「機動戦士GUNDAM SEED―Revival―」@Wiki

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歌姫の館、ラクスの自室にて、ラクスはマルキオ導師が持ち込んだ大量の資料に目を通していた。
持ち込んだ当のマルキオ導師はラクスを尻目に紅茶を愉しんでいたが、ラクスとしてはそれどころでは無かった。

ふう、と溜息をつくとラクスは最後のファイルを閉じる。
「いかがですか?」
そうマルキオ導師に問われるが、答えは無い。
「…現時点でもっとも信頼の置けるソースから導き出したデータです。まず間違いは無いかと」
「わかりますわ。私の出した『解答』と殆ど同じでしたから」
陰鬱にラクスは答える。
「現在の人口増加率と、食料生産力の増強率がこのまま続けば、二年後には完全に破綻をきたします。もしそうなれば」
眼をきつく閉じる。
「世界中全てで、飢えに苦しまぬものが居なくなるでしょう」
静かにマルキオ導師が口を開く。
「回避する方法が無い訳でも有りません」
詩を吟ずるように言葉を紡ぐ。
「ひとつめ、対症療法として増加する分を見越して適宜適正な人口になるように間引く方法。最も単純で効果がわかり易い方法ですが、行った者は未来永劫悪魔と呼ばれて蔑まれるでしょう。そもそも、任意の地域の市民を根絶するような軍事行動を取れば、もはやテロリストもなりふり構わないでしょう。現在の統一連合にとっては実施するのは無理でしょうね」
紅茶を一口啜る。
「ふたつめ、食料増産の更なる強化と、消費システムの是正。プラント、月面はかなり景気が向上しておりますので、半ば強制的に地球の困窮地域に食料生産施設の建設を資産に応じて実施させるのは不可能では有りません。さらに、消費者の方も食料に関しては自由経済から切り離し、全国民の食料を全てカロリーブロックのような工業製品化可能なもののみに絞ればもうしばらくは持つでしょう。問題は、月面とプラント、双方がもはや地上を視野に入れていない点と、食生活という物は人間の根源的なものに直結していますから市民の抵抗はかなりの物になるでしょう」
再び紅茶に口をつける。
「みっつめ、支配地域とそうでは無い地域にはっきりと差をつける。極端な話、現在のガルナハンから統一連合に関係する全資産を引き上げる事も視野に入れるのです。当然、統一連合に与したらその恩恵を与える。問題は経済侵略だと叩かれる事と、実質的に緩慢な処刑になりかねない事でしょうか」
カップに手を伸ばすが、口はつけずに続ける。
「よっつめ、出生率を低下させる。これは簡単ですね。人が増えなければ人口圧迫は発生しないのですから。コーディネーターは遺伝的マッチングを緩めれば即実行可能ですし、ナチュラルも、法的保護を狭めれば同様の効果が期待できます。もっとも、それらが人口爆発を何処まで押さえ込められるか疑問ですが」
ラクスにその閉じた双眸を向ける。
「結局のところ、現時点で最も良いのは…『大規模な局地戦が複数で勃発する』か『S型インフルエンザと同程度のパンデモニックが発生する』事になります」
「マルキオ導師…」
それでは、まるで…
「戦争を起せ、と仰るのですか?間引きの為に?」
「そうではありません。戦争は、『外交の一手段』であって『戦争を起こす事そのものが目的』であってはなりませんし、病気も、『誰かが意図的に起す』事など赦されません。たとえ、貴方であっても」
その言葉の裏の意味にラクスは慄然とする。が、同時に薄々自分でも気づいていた事を自覚する。
「明日を掴む為」に戦う。
その言葉のなんと耳に心地良い事か!
だが、戦った結果掴み取るのでは無く、戦いをおこす事そのものが生き延びる為に必要だとしたら。
この世界は何と罪深いのだろう。造物主とやらが存在していたのなら、彼者はきっと悪意に満ち満ちているに違いないだろう。

マルキオ導師が舘を辞した後、ひとりラクスは思い悩んでいた。
ふと、脳裏にあの男の事が浮かぶ。
ギルバート・デュランダル
あの男がこんな自分を見たら、鼻で嘲笑うだろうか?それとも、共感の微笑みを浮かべるだろうか?
結局、ヒトの有り様そのものを変えない限り、こんな地獄絵図が延々と続くのだろうか?
ラクスはふと、その肩に手が置かれていた事に気付いた。
「大丈夫だよ、ラクス」
見上げれば、キラがそこに居た。何時もと変わらぬ、微笑を浮かべて。
「僕が一緒に居るよ」
ラクスは何も答えず、ただ、そっと頬を寄せた。

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