「…ルナ……ステラ……」
苦しそうな青年の声でまどろみから目を覚ます。
傍らに寝ている青年は、この数年間生死や苦楽を共にしてきたパートナーだ。
そして、偶に夜を共にする事もある。それでも明確に恋人といえる仲でも、別に将来を誓い合った仲でもないが。
そんな仲ではないが――だからと言って自分が側にいる時の他の女性の名前を寝言で口にされるのは、あまり気分のいいものではない。
しかし、苦しげな青年の寝言を聞くのはこれが初めてではないし、両親の事や男性名も口にしている。
恐らくは、失った家族やかつての仲間達の名前であろう(女性の方の名前の一人は恋人だった様だが)。
そして、それらの事が、今のこの青年の原動力である事も知っている。
辛い過去は簡単に癒せない。そう考えれば仕方がない。これまでの夜と同じ結論に達する。
「……この馬鹿」
青年の髪を撫で、つぶやく。
「……辛いんだったら愚痴の一つや二つ、言ってくれても構わないんだからね」
優しく青年の寝顔を見つめてから、額に口づけをする。
多分そんな事はないのだろうけど、と口にした事を心の中で少し自嘲気味に否定した。
先程頭によぎった事を反芻する。
この青年とは、別に将来を誓い合った仲ではない。誓い合った仲ではない――今はまだ。
そう、今はまだ、と思いたい。そんなことを考えながら、自分も眠りにつく事にした。
苦しそうな青年の声でまどろみから目を覚ます。
傍らに寝ている青年は、この数年間生死や苦楽を共にしてきたパートナーだ。
そして、偶に夜を共にする事もある。それでも明確に恋人といえる仲でも、別に将来を誓い合った仲でもないが。
そんな仲ではないが――だからと言って自分が側にいる時の他の女性の名前を寝言で口にされるのは、あまり気分のいいものではない。
しかし、苦しげな青年の寝言を聞くのはこれが初めてではないし、両親の事や男性名も口にしている。
恐らくは、失った家族やかつての仲間達の名前であろう(女性の方の名前の一人は恋人だった様だが)。
そして、それらの事が、今のこの青年の原動力である事も知っている。
辛い過去は簡単に癒せない。そう考えれば仕方がない。これまでの夜と同じ結論に達する。
「……この馬鹿」
青年の髪を撫で、つぶやく。
「……辛いんだったら愚痴の一つや二つ、言ってくれても構わないんだからね」
優しく青年の寝顔を見つめてから、額に口づけをする。
多分そんな事はないのだろうけど、と口にした事を心の中で少し自嘲気味に否定した。
先程頭によぎった事を反芻する。
この青年とは、別に将来を誓い合った仲ではない。誓い合った仲ではない――今はまだ。
そう、今はまだ、と思いたい。そんなことを考えながら、自分も眠りにつく事にした。
(了)