関係者:ベアトリス、ラインハルト、エルシェ、フーカ、ドグ、マーティン、ルーカス、テリー、セシル、シモーヌ、プリシラ、ルーシー
1日目
ベアトリス「そうですか……。やはり、あの奥しかないですね。」
ラインハルト「はい。」
ラインハルト「先日遺跡の封印が解かれたことで現れた、新たな『扉』。」
ラインハルト「おそらくは、あの先に……。」
ベアトリス「そのときが来た。まるで、そう言われているような気がします。」
ベアトリス「……アレス(アリス)さん。」
主人公「あの…大事な話みたいですから、僕(私)は出直してきますね。」
ベアトリス「いえ……アレス(アリス)さんも聞いていただけませんか。」
ラインハルト「よろしいのですか。」
ベアトリス「わたくしの『騎士』ですから。ラインハルトと共に、見届けてもらいましょう。」
ラインハルト「は。」
ベアトリス「アレス(アリス)さんは、遺跡の奥に現れた扉についてごぞんじですか?」
はい・いいえ
▼はい
ベアトリス「それは話が早いですわ。」
▼いいえ
ラインハルト「封印が解かれた道の先に現れたものだ。知りようはずもない。」
ベアトリス「その扉の先にこそ……わたくしたちが求めるものがあるはずなのです。」
ラインハルト「しかしどうやっても扉が開かない。」
ベアトリス「開かないどころか、扉には取っ手もありませんし……。」
ベアトリス「押し戸でも、開き戸でもないのです。」
ラインハルト「文字どおり手の出しようがない、というわけなのだ。」
主人公「扉を開くための手がかりはなにもないんですか?」
ラインハルト「……あると言えばある。が、ないと言えばない。」
主人公「どういうことですか?」
ベアトリス「こんな詩(うた)があります。」
ベアトリス「『かの地に星を導き、知恵と勇気を示すべし』」
ベアトリス「『まばゆい愛の光、闇を払い、我らの王は立つ』」
ベアトリス「『おおノーラッドの王、讃える民の声と共に……』」
ベアトリス「…ノーラッドの王、誕生の詩です。」
ベアトリス「わたくしたちが王都を抜け出すときに、手向けにとお父さまが聴かせてくださいました。」
主人公「詩を手向けに……?もっとほかに話すことがありそうだけど…。」
ラインハルト「さすがだな、アレス(アリス)どの。」
ラインハルト「私も、我が王がなんの意図もなくベアトリスさまに詩を聴かせたとは思えない。」
ベアトリス「王宮には常に監視の目がありました。おおっぴらに手がかりをさらけ出すことはできません。」
ベアトリス「であれば、詩に手がかりをかくすことはじゅうぶんに考えられます。」
ベアトリス「だけど……詩にかくされた手がかりを解き明かすことができないのです。」
ベアトリス「わかることと言えば、詩にある『かの地』がここリグバースであることだけ。」
主人公「それはたしかなんですか?」
ラインハルト「リグバースは、古来よりノーラッド王家直轄の地。かつての王たちの魂が休まるところと伝えられている。」
ラインハルト「こたびのベアトリスさまの使命を考えれば、星を導くべき場所がこの町なのはまちがいない。」
ベアトリス「そして、使命を果たすためには……。」
ベアトリス「私自身がノーラッドの王家を継ぐ者としての『証』を立てなければなりません。」
主人公(王家を継ぐ者としての証を立てるのがベアトリスさんの使命……)
ベアトリス「『かの地に星を導き、知恵と勇気を示すべし』…。おそらく、それが証を立てる条件でしょう。」
ベアトリス「ですが、それがなんなのか……今のわたくしには見当もつかない。」
ラインハルト「ベアトリスさま……。」
ベアトリス「アレス(アリス)さん。あなたはわたくしのことをよく理解してくれています。」
ベアトリス「数少ない、使命を共有できる者として……。協力してはもらえませんか。」
主人公(王家の使命……)
主人公(そのために、ベアトリスさんはこの町に来たんだ。僕(私)だって、それはわかってる)
ベアトリス「………………。」
主人公(でも…使命を果たせばベアトリスさんは王都に帰らなくちゃいけない…)
主人公「僕(私)は……。」
もちろん協力します・……協力したくありません
▼もちろん協力します
主人公「いっしょに考えましょう。ベアトリスさんが使命を果たせるように。」
ベアトリス「ありがとう…………。」
主人公「………………。」
▼……協力したくありません
主人公「それが正直な気持ちです……。」
主人公「………………。」
主人公「でも…約束しましたから。ベアトリスさんのために、なんでもするって。」
主人公「僕(私)はーー『お嬢さま』の『騎士』ですから。」
ベアトリス「アレス(アリス)さん………………。あなたという人は、本当に……。」
主人公「………………。」
ラインハルト「うおっほん!」
ラインハルト「私は手がかりを探しつつ…引き続き、町と遺跡のまわりの警備をおこないます。」
ラインハルト「遺跡の変化ぎ町の外に知れれば、王弟殿下に動きがあるやもしれませんので。」
ベアトリス「ラインハルト!」
ラインハルト「も、申し訳ありません。失言でした。」
主人公「王弟……?」
ベアトリス「そのお話は、またいつか。今は扉のことだけを考えましょう。」
主人公「は、はい。(有無を言わせない迫力だな…)」
ベアトリス「では、また次の夜にでは報告会をいたしましょう。」
主人公「夜……ですか?」
ベアトリス「人目につく時間は、『普通』に過ごします。アレス(アリス)さんもそうしてください。」
ベアトリス「なるべく、特別なことが起きていると思われないように……。」
主人公「……わかりました。」
ベアトリス「では、よしなに。」
2日目
主人公「こんばんは。」
ベアトリス「こんばんは、アレス(アリス)さん。」
主人公「なにかわかりましたか?」
ベアトリス「いえ、なにも。」
ベアトリス「星の砂とよばれるものがあると聞き、砂浜にやってきたものの……」
ベアトリス「どうやら詩にあった星とは関係がなかったようです。」
ベアトリス「ほかにも星にかかわりのありそうなものをいろいろ調べてはみたのですけど……。」
主人公「手がかりはなし、ですか。」
ベアトリス「残念ながら。」
ベアトリス「せめて星を導くべき場所がもうすこし絞れるといいのですけど。」
主人公「星を導くべき場所ですか……。」
主人公「えっと、たとえばですけど……」
星にいちばん近い場所とか?・町の中心…とか?
▼どちらを選んでも同じ
ベアトリス「なるほど!広場の大樹ですね!」
主人公「あっ!僕(私)も行きます!」
ベアトリス「はあ、はあ……!この大樹に…なにかヒミツがあるのでしょうか。」
主人公「調べてみましょう。」
ベアトリス「あら……。これは、なんでしょう?」
主人公「幹に埋め込まれた宝石のように見えますけど……。」
主人公「ひ、光った!?」
ベアトリス「わ、わたくしにも試させてください!」
主人公「ベアトリスさんにも反応した……!」
???『……につらなる者よーー』
ベアトリス「いま、声がっ……?」
主人公「僕にも聞こえました!」
???『汝の王たる覚悟ーー魂のチカラで示せ』
ベアトリス「覚悟を…示す?」
ベアトリス「こ、こうでしょうか……!」
ベアトリス「あうっ……!?」
主人公「ベアトリスさん!!」
ベアトリス「だ、大丈夫です……でも、これはまるで…全身の力が抜けるような……!」
???『汝の覚悟、しかと見とどけた』
???『今ここにーー星は導かれた』
主人公「今のは…いったい……。」
ベアトリス「わたくしたちはリグバースに星を導いたのです。」
ベアトリス「ならば、次にやることは1つ。」
主人公「『知恵と勇気を示すべし』……。」
ベアトリス「どうやら、ここからが試練の本番のようです。」
主人公(これはタイヘンなことが始まった気がする…)
ベアトリス「う…っ。」
主人公「ベアトリスさん。今夜はもう、休んだほうがいいです。」
ベアトリス「ありがとう……もう、大丈夫です…。」
主人公「ベアトリスさん、試練の本番って……。」
ベアトリス「散らばった星の数は4つ。」
ベアトリス「光の色を見るに、あれは神竜さまーー」
ベアトリス「地幻竜プロテグリード、火幻竜フレクザィード、水幻竜アクナビート、風幻竜セルザウィードに」
ベアトリス「かかわりのあるものだと推察します。」
ベアトリス「つまり…試練とは神竜さまに知恵と勇気を示すことなのでしょう。」
主人公「神竜の試練……。」
主人公「でもあと4回もあんなことをくり返したら、ベアトリスさんのカラダがもちませんよ。」
ベアトリス「そう……かもしれませんね。」
ベアトリス「それでも、わたくしは立ち止まるわけにはいきません。」
主人公「わかっています。止めてもムダだと……ただーー」
主人公「1つだけ、約束してくれませんか。」
ベアトリス「約束とは?」
主人公「すべての試練に、立ちあわせてほしいんです。なにかあれば…すぐに手が届くところで。」
ベアトリス「…………ふ、ふふふ…。」
主人公「えっと、なにかおかしなこと言いましたか?」
ベアトリス「ごめんなさい。」
ベアトリス「本当はとても不安で……怖かったんです。」
ベアトリス「でも、すべて吹き飛びました。」
ベアトリス「アレス(アリス)さんの言葉ひとつで、こんなにたやすく勇気が出るなんて……」
ベアトリス「わたくしはどれほど単純なのだろうと、おかしくなってしまって。」
ベアトリス「アレス(アリス)さんがいっしょならどんな試練も乗り越えられる気がします。」
主人公「そう言ってもらえると僕(私)もうれしいです。」
主人公「だけど、がんばるのは明日からにしましょうね。」
主人公「今は、ゆっくり体を休めてください。」
ベアトリス「……眠るまで、そばにいてくれますか?」
主人公「はい。」
ベアトリス「うれ…しい……。」
主人公「………………。」
主人公(試練ひとつでこんなにも消耗するなんて……)
主人公(せめて星のありかくらいは僕が探してあげたいな…)
3日目
エルシェ「だから〜…よしなさいっての。あんた、水ニガテでしょ。」
フーカ「ガウ!
キラキラ、ガガウ!(イヤ!キラキラ、ひろう!)」
主人公「あの、どうしたんですか?」
エルシェ「あ〜…いいとこに来た。フーカを止めて。」
エルシェ「湖に落ちたキラキラを拾うって聞かないのよ。」
主人公「大事なものだったの?」
フーカ「フーカガウ!ガウガウガガウ!(フーカのちがう!ソラからふってきた!)」
主人公「空から!?」
フーカ「キラキラガーウ、ガウガウ。(キラキラーってして、みずうみにおちた)」
エルシェ「だーかーらー、流れ星は湖にふってこないし、もしふってきても沈んじゃってるから。」
エルシェ「あきらめて店にもどるよ。」
フーカ「ガウ〜…ガウガウ。(ぶう〜…ざんねん)」
主人公(空から降ってきたキラキラ……きっと導かれた星の1つだ)
主人公(ベアトリスさんに教えなきゃ!)
主人公「ベアトリスさん!」
ベアトリス「どうしました、アレス(アリス)さん?」
ベアトリス「まあ、星が湖に……?」
ベアトリス「わかりました。夜になったら行ってみましょう。」
主人公「はい。」
ラインハルト「待っていたぞ、アレス(アリス)どの。」
ラインハルト「話はベアトリスさまから聞いている。世話になってすまない。」
主人公「いえ、自分がやりたくてやっていることですから。」
主人公「それより、星は見つかりそうですか?湖に落ちたという話でしたけど…。」
ベアトリス「それならご心配なく。」
主人公「湖が……光った?」
ベアトリス「大樹のときと同じようにルーンを注ぎ込めばあるいはと思ったのです。」
ラインハルト「ベアトリスさま、気を引き締めてください。ここからが試練でありましょう。」
ベアトリス「……わかっています。」
主人公(ベアトリスさん、ふるえてる?)
ベアトリス「あ……。」
主人公「大丈夫、僕(私)もいっしょですから。」
ベアトリス「ありがとう………。」
ベアトリス「水幻竜よーー!我に試練を与えたまえ!」
???『汝らの知恵と勇気に問う』
???『暑い夏にはやわらかく寒い冬にはすごくかたいーー』
???『なに者をも受け入れる器の名はーー?』
水です・海では?・心かも
▼水です
ベアトリス「そうですね、わたくしもそう思います!」
???『見事なり』
???『汝に王たる証を授けん』
▼海では?
ベアトリス「当たっているような気がします!」
???『近けれど、微に異ありて真にあらずーー』
ベアトリス「も、もう…これ以上は…!?」
(選択肢に戻る)
▼心かも
ベアトリス「そうでしょうか、ちょっと違うかも……?」
???『近けれど、微に異ありて真にあらずーー』
ベアトリス「う……ルーンが…!?」
(選択肢に戻る)
ラインハルト「光が…消えた……。」
主人公「あ、あの、思わず僕(私)が答えてしまいましたけど大丈夫だったんでしょうか……。」
ベアトリス「『汝らの知恵と勇気を示せ』。声はそうおっしゃいました。」
ベアトリス「わたくしたち全員での挑戦を受け入れてくださったのでしょう。」
ベアトリス「その証拠に、ほら。」
ラインハルト「おお……!王たる器の輝きかーー!」
主人公「よかった……。じゃあ、これからもお手伝いができるんですね。」
ベアトリス「ふふ、お願いします。じつはあのとき、わたくしは意識を保つだけで……」
ベアトリス「精一杯でした…からーー」
主人公「ベアトリスさん!?」
ラインハルト「ひどく疲れておられる。今日はここまでだな。」
ラインハルト「ベアトリスさまは私が連れて帰ろう。アレス(アリス)どのも休んでくれ。」
主人公(星はーーあと3つ)
3日目
ラインハルト「ベアトリスさま。お耳に入れたいことが。」
ベアトリス「なんでしょう?」
ラインハルト「近くの町で、アヤしい人物の目撃情報がありました。遠からず、この町にも現れるやも……。」
主人公(アヤしい人物……?)
ベアトリス「…………わかりました。こちらも急ぎましょう。」
4日目
ドグ「あちチ!」
マーティン「師匠、さがってください。やはりこの炎はどこかおかしい。」
ドグ「ううム……。」
ドグ「鍛冶屋が炎にあそばれちまうとはまいったナ。」
主人公「炎がどうかしたんですか?」
マーティン「ああ、溶錬炉の調子が悪くてな。どうやっても火加減にムラができてしまうんだ。」
マーティン「これではろくな武具が打てない。」
ドグ「ろくろ首が見てなイ?そんなものが見てたら腰をぬかしちまうだロ。」
マーティン「オレは師匠の聞きまちがいに腰が砕けそうですよ。」
主人公「えっと…原因はわからないんですか?」
マーティン「特にはないが……あ。そういえば師匠。」
マーティン「前になにかが煙突から降ってきた、と言ってませんでしたか?」
ドグ「おウ。赤い光だナ。」
ドグ「そういや炉がおかしくなったのはあの晩からカ…。」
主人公(導かれた星だ!)
主人公「あの、炉を直せるかもしれません。」
マーティン「本当か?」
主人公「はい、夜にお邪魔してもよければ。」
ドグ「直してくれるってんなら、いつでもいイ。」
ドグ「カギは開けとくから、好きに出入りしてくレ。」
主人公「ありがとうございます!」
主人公「ベアトリスさん。」
ベアトリス「そうですか、赤い光が…。」
ベアトリス「では夜に、ドグさんのおうちに集まりましょう。」
主人公「はい!」
ラインハルト「う、ぬ……!」
ラインハルト「ダメですね。私のルーンでは反応がありません。」
ラインハルト「ベアトリスさまの負担をすこしでも軽くできればと思ったのですが…。」
ベアトリス「ありがとう。その気持ちだけでじゅうぶんです。」
主人公「僕(私)も、いいですか?」
ベアトリス「アレス(アリス)さん、でも……。」
主人公「ダメでもともと。試すだけ試させてください。」
主人公「すみません……やっぱり僕(私)ではダメみたいです。」
ラインハルト「私では反応すらしなかったのに…フシギな人だな、あなたは。」
主人公(僕(私)がアースマイトであることとなにか関係があるのかな……)
ベアトリス「やはりこれはわたくしの試練。わたくしがやらねばならないのでしょう。」
ベアトリス「うくっ……あ、熱い……!」
ベアトリス「火幻竜よーー!我に試練を与えたまえ!」
???『汝らの知恵と勇気を問う』
???『光に似てさにあらずーー』
???『時に照らし、時に貫き、時に守護となる、自在に形を変えし剣の名はーー?』
鋼です!・火です!・騎士…かな?
▼鋼です!
???『近けれど、微に異ありて真にあらずーー』
ベアトリス「う、くっ……も、もう一度です……!」
(選択肢に戻る)
▼火です!
???『見事なり』
???『汝に王たる証を授けん』
▼騎士…かな?
???『近けれど、微に異ありて真にあらずーー』
ベアトリス「ああ……っ!?……つ、次こそ…………。」
(選択肢に戻る)
ベアトリス「や、やりました……。」
ベアトリス「これ、で……2つ目…………。」
ラインハルト「ベアトリスさま…おいたわしい……。」
ドグ「なんのさわぎダ?」
主人公「な、なんでもありません。」
主人公「そうだ、炉は直りましたよ。」
ドグ「おお、炎がおさまってル。」
ドグ「助かったよ、アレス(アリス)。ありがとウ。」
主人公「いえ、どういたしまして。」
主人公(これで、残り2つーー)
主人公(ベアトリスさん、大丈夫かな……)
5日目
ハインツ「どうだい、
シモーヌ?」
シモーヌ「ふむ……カゼ、ですね。」
ルーカス「なんと……!この私がカゼを……っくしゅ!」
ルーカス「たしかに寒気、発熱、咳、ノドや節々の痛みはありますが……。」
シモーヌ「それだけそろっていて、これ以上なにを疑うというんだ。」
ハインツ「は〜神さまもカゼをひくんだねえ。」
シモーヌ「神……?」
シモーヌ「なんのことかわからないが、おおかた腹を出したまま眠りでもしたのだろう。」
ルーカス「まさか。私、肌着はインする派なので腹は出ません。」
シモーヌ「だったら湯冷めでもしたんじゃないか。」
ルーカス「湯……なるほど。」
ルーカス「そういえばたしかに、風呂の帰りから調子がおかしくなりました。」
シモーヌ「そうだろう。」
ルーカス「あの日は空から降る緑の光を追って、町の東の空き家まで足を伸ばしたのです。」
主人公「緑の光!?」
主人公「ルーカスさん!その緑の光はどこへ落ちましたか?」
ルーカス「落ちてはいません。」
主人公「というと?」
ルーカス「私が受け止めましたから。」
ルーカス「めずらしかったので手を伸ばしてみたら私の手のなかに舞い降りてきたのです。」
主人公「そ、それで光はどこへ?」
ルーカス「私のカラダに吸い込まれて消えました。」
主人公「カラダに!?」
ルーカス「はい。思えばあれは……」
ルーカス「カゼのウィルスだったのかもしれませんね。」
主人公(導きの星をウィルスって……)
主人公「あの、ルーカスさん。ちょっとこちらへ。」
ルーカス「なんでしょう?」
主人公「お話ししたいことがあるので、夜に空き家に来てもらえませんか?」
ルーカス「ほう、密談ですか。それは興味深い。」
主人公「それじゃあ、夜に。」
ルーカス「承りました。」
主人公「あ、いた!ベアトリスさん!」
ベアトリス「まあ……それは大変!」
ベアトリス「緑は風幻竜の象徴。だからおカゼを召したのですね。」
主人公「いや…風でカゼって、それはどうでしょう。」
ベアトリス「ともかく、夜に空き家ですわね。早くルーカスさんを治してさしあげねば。」
主人公「そうですね。」
ルーカス「ふむ……?」
ルーカス「アレス(アリス)さんと2人で密談と思いきや、これは……闇討ちですなーーごほっごほっ。」
主人公「そんなことしませんよ。」
ラインハルト「ルーカスどの。無礼は承知でお願いします。」
ラインハルト「ワケを聞かずに御身をベアトリスさまに預けていただきたい。」
ルーカス「いいでしょ…っくしゅ!」
ベアトリス「本当によろしいのですか?」
ルーカス「正統の王が立つ瞬間を目の当たりにできるのはじつに興味深いですから…ずず。」
ラインハルト「あ、あなたは何者ですか?まさか刺客ーー」
ルーカス「神です。」
ラインハルト「鼻紙ならここに。」
主人公「その紙じゃないです。神さまです。」
ラインハルト「ううむ…そのように自称しているのは聞いているが……。」
ラインハルト「もし本当に神なのだとしたらなぜこのようなところに?」
ルーカス「その質問への回答は、禁止事項です。」
ラインハルト「それでは身の証にならないでしょう。」
ベアトリス「よいではありませんか、ラインハルト。言えぬことがあるのはお互いさまです。」
ラインハルト「はっ……。」
ベアトリス「ルーカスさん。失礼いたします。」
ルーカス「おお……これは美しい。」
???『汝らの知恵と勇気に問う』
???『悠久を超えてまわり続けるーー』
『実りを運び、季節を巡らせ、時にすべてをなぎ払う、恵みとも災厄ともなるものの名はーー?』
時間……?・風邪です!・風です!
▼時間……?
???『近けれど、微に異ありて真にあらずーー』
ベアトリス「ま、まだ……あきらめません……!」
(選択肢に戻る)
▼風邪です!
???『カゼちがいじゃ!ーーこほん。ダジャレは感心せぬ』
ベアトリス「くうっ……!も、もう…もちません…………。」
▼風です!
???『見事なり』
『汝に王たる証を授けん』
ベアトリス「ルーカスさん……ご協力、あり……がとう、ございます。」
ルーカス「いえ。懐かしい声が聞けて楽しかったです。」
ルーカス「それより、ずいぶん顔色が悪い。早くベッドでおやすみになったほうがいいようですね。」
ルーカス「ワン・ツー・スリー。」
ラインハルト「おのれ、やはり刺客か!姫さまをどこへやった!!」
ルーカス「あなたがたの家のベッドへ送り届けただけですよ。」
ラインハルト「む、う……!ウソであれば承知しません!」
主人公(またムチャなことするんだから……)
主人公「ところで……ルーカスさんはどこまで知っているんですか?」
ルーカス「さて……。どこまでというのは難しい質問ですね。」
ルーカス「なにしろ記憶のすべてが戻ったわけではありませんから。」
ルーカス「……そう、思い出したのは初代のノーラッド王も同じように」
ルーカス「四幻竜の試練を受けて王位に就いたことくらいでしょうか。」
主人公(ベアトリスさんは初代の王さまの足跡をたどろうとしている……)
主人公(それが王の証を立てること……?)
主人公「そこまでして正統の王であることを証明しなければならない理由って……。」
ルーカス「それはわかりかねます。私、王さまではなく、神さまなので。」
主人公「………………。」
主人公「ベアトリスさん……?」
ラインハルト「大丈夫、眠っておられるだけだ。」
ラインハルト「しかし……消耗がはげしい。すぐに動けるようにはならないだろう。」
主人公「そんな……。」
ラインハルト「アレス(アリス)どの。」
ラインハルト「頼りにしてばかりですまないが、残る1つの星探しを任せられないだろうか。」
ラインハルト「私はここで、ベアトリスさまをお守りせねばならない。」
主人公「刺客から…ですか。」
ラインハルト「……そうだ。」
主人公「ベアトリスさんが誰から狙われているのか、なぜ王の証を立てなければならないのか……」
主人公「教えてもらえませんか。」
ラインハルト「それはできない……いや、しかしーー」
ラインハルト「あなたには、話しておくべきだろうな。」
ラインハルト「ベアトリスさまからは口止めされているのだが……。」
主人公「あなたから聞いたこと、決して漏らしません。」
ラインハルト「かたじけない。」
ラインハルト「……ベアトリスさまを狙っているのは王弟殿下の刺客だ。」
ラインハルト「しかし命をうばおうというのではない。」
ラインハルト「自分の息のかかった者と結婚させるために王都へ連れ戻したいのだ。」
主人公「結婚!?」
ラインハルト「しーっ!」
主人公「す、すみません。」
ラインハルト「おどろくのもムリはない。順を追って話そう。」
ラインハルト「数年前、ベアトリスさまのお父上である国王陛下ぎ病に伏した。」
ラインハルト「代わりに国の舵取りを任されたのが、弟君である王弟殿下だ。」
ラインハルト「本来であれば第一王位継承者であるベアトリスさまの姉君が任されるべきところだが……」
ラインハルト「生来、カラダが弱く、国事やまつりごとに耐えられる状態にない。」
ラインハルト「第三継承者の弟君はまだ幼く、第二継承者のベアトリスさまは、その…………」
ラインハルト「すこしばかり抜け……いや、頼りないところがあり、国を託すには不安が残ると判断されたのだ。」
ラインハルト「しかし代わりに国を任された王弟殿下は権力を手にしたとたんに専横をはじめーー」
ラインハルト「ただでさえ帝国との争いの後始末で疲弊しているノーラッドを、さらに疲弊させてしまった。」
ラインハルト「国内からは王弟殿下だけではなく、王の一族すべてを追放せよとの声が持ちあがった。」
ラインハルト「そして排斥派の声が日増しに高まり、王弟殿下の地位も危うくなりはじめた頃ーー」
ラインハルト「とつぜん、ベアトリスさまの結婚話が持ちあがったのだ。」
主人公「なんのために……?」
ラインハルト「国をあげての祝い事をおこなうことで不満の声を消し飛ばそうとしたのだ。」
ラインハルト「ベアトリスさまは民にも分けへだてなく優しいお方ゆえ、心から祝ってくれる者たちも多い。」
主人公「ベアトリスさんの人気を利用しようとしたわけですか。」
ラインハルト「そのとおり。」
ラインハルト「しかし王弟殿下の狙いはそれだけではない。」
ラインハルト「王位継承順の高いベアトリスさまと自分の息がかかった者を結婚させれば」
ラインハルト「もし自分が身を引くことになったとしても、裏からいかようにも国をあやつれると考えたのだ。」
主人公「そんな……!反対する人はいなかったんですか?」
ラインハルト「もちろん、私も含めて反対する者はいた。」
ラインハルト「ひかし今の政権がひっくりかえれば行き場を失う者も多く……」
ラインハルト「王弟殿下の狙いを知りながらも体制を維持したがる者が多数派を占めたのだ。」
ラインハルト「国王陛下の病があつく、専横にあらがえる者がいなかったのも災いした。」
ラインハルト「半ば強引に婚儀の予定が決められ、拒否できる状況になかった。」
ラインハルト「そこでベアトリスさまと私は国王陛下にだけご相談申し上げ、」
ラインハルト「王都からの脱走を図ったのだ。」
主人公「それと王の証を立てることにはどういう関係が……?」
ラインハルト「1つは、結婚の儀に替わる祝い事をおこなうため。」
ラインハルト「長いあいだ、ノーラッドでは形式だけの即位の儀がおこなわれてきたのだが……」
ラインハルト「本来は初代ノーラッド王がそうしたように、」
ラインハルト「四幻竜の試練を受けて、正統の王の証ーー」
ラインハルト「『王家の紋章』を手に入れた者だけが」
ラインハルト「即位の儀をとりおこなう資格を得られるのだ。」
主人公「『王家の紋章』……。」
ラインハルト「ベアトリスさまがその資格を得ることで国をあげての即位の儀をおこなうことができる。」
ラインハルト「試練をくぐり抜けたことを示すことで、民の心を今一度、束ねることもできよう。」
ラインハルト「そして正統の王の証を立てることは、王弟殿下の狙いをくじくことにもつながる。」
ラインハルト「体制が維持されれば、反王弟派も一気に増えるだろう。」
ラインハルト「そうなれば息のかかった者との結婚もーー」
主人公「ちょ、ちょっと待ってください!」
主人公「今の話って、ベアトリスさんが国王になるということじゃないんですか?」
ラインハルト「いかにも。」
主人公(これか……!)
主人公(王都に帰ったらもう二度とここへは戻れないと言っていた理由は)
ラインハルト「……あなたには酷な話だったな。」
ラインハルト「やはり先ほどの星を探す件は聞かなかったことにしてほしい。」
ラインハルト「あなたに頼むべきことではなかった。」
ベアトリス「…………いいえ。」
主人公「ベアトリスさん!!」
ラインハルト「め、目覚めておいででしたか。」
ベアトリス「枕元でこれだけ話されれば目も覚めるというものです。」
ラインハルト「ど、どこから聞いておられました?」
ベアトリス「アレス(アリス)さんがわたくしによびかけたところからです。」
ベアトリス「甘やかな声に、すぐ目が覚めました。」
ラインハルト「いちばん最初からではないですか。お人が悪い……。」
ベアトリス「ふふ、ごめんなさい。」
ベアトリス「あなたが……わたくしには言えないことをアレス(アリス)さんに話してくれそうな気がして。」
ラインハルト「まんまと話してしまいましたよ。」
ラインハルト「しかし、私が言えるのはここまでです。」
ラインハルト「続きはお二人で話してください。私は外を見回ってきます。」
主人公「………………。」
ベアトリス「アレス(アリス)さん……。」
主人公「ラインハルトさんの話は…すべて本当なんですね。」
ベアトリス「……はい。」
ベアトリス「あと1つ試練を乗り越えたら……わたくしは王都に帰らねばなりません。」
ベアトリス「そして、もう二度と……。」
主人公「そう……ですか。」
ベアトリス「………………。」
ベアトリス「アレス(アリス)さんは……わたくしにどうしてほしいですか?」
それを僕(私)に聞くんですか・ずっとそばにいてほしいです
▼それを僕(私)に聞くんですか
ベアトリス「……ごめんなさい…………。」
主人公「いえ……僕(私)のほうこそ、すみません。責めるようなことを言ってしまって…。」
主人公「つらいのはベアトリスさんも同じなのに。」
ベアトリス「………………。」
▼ずっとそばにいてほしいです
ベアトリス「わたくしも……!わたくしも、そうしたい……でもーー」
主人公「わかっています。止めるつもりはありません。」
主人公「協力します……これからも。あなたが使命を果たすそのときまで。」
ベアトリス「アレス(アリス)さん……。」
主人公「星を探しに行きます。」
主人公「ベアトリスさんは4つ目の試練に備えてここで待っていてください。」
ベアトリス「……はい。」
6日目
セシル「やっぱりダメだよ、テリーさん。水が干上がっちゃってるみたい。」
テリー「そうか……珍しいこともあるもんだな。つい昨日まで使えていたのに。」
主人公「また大事件?」
セシル「そうなんだよ!井戸の水が消えちゃったんだ!」
主人公「井戸の水が……?」
主人公「もしかして、井戸に紫の光が降ってきたりしなかった?」
テリー「こいつはおどろいたな。どうして知ってるんだ。」
主人公「えっと、それは……。」
セシル「すごーい、アレス(アリス)さん!早くもナゾを解明しちゃった!」
テリー「いや、解明はしてない。ナゾの原因らしきものがわかっただけだ。」
セシル「そうだった……。」
主人公「あの、このナゾーー僕(私)に預けてくれませんか?」
セシル「えーっ、独り占めはダメだよ。楽しいナゾはいっしょに解明しなくちゃ!」
テリー「ワケあり…か。」
主人公「……はい。」
テリー「わかった。この件はあんたに預ける。」
セシル「ええっ、どうして!?」
テリー「そのナゾを解くのが、今日の宿題だ。」
セシル「やった、ひさしぶりの宿題♪」
セシル「じゃあ、この件は持ち帰るよ!」
主人公「すみません、テリーさん。」
テリー「気にするな。事後の報告もいらない。」
テリー「あんたたちの件は、オレが関わるべきことじゃないからな。」
主人公(テリーさん、もしかして全部知ってる……?)
テリー「オレはなにも知らんよ。」
主人公(心まで読まれた!?)
主人公「あれ……ラインハルトさんは?」
ベアトリス「広場のあたりでアヤしい人影を見たとかで調べに行きました。」
主人公「ベアトリスさんを残してですか?」
ベアトリス「わたくしもずいぶん回復しましたから。すこしの時間なら大丈夫と言ったのです。」
主人公「そうでしたか。」
ベアトリス「それで、アレス(アリス)さん。」
ベアトリス「あなたの浮かないお顔を見るに…最後の星が見つかったのですね。」
主人公「……はい。テリーさんの事務所のそばの井戸の中です。」
ベアトリス「ありがとう……アレス(アリス)さん。」
主人公「いえ……。」
ベアトリス「では、また夜に。」
ベアトリス「おかしいですね……ルーンを注いでも光があらわれません。」
ラインハルト「場所がちがったのでしょうか。」
主人公「セシルくんとテリーさんの2人が言っていたのでまちがいないとは思うんですけど……。」
ラインハルト「となると、なにか条件が合わないのか、場所がずれているのか……。」
ベアトリス「これまでの星が落ちた場所を思い返してみれば手がかりがあるかもしれません。」
主人公「えっと……1つ目が湖で、2つ目が鍛冶屋、3つ目ら…ルーカスさんでしたね。」
ベアトリス「水の星は湖に、火の星は鍛冶屋の炉に、風の星は……ルーカスさん?」
ラインハルト「古地図によると、空き家のあったあたりは昔、大きな風車があったようです。」
主人公「やっぱり風は風に、だったんですね。」
ベアトリス「ということは、地の星は地に…。」
ベアトリス「井戸の底ーー地の底に星があるのではないでしょうか。」
ラインハルト「なるほど……しかしそうなるとこの闇の中では厳しいですね。」
ラインハルト「ランタンを用意するか、明日の朝を待つか……。」
ベアトリス「いえ……このまま行きましょう。」
ベアトリス「わざわざ井戸の底へ招くのにはそれだけの理由があるのかもしれません。」
ラインハルト「では私が先に下りて安全を確認しますのでベアトリスさまらそのあとに。」
ベアトリス「ありがとう、ラインハルト。よしなに。」
ラインハルト「はっ。」
ラインハルト「ベアトリスさま。さしあたってのキケンはありません。」
ベアトリス「わかりました。それではまいります。」
主人公「気をつけてください、ベアトリスさん。」
ベアトリス「はい。」
主人公「真っ暗ですね。それに……せまいです。」
ベアトリス「本当に。息がつまりそう。」
ラインハルト「ベアトリスさま。ルーンに反応はありませんか?」
ベアトリス「はっ、そうでした。」
ラインハルト「なんと……光のあとに横穴があらわれたようです。」
ベアトリス「行ってみましょう。」
???「オレたちがなにをしたっていうんだ!」
私「い、今のは!?」
ラインハルト「なんという怨嗟に満ちた叫び……魂のなげきのようだ。」
ベアトリス「今の声……どこかで聞いたような……。」
???「食い物を!食い物をよこせっ!」
???「戦争はもうたくさんだ!」
???「なぜオレたちだけが貧しい!」
???「奪え!壊せ!」
ベアトリス「そうです……これは民の声ーー!」
???「パンを……水を………!」
???「この子に、なにかお恵みを……!」
主人公「これは……っ!?」
ベアトリス「う……うああああっ……?」
???『これが民の本性……飢えればケモノとなり、友を裏切りーー』
???「王だ、貴族だというだけで、ぜいたくばかり!」
???「ヤツらは、民衆の敵だ!」
???「そうだ、ヤツらを倒せ!敵から奪え!」
主人公「そんな……こんなの……。」
ベアトリス「やめて…ひどい……。」
???「倒せ!倒せ!」
???「たーおーせ!たーおーせ!」
???『自分のことしか…"私"のことしか考えぬ。欲だけで勝手なことを言い、ただ、生きる』
???『無知を盾に高望みをし、徒党を組んでろうぜきをはたらく』
ベアトリス「う…ううう…………。やめて……!」
???『どれだけ民のために尽くそうと、人は飽くことを知らず不満を吐き続ける』
???『むくわれることのない王を待つのは玉座ごと炎へ投げ込まれる結末ーー』
???「たーおーせ!たーおーせ!」
ベアトリス「う……ううっ…あああああっ!!」
主人公「引き返しましょう、ベアトリスさん!これ以上ここにいたら心が壊されます!!」
???『そうだ、引き返せ。これより先には、さらなるいばらの闇が待っている』
ラインハルト「ベアトリスさま!!」
ベアトリス「……いいえ…………。」
ベアトリス「わたくしは……歩みを止めません。」
ベアトリス「どれだけ闇が濃くても……救いのない結末が待っていようとも……」
ベアトリス「信じ、支えてくれる人たちがいる限り…わたくしはいばらを踏んで歩き続ける……」
ベアトリス「それがーーわたくしの……」
ベアトリス「ベルディエス・デル・エレン・ノーラッドの王道です!!!!」
???『!!』
???『見事なり』
???『汝に王たる証を授けん』
???『試練を越えし者よ、ゆくがよい。汝の手で扉を開き、王の証を手にするのだ』
主人公「う……こ、ここは……。」
主人公「ベアトリスさん!ラインハルトさん!」
ラインハルト「いつの間に……地上へ……神竜さまのチカラか……?」
ラインハルト「そうだ、ベアトリスさまは!?」
ベアトリス「………………。」
ラインハルト「まずい……衰弱が激しい……!ベアトリスさまの部屋……いや、病院へ!!」
シモーヌ「まったく、真夜中にたたき起こして……なにをやっているんだ、キミたちは。」
シモーヌ「しかも事情は話せないなんてどういう了見だ?」
ラインハルト「夜中に訪ねた非礼、なにも話さぬ無礼、お詫びのしようもありません。」
シモーヌ「まあ、患者にどんな事情があろうと私は医者として手を尽くすだけだが。」
主人公「ありがとうございます、シモーヌさん。」
シモーヌ「アレス(アリス)……キミは夜中に出あるく者を取り締まる側だろうに。」
主人公「すみません……。」
シモーヌ「はあ……とにかく、ベアトリスは絶対安静だ。」
シモーヌ「しばらく入院してもらうからラインハルトは手続きをするように。」
ラインハルト「はい。」
主人公(ベアトリスさん……こんなになって……)
主人公「………………。」
主人公(いよいよ……そのときなんだな)
主人公(ベアトリスさんが遺跡の扉をあけたとき……僕(私)たちの関係は……………)
主人公(いや、考えるな。それがベアトリスさんの使命なんだから)
主人公(使命がまっとうできるように僕(私)は僕(私)にできることをするだけだ)
主人公「また来ますね……ベアトリスさん。早く元気になってください。」
7日目
???「おまえサマ……命、もうイラナイ。」
主人公「やめろ!!!!」
???「……チッ…!」
主人公「ベアトリスさん!!」
ベアトリス「ん……。」
主人公(よかった……なんともないみたいだ)
シモーヌ「な、なんだなんだ!?」
ラインハルト「アレス(アリス)どの!?」
主人公「刺客が……ベアトリスさんを狙ってきました。」
ラインハルト「ーー!病院ならばと油断してしまうとは……不覚!」
シモーヌ「刺客とはどういうことだ!」
シモーヌ「患者の身にキケンがおよぶ事情とあってはだんまりを決め込ませるわけにはいかないぞ!」
ラインハルト「い、いや、しかし……知ればあなた方にも危険が……。」
ベアトリス「お話ししましょう、ラインハルト。」
主人公「目を覚ましたんですね、ベアトリスさん!」
ラインハルト「また彼(彼女)の甘やかな声ですか。」
ベアトリス「いえ……先ほどはお父さまに怒鳴られたときのようにびくっとしてしまいましたわ。」
主人公「す、すみません。」
シモーヌ「おしゃべりはいい。早く事情とやらをセツメイしてくれ。」
ベアトリス「……はい。じつは、わたくしはーー」
シモーヌ「ーー王女さまだとはわかっていたけど……」
シモーヌ「まさか、国を左右するほどの使命をもってこの町にやってきていたとはね。」
ベアトリス「黙っていて、申し訳ございません。明かせばご迷惑になると思いましたので。」
ベアトリス「しかしその心配も、もうあとわずか。」
ベアトリス「これから、遺跡へ向かいます。」
シモーヌ「そんなカラダでムチャを言うな!医者として、断じて許可できない!」
ベアトリス「事態は一刻を争うのです。」
ベアトリス「刺客がわたくしの命を狙ってきた以上、残された時間はあとわずかでしょう。」
主人公「どういうことですか?」
ラインハルト「政略結婚をあきらめたということだ。」
ラインハルト「いや、乗り換えることにしたと言うべきか。」
ラインハルト「もっとも御しやすいと思っていたベアトリスさまが正統の王の証まであと一歩に迫ったことで、」
ラインハルト「王弟殿下はおのれの地位を危ぶんだのだろう。」
ラインハルト「そこでベアトリスさまを亡き者にし……姉君か弟君をあやつるつもりなのだ。」
ベアトリス「それならばまだ猶予もありましょう。それより最悪なのは……」
ベアトリス「お父さまやお母さま、姉上や弟までが命を狙われることです。」
シモーヌ「革命でも起こすつもりか、王弟とやらは。」
ラインハルト「い、いかにも王弟殿下でもそこまでは……。」
ベアトリス「わたくしが正統の王として帰還するのも、民の暴動で政権がひっくり返るのも、」
ベアトリス「叔父上にとっては等しく破滅を意味します。」
ベアトリス「なれば…なりふりかまわず王位を手にし、Seedと連携して全兵力を投じーー」
ベアトリス「暴徒をすみやかに鎮圧することで体制を維持しようとする可能性もあります。」
シモーヌ「Seedとの交渉が成立するようなら……あり得ない話ではないな。」
ベアトリス「叔父上が行動に出る前に、わたくしはなんとしても王都に戻らねばなりません。」
ベアトリス「ーー『王家の紋章』を手に。」
主人公「…………………。」
主人公「行きましょう、遺跡へ。」
ベアトリス「アレス(アリス)さん……よろしいのですか?」
主人公「聞かないでください。」
ベアトリス「僕(私)はあなたの『騎士』ですから。ただ、命じてくれればいいんです。」
主人公「それで……僕(私)はふっきれます。」
ベアトリス「……わかりました。」
ベアトリス「アレス(アリス)さん。お嬢さまであるベアトリスが命じます。」
ベアトリス「わたくしと共に、遺跡へ!」
主人公「ーーはい!」
ラインハルト「それでは、私は王都に戻り国王陛下たちに次第をお伝えしてまいります。」
ラインハルト「アレス(アリス)どの。ベアトリスさまのこと、よろしく頼む。」
ラインハルト「あなたになら、安心して任せられる。」
主人公「はい!ベアトリスさんは僕(私)が守ります!」
ベアトリス「はあっ…はあっ…これが……紋章の間へ続く扉ーー。」
主人公「大丈夫ですか、ベアトリスさん。」
ベアトリス「だ、大丈夫…です。」
ベアトリス「それよりも……刺客が姿を見せないのが気になります。」
主人公「ベアトリスさんをあきらめて王都に戻ったのかもしれませんね。」
ベアトリス「それは……困りますね。」
ベアトリス「王都には……ラインハルトに戻ってもらっていますが、」
ベアトリス「万全の守りとは言えないですから……できれば刺客はこちらに引きつけておきたいです。」
主人公(歩いてるのがやっとの状態なのにまだ王都の心配してるなんて……)
主人公(いや、それでこそベアトリスさんか)
主人公「そんなあなただから、僕(私)は……。」
主人公「な、なんでもありません。」
主人公「さあ、ベアトリスさん。扉を開きましょう。」
ベアトリス「はい。」
???『偉大なる王につらなる者よ。汝の名は?』
ベアトリス「我が名はーーベルディエス・デル・エレン・ノーラッド。」
主人公「なんだ!?光に飛ばされたのか……。」
主人公「あれは…!!」
ベアトリス「……!」
ベアトリス「『王家の紋章』それを手にすれば、わたくしは……。」
主人公「………………。」
ベアトリス「アレス(アリス)さん!!!」
??る「やるネ、おまえサマ。だケドーー!」
ベアトリス「きゃあっ!?」
主人公「ベアトリスさん!!」
???「ウゴくと、コイツさまの命ナイ。」
主人公「くっ……!」
???「キキキキキ。オマエさまタチ、大バカネ。」
???「王弟殿下、さいしょカラ、コレが狙イだったネ。」
ベアトリス「最初から……?」
ベアトリス「まさか、叔父上の本当の目的は『王家の紋章』を手に入れること!?」
???「ソノとおり。自ら正統ノ王にナル、一番てっとり早イね。」
???「サア、サッサと仕事、済まセル。」
主人公「ま、待てっ!!ベアトリスさんを離せ!!」
???「ドウシテ?」
???「『王家の紋章』手に入レル。姫さま、亡き者にスル。」
???「王弟殿下、大ヨロコビ。コイツさま、離ス理由ナイ。」
主人公「なっ……!」
???「キキキ……最後、オマエさまモ平ラゲテやるカラ、待っテロ。」
ベアトリス「ダメ……アレス(アリス)さんには手を出さないで……。」
???「キキキキキ。さっきモかばっタナ。」
???「アイツさま、ソンナに大事カ?」
ベアトリス「決まっています……。あの人は……わたくしの……。」
主人公「ベアトリスさん!うしろ!!!」
???「フヘッ!?」
ベアトリス「危ない!!」
主人公「ベアトリスさん!!!!!」
???『我、最後の試練なり』
主人公(くっ……!まずはコイツをなんとかしないと!!)
主人公「ベアトリスさん!しっかりしてください!」
ベアトリス「……う…………。」
主人公(よかった、生きてる!)
ベアトリス「あ……!」
???「キ…キキ……手ニ入レタ……!」
ベアトリス「待って……それを返して……。」
ベアトリス「わたくしが…『王家の紋章』を持ち帰るのを……皆が待っているのです……。」
???「皆みなミナ……オマエさま、ヘンね。人のコトばっカリ。」
???「さっきモ、ワタシのコトかばッタ。」
???「オマエさまの大事ナ人と同ジようニ。」
???「不能ふのう。理解デキナイ。」
ベアトリス「……あなたも…わたくしの大切な民ですから。」
ベアトリス「刺客さん……あなたにも大切な人はいらっしゃるでしょう?」
ベアトリス「大切な人を守りたいと思うのは……当然のことです。」
???「ワタシ、闇ニ生きル者。大切ナ人いナイ。家族もナイ。名前もナイ。」
???「オマエさまノ言うコト、ワカラナイ。」
???「デモ、王弟殿下、ナニもないワタシに、仕事クレタ。」
???「仕事してイレバ、空っぽじゃナイ。ワタシ、満足。」
ベアトリス「まあ……ご家族もお名前も……。」
ベアトリス「………………。」
ベアトリス「僭越ながら……あなたに贈り物をしてもよろしいでしょうか?」
???「ナニ、クレル?」
ベアトリス「名前を。」
???「王女さまが、名前クレルのカ?」
ベアトリス「はい。」
ベアトリス「わたくしの名前からおすそ分けして……アデル、というのはどうですか?」
アデル「アデル…………。」
アデル「イイ……。」
ベアトリス「では、アデルさん。」
ベアトリス「わたくしのお友達になってくださいませんか?」
アデル「ナ、ナニを言ッテル?」
ベアトリス「わたくし、リグバースに来るまではお友達がいなかったんです。」
ベアトリス「でもこの町で多くの人と出会い、お友達も、恋人……もできました。」
ベアトリス「皆、わたくしの大切な人たちで、ステキな思い出をたくさん与えていただきました。」
ベアトリス「アデルさん。あなたにも、そんな気持ちを知って欲しいのです。」
ベアトリス「空っぽだというのなら、わたくしが笑顔の思い出で満たしてみせますわ。」
アデル「オ……オぉぉ……。」
アデル「ワタシ……友達ナル……。」
ベアトリス「よろしくお願いしますね、アデルさん。」
アデル「コレ……返ス。」
ベアトリス「ありがとうございます。」
主人公「とうとう……手に入れましたね。」
ベアトリス「……はい。」
ベアトリス「わたくしはこれより『王家の紋章』を持って……王都に帰ります。」
主人公「ラインハルトさんが戻るのを待たないんですか?」
ベアトリス「ラインハルトには伝書鳥を飛ばしました。どこか途中で合流できるでしょう。」
主人公「だったら、それまで……いえ、どこまででも…僕(私)はいっしょに行きます。」
ベアトリス「いいえ。」
ベアトリス「この町には、あなたを必要とする人たちがいます。」
ベアトリス「それに……。」
ベアトリス「ここから1歩でも出れば、わたくしはお嬢さまではなく……」
ベアトリス「ノーラッド王国第二王女、ベルディエス・デル・エレン・ノーラッドに戻ります。」
ベアトリス「わたくしがベアトリスでいられるのは、この小さくも居心地のいい町の中だけですから。」
ベアトリス「だから……アレス(アリス)さんは町にいて。」
ベアトリス「あなたの中でだけは……ベアトリスでいさせてください。」
主人公「………………。」
主人公「……わかりました。」
主人公「くれぐれも……お気をつけて。」
アデル「大丈夫。王さま、アデルが守ル。」
主人公「た、頼もしいね。」
ベアトリス「ふふ、本当に。」
主人公「………………。」
ベアトリス「では……。」
主人公「……はい。」
ベアトリス「さようなら……アレス(アリス)さん。」
主人公「………………はい。」
主人公(……さよならは言いません、ベアトリスさん)
8日目
主人公「2人とも、なにをやってるの?」
ルーシー「アレスくん(アリス)!」
プリシラ「帰ってきたんだよ!!」
主人公「帰ってきたって……」
主人公「まさか……!」
ルーシー「早く会いに行ってあげなよ。」
ルーシー「あたしたちも会いたいけど、ガマンしてあげてるんだからさ。」
プリシラ「やっぱりアレスくん(アリスちゃん)が一番に会ってあげないとね♪」
主人公「!!!!!」
主人公「ベアトリスさん!!!!」
ベアトリス「アレス(アリス)さん……。」
主人公「どうして……ここに……?」
ベアトリス「
忘れ物をしたものですから。」
主人公「な、なんだ……。」
主人公「じゃあ、また王都に戻るんですね。」
ベアトリス「ええ……。」
ベアトリス「あなたが、そう望むなら。」
主人公「そんなこと……望むわけないじゃないですか。」
ベアトリス「本当に?」
主人公「当たり前です。」
主人公「ずっと……ここにいてほしいです。」
ラインハルト「ふうむ、困りましたな。」
ベアトリス「ええ、困りました。」
主人公「自分で聞いておいて困るって……。」
ベアトリス「ちがいますわ。困っているのは別のことです。」
ベアトリス「じつは……わすれものが見つからないのです。」
ベアトリス「とても大切なものなので見つかるまで王都に帰れません。」
主人公「それって……!」
ベアトリス「うふふ♪」
ラインハルト「こほん。まあ、そういうことだ。」
ラインハルト「ベアトリスさまにはこれからもお嬢さまとしてここにいていただく。」
主人公「で、でも王都は?王さまになるんですよね?」
ベアトリス「ふふ、その件は無事に落着しました。」
ラインハルト「かなりの力技でしたけどね。」
主人公「ど、どういうことですか?王弟や刺客は……?」
ラインハルト「王弟殿下は……アデルの証言もあって獄に落とされた。」
ラインハルト「それによって王弟派は一掃され、刺客も政略結婚もなくなった。」
ラインハルト「すべてはあなたの力添えで、『王家の紋章』を持ち帰れたおかげだ。」
ラインハルト「危険も多かったと聞く。ベアトリスさまを守ってくれて、感謝する。」
主人公「いえ、それはいいんですけど……」
主人公「『王家の紋章』を持ち帰ったら王さまにならないといけないんですよね?」
ベアトリス「ふふ…わたくし生まれて初めてわがままを言ってしまいました。」
主人公「わがまま?」
ラインハルト「『王家の紋章』を手にしたベアトリスさまに国民は歓迎の意を示したのだが……」
ラインハルト「こともあろうに即位の儀で、王位の移譲を宣言してしまわれたのだ。」
主人公「移譲!?だ、誰にですか?」
ベアトリス「お父さまにですわ。」
主人公「えっ、でも国王さまは病気で……。」
ラインハルト「……それも王弟殿下のしわざだったのだ。」
ラインハルト「給仕を買収し、すこしずつ食事に毒を仕込んで……。」
ベアトリス「それがわかってからはお薬を飲んで元気を取り戻されました。」
主人公「そうだったんですか……。」
主人公「よかった……と言っていいのかわからないけどほっとしました。」
ベアトリス「ふふ、わたくしもです。」
ラインハルト「それにしても、ムチャをなされたものです。」
ラインハルト「国民が暴動を起こしてもおかしくなかったですよ。」
主人公「はは…よく無事におさまりましたね。」
ラインハルト「幸か不幸か、ベアトリスさまのご活躍が尾ひれがついて知れ渡っていてな。」
ラインハルト「破天荒な王女さまとして熱狂的な支持を得てしまったのだ。」
主人公「そ、そうなんですか…。」
ベアトリス「皆さん、お優しい人たちばかりでよかったですわ。」
主人公(そういう話なのかな……)
ベアトリス「そのような呆れ顔をしないでください。」
ベアトリス「仕方がなかったのです。」
ベアトリス「わたくしには……ノーラッド王国と同じくらい、大切な人がいるのですから。」
主人公「ベアトリスさん……。」
ラインハルト「うおっほん。」
ラインハルト「ムチャではあったが、ベアトリスさまはご立派に使命を果たされた。」
ラインハルト「なればこそ国王陛下もリグバースに戻ることをお許しになられたのだ。」
ラインハルト「こうなった以上、アレス(アリス)どのにはいずれけじめをつけていただきたい。」
主人公「けじめ……。」
ベアトリス「ベアトリスは、そのときを待っております。」
主人公「はい……!」
ルーシー「ベアトリスさーーーん!!!」
ベアトリス「ルーシーさん、プリシラさん♪」
プリシラ「おかえり、ベアトリスさん!!」
ベアトリス「ただいま。ベアトリスは、この町に戻ってきました。」
主人公「………………。」
ベアトリス「ただいま……。」
主人公「おかえりなさい、ベアトリスさん。」
最終更新:2024年11月14日 17:08