きっさんらが
プロローグ
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rockshow
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プロローグ
この町は嫌いだ。
忘れたい思い出が染みついた場所だから。
毎日学校に通い、授業を受け、友達とだべり、そして帰りたくもない家に帰る。
何も新しいことなど始まらない日常。
「(こうしていて、何かが変わるんだろうか。俺の生活は、いつか変わるんだろうか…)」
やたらと自然が多い町。
今日も山を迂回しての登校。
すべての山を切り開けば、どれだけ楽に登校できるだろうか。
直線距離を取れば20分ぐらい短縮できそうだった。
「(一日、20分…すると、一年でどれぐらい、俺は時間を得することになるんだ…)」
計算しながら、歩く。
「(ああ、よくわかんねぇ…)」
忘れたい思い出が染みついた場所だから。
毎日学校に通い、授業を受け、友達とだべり、そして帰りたくもない家に帰る。
何も新しいことなど始まらない日常。
「(こうしていて、何かが変わるんだろうか。俺の生活は、いつか変わるんだろうか…)」
やたらと自然が多い町。
今日も山を迂回しての登校。
すべての山を切り開けば、どれだけ楽に登校できるだろうか。
直線距離を取れば20分ぐらい短縮できそうだった。
「(一日、20分…すると、一年でどれぐらい、俺は時間を得することになるんだ…)」
計算しながら、歩く。
「(ああ、よくわかんねぇ…)」
辺りに同校の生徒の姿はない。学校に続く大通りだから、本来、生徒で賑わっているはずだった。
今日が、休日というわけでもない。
つまりは…生徒が登校すべき時間ではない、ということ。
けど、そんな閑散とした光景を目の当たりにしても俺は焦ることなく、悠長に歩き続けた。
………。
今日が、休日というわけでもない。
つまりは…生徒が登校すべき時間ではない、ということ。
けど、そんな閑散とした光景を目の当たりにしても俺は焦ることなく、悠長に歩き続けた。
………。
校門まで残り200メートル。
一度立ち尽くす。
「はぁ」
ため息と友に空を仰ぐ。
その先に校門はあった。
誰が好んで、あんな場所に校門を据えたのか。
長い坂道が、悪夢のように延びていた。
一度立ち尽くす。
「はぁ」
ため息と友に空を仰ぐ。
その先に校門はあった。
誰が好んで、あんな場所に校門を据えたのか。
長い坂道が、悪夢のように延びていた。
「はぁ」
別のため息。俺のよりかは小さく、短かった。
隣を見てみると、そこに同じように立ち尽くす女生徒がいた。
校章の色から、同じ三年生だとわかる。
けど、見慣れない顔だった。
短い髪が、肩のすぐ上で風にそよいでいる。
「………」
今にも泣きそうな顔だった。
俺なんかは常習犯だったからなんとも思わないが、真面目な奴なのだろう…
この時間にひとり教室に入っていくことに抵抗があるのだ。
「うんうん…」
何かを自分に言い聞かせるように、目を瞑って、こくこくと頷いている。
「………」
そして少女は目を開く。
じっと…、高みにある校門を見つめた。
「この学校は、好きですか」
「え…?」
いや、俺に聞いているのではなかった。
妄想の中の誰かに問いかけているのだ。
その彼(あるいは彼女)は、どう答えたのだろうか。
「わたしはとってもとっても好きです。 でも、なにもかも…変わらずにはいられないです。楽しいこととか、うれしいこととか、 ぜんぶ…ぜんぶ、変わらずにはいられないです」
たどたどしく話し続ける。
「それでも、この場所が好きでいられますか。」
………。
「わたしは…」
「見つければいいだけだろ」
「えっ…?」
少女が驚いて、俺の顔を見る。
まるで、今まで誰もいないと信じていたかのように。
「次の楽しいこととか、うれしいことを見つければいいだけだろ。あんたの楽しいことや、うれしいことはひとつだけなのか?違うだろ」
「………」
別のため息。俺のよりかは小さく、短かった。
隣を見てみると、そこに同じように立ち尽くす女生徒がいた。
校章の色から、同じ三年生だとわかる。
けど、見慣れない顔だった。
短い髪が、肩のすぐ上で風にそよいでいる。
「………」
今にも泣きそうな顔だった。
俺なんかは常習犯だったからなんとも思わないが、真面目な奴なのだろう…
この時間にひとり教室に入っていくことに抵抗があるのだ。
「うんうん…」
何かを自分に言い聞かせるように、目を瞑って、こくこくと頷いている。
「………」
そして少女は目を開く。
じっと…、高みにある校門を見つめた。
「この学校は、好きですか」
「え…?」
いや、俺に聞いているのではなかった。
妄想の中の誰かに問いかけているのだ。
その彼(あるいは彼女)は、どう答えたのだろうか。
「わたしはとってもとっても好きです。 でも、なにもかも…変わらずにはいられないです。楽しいこととか、うれしいこととか、 ぜんぶ…ぜんぶ、変わらずにはいられないです」
たどたどしく話し続ける。
「それでも、この場所が好きでいられますか。」
………。
「わたしは…」
「見つければいいだけだろ」
「えっ…?」
少女が驚いて、俺の顔を見る。
まるで、今まで誰もいないと信じていたかのように。
「次の楽しいこととか、うれしいことを見つければいいだけだろ。あんたの楽しいことや、うれしいことはひとつだけなのか?違うだろ」
「………」
そう。
何も知らなかった無垢な頃。
誰にでもある。
「ほら、いこうぜ」
何も知らなかった無垢な頃。
誰にでもある。
「ほら、いこうぜ」
俺達は登り始める。
長い、長い坂道を。