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  • きっさんらが
  • 志麻 1995年4月part2

きっさんらが

志麻 1995年4月part2

最終更新:2007年10月14日 22:57

rockshow

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管理者のみ編集可
次の日、相楽さんとは出会えなかった。
その代わり、ユキさんとサキさんと話すことができた。
「あの子が休むなんて、普通じゃない」
サキさんはそう言った。
「何かあった?」
「あ…うん」
「あんた、正直者ねぇ、よしよし」
頭を撫でてくれた。
「どれ、話してみ」
僕は、昨日あった出来事をありのまま伝えた。
それは、いいことか悪いことかわからなかった。
相楽さんの恥を勝手にさらしてるだけかもしれなかった。
でも、僕には、このふたりしか頼れる人間がいなかった。
ただ、相楽さんと会って、話がしたい。だから、正直に話した。
「そうか…振られてしまったか、美佐枝の奴」
「それも、最悪の形ね。相談役を買って出たところへ、だもんね」
僕は不安になってきた。
「僕は…」
「うん?」
「相楽さんに、嫌われてしまったんですか…」
「うわぁ、志麻くん、やっぱり可愛いよ。あたしの彼氏にならない?」
「ユキッ」
「あはは、ごめんごめん」
「大丈夫よ。こんなの大した問題じゃない。美佐枝はあんたが好きなはずよ。ずっと変わらず」
「そうそう。志麻くんが校門で待つようになって、なんかあの子、元気になったもんね」
「うん、誰の目から見ても明らかにね」
「あたしは最初から五十嵐くんみたいなタイプより、この子のほうが美佐枝に合ってるって思って

たのよ?」
「あの子は、結局、世話好きだからねぇ。手がかかる奴ほどいいのよ。だから、毎日毎日、また居

たらとっちめてやるって言って、笑いながら、校門に向かってたのよね」
「………」
本当だろうか。信じられない。
でも、ふたりに話してよかった。少し元気が取り戻せた。
「でも、ここからが大事よ、少年」
「そうそう」
「え? 何がですか?」
「失恋したあの子のそばにいてあげないと」
「そうしたいんですけど…でも、どうすればいいか…」
「大丈夫。段取りはお姉さんたちにまっかせなさいっ」
「あたしたちが、呼び出してあげるから」
「そう。たっぷり慰めてあげなさい」
「格好よくね。男の子なんだから」
「最初のセリフは何がいいかしら?」
「『美佐枝さん、恋は遠い日の花火のようなものだ…』ね」
「うわ、それシビれるわぁ」
「意味、わからないんだけど」
「つまり、砕け散ったほうがキレイってことよ」
「それ、間違ってない?」
「小道具も必要ね」
「どんな?」
「ハンカチとかどう? 『これでお拭き』って言って、差し出すの」
「でも、美佐枝、失恋で泣くタマかね?」
「泣いてなかったら『じゃ、紙がない時にでもどうぞ』ってフォローすればいいのよ」
「それ、フォローになってないことない?」
「なってるって。これで、バッチシっ! さ、ロマンティックな夕暮れ時を待って、作戦開始よっ

」
僕のために、ここまでしてくれる。
本当に、このふたりに話せてよかった。

指定された公園。
そのブランコに、相楽さんは腰を下ろしていた。
制服姿だった。
朝までは、学校に行く気だったのかもしれない。
顔は伏せられて…表情は見えない。
心臓がばくばくする。
でも、話をしなくちゃ。
僕は相楽さんを慰める。
それが僕の役目だ。
…相楽さんが好きな、男の子としての。
僕はゆっくりと近づいていって、隣に立った。
………。
…無言が続く。
僕のほうから切り出さなければ…。
「あのっ…」
「うわぁっ! 誰か居たのっ!?」
…気づかれていないだけだった。
「びっくりしたぁ…志麻くんか…。幽霊みたいに無言で立ってないでよ…」
「あの…相楽さん…ううん、美佐枝さん…」
「何よ…」
「恋は遠い日の花火のようなものだね…」
「はぁ? どういう意味?」
「砕け散ったほうがキレイってことだよ」
「おのれは喧嘩売ってんのかいっ!」
首を掴まれ、前後に揺すられる。
「ご、ごめんっ」
「はぁ…」
再びため息と共に座り込む。
「あのさ…」
「何よ…」
サキさんから渡されたハンカチをポケットから取り出す。
「これ、使ってよ」
それを差し出した。
「別に、泣いてなんかないわよ…」
「じゃ、紙がない時にでも」
「おのれは気を使ってんのか、使ってないのかどっちだぁっ!」
「も、もちろんっ…使ってるつもり…。あれ? おかしいなぁ…」
「はぁ…。あんたが自分から、そんなこと言い出すはずないか…。ユキかサキの入れ知恵でしょ」
「あ…どうしよう…ばれた…」
「いいのよ、んなもん、ばれて…。あんたが自分で考えて言ったっていうんなら、幻滅するけど」
「ごめん…ユキさんとサキさんのアイデアです…」
「だろうねぇ…アホすぎるわ…。自分の言葉で話しなさい」
「ああ、うん、わかった。ええと…………」
慰めるつもりが、慰めの言葉なんて、何ひとつ出てこなかった。
出てきたのは…
「ごめん…」
弁解の言葉だけだった。
「どうして、あんたが謝るの?」
「どうしてだろう…。きっと、僕にも悪いところがあったと思うからかな…」
「あんたに悪いところね…」
「思い返すと、確かにたくさんあった気がするわ」
「本当に…ごめんっ」
「でも、それは今あたしが落ち込んでることとは、別のことよ。関係ないこと」
「そうなの…」
「でも、あんたは、いいところもあるじゃない。今は、あたしを慰めにきてくれたんでしょ?」
「うん」
「それとも、あたしの言ったように、これをチャンスだと思って来たの?」
「ううんっ、まさかっ」
「そーだ、そうだったんだねぇ…あんた、あたしのことが好きだったんだねぇ」
「えっ、そ、そんなことっ…」
「ああ、そんなことないんだ」
「うっ…いや…その…あります…」
「素直でよろしい」
「………」
「立ってないで、隣、座れば?」
「あ、はい…失礼します…」
「何、硬くなってんのよ…」
僕は隣のブランコに、腰を下ろした。
「あんた、結構顔、整ってるし、そのナヨナヨした性格さえ直せばモテると思うわよ?」
「そうかな…よくわからないけど…」
「ユキは、年下好きだから、あんたのこと気に入ってるみたいよ」
「あの…」
「なに?」
「もちろん、ユキさんも、サキさんも、嫌いじゃないです。どっちかというと好きです。でも、一

番はやっぱり美佐枝さんです…。僕は…美佐枝さんが好きなんです。ユキさんでもサキさんでもな

いんです」
「あ、そ…。ありがと。あんたからそんな言葉が聞けるなんて思ってもみなかった」
美佐枝さんが笑って僕のほうを向いた。
「カッコイイよ」
「そ、そうですか…」
「…あたしなんかの、どこがあんたの好みに合ったの?」
「どこかな…」
「昔、話したことで勇気づけられたから?」
「それは…どうかな…、たぶん、違うと思う…。 僕は、今の僕が今の美佐枝さんを好きになった

んだと思う。叱ってくれるところとか…心配してくれるところとか…首絞められるのも、美佐枝さ

んのいい匂いがして、好きでした…」
「あ、そ」
「後、美佐枝さん、美人だから」
「それを真っ先に言ってほしかったわねぇ」
「あ、それは気づかなくて…」
「まあ、それがんたね。計算して行動なんてしないもんね」
「そういうのは苦手で…」
「あーあ、自分で言っておいてなんだけど、まんまとハマッた気分ね…」
「え?」
「失恋して落ち込んでる時にこうしてそばにいてくれるとさ…」
「嫌でも好きになるよ」
「嫌だったら、いいよっ…無理してもらわなくてもっ」
「あはは、嘘。純粋に好きになった」
「え、本当…?」
「うん、本当。ずっと言ってるように、あんたの性格は好きだから」
「はは…僕なんかの何がいいんだか…」
「自身持ちなさい」
「じゃ、美佐枝さん…お願いがあるんですが…」
「何よ? またユキとサキの入れ知恵?」
「そうなんだけど…僕もそうしたいんです。いいですか?」
「そんなこと女性に訊かないの」
「ここは強引に、で合ってるんですか…」
「うん…あってると思うよ…」
「じゃ…失礼して…」
「失礼と思うなら、するな」
「ああ、ごめん…。じゃ、喜んで…」
「それもおかしいっ」
「ああ、ごめん…」
「じゃ…」
僕はブランコを美佐枝さんのほうに寄せて…
そしてキスをした。


「で、どこまでいった?」
「え…?」
「ほらほら、吐きなさいよぅ。あたしたちのおかげでうまくいったんでしょ?」
その日は、美佐枝さんと会うより先に、サキさんとユキさんに捕まってしまっていた。
「Aはしたの見たしぃ」
「み、見てたのっ!」
「はは、ウブな志麻くんでもAの意味は知ってんだぁ」
「美佐枝から教えてもらったんでしょ」
「美佐枝、そういうのお堅そうなんだけどなぁ」
「これは…案外進展してるのでは?」
「Bは?」
「び、Bってなんのことだか…わからないんですけど…」
「あ、顔、真っ赤…最近知ったってカンジね…」
「超エッチ~」
「知らないですってばっ! ああ、もう、こんなことになるんならユキさんとサキさんに相談しなければよかった…」
「ははは、これ以上の見返りがありますかって」
「あんたたちねぇっ!」
「あぁ、美佐枝さんっ」
「人が掃除当番なのをいいことに、志麻くんから話を聞きだそうなんてっ」
「いいじゃーん、あたしたち、彼氏いないし、不幸だし~」
「幸せな話聞きたいよね~」
「あっちいけ、ぺっぺっ」
「あぁ…美佐枝さん…汚いから…」
「あんたも、釣られて話したりしたら、ダメよ?」
「ああ、うん…」
「ほら、胸張って」
「うんっ」
「よしっ」
その頃、校門で美佐枝さんを待つ僕は、生徒の間では有名な存在になっていた。
全校公認の仲だというのだそうだけど、僕は美佐枝さんの彼氏としてみんなに認知されていた。
そして、それは、とても恥ずかしく、同時に、とても誇らしいことだった。
美佐枝さんは、人気があったから。
男女問わず、下級生からは慕われていた。
そして、その人気をそのまま反映するかのように、後日の生徒会選挙では、生徒会長に当選した。
彼女の学校では、女性での生徒会長は、初めてなのだという。
「忙しくなるわね」
ただ彼女はそれを厄介ごととしか思っていなかったようだけど。
「こらこら、推薦人の前で、ぼやくな」
「あんたのせいでしょっ」
「会えない時間が長くなるほど、愛は燃えるんだってば。感謝なさいよ?」
「余計なお世話だっての」
「生徒会長って、立派なんでしょ?」
「そりゃあね」
「見たいな、美佐枝さんの仕事してる姿」
「見れるわけないじゃない。ウチの生徒じゃないのに。見たいなら、来年、入学することね」
「いや、まあ、見れないなら、見れるようにしますか、ユキさんや」
「あたしたちの辞書に不可能という文字は載ってないのよ」
「欠陥品」
「額面通りに意味を取らないのっ」

後日…。
「あの…」
「ほっらー、やっぱ、この子、女顔だわ」
「ちょっと、腹立つぐらいね…」
僕は女装させられていた。
…美佐枝さんの火曜学校の制服を着て。
「女子の制服しか都合できなかったのよ。我慢なさいね。ちなみに美佐枝には内緒だから、隠れながら見るのよ」
「は、はぁ…。ていうか、やるんですか、本当にこれっ」
「大丈夫だって。絶対ばれないから」
「あたしたちもサポートするし」

初めて、美佐枝さんの通う学校の校門をくぐる。
いつもは待っていただけの場所を通り過ぎて。
感慨深いものがある。
「ああ、いい…」
「うわ、その気(け)ありっ!?」
「違うって! 初めて美佐枝さんの通う学校に入れて感動してるのっ!」
「わかったから、喋るときは声のトーン、もうちょっと上げなさいね」
「う、うん…」
「ま、普段から女声だから、心配ないと思うけどね」
集団で下校する男子生徒とすれ違う。
何人かと目が合う。
「うわ…この子が一番見られてた…」
「まぁまぁ、あたしたちの人生、ずっと脇役なのよ…。ほら、頑張りなさいよ、主人公っ」
言って、背中を叩かれる。
「は、はぁっ」
そして、それは、また、サキ・ユキコンビの悪戯なのか…。
窓の外に広がる町の風景に見入ってる隙に、ふたりはいなくなっていた。
「ああ、もう、あのふたりはこれだから…」
絶対に、僕を遊び道具か何かと勘違いしてる。
今度男らしく文句言わないと。
「ゥオォォォ――――――――――ッ!」
いきなり教室の中から雄叫び声があがる。
「この愛をそっと君の元に届けたいんだ、ドラッグ&ロケンロ―――――――――ッ! Ah!」
どうやら歌っているらしい。
怖かったので、その前をそそくさと通り過ぎる。
「おっ、君どこのクラスの子っ?」
すると、正面から歩いてきた男子生徒に声をかけられる。
「あ、いえ…どこでもないです…」
ああ、なんて間抜けな返答だ…。
「そんな隠さなくてもいいじゃん。追い回したりしないからさっ」
「いえ、放っておいてくださいっ」
「ロケンロ―――――――――ッ!  Uh!」
走って逃げる。
男は追ってこなかった。
ああ、でも、同じことを僕、やってたんだなぁ…。
いきなり声かけて、ずっと待ち伏せしてたりして…。
以前のことを思い出す。
そう考え事をしていたら、どすん!と正面から人にぶつかる。
転けた。カツラがずれていないか確かめる。
ずれていない…でも、危なかった。
「あの…すみません…」
相手も転けていた。
「いえ、こっちは大丈夫です」
ふたり同時に立ち上がり、埃を払う。
「そちらは、大丈夫ですか?」
若い女性の先生だった。
「はい、ぜんぜん平気です」
「すごい勢いだったけど、どうしたの?」
「あ、男子から、その…」
「男子? 何かされたの?」
「いや…、あの…相楽さんは、どこにいますかっ」
思いきって訊いてみた。
「えっ? 生徒会長の相楽さん?」
「はい、そうですっ」
「今は、生徒会室じゃない?」
「それはどこですか?」
「生徒会室知らないの?」
「あ、はは…そういうこと疎くて…」
「そういうことは知っておいたほうがいいわよ?」
「はぁ…」
「じゃ、行きましょうか」
「え?」
「案内してあげる」

「あ、ちょうど今、会議が終わったところみたい。ほら、出てきた」
「えっ」
まずい…。このまま行ったら、会ってしまう…。
「どうしたの? 相楽さんに用があるんでしょ?」
立ち止まる僕を不思議そうに振り返る先生。
「いえ…別に用ってほどでも…」
「相楽さ―――ん」
先生は手を振って、美佐枝さんを呼んだ。
ああ、もう逃げられない…。
「はい、なんでしょうかっ」
僕は先生の背中に隠れている。
「この子がね、相楽さんを探してたの。って、どうして隠れてるの?」
「いえ…」
「んん~?」
美佐枝さんが回ってきて、僕の隣に立つ。
「誰?」
「は…はじめまして」
「初めまして」
…気づかれていない。
「すごい可愛い子。こんな子、一緒の学年にいたんだ」
「ありがとうございます…」
「初対面? じゃ、生徒会に何か言いたいことがあるのかもね」
「そうなの?」
「ああ、はい…そうです…」
「どんなこと?」
「この人が生徒会長だからね、言いたいこと言っていいのよ。生徒会で話し合ってくれるから」
「そうよ。なぁに?」
そこには僕の知らない美佐枝さんがいた。
一生徒の話を聞こうとする、生徒会長の姿でいた。
なんだか、とても…愛おしい。
だから、上気した顔で言った。
「ずっと… いつまでも…好きでいてください」
「………」
先生が引いた。
「え? え?」
僕と美佐枝さんを交互に指さした。
「どういったご関係で??」
「あ、はは…」
口が滑った。
「すみませんでした――っ!」
言って、走って逃げた。

その後、影から覗いていたサキ・ユキコンビと合流して、校舎の外へ。
「はぁ…はぁ…」
「最高に面白かったぁっ!」
「冗談じゃないってっ…!」
「あんた、やっぱそっちの気(け)アリね」
「ないよっ!ああ、もぅ、あれじゃ変態だよっ。あぁ…美佐枝さん…、こんな僕でも嫌わずにいてくれるかなぁ…」
「どっちも愛してくれるわよ」
「片方だけでいいよっ!あぁ、もうっ。僕の服はっ?」
「はいはい、どうぞ」
僕は自分の服を受け取り、物置の影に入って、着替える。
そこで、上着のポケットから、ぽとりと地面に何かが落ちた。
お守りだった。
「あ…」
僕はなんて馬鹿だったのだろう。
ずっと、忘れていたなんて。

「願いごと? なんか懐かしいフレーズね」
「ごめん、忘れてたんだ。君も忘れてた?」
「うん」
「ああ…じゃ、早く決めてよ」
「もう、そんなのどうだっていいじゃない」
「でも、これはとても大切なことなんだ」
「今のあたしたちが幸せならいいじゃない。大事なのはそういうことじゃない?」
「もちろん。もちろん、大事なことだよ、それも。でも、こっちも大事なんだ」
「どうして?」
「それは…なんていうのかな…。僕の役目なんだ。大切な役目なんだ」
「よくわかんないなぁ…。誰かとの約束ってこと?」
誰か…。
そう…もうひとり誰かがいた。
僕はその人に言われてここに来たはずだ。
「うん」
僕は頷いた。
「でも、それはおかしいんじゃない? あんたが恩義を感じてるんだから、あんたひとりの問題でしょ?」
「ああ、そうだね…まったくその通りだ」
「あんた、なんかヘンよ?」
「うん…僕もちょっと混乱してる…ごめん…」
「誰? 親に言われてきたの? 恩返ししてきなさいって」
「違うと思う…」
「じゃ、誰…?」
「誰だろう…」
そこに居たのは、誰だっただろう…。
思い出せない…。
「でも、誰かに言われてここに来たのは確かなんだ」
「なんて言ってた?」
「このお守りの中に願いを叶えることのできる光が入ってるから、それで願いを叶えてあげろって」
「あたしの?」
「うん」
「じゃあ、その光を見せてよ」
「え? ああ、うん…。このお守りの中に入ってるよ」
僕はお守りの中を開いて中を覗き込む。
「…あれ?」
中は空っぽだった。
「ないの?」
「うん…おかしいな…。確かに入ってたんだよ。それは見たんだ。これじゃ、願いごとが叶えられないよ…。どうしよう…」
「どうしようって言われてもねぇ…。ま、いいんじゃない?」
美佐枝さんは、そう気楽に言って、笑ってみせた。
その笑顔を見ても、僕の心は落ち着かなかった。

僕はなんのためにここに来たんだろう。
何もかも筋書き通りにいっていない。
でも…その筋書きは誰が決めたんだろう?
ああ、何かが欠落している。
僕はまったく不完全だ。
こんなんじゃ、美佐枝さんに嫌われてしまう。
しっかりしないと…。

でも、日を追うにつれ、その使命感は強くなっていった。
僕にその役目を担わせた人は、僕にとっても大事な人だったからだ。
長い時間、一緒に過ごしてきた人だ。
それは、絶対に…僕が死んでもやり遂げなければいけないことだったはずだ。
僕はずっと浮かれていたんだ。
そんな大切なことを忘れているなんて。

「ねぇ、お願いだから願いごとを決めてよ」
登校中、僕は美佐枝さんに食いついて、その言葉を繰り返した。
「それを叶えるための光がないんでしょ?」
「ないけど…僕にできることだったら、なんでもするよ」
「何もしなくていいわよ」
「どうしてだよ」
「そういうお願いって、なんか嫌じゃない。女性の立場を利用してるみたいで」
「よくわからない」
「わからなくてもいいわよ」
「わからなくてもいいけど、願いごとは決めてよ」
「ああ、わかったわよ…考えておくわ…」
「本当にだよ?」
「はいはい、約束します」
それでどうにか、僕は落ち着きを取り戻すことができた。

「だ――れだっ」
突然視界がふさがれる。
「サキさん」
「あーあ、なんで美佐枝って言わないのよ。引っかかってよ、もう
視界が戻る。そこに、サキさんとユキさんが立っていた。
「だって、声が違うから」
「そりゃそうだろうけど、恋は盲目って言うのよ?」
「サキ、もう、志麻くんはウブではなくなってしまったのよ」
「面白くないわねぇ…からかい甲斐ないじゃない」
「それで、美佐枝さんは?」
「残念ね。忙しいみたいよ。先に帰ってって」
「生徒会?」
「そ。創立者祭が近いからねぇ」
「創立者祭?」
「要は、学祭よ、学祭。新生徒会の最初の大仕事だからね。そりゃ、忙しくなるって」
「ウチの学校じゃ唯一のお祭行事だから、盛り上がるしねー」
「また、あの先輩出てきたら、美佐枝も苦労しそうだね」
「軽音部の発表をひとりオンステージにしちゃった人でしょ」
「でも、放っておいたほうが盛り上がるじゃん。軽音部の人よりカッコイイし、超歌ウマイし」
「それは言えてる」
「だからね、志麻くん」
ふたりの顔がこっちを向く。
「今日は美佐枝抜きね。三人で遊ぼっ」
「………」
「あ、文句言いたげ~」
「いや、いいよ、別に…遊ぶよ」
「でしょ。たまには美佐枝の愚痴も言わないと、ストレス溜まるわよ?」
「別に溜まってないんだけど…」
「え、マジで…?あんたがそう言うからには、本当にないんだろうけど…。あーあ、じゃ、盛り上がる話題もあんましなさそうね…。どうする?サテンじゃなくて、別のところ行く?」
「うーん…。あ、素敵なアイデアを思いついた」
絶対に、素敵じゃないと思う。
「志麻くんの家に行こうっ」
ほら。
「ユキ、天才」
「そんなの楽しくないってば」
「絶対楽しいって」
「美佐枝はもう行ったの?」
「ううん。まだ」
「ああ、彼女よりも先に上がり込んでしまう、この優越感っ。ユキ、天才」
「というわけで、決定~」
「ほら、いくわよーっ」
このふたりの強引さには、今でも敵わなかった…。

サキ・ユキコンビは、スーパーでたくさんのお菓子とジュースを買い込んだ。
これからどんな騒ぎが始まるやら…考えるだけで気が重くなる。
僕はそれを迎える家のことを考えてみる。
………。
あれ…?
よく思い出せない。
家族構成は…?
………。
家族の顔がおぼろげに浮かんでは消えた…。
その中に、大事な人がいたはずだ。
それは…誰だ?
………。
「どうしたの、突っ立ってっ」
どん、と背中を叩かれる。
僕はそのまま、その場にしゃがみ込んでしまう。
「あ、ごめんっ、痛かった?」
「ううん…違うんだ…」
「どうしたの? 顔色悪いよ?」
「そんなに嫌だった?」
「いや…気にしないで…」
早く家に行って、確かめたかった。
どうして、僕はこんな不安な気持ちでいるかを。

僕は家の前に立つ。
そこから足が動かなかった。
怖くて、どうしても、門をくぐれない。
「どうしたのよ、自分の家なんでしょ?表札も合ってるし」
「うん…」
「ほら、入ろうよ」
「………」
僕が立ち往生していると…
先に玄関のドアが開いた。
そこから顔を出したのは…見知った顔。
…母親。
「うちにご用ですか?」
そう訊いた。
「こんにちはーっ」
「ほら、ただいまって言いなさいよ」
「………」
「あの、賀津紀のお友達の方ですか?」
「はいっ」
「奥さん、お若いですねぇ」
「わざわざすみません。それでは、上がって、線香のひとつでもあげてやってください」
目の前が真っ暗になった。
僕は思い出した。
一番大事だった人の顔を。
そして、その人は…
もう、この世にはいなかった。
僕は逃げるように走り去っていた。
ああ、もう思い出さずにいればよかったんだ。
何も知らないまま、僕はあの人の願いごとを叶えていればよかったんだ。
僕は志麻賀津紀じゃなかった。
志麻賀津紀を演じていただけだ。
母親は僕の顔を見たって、眉一つ動かさなかった。
僕は、あの人の知る、誰でもなかったんだ。
サキさんやユキさんと同じ、賀津紀の友達のひとりでしかなかったんだ。
ああ、そうだったんだ…。
僕にとって一番、大事な人…
それは、志麻賀津紀、という人間だったんだ。
僕はその人と、長い時間過ごした。
そして、彼は最後に僕に願いを託した。
僕はその願いを叶えるために、ここまでやってきたんだ。
彼が初めて好きになった人…
美佐枝さんの、願いを叶えるために。
「ねぇ、志麻くんっ」
サキさんの声がした。
「志麻くんっ」
続いて、ユキさんの声も。
闇雲に走ってきたのに、ふたりは追いかけてきていたんだ。
「ねぇ…志麻くんは、志麻くんだよね?」
「馬鹿っ。ごめんね、志麻くん…なんかあたしたち、勝手に騒いで浮かれて…。いろいろ事情があるんだよね…。きっと、それは、あたしたちが知らないでいいことだよね。そっと、しておいてほしいよね?それとも…、聞いたほうがいい…?」
「あたしたちは、どっちでもいいよ」
「………」
僕は歪んだ顔をふたりに向けた。
「サキさん、ユキさん…ありがとうございます。本当に…」
「ううん」
「僕は…やらないといけないことがあるんです」
「うん…。わかる気がするよ」
「………」
「お菓子とジュース、ここに置いとくからね。だから、食べてね」
「ありがとうございます…」
僕は…
…こんな温もりを知っちゃいけなかったんだ。
僕は…
…人じゃなかったんだから。
いつか、還っていく存在なんだから…。
お守りの中の光りは、とっくに願いを叶え始めてたんだ…。
僕がこうして、人として存在していることが、始まりだったんだ…。
そして、僕は…
彼女の願いを叶えて、その役目を終える。
「志麻くんっ。いつまでも、あたしたち、友達だからねっ」

創立者祭を目前にした、校内は、ものすごい人の行き交いがあって、僕は何度も倒されそうになった。
でも、彼女に会うためにやってきた。
「よく先生に捕まらなかったものねぇ」
「そうだね」
「ごめんね、忙しくて、こんなところでしか話ができなくて」
「ううん」
「創立者祭は、一般客も入場OKだからさ…。ふたりで、楽しもうね」
「うん」
「あたし、忙しくても仕事、抜けてきちゃうから」
「うん」
「ま、あたしがいなくても、ユキとサキは暇だから、相手してやってよ」
「うん」
「あいつら、ほんと、志麻くんのこと好きみたいだからさ」
「うん」
「あいつらだったら、あたし妬かないから」
「うん」
「他の子だったら、許さないけどね」
「うん」
「………」
話は…終わったみたいだった。
僕は頷いてただけだった。
「じゃ、志麻くんが待ちに待ってた…、願いごと言うね」
「うん…。あのさ…訊いておくけどさ…」
「なぁに?」
「前言ってたみたいな、くだらないことじゃないよね?」
「雪降らしてとか、雨やませてとか?」
「うん…」
「大丈夫。そんなことないから」
「そ…よかった」
「うん。それでは、願いごとを発表します」
「うん…」
「志麻くん。ずっと、いつまでも…、あたしのことを好きでいてください」
ああ…
やっぱり、僕はこの人のことが好きでした。
本当に好きでした。
短い間だったけど、一緒に過ごした時間はかけがえのないものでした。
ユキさんとサキさんも好きでした。
四人で過ごす時間がとても好きでした。
そして…幸せでした。
「…志麻くん?」
だって…
「どうして泣いてるの?」
僕は、生涯、こんな温かな涙をきっと…知らなかっただろうから。
「ううん…」
「本当に、放っておけない子ね…。ほら、拭きなさいよ」
「うん…。美佐枝さん…」
「ん?」
「本当に…本当にありがとう」
「うん。じゃあ、戻るね」
「うん」
僕は、大好きな人の背中を見送りながら…
ずっと、泣き続けた。


さようなら、美佐枝さん。
僕はあなたを一生、好きで居続けます。


「今日もいないね…」
「あたし…、また、振られたのかなぁ」
「そんなことないって! あいつに限ってさ」
「あいつ、美佐枝にぞっこんだったじゃん。きっと、別の理由があるんだよ。それも。どうしようもないような…とても深い理由があったんだよ。また美佐枝に会えるように、今は頑張ってんじゃないかな…。だから、時間が経てばさ、またひょっこり現われるよ」
「………」
「あ、昨日の猫、今日もいるよっ」
「ほんと。ほら、美佐枝、昨日の猫だよ。飼い猫じゃないのかな? こんなキレイな毛並みして」
「うわ、可愛い顔してるわ~。ほら、美佐枝、抱いてみ」
「え? どうしてよ…。別にあたし、猫好きじゃないし…」
………。
……。
…。

1999年春

「もしもーし
 遠いわよ?
 うん…帰ってきちゃった
 うん、別にこれといってしたいことなかったし
 うん、そう。男子寮だけどね
 …そうかな
 あーあ、そういう人生なのかねぇ、あたしは
 ははは、ユキはひどいめに遭ってんだ
 サキはどうなの?
 ふーん…合ってる気がするわよ
 ほんとだって
 思ってたけど、言わなかっただけだって
 うん…うん…
 ………。
 そうね…
 うん。電話代もかかるし
 うん、また帰ってきたら、遊ぼうよ
 うん、大丈夫だと思う
 あ、そうだ
 あの猫、覚えてる?
 そうそう
 帰ってきたらさ、また現われたんだ
 うん、家のほうに
 だから、連れてきちゃった
 うん。妙になつかれてるんだよねぇ
 猫好きでもないあたしなんかのどこが気に入ったのやら
 はは…そうなのかねぇ
 うん、また遊んであげてよ
 じゃ、切るね
 うん
 うん、おやすみ」
………。
「ふぅ…。あ、あんた居たの?そうだ。コタツ出してやるか。猫なんだから、好きでしょ?猫はコタツで丸くなる~♪ってね

 ほら、おいで」
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