Riders Fight!(前編)

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Riders Fight!(前編)


ブォォォォォン……ブォォォォォン……

空が本来の明るさを取り戻した頃に、バイクの排気音が響き渡る。
時たまカーブがあるが、それを除けばほぼ直線な道路を突っ走る、真っ赤な――あまりの速さに閃光にすら見える――バイク。
その赤い車体に乗り、たった一人で夜明けの道を突き進む男、一文字隼人は急いでいた。
改造人間や、それ以外の未知の存在がうようよいるこの戦いで――――自分と共に呼ばれている女性、緑川あすかが生き残れる可能性は限りなく低い。
自分達と違って彼女はただの人間、故にこの場では身体的に劣る側にいる。
本郷や信頼できる人物に保護されているといいが……そう上手くいくとは限らない、だからこそ、今自分が走っているのだ。
別にこの気に乗じてあすかを手に入れようなんて気はない。他人の女に手を出すほど、おちぶれちゃいない。

だけれど――――惚れたよしみだ、本郷に預けられるまでは――――俺が迎えにいってやるよ。


「城戸さん、彼らを連れて逃げてください。」

荒野で龍騎がダグバに対し構えながら告げる。
最も、中身は本来の持ち主である城戸真司ではなく、ここでデッキを使った本郷猛なのだが。
変身したのは半ば賭けに近かったが、その賭けに勝つ自身はあった。

「け、けどそのデッキ使い方分かるんですか!?」
「大丈夫、使い方はさっきのを見てて大体把握したよ。それに……」

これは半分嘘だ。カードを使うのは分かっているが、どれがどの効果を発揮するのかは全く分からない。
だが自分にとって不利なカードは入っていないだろう。そう考えての発言だ。

「それに……話し合いが不可な以上、これ以上被害を広げないためにもここで叩く。」

その言い分に納得したのか観念したのか、真司は途方に暮れているヒビキと大介、それにあすかを連れて立ち去った。
……去り際にあすかがこちらを睨んでいた気がするが、今はそれどころではない。
改めてダグバに向き直る龍騎。全身を白く染め上げ、ちりばめられた金の装飾がそれを覆う。
各部の突起も然ることながら、ベルトの部分にある顔らしき文様は特に存在感を見せ付けていた。

(一筋縄で行きそうにないな。)

ベルトからカードを引き抜き絵柄を見る――――そこには所謂、青龍刀が描かれていた。迷うことなくドラグバイザーへと読み込ませる。

―― SWORD VENT ――
「ハァッ!」

電子音声と共に現れた剣を取り、龍騎がダグバへと斬りかかる。
その剣先はまるで予想されていたかのようにダグバの手に収まり、流される。だがここまでは予想通り。
ドラグセイバーでの一撃が効かないといるや否や、すぐさま左腕に持ったサソードヤイバーを叩きつけた。
肉を切り裂く音がして、白い胴体に僅かな切れ目と共に赤い血が走っていく。鋼のように鍛えようと、制限下ではこのようなものだ。
血だまりが出来るほどに広がり、夜明けの光には不釣合いなほどよく映えた。
しかし、ダグバ本人は蚊にでも刺されたかのようにそれを振り払い、龍騎のマスクを両手で掴んだ。

「グッ、ァッ」

マスク越しに本郷の呻きが漏れた。幾ら本郷が改造人間といえど相手はグロンギの長、究極の闇。
たった一人で太刀打ちできる相手ではない。そもそもここまで互角に戦えた事の方が不思議なのだ。

―― NASTY VENT ――

直後、血だまりから全身を装甲で覆った蝙蝠が飛び出したかと思うと、口からの超音波でダグバを攻撃し始めた。
本来、蝙蝠の超音波は暗闇で正確に位置を把握するためのものだが、これはそんな生易しいものではない。完全に攻撃に特化したものだ。
その攻撃で微かに顔をしかめ、龍騎を蝙蝠目掛けて投げつけた。もちろん、成すすべも無く両者は激突する。

「大丈夫ですか!?」

駆け寄ってきたのはハナが変身したナイトだ。さっきのナスティベントも彼女の計らいであった。


「ああ、ありがとう。」

差し伸べられた手を取って立ち上がりながら答える本郷。マスクが軽くひび割れているが、この程度問題にすらならない。
問題なのは相手の尋常じゃない強さだ。こちらの攻撃はまるで効かないのに、向こうからの攻撃は一つ一つがとても重たい。

「二人でもいいよ……どうせ、僕を笑顔に出来るのはクウガだけなんだから。」

ダグバが残念そうに愚痴る。そのクウガとやらが何者かは知らないが、彼と互角に戦えるほどのものだろう……と、本郷は結論付けた。

「互いの話は後に回しましょう、まずは……」
「ええ、あのイマジンを抑えなきゃ!」
「……イマジン?」
「ああ、えっと、後で話すわ!」

途中で話を切り上げて、ナイトが走り出す。途中でダークバイザーにカードを差し込んだ。

―― SWORD VENT ――

天から降りて来たおよそ剣とはいえない――寧ろ突撃槍に近い――武器を手に取り、ダグバに突き刺す。
やったか、と思う暇もなくダグバの腕が伸びてくる。体の心をずらしてあたかも剣が突き刺さったかのように見せたのだ。
ナイトへと迫るその手は二本の剣によって防がれる。それに目を見張る間もなくダグバの顔面に踵落としが決まった。

「これで、貸し借りなしだね。」
「……ええ!」

少し距離をとって並び立つ二人のライダー。きっとその仮面の下には笑みが浮かんでいるのだろう。
ハナはその仮面の下で思う。良太郎やバカモモ、それに他の皆も、戦っている間はこんな感じだったのかな……と。
だが思い出に浸っている暇はない。ダグバの両の拳が迫ってくる、一度あたればそこで終わりだ。
二人は同時に同じカードを読み込ませ、衝撃に備えた。

―― GUARDVENT ――
―― GUARDVENT ――

龍の腹部を模した盾が右の拳を押さえ、ダークウイングが変化した鎧が左の拳を受け止める。
けれども、ダグバの顔から余裕の色は消えない……本郷はこの理由を、直後に知る事になった。

「なっ!?」

盾が、鎧が音を上げて燃え始めた。ダグバが超自然発火能力を使ったのだ。
すぐさま盾を捨て、二人は各々の武器での攻撃に切り替える。軽い金属音がしただけで、どれも決定打とはなりえない。
ドラグセイバーがダグバの首を切り落とさんと進む――――だが手刀で阻まれ、もう一方の手で刀身を砕かれる。
両手が開いた隙に、ウイングランサーが今度こそダグバの脇腹を貫いた。だがダグバの猛攻を止めるにはあまりにも弱すぎた。

「ふふふ……痛いよ、でも……クウガにはまだ足りない。」

呟いたかと思うと、ナイト目掛けてダグバが特大の頭突きをお見舞いした。あまりの衝撃に思わずランサーから手を離してしまう。
少し力を入れただけでランサーを引き抜き、地で悶えているナイトへと向ける。

―― ADVENT ――
「GAAAAAAAAA!!」

龍騎がカードをベントインし、電子音声が鳴り響く。続けて耳に入るのは赤き龍の咆吼。
ランサーの切っ先がナイトに当たる寸前、ドラグレッダーの放った火球がダグバを包み込む。が、これしきでダグバの猛攻は止まらない。
腕を一振りして炎を払い跳躍。ドラグレッダーの背に飛び乗り、両肘の突起を突き立てた。バリン、と鏡の割れるような音と共に突起が突き刺さった場所に亀裂が広がる。
ドラグレッダーが鏡へと逃げ込み、ダグバが飛び降りる。短時間でドラグレッダーをここまで痛めつけられるのは、そうそういるものではない。

「さぁ、続きを……?」

突如ダグバの白い肌が歪み、元の青年の姿へと戻ってしまう。変身制限の十分間が経ったのだ。
好機とばかりににナイトが冥府の斧を投げつける。一方龍騎はサソードヤイバーを手に飛び掛った。
だが青年は軽くそれを避けると、二人に背を向けて歩き出した。

「待てッ!」
「時間が来た。だから、今はおしまい。」

龍騎が止めようとするが、青年はまるで遊びに飽きたかのような雰囲気を感じさせた。

「またね、仮面ライダー。今度会うときはもっと僕を笑顔にしてね。」


それだけ言い残し、ダグバはすたすたと行ってしまった。白い影が砂煙に隠れてしまい、後には誰もいなくなった。
龍騎やナイトも追いかけようとするが、直後の出来事に気をとられてしまう。

―― ADVENT ――

ダグバの存在をかき消すように鳴り響く電子音声、だがドラグバイザーもダークバイザーもベントインした様子は無い。
再びダグバの残した血だまりから何かが飛び出す。今度は蝙蝠ではない、エイだ。赤い体と長い尾を持つ大きなエイ。
呆気に取られている三人を尻目に、エイに降りたつもう一人の人影。弁髪の様な飾りが揺れ、口を開く。

「――――そのデッキを城戸に返せ。」


そこを手塚海之が通りかかったのは、本当にただの偶然だった。
乃木に敗れてから、ずっと当ても無く歩き続けていたらいつの間にか早朝になってしまった。
そのまま一人で最初の放送を聞こうとしていたとき、二つの爆音が耳に入る。
急いでその場に駆けつけると、そこにいたのは数人の人だかり……というには少しばかり少なかったが。
いたのは二人の男と一人の女。二人の戦士――――その姿には見覚えがある、忘れてなるものか。あのライダーを。
脇に隠れていた男は特にどうでもいいが、気になるのはライダーと戦っている白い怪物。モンスターに近いが理性も働くらしい。
そして、最後の一人。自分がこの道に走って、唯一守ると決めた男。その名は――――

(……城戸、真司……ッ!!)

――――城戸真司。何の苦も無く浮かんできた名を自分の中で反芻する。
だがここで疑問が生まれる。何故龍騎に変身しているのが城戸真司ではないのか。
確かにデッキ自体があれば、その中身は誰でもいい。自分が――――雄一のデッキを使い、変身しているように。
……とすると、今、城戸真司は無防備なのでは?

その可能性に思い至ったとき、手塚は全身の血が逆流するような不快感を覚えた。
本当なら支給品等の護衛方法に結びつくのだろうが、この時の手塚には真司を見つけたことと真司が危機に晒されている事とが重なって冷静な判断力を失っていた。
――――ならば、成すべき事は一つ。その危機を一刻も早く排除するのみ、だ。デッキを奪還し真司の下へと送り届ける。

支給されたペットボトルを取り出し、空中へと放り投げる。
それは一定時間上へ上へと上り続け、やがて思い出したかのように止まり、地上に吸い込まれるが如く落ちていく。
ペットボトルが手塚の前を通り過ぎるその瞬間――――刹那、手塚の手に持ったカードデッキが妖しく輝いた。
落ちた衝撃でペットボトルの中身である飲料水がぶちまけられ、大地に吸収される。その場所を踏みしめるのは装甲に包まれた足。
朝焼けを反射し淡く煌く水面。そこに写るのは赤い鎧に身を包む、歪んだ道化、悲劇の戦士――――仮面ライダーライア。
一歩一歩進むごとに自分が戻れない道を歩いているような錯覚に襲われる……上等だ、元より戻る気などない。
倒すのは龍騎とナイトだけ。白い怪物は勝手に参加者を始末してくれるだろう。

――――いつの間にか、己の手を汚す事を躊躇っている自分に嫌気がさした。怪物に汚れ役を押し付けようとしている、自分に。
最後に真司が他の人を連れて逃げる姿が見えた。これで自分の姿を見られることはない、と少しだけ安堵する。

「……俺が、運命を変えて見せる。」

誰に言うでもなく呟く言葉は決意の表れか、己への悔恨か。それは誰にも分からなかった。


「ククク……ハハハハハ!! いい、実にいいぞ!」

激戦地からほんの少し離れた茂みの中、一人で狂気の笑いを上げるのは志村純一、不死生命体アンデッドの一人。
彼は物陰から戦いを見ていたのだが、自分の予想遥かに超え、且つ自分に有利な事態になってきた事に笑いを抑え切れなかった。
確かに本郷や真司がそれなりに戦う力を持っていたのもある、それも装着者を選ばないあのカードデッキは魅力的だ。
だがそれ以上に志村の興奮を誘ったのは、ダグバの存在。彼は白い怪物に変化し、二人に襲い掛かった。

――――と、ここで一つ思い出してほしい。志村は、今まで出会った参加者に、何を言っていただろうか。

長田結花に伝えた情報は何か。

本郷猛に聞かせた言葉は何か。

城戸真司を乗せた口車は何か。

……そう、『白い怪物と剣崎一真は共に殺し合いに乗り、尚且つ組んでいる』である。

そして、ダグバが変化した姿は何か? 白い怪物である。この情報を知り、かつダグバと交戦した参加者は、何を思うだろうか?
きっとこう思うだろう。『こいつこそが、剣崎一真と組んでいる白い怪物なのでは』、と。

――――つまり、自分に対しての疑いの目を自然になくす事が出来るのだ。

集団の中で疑心を生み出す者にとって、疑いを持たれないと言う事は最も有利なアドバンテージ。
元よりアルビノジョーカーとしての姿はなるべく見せるつもりはないが、どうして使用せざるを得ない状況では信頼がそれをカバーしてくれる。
既にカミキリムシのような外見、とは伝えてある物の戦っている間は無理にでも集中せざるをえない。故にそこまで考えは回らないだろう。
それにその情報が人から人へ伝わる事によりいつしかあの怪物を覆う包囲網が出来上がる。邪魔になればそれを使って排除すればいい。
自分の掌の上で全てが踊る――――こんなにおかしい事は無い。そう思うと笑いを抑える事など出来なかった。


「よぉ、アンタ、無駄に楽しそうだな。」
「ハハハハ!!……ッ!?」

突然背後から話しかけられ、咄嗟に牽制を取りつつ脇へと飛ぶ。志村がいつの間に迫られたのかと思う間もなく次の言葉が飛んできた。

「戦いの横で高笑い……いい根性だが、誇れたもんじゃないな。」

そういって口元に意味深な笑みを浮かべる優男。自分の本性を見透かされたようで志村は思わず歯軋りする。
こいつは策に嵌りにくいタイプだ。何でも疑って掛かり、尚且つ信用失わない程度に馴れ合う。最も面倒な相手だ。(少しばかりリスクが高いが、ここで始末するか。)
僅か数秒で結論を叩き出す。逃げられる前に、誰かと接触する前にこいつを殺す。
グレイブバックルを構え、カードを差し込む。もう何度も繰り返してきた行為だ。

「変身!」
―― Open Up ――

走りながらベルトを操作し、現れたオリハルコンエレメントを潜り抜けて剣を振るう。が、まるで予想していたかのごとく優男はそれをかわした。
お返しとばかりに足払いで体制を崩され、そこから右ストレートをもろに食らった。それも生身の相手に、だ。
痛みを訴える体を無視して立ち上がらせ、グレイブラウザーを投擲。しかしその先にあの優男はいない。

「どこだ……ガッ!?」

後頭部を襲う衝撃、一瞬目の前が真っ白になる。軽く脳震盪を起こしたようだ。
倒れる直前にグレイブラウザーを回収し、杖代わりとして立ち上がる。立ち上がった先にいたのは、軽くステップを踏みながら構える濃緑の戦士。

「いきなり敵意むき出しか、まあ、俺もお前は気に食わないがな。」

ホッパー二号――――仮面ライダー二号が地を駆け、拳がグレイブラウザーと触れ合う。それが、開戦の合図になった。



039:太陽背負う闘神 投下順 040:Riders Fight!(後編)
039:太陽背負う闘神 時系列順 040:Riders Fight!(後編)
031:激闘の幕開け 志村純一 040:Riders Fight!(後編)
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031:激闘の幕開け 城戸真司 040:Riders Fight!(後編)
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031:激闘の幕開け 風間大介 040:Riders Fight!(後編)
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025:牙と知恵 Devil-Action 一文字隼人(リメイク) 040:Riders Fight!(後編)
022:運命は未だ定まらず 手塚海之 040:Riders Fight!(後編)

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