「機動戦士GUNDAM SEED―Revival―」@Wiki

ひとひらの希望

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集
統一連合議会がある意味紛糾して閉幕した翌日~のちに「奇跡の15分」と言われたソラ・ヒダカの査問ならぬ全世界へのスピーチが行われた翌日でも有る~ロンド・ミナ・サハクは自室で新聞を広げていた。
「何処もかしこも『奇跡の少女・再び』か…」
あの異常事態を取り上げていないマスコミは皆無で、ソラへのインタビューを試みる報道記者が黒山の人だかりにになりかけたほどだ。

「『彼女』への取材は俺を通してくれ!」
「またアンタかよ!」
「どーして貴様はいつもいつもオイシイネタを持ってっちまうんだ!」
「仕事になんねえよ!」
「お前は一体なんなんだ!」
ソラへの防波堤になったジェスへの罵倒と怨嗟の声も一ヶ月、二ヶ月と時が過ぎるうちに消えていき、そして、「奇跡の少女」が人々の記憶の中からソラ・ヒダカとイコールで結ばれなくなった頃。

オーブのオロファトにある「慰霊の園」にソラは居た。傍らにはユウナとコニール、そして、シンの姿があった。

慰霊の園に有る【人類の愚行により生命を奪われた全ての人々に捧ぐ】と大きく彫り込まれた石塔の元には金属のプレートが打ち込まれてあり、
「私達は忘れない。自らの愚かさでかけがえの無いものを自ら失った事を」と刻まれていた。
流石に建立当時のように一面花束で埋まる事は無くなったが、それでも未だに毎日かなりの数の花束が飾られていた。

「俺、ここに来て良いのかな…?」
ぽつり、とシンが呟く。と、次の瞬間コニールの蹴りがシンの尻にマトモに入った。
「ってえな!なにすんだよ!」
「あぁもぅ!グダグダグダグダグダグダ言ってんじゃないよ!」
「でもな、そうは言ってハグゥ!」
コニールの蹴りの第二弾は綺麗にシンの股間に吸い込まれ、そのままシンは悶絶。
「ええと、コ、コニール?男性の急所を蹴るのは女性としては…すいません何でもありませんどうぞ続けてくだすって結構です」
コニールの眼光に射竦められて黙り込むユウナ。端から見ると甚だしくヘタレである。
「誰が殺したとか誰に殺されたとか、そー言うのは止めにしよう、って事だろ?こないだのソラが言ったのって。大体、アンタだって加害者だけど被害者の側でも有るんだ」
そのまま視線を石塔に移す。
「正直、複雑な心境だけどさ。でも、誰かが悪いんじゃなくて、アタシ達全員が悪かったって事で合同で慰霊するんだからね。誰がお参りに来ても不思議じゃないよ」
「そうですよねコニールさん!」
力強く答えるソラ。
「レジスタンスのみんなと統一連合の首脳の人達が一緒にお参りしたって良いんです。そんな垣根なんて無くそうって皆が思えばちゃんと思いは伝わるんです!」
「例えば私とかな」
「ええそうですよ!って…まさか…」
聞き覚えの有る声にソラが硬直する。そのままモビルスーツの様に首だけ横に向けるとソコには。
「カ、カカ、カカカカカカカカカカカカカカカカカカカカ」
「カ?」
「カカカカカガリ様?!」
「アスハ主席?!」
「カガリ?!」
カガリの姿を見てパニックに陥るソラと、流石に驚きを隠せないシン、コニール、ユウナ。
「私も居るのだがな」
その声に一同が振り向くと、ライヒまでもがそこに居た。
「…VIPが二人もこんなとこにフラフラしてていいのかよ?」
シンの言には若干の棘が有ったが、ライヒはさらりと受け流す。
「一応、私は職を辞した身だからな」
既に治安警察の権限は大幅に縮小される事が決定され、ライヒは責任を取る形で辞職していた。
もっとも、その手腕を惜しんでライヒを招こうという組織や国家は多かったが。
「当面、家族と過ごすさ。息子やエルスティンとゆっくり出来る機会も早々無いだろう」
「アンタ…子持ちだったのか…?」
うめくように呟くシンに対して、フッと笑うライヒ。
「君はどうするんだ、カガリ?」
そうユウナに問われて頷くカガリ。
「まずはオーブの立て直しだな。他にも問題は山済みだ…そこでなんだが、ユウナ」
ユウナに向き直る
「力を貸してくれないか?私一人では心許ないんだ」
「…カガリ、ユウナ・ロマ・セイランはもう『死んだ』んだよ。ここに居るのはガルナハンのロマ・ギリアムだ」
ユウナはカガリに対して首を振る。
「ならば、ロマ・ギリアム。貴殿の政治的手腕を貸してくれないか?」
「ヘッド・ハンティングかい?」
「そんな所だな。どうだ?」
「ウチのリーダー、横から掻っ攫わないで欲しいね!ガルナハンの再興はまだまだなんだよ」
コニールが二人の間に割り込んできた。
「ミス・コニール」
「やめてよ!ミスとか呼ばれるガラじゃないんだから!」
「なら、コニール。ガルナハンの再興が完了したらギリアム殿を貸してもらえないか?」
「んー。復興完了したら良いよー」
「ちょっとまって!なんか僕の自由意思無視なんですがお二人とも?!」
「だってリーダーだし」
「ユウナだしな」
「そんな理由で?!」

「アンタ…俺に言いたい事があるんじゃないか?」
シンがカガリに向かって立つ。
「俺は…アンタの…その…一番」
「『殺されたから殺して…殺したから殺されて…それでホントに最後は平和になるのか?』」
「え?」
「私が昔、アイツに言った言葉だよ。自分の仲間を殺した親友を、アイツが殺した時に、な」
シンには何も言えなかった。
「正直、恨み言の一つもぶつけたいのかもしれない。だが、そんな事したってアイツは…」
ソコで言葉を切り
「オマエだって、私達の判断ミスで家族を殺されたんだ。でも、こうしてお互い言葉を交わせている。それがすべてだろ?」

『流石、綺麗事はアスハの御家芸だよな!』
確かに、あの時の自分は子供だったのだろう、とシンは思う。そして、果たして今の自分はあの時から先へ進めたのか?とも。
いや、変わるのだ。変わって行かなくてはならない。だからこそ今まで戦ってこれたのだから。
復讐の為では無く、未来の為に。

3Jは今日も不機嫌だった。
「奇跡の15分」から半年後、毎日のようにアトランティニストとエターナリストのデモが行われ、議会は連日連夜紛糾し続けていたのだから。
バジルール補佐官だけは何時もと変わり無かったが、ソレはソレで3Jの神経を苛立たせる原因の一つになってもいた。
「大統領、また官邸前でデモが発生しましたな」
「ええと。今日はローテーションだとエターナリストの側のデモだったかね?それとも一回飛ばしてアトランティニスト?」
嫌味が口を突くが、言ってしまってから軽い自己嫌悪に陥る。
「今回は双方が参加しているようですな」
そう言われて、3Jの脳裏に『お互いを排斥するプラカードを掲げて、並んで一緒に行進するアトランティニストとエターナリスト』と言う光景が浮かび、思わず苦笑。
「一体どう言う事かね、バジルール君?」
「取り敢えず、コチラを」
そう言ってモニターにニュースを写すと。
『戦争はもう沢山!』『オーブへの武力侵攻反対!』『他国から奪ったパンを私達は食べない!』とのプラカードが躍っていた。
3Jの顔が綻ぶ。
「君は、不謹慎だと言うだろうがね。このデモを見て、政治の世界で飯を食う決心をして良かったと思うよ」
「確かに不謹慎ですな。しかし…私も嬉しいと感じてしまうのは何故なんでしょうかね?」
3Jは思う。自分がベッドから二度と目覚めなくなるまでに世界が劇的に変わることは無いのかもしれない。
だが、諦めなければ何時かは変えてゆけるのだ、と。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
ウィキ募集バナー