「機動戦士GUNDAM SEED―Revival―」@Wiki

私案版 SEED DESTINY最終回

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C・E74 メサイア攻防戦  


漆黒の宇宙に、無数の光球が瞬く。
光が一つ生まれるたび、その中で幾つもの命が焼かれていく。
プラント評議会議長ギルバート・デュランダルの提唱した運命プラン。
それに異を唱え、軍を動かしたオーブとラクス・クライン。
運命に従うものと否定するもの。
彼等は己の信じるものの為に、お互いに銃口を向け合う。
何が正しいのか。誰が正しいのか。その答えすら判らぬままに。


月面上空。
二機のMSがビームの火線を放ちながら、虚空を舞い踊る。
ルナマリアは月面に不時着した【衝撃】のコックピットでその二機の動きを見つめていた。
無力感と焦燥感に唇をかみ締めても、損傷した機体では戦闘に耐えられない。
【運命】と【正義】。シンとアスラン。共に彼女が知る者同士が刃を交える。

【運命】のランチャーから放たれたビームを回避し、
アスランは照準を高速で接近する【運命】に合わせる。
リフターに備えられたフォルティスから立て続けに3発、光条が放たれる。
回避運動も計算に入れ、僅かに照準をずらした完璧な射撃。しかし。

「当たるかぁぁッ!!」

【運命】が跳ねる。一発目を回避。スラスターを吹かし、右に移動。二発目も回避。
僅かに機体を反らせ、三発目を回避すると同時に、シンは【運命】を一気に加速させる。

「速い!?」

必中のはずの射撃を回避され、アスランの声に焦りが滲む。
既に【運命】は眼前に迫っている。
振り下ろされた【運命】の対艦刀を後退して回避しながら、アスランはシンに呼びかける。

「シン、もう止めろ!力で強制された平和で、人は幸せになどなれない!
お前が欲しかったものは、本当に求めたものはそんな未来なのか!?」
「ならどうすればいいって言うんだ!?あんた達の奇麗事で戦争が無くせるのか!?」

暖かかった家族。無邪気に微笑む妹の幼い笑顔。

「戦争の無い世界以上に幸せな世界なんて…」

腕の中で温もりを失っていく華奢な肢体。彼等は二度と帰ることは無い。

「あるはずが無いッ!!」

シンの意識の底で何かが弾け、知覚が全領域へと広がっていく。
周囲全ての動きが、手に取るように理解できる。
【運命】の機動は更に鋭さを増し、後退する【正義】へと肉薄する。

血を吐くかのようなシンの叫びに気圧されたのか、アスランの反応が僅かに遅れる。
対艦刀での一太刀を何とかシールドで受け止める物の、間髪いれずに放たれた左の
パルマ・フィオキーナが【正義】の右腕をもぎ取っていく。
激震に襲われるコクピットの中で、アスランはシンの言葉をかみ締める。

『戦争の無い世界を創る』その為にシンが選んだ道。だけど。
失ってしまった者を追い求めても、それを取り戻す事は決して出来ない。
アスランは機体を立て直しながら、再びシンに呼びかける。

「過去に囚われたまま戦っても、過去を取り戻す事は出来ない。
だからシン、お前も未来に…明日に目を向けるんだ」

それはアスランの本心だった。だが、彼は気付いていない。
シンの目は既に未来を見据えている。その未来が己の物とは違う、ただそれだけの事だと。

「過去を…果たすべき責任を投げ出したアンタがッ!!」

シンの叫びと共に、【運命】が対艦刀を構え突撃する。

「シン…お前は…ッ!」

アスランの意識もまた、急速に拡大していく。機体を加速、目前に迫る【運命】を捉える。

対艦刀を振り下ろすその時だった。
【運命】のコクピットに、小さくアラームが響く。
【伝説】を示していたマーカーがディスプレイ上から消滅する。

──レイ!?──

意識が逸れた一瞬の間、衝撃がシンを包み込む。
【正義】の脚部サーベルが、【運命】の右腕を対艦刀ごと断ち切っていた。

「シン!!」

右腕を失い、体勢を崩す【運命】に、ルナマリアはコクピットで悲鳴を上げる。
続く斬撃を飛び退るようにして回避する【運命】。
ぶつかり合う両者を見つめるルナマリアは、その一撃に込められた殺意に戦慄する。

──いけない──
二人を戦わせてはいけない。

理性ではなく、もっと深い何か。意識の根源ともいえるそれの激発と共に、
ルナマリアは【衝撃】のコントロール・スティックを押し込む。

シンは機体を立て直しながら、隙無くディスプレイに目を走らせる。
各部ダメージチェック。右腕部欠損。右スラスター損傷。
識別信号を確認。【伝説】の表示は消えたままだ。

──レイ…──
『俺達の様な子供が二度と生まれない様。…だから、その未来はお前が守れ』

そう言って、彼は自分に願いを託した。
自分の命は近く尽きる。自分達が描いた未来を守って欲しい、と。

守りたい物がある。守りたい者達が居る。だから…俺は!

シンは【運命】に残された左腕でフラッシュエッジを抜き放つ。
【運命】が光の翼を展開し、紅く輝く光の剣を構え突撃する。
【正義】は突進と同時にリフターを分離させ、左腕部サーベルを大上段に振りかざす。

「俺は…この道を行くと決めたんだ!!アスラン・ザラ!!」
「この…馬鹿野朗ォォォォッ!!」

両機が交差する瞬間、眼前に機影が飛び込んでくる。

──【衝撃】!?──

常人の域を凌駕した反応速度で、二人は攻撃の軌道を微かにずらす。

【運命】の刃が【衝撃】の頭部を、【正義】のサーベルが右腕を吹き飛ばす。

だが、【衝撃】本体に致命傷は無い。
【衝撃】を中心に向かい合う二機に、回線が開かれる。だが。

「─────…」

二人にルナの声が届くより早く、上方から影が突進してくる。
リフターという名の鋼の猛禽は、与えられた命令のまま敵─【運命】─へと襲い掛かる。
リフター両翼に展開した光刃は、動きを止めていた【運命】の左腕と左脚、
そして【衝撃】を両断し、紅蓮の火球へと変貌させる。
開かれていた回線は一瞬ノイズを残し、沈黙する。
【運命】は【衝撃】の爆発に飲まれ、遥か後方へと流されていく。
残されたものは絶対の静寂…そこにはもう、誰も居ない。

「ルナマリア…だった…のか…!?」
『あれでもシン、アスランの言葉は結構聞いてるんですよ?』

そう言って微笑む、快活な少女の笑顔が思い出される。

──俺は…何を…したんだ…──

アスランは自分の手が震えている事も、涙を流している事も気付かなかった。

既にミネルバは満身創痍だった。
無数の至近弾、直撃弾を受け、両翼は半ばから砕けている。
タンホイザーは失われ、迎撃用の火器も半数以上が沈黙し、
残された火器が頼りなげな火線を引いている。
直衛に回ったMS隊も僅かとなっていた。

「【運命】、交信途絶えました!確認できません!」
アビー・ウィンザーの悲鳴のような報告がブリッジに響く。
【衝撃】、【伝説】、そして【運命】までもが失われた。
既にこの艦にも戦闘力は残っていない。
タリア・グラディスは顔を伏せ、押し殺した声で最後の指示を通達する。

「ここまで、ね…総員、速やかに退艦!…皆、今まで有り難う」

チェン。バート。マリク。アビー。
最後までこの艦と共に戦いぬいたクルー達が、敬礼を残しブリッジを後にする。
残されたのは自分一人。その筈だった。
背後に気配を感じ振り向く。思わず小さな溜息が零れる。

「…アーサー、何してるの。貴方も退艦なさい」
年若い副官は微かに苦笑し、事も無げに答える。

「…クルーの脱出を支援する必要があります。火器管制は私が行います。
…艦長お一人では、艦を動かす事は出来ませんよ」

…情けない男だと思っていたのに。この人柄の良さは、評価に値するわね。
チェンのコンソールに座るアーサーに小さく言葉を告げる。

「…ありがとう、アーサー。─迎撃!対空戦闘用意!」

「アイツラ…大丈夫だよな?シンもレイも、ルナも生きてるよな?」

艦内を走りながら、ヴィーノが前を行くヨウランの背中に問いかける。
その声は涙に濡れていた。

「当たり前だ…当たり前に決まってる!」

そう答えるヨウランの声もまた、同じ響きを持っていた。

「何をしている!二人とも急ぐんだ!」

眼前の脱出艇から、マッドが二人を急き立てている。
対空砲火を縦横に掻い潜りながら、3機のMSがミネルバへと接近する。

「マーズ、ヘルベルト!女神の首を落とすよ!」

射掛けられた火線を散開して回避。三方向に別れ、それぞれにバズーカを構える。

「ラクス様に銃を向けるとはね…いい根性してるよ!」

モノアイを紅く輝かせながら、3機のドムは銃口を獲物へと向ける。


シンは微かなまどろみの中に居た。
霧に包まれたように、意識が混濁している。
視界を埋め尽くした閃光。

──あの光は…?──

意識を失う直前、眼に焼きついた光景。
少しずつ、意識の輪郭がはっきりとした形を成してくる。

──そうだ、あの光は──
「─ルナッ!?」

眼を見開き、周囲の状況を確認する。
モニターは半分近く死んでいる物の、外界を見る事は可能だった。
既に周囲は静寂を取り戻している。戦闘の光は何処にも確認できなかった。

「ルナは…レイは…ミネルバは!?」

通信機能はまだ生きていた。シンはオールレンジで周囲の回線と接続する。
ザフト・オーブ双方の通信がシンの耳に飛び込んでくる。
ノイズ交じりの音声の中に【ミネルバ】の名を確認し、シンは回線を調節する。

『…存は絶望的。繰り返す。ミネルバは撃沈、クルーの生存は絶望的』

シンの意識がゆっくりと凍り付いていく。
レイ。ルナ。ミネルバの仲間たち。
少年は全てを失った。二年前のあの日の様に。

─────ッ!!─────

大破した【運命】のコクピットに、慟哭の叫びが響く。
少年の叫びは誰にも届かない。


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