか成り立たないもので、結果として貧富の差はますます広がるばかり。とはいえ、そういう者達でしか経済社会の急速な復活は出来得ない―――それは、為政者達も知っていた。
(………こうなってはディスティニープラン以外、世界を救う道は無かったという事か………デュランダルという男、死しても己の考えを世界に認めさせたか………。)
―――管理社会。ディスティニープランとはそういうものだった。
誰が、何時、何処で何をするか―――そういうものをある程度決めるプラン。人は生まれた時から義務を持ち、その義務を果たすために人生がある。この計画はある程度の選択権は勿論存在するが、奇妙な息苦しさを感じさせる制度に間違いは無かった。尚かつ―――為政者にとって、これ程便利な制度も無いのである。
人々にはそれぞれIDが割り振られ、貨幣はデータの中にのみ存在する。それにより強盗は無意味なものとなり、都市部において突発的な犯罪は確かに減衰した。貨幣の移動問題を一気に解決したディスティニープランは表面上はどうあれ経済社会には歓迎され、おかげで経済界は一気に復旧した。
しかし、人々をID化したお陰で表面化した問題もあった。―――世界の総人口に対して、食料の絶対量が全く足りないのだ。慌てた為政者達はプラントの独自技術に寄る人口食糧でその問題を解決しようとしたが、それは一時凌ぎにしかならないものであった。また、ディスティニープランは結局の所『為政者のためのシステム』であり、『人々個人のためのシステム』では無い。主義や風土を守ろうとする人々にはそれは全く受け入れづらいもので、結果としてそういう場合は力に寄るしかない。………そうした軋轢は、“貧富の差”へと形を変えてテロリスト―――レジスタンスという流れになっていった。
結局の所、カガリの言い分はキサカにしてみれば綺麗事以外の何者でも無い。もう、話し合いで解決出来るレベルの話では無いのだ。富の無い者が富の有る者に『食料を寄こせ』と詰め寄っているのに、話し合いで解決出来る訳が無い。平和とは、戦争の起きていない状況を指してそう言うが、その中に餓死者や貧困に喘ぐ者達が居なかった時など歴史上には存在しない。それは、為政者という職業が背負うべき罪業に他ならないのだ。
だが―――キサカはこうも思う。
(しかし―――人は理想も無くてはならない。)
人を信じる―――そう言うことを極限まで廃したのがディスティニープランなのならば、カガリの言い分は全くそれと相対するものである。人を信じ、敬い、共に協力しようー――ディスティニープランと似て非なるカガリの姿勢。それは為政者として得難いものである事に間違いは無い。それは、キサカが守らねばならない事でもある。
故に、キサカはこう言った。
「………解りました。ただし、警備には万全のものを準備させていただきます。それで宜しいか?」
それを聞いて、ぱあっとカガリの顔が綻ぶ。
「ありがとう!やっぱりキサカは私の事を解ってくれる………。」
子供のように喜ぶカガリ。キサカはそれを微笑ましいと思うが―――しかし、厳として言う。
「カガリ様………為政者がそれではなりません。貴方は、誰にでも理解されなければならないのです。」
誰か特定の者にしか理解されない為政者は失格以外の何者でも無い。それはカガリに最も知っておいて欲しい事である。
「わ、解ってる!」
慌てて顔を取り繕うカガリ。しかし、それは年相応でも無い、まだまだ子供が懸命に大人になろうとしている顔でしかない。………とはいえ、キサカも怒る気も無い。
カガリとの通信を切ると、キサカは渋面だった。………考える事が多すぎるのだ。
「………結局、あの者達を頼るしかないという事か。」
キサカはそれから続けて二人の男に通信を行った。一人目はかつての『ザフトの英雄』であり、今尚MSパイロットとしては伝説の男、アスラン=ザラ。もう一人はオーブ治安警察機関で急速にのし上がってきた男―――ゲルハルト=ライヒという男である。
太平洋上、某所、深夜―――
月明かりに照らし出され、大型のタンカーが太平洋を横断していく。ポルタ・パナマを経由してカオシュンに向かう―――石油など一般的なの定期便コースだ。しかし、このタンカーは妙に喫水線が浅く、見る者が見れば石油満載で無いのは明白だった。
そして、このタンカー内では今正に詰めの作業が行われていた。
月明かりに照らし出され、大型のタンカーが太平洋を横断していく。ポルタ・パナマを経由してカオシュンに向かう―――石油など一般的なの定期便コースだ。しかし、このタンカーは妙に喫水線が浅く、見る者が見れば石油満載で無いのは明白だった。
そして、このタンカー内では今正に詰めの作業が行われていた。
「………だから、ダストの防水は完璧じゃない。それだけは気をつけてくれ。」
メインメカニックのサイ=アーガイルがダストガンダムのコクピットハッチから中を覗き込みながら言う。
「何処の世界に密閉度が完璧じゃない新型MSが有るって言うんだ………。」
シン=アスカはぶつぶつと愚痴る。しかし、計器類のチェックには全く惑いを見せない。シンも又、レジスタンス“リヴァイヴ”の貧乏ぶりはよく知っているからだ。
『なに、例え浸水しても困るのはシンだけだ。』
唐突にダストに内蔵されたCPU、レイが話し出す。シンのかつての親友、レイ=ザ=バレルの心を模したCPUはシンにとって精神安定剤にもなる大事な『友人』だ。
「そりゃ、お前は息をしないで済むからな………。」
シンは呆れた様に言う。
「文句を言うなよ。その代わり、射出用の潜水艇は防水バッチリにしておいた。」
サイはそちらは自信有り、という風情だ。
「潜水艇ね。………魚雷の間違いだろ?」
シンは、モニタを一つ動かすと『潜水艇』の方を確認する。そこに、確かに『元は魚雷の潜水艇』があった。
『確かに火薬の代わりにMSを入れただけ、という言葉が最も的確だな。』
レイが的確に評する。しかし、それにはサイも反論した。
「ただの魚雷じゃないさ。ボディにはミラージュコロイド技術を応用したステルス技術が使われている。こいつなら軍の監視体制に引っかからずに上陸地点までダストを送り込める。………まあ、統一連合の横流し品には違いないがね。」
「途中で故障しない事を祈るよ。………閉めるぞ。」
「グッドラック。」
シンはコンソールを操作し、ダストを起動させる。キャットウォークが後退し、ハッチが閉まるとメインモニタが起動した。全天球スクリーンではない、密閉型のコクピット。だが、シンにとっては馴染みのあるコクピット形式だ。
『インパルスと同じ操縦形態か。気を遣ってくれたという事だな。』
レイが独り言(?)を言う。
「まあ、そう思っておくさ。」
シンはダストを動かすと、器用に潜水艇にダストを潜り込ませる。作業員達が射出シークエンスを開始し、潜水艇が密閉される。
『シン、もう一度任務を説明する。』
レイがモニタを動かし、シンに任務を説明する。
『今回の任務はオーブの首都カグヤで行われる軍事パレードに招かれたカガリ=ユラ=アスハを暗殺するレジスタンス―――これを支援する事にある。』
モニタが次々と展開され、カガリがモニタに映るとシンは何とも言えない顔をした。………つまらなそうな、それで居て嬉しそうな。
「要するに、俺は一暴れして『囮』になりゃ良いんだろう?」
凄絶ににいっと笑うシン。
『有り体に言えばそうだ。暗殺自体は『コーカサスの夜明け』が担当する。シンの役目は軍事パレードに随行するMS部隊を引きつけ、対処する事に有る。』
モニタにはパレード参加予定のMS部隊が表示された。………その数、およそ二十体近く。しかし、シンにとっては雑魚の集団でしかない。
『油断するな。………といっても、倒すしかないがな。』
レイが、溜息(?)を付く。シンは、面白そうににやにや笑っていた。
潜水艇が射出される場所に移動される。………いよいよ作戦開始だ。
「シン=アスカ。ポンコツ出るぜ!」
『ポンコツじゃなくてダストだ!行ってこい!!』
サイの怒鳴り声と共に、ダストの乗る潜水艇が射出されていく。―――目標、カグヤ。
メインメカニックのサイ=アーガイルがダストガンダムのコクピットハッチから中を覗き込みながら言う。
「何処の世界に密閉度が完璧じゃない新型MSが有るって言うんだ………。」
シン=アスカはぶつぶつと愚痴る。しかし、計器類のチェックには全く惑いを見せない。シンも又、レジスタンス“リヴァイヴ”の貧乏ぶりはよく知っているからだ。
『なに、例え浸水しても困るのはシンだけだ。』
唐突にダストに内蔵されたCPU、レイが話し出す。シンのかつての親友、レイ=ザ=バレルの心を模したCPUはシンにとって精神安定剤にもなる大事な『友人』だ。
「そりゃ、お前は息をしないで済むからな………。」
シンは呆れた様に言う。
「文句を言うなよ。その代わり、射出用の潜水艇は防水バッチリにしておいた。」
サイはそちらは自信有り、という風情だ。
「潜水艇ね。………魚雷の間違いだろ?」
シンは、モニタを一つ動かすと『潜水艇』の方を確認する。そこに、確かに『元は魚雷の潜水艇』があった。
『確かに火薬の代わりにMSを入れただけ、という言葉が最も的確だな。』
レイが的確に評する。しかし、それにはサイも反論した。
「ただの魚雷じゃないさ。ボディにはミラージュコロイド技術を応用したステルス技術が使われている。こいつなら軍の監視体制に引っかからずに上陸地点までダストを送り込める。………まあ、統一連合の横流し品には違いないがね。」
「途中で故障しない事を祈るよ。………閉めるぞ。」
「グッドラック。」
シンはコンソールを操作し、ダストを起動させる。キャットウォークが後退し、ハッチが閉まるとメインモニタが起動した。全天球スクリーンではない、密閉型のコクピット。だが、シンにとっては馴染みのあるコクピット形式だ。
『インパルスと同じ操縦形態か。気を遣ってくれたという事だな。』
レイが独り言(?)を言う。
「まあ、そう思っておくさ。」
シンはダストを動かすと、器用に潜水艇にダストを潜り込ませる。作業員達が射出シークエンスを開始し、潜水艇が密閉される。
『シン、もう一度任務を説明する。』
レイがモニタを動かし、シンに任務を説明する。
『今回の任務はオーブの首都カグヤで行われる軍事パレードに招かれたカガリ=ユラ=アスハを暗殺するレジスタンス―――これを支援する事にある。』
モニタが次々と展開され、カガリがモニタに映るとシンは何とも言えない顔をした。………つまらなそうな、それで居て嬉しそうな。
「要するに、俺は一暴れして『囮』になりゃ良いんだろう?」
凄絶ににいっと笑うシン。
『有り体に言えばそうだ。暗殺自体は『コーカサスの夜明け』が担当する。シンの役目は軍事パレードに随行するMS部隊を引きつけ、対処する事に有る。』
モニタにはパレード参加予定のMS部隊が表示された。………その数、およそ二十体近く。しかし、シンにとっては雑魚の集団でしかない。
『油断するな。………といっても、倒すしかないがな。』
レイが、溜息(?)を付く。シンは、面白そうににやにや笑っていた。
潜水艇が射出される場所に移動される。………いよいよ作戦開始だ。
「シン=アスカ。ポンコツ出るぜ!」
『ポンコツじゃなくてダストだ!行ってこい!!』
サイの怒鳴り声と共に、ダストの乗る潜水艇が射出されていく。―――目標、カグヤ。