atwiki-logo
  • 新規作成
    • 新規ページ作成
    • 新規ページ作成(その他)
      • このページをコピーして新規ページ作成
      • このウィキ内の別ページをコピーして新規ページ作成
      • このページの子ページを作成
    • 新規ウィキ作成
  • 編集
    • ページ編集
    • ページ編集(簡易版)
    • ページ名変更
    • メニュー非表示でページ編集
    • ページの閲覧/編集権限変更
    • ページの編集モード変更
    • このページにファイルをアップロード
    • メニューを編集
    • 右メニューを編集
  • バージョン管理
    • 最新版変更点(差分)
    • 編集履歴(バックアップ)
    • アップロードファイル履歴
    • ページ操作履歴
  • ページ一覧
    • ページ一覧
    • このウィキのタグ一覧
    • このウィキのタグ(更新順)
    • おまかせページ移動
  • RSS
    • このウィキの更新情報RSS
    • このウィキ新着ページRSS
  • ヘルプ
    • ご利用ガイド
    • Wiki初心者向けガイド(基本操作)
    • このウィキの管理者に連絡
    • 運営会社に連絡(不具合、障害など)
ページ検索 メニュー
きっさんらが
  • ウィキ募集バナー
  • 目安箱バナー
  • 操作ガイド
  • 新規作成
  • 編集する
  • 全ページ一覧
  • 登録/ログイン
ページ一覧
きっさんらが
  • ウィキ募集バナー
  • 目安箱バナー
  • 操作ガイド
  • 新規作成
  • 編集する
  • 全ページ一覧
  • 登録/ログイン
ページ一覧
きっさんらが
ページ検索 メニュー
  • 新規作成
  • 編集する
  • 登録/ログイン
  • 管理メニュー
管理メニュー
  • 新規作成
    • 新規ページ作成
    • 新規ページ作成(その他)
      • このページをコピーして新規ページ作成
      • このウィキ内の別ページをコピーして新規ページ作成
      • このページの子ページを作成
    • 新規ウィキ作成
  • 編集
    • ページ編集
    • ページ編集(簡易版)
    • ページ名変更
    • メニュー非表示でページ編集
    • ページの閲覧/編集権限変更
    • ページの編集モード変更
    • このページにファイルをアップロード
    • メニューを編集
    • 右メニューを編集
  • バージョン管理
    • 最新版変更点(差分)
    • 編集履歴(バックアップ)
    • アップロードファイル履歴
    • ページ操作履歴
  • ページ一覧
    • このウィキの全ページ一覧
    • このウィキのタグ一覧
    • このウィキのタグ一覧(更新順)
    • このページの全コメント一覧
    • このウィキの全コメント一覧
    • おまかせページ移動
  • RSS
    • このwikiの更新情報RSS
    • このwikiの新着ページRSS
  • ヘルプ
    • ご利用ガイド
    • Wiki初心者向けガイド(基本操作)
    • このウィキの管理者に連絡
    • 運営会社に連絡する(不具合、障害など)
  • atwiki
  • きっさんらが
  • 志麻 1995年4月part1

きっさんらが

志麻 1995年4月part1

最終更新:2007年10月14日 15:50

rockshow

- view
管理者のみ編集可

1995年4月


「いいかい、よく聞くんだよ」
「ここに、お守りがある」
「この中にはね、光りが入ってる」
「ひとつだけ、願いごとを叶えることができる、光りなんだ」
「おまえは今からこれを持って、あの人の元へいく」
「そして、彼女の願いごとを叶える」
「わかったかい?」

ようやく出会えた彼女は、校門の横に立っていた。
下校する生徒の中から、誰かを探すように、ずっと背伸びをしていた。
僕は近づいていって、その隣に立つ。
「………」
彼女の顔が右から左へ、素早く戻っては、また左から右へと人混みを目で追っていた。
こっちを向いた時に目の前で手を振ってみたが、まったく反応がない。
………。
…やがて。
その目が探し人を見つけたのか、歓喜に見開かれた。
彼女が駆け寄る。
僕も後についた。
「あっ、五十嵐くんも、今から帰り?」
そう男子生徒に話しかけた。
「ああ。相楽も?」
「うん、偶然だね。 もし、よかったら…」
「そっちの子は? 別の学校の子みたいだけど…もしかして彼氏?」
「え…?」
「邪魔したら悪いね」
「おーい、五十嵐っ、早くしろよっ」
下から呼ぶ声がした。
「おぅっ」
五十嵐という男子生徒は、大きな声で応えて、坂を駆け下りていった。
「………」
呆然と立ちつくす、相楽さん。
その顔が、まるでロボットのようにこっちを向く。
「…あんた、だれよ」
「ああ、やっと気づいてもらえた」
「僕、志麻賀津紀(しまかつき)。見覚えあるでしょ。昔、お世話になったの。覚えてる?」
「…見覚えもないし、世話した覚えもない」
「あ、そ。じゃ、どっかで話そうよ」
「…あんたね」
「何?」
「あんたのナンパのおかげで…かんちがいされちゃったじゃないのよぉ―――っっ!」
背後から首を腕で締められる。
「苦しいっ、苦しいって!」
下校する生徒がくすくす笑いながら、見ていく。
「はぁっ、もういい、帰るっ」
「いや、だから、げほっ」
「何よ、まだ付きまとう気?」
「願いごとを言ってよ」
「はぁ?」
「僕は、君の願いを叶えに来たんだ。だから、それを叶えるまでは帰れない」
「じゃ、目の前から即刻消えて」
「…………そんな願いでいいの?」
「不満?」
「…そりゃ、それが願いなら、僕はいなくなるけどさ」
「でも、そんなんじゃ、気が済まないっていうかさ。あれだけお世話になったんだからさ…」
「…………志麻くんって言ったっけ?」
「そう。思い出してくれた?」
「ぜんっぜん。 だけど、思い出す努力はしてみようかなと思う。ここは人がおおいから、ほら、

行こ」

「で…どこで会ったって?」
「君が中学の時。その時、僕はまだ小学生だったけど。 確か、君はお母さんが入院してたから、

あの隣町の病院に居たんだよね」
「………」
「僕は病院の中庭にいた。車椅子に乗って…、それで…」
「猫を抱いて」
それは彼女が言っていた。
「そう。思い出してくれた?」
僕はうれしくなった。
「思い出したわ…。志麻くんって言ったんだ…名前さえ聞いてなかったはずよ」
「あれ? そうだっけ」
「でも…、元気になったのね」
「ああ、うん。今はこうして自由に歩けるよ」
「それはよかった。おめでとう」
笑顔で言ってくれた。うれしかった。
「うん。君のおかげだよ」
「………。ね、志麻くん」
ふと、真面目な顔つきになる。
「うん、なに?」
「あたしは…あの時、なにもしていない。話をしただけじゃない」
「うん」
「元気な姿を見れてよかった。それは、本当によかったと思ってる」
「うん」
「でも…何も恩に着せるようなことはしていないの。わかる?」
「いや…でも…あの時の僕は、本当に勇気づけられたんだ。だから、その後も頑張ることができた

。こうして、元気になることができた」
「そう思ってくれるのはうれしいわよ。会いに来てくれたことも。それだけで、あたしは十分よ」
「いや…だから、僕がそうしたいんだ」
「そうさせてほしいんだ」
「…………願いごと?」
「そう」
「はぁ…」
僕の頑なな気持ちが伝わったのか、ため息をついた後、ようやく彼女は考え始めてくれた。
「じゃ、ジュースでもおごって」
「えぇ?」
「ジュース。100円ぐらいだったらいいでしょ?」
「そんなことでいいの?」
「いいわよ」
「もっと、真剣な願い事にしてくれないかな…」
「真剣よ。のど渇いてるもの」
「いや、真剣なのかもしれないけど…なんていうのかな…。いいかい?」
僕は注意深く聞くようにと、人差し指を上げる。
「願いごとは、なんでも叶えられるんだ。僕はそういうモノを持ってるんだ。だから、遠慮しない

で本当に叶えたいことを言ってくれればいいんだ」
「そういうモノを持ってる…?」
「なにそれ? 魔法のランプか何か?」
「ランプじゃないけどさ…でも、そういうふうに言われたんだ。なんでも叶うって」
「志麻くんって、ロマンチストね。あたし、そういうの、信じられないんだ」
「いや、本当なんだよ。だから、信じてよ」
「ふぅん…じゃあ、今から雪を降らせてみて」
「えぇ?」
「今度は何よ」
「そんなの冬になれば、見られるよ」
「春に降ったら、素敵じゃない」
「いや、素敵かもしれないけどさ…そんなのすぐ終わるし…。本当に、そんな願いでいいの?」
「いいよ」
「もったいないよ。別のにしようよ」
「あんた、なんでも叶えるって言っておいて、文句ばっかね…」
「だって、なんでも叶うのに、くだらない願いばっかだから…」
「………」
くだらない、というのが気に障ったのだろうか、あからさまに血相を変え、そっぽを向いた。
「ああ、ごめんなさい…」
「あんた、そんな奴だった?」
「え? 何かヘンかな…」
「なんか、びくびくしてる。あの時はもっと、なんていうか…自分の運命を見据えてて…。今より

もっと、大人びてた。顔つきも変わったし」
「そ…」
「ごめん、こっちも失礼なこと言っちゃったね」
「ううん」
「もう少しさ…考えてみる。時間もらえる?」
「うん、もちろん。でも、できるだけ急いでね」
「うん」


「おはよう」
「………」
「美佐枝、この子だれ? 知り合い?」
「なかなか可愛い子じゃない。五十嵐くんやめて、この子にしたの?」
「………」
相楽さんの拳がぷるぷると震えている。何か…身の危険を感じる。
「校門なんかで…、待ってんじゃないわよ――――っ!」
また首を腕で絞められる。
「苦しいっ」
「美佐枝、やめてあげなよ、可哀想だよ」
「けほっ、はぁ…はぁ…。そんなの、君の願いを聞くまでそばにいるんだよ…当然じゃない?」
「………。ごめん、サキ、ユキ、先に行っててくれる?」
「うん、ごゆっくり~」
「後で話聞かせてね~」
相楽さんの友達ふたりが、坂を下りていった。
「………。じゃ、願いはあんたが勘違いされるような行動を取らない。これでいい?」
「勘違いって?」
「今されてたでしょっ…。あなたは男の子で、あたしは女の子。想像つかないの?」
「ああ…そういうこと。相楽さんは、彼氏がいるんだね」
「…直球で訊かないでくれる? いないわよ…」
「あ、そうなの。なら、構わないことない?」
「構わないことない。彼氏はいなくても、好きな人はいるから。 って、なんでこんなことあんた

に教えにゃならんのだっ」
「ああ、そうなんだ。相楽さん、美人だから、大丈夫だよ」
「…何が?」
「告白しようよ。僕もついてくからさ」
「…どうして」
「え?」
「どうして、あんたの目の前で告白しなけりゃならないのよぉ――っ!」
「うわっ、苦しいっ!」
「また絞められる。」
「けほっ、けほっ。力になれるんじゃないかと思ってだよ…」
「…あんた、すでに邪魔してるのよ。自覚ある?」
「え? そうだったの?」
「はぁ…」
「でも、僕は君の願い事を叶えられるんだからさ、それを有効に使ってよ」
「そうね」
「じゃ、願いは、その男の子と結婚してたくさんの子供を産む、でいい?」
「今から…、そんな将来設計入れるかぁぁぁぁ――――――っ!」
「苦しいよっ!」
「あたし、高校生なのよ…」
「ああ、早かったね…。じゃ、どうしよう。その男の子が君のことを好きになる、でいい?」
「ダメよ、そんなの…。人の心を操作したりしちゃ…」
「そうか…ごめん」
「ま、その願いを叶えるモノに、そんな力があるとは思えないけど」
「あるよ」
「………」
ギロリ、と睨まれる。
「ああ、ごめん。ある、かもしれない」
「………」
「いや、あれば、いいね。はは…」
「はぁ…願いごと早く決めなくちゃ、こうして付きまとわれ続けるのね…」
「ひどい言われようだなぁ」


「おかえり」
「ドロップキ――――――――――――クッ!」
どがっ!
「いきなり、ひどいなぁ」
「だから、校門で待つなっていうのっ!」
「校門で待ってなくちゃ、見つけられないよ」
「見つけてもらわなくても結構よ」
「え? 探してくれるの?」
「………」
「はは、くれないよね…」
「美佐枝、本当に、この子に付きまとわれてるのね」
「あ、うん…見ての通りよ」
相楽さんの友達の、サキさんと、ユキさんだ。
「でも、可愛い子だから、悪くないんじゃない?」
「そういう問題じゃないでしょっ」
「まぁ、今の美佐枝にしてみては、迷惑だわね~。なんたって、我が校のアイドル、五十嵐くんに

接近中なんだもんね」
「ああ、好きな男の子、五十嵐って言うんだ」
「あぁっ、何ばらしてんのよ」
「諦めさせようとしてるんじゃない。ね、君。名前、なんて言うの?」
「志麻賀津紀」
「志麻くん。美佐枝はね、あんたのような子はタイプじゃないのよ。五十嵐くんみたいに、男らし

くないとね」
「でも、あたしはこの子のほうが好みだなぁ。もったいないよ、美佐枝」
「ユキっ」
「ああ、ごめん」
「というわけだからね、志麻くん。君に見込みはなし。だからもう付きまとうのはよしてあげて」
「そういう問題じゃないんだけど…」
「よぅ、おまえたち、何やってんのっ」
どん、と相楽さんの肩が叩かれる。
「あっ、五十嵐くんっ」
長身の男が立っていた。確か、二日前にも見た。
「お、相楽の彼氏だっけ? みんなに紹介してんの?」
「ち…違うわよっ」
「そんなに血相変えて否定しなくてもいいじゃん」
「本当に違うのよっ」
「そうそう。美佐枝、迷惑してんだから」
「何? 相楽のストーカー?」
「そんなカンジ」
「じゃ、俺が一度シメてやろうか?」
相楽さんに、何度も締められてますけど…。
「でも、ひ弱そうだから、相楽ひとりで十分か」
「どういう意味よっ」
「なんてな。ほんと、困ってたら、言ってこいよ」
「あ、うん。ありがと」
五十嵐さんはそのまま坂を下りていった。
「脈ありだよねぇ、絶対」
「いけるよ、美佐枝」
「そうかねぇ…」

「五十嵐さんとのことは、僕が何もしなくても、うまくいきそうだね」
「…そんなことわからないわよ。サキとユキが言ってるだけでしょ。それに、あんたには五十嵐く

んのことをとやかく言われたくないの。もう口にしないでくれる?」
「え?」
「………」
「あ、うん…わかったよ」
「でも、志麻くん。あんたは不思議ね」
「何が?」
「あたしが、他の男の子を好きでも…その話題で盛り上がっても、まったく嫌な顔しないんだね」
「どうして嫌な顔なんてする必要があるの?」
「妬かないんだね、ってこと」
「妬く?」
「意味わかってる?」
「あ、うん…たぶん…」
「そういうことに疎いんだと思う」
「あたしも、そう思うよ」
「でも、あたしの願いを叶えるために、わざわざ毎日会いに来てくれる」
「うん」
「だから、不思議」
「そう?よくわからないよ、自分でも」
「でも、あたしはあんたのそいういうところは嫌いじゃないな」
「どうして?」
「あんた、ほんと、なんでも訊き返す子ね…」
「ごめん…」
「別にいいよ。 普通、男女の仲なんてさ、恋愛の見返りしか考えないってところあるしさ。特に

こんな年頃のあたしたちじゃさ」
「そうかな」
「あたしの周りじゃ、そう。だから、あんたは、なんか純粋でいいねって話」
「そう…。僕はただ、迷惑にだけはならないようにしたいだけ」
「はは…十分なってるけどね」
「えっ」
「ま、それも純粋な証拠だから、いいよ。きっと、あんたぐらいの歳で、あんたみたいな子、いな

いよ。 誇りに思いなさい」


翌日は雨が降った。
まだまだ冷たい雨。
その雨に打たれて、桜の花びらが、地面にばらまかれていく。
僕は両腕で体を抱えるようにして、待ち続けた。
「あんたは、風邪引きたいのか」
「…え?」
雨がやんでいた。
いや…相楽さんが、傘の中に僕を入れてくれていたのだ。
その後で、雨は降り続けていた。
「傘ぐらい持って、待ちなさいよ。それか、雨の日は休みにするとか。ああっ、待つことを許した

わけじゃないのよ?あんたがいないことに越したことはない。それは変わらないわよ。ただ、こん

なふうにずぶ濡れでまたれてると、心配するじゃない」
そういや…今日はまだ、誰も校門から出てきていなかった。
「まだ五時間目が終わったとこ」
不思議そうに辺りを見回してると、彼女はそう教えてくれた。
「ほら、この傘、貸してあげるから、ちゃんとさして持ってなさい。あと、タオル。 あーあ…何

でこんな奴の世話してんだ、あたしは?」
「ごめん…」
「謝るぐらいなら、世話させないでよ」
「うん、ごめん…」
「………、ほら、ちゃんと拭いて。あたしを待つんなら、周りの子が羨ましがるぐらいの男の子で

いなさいよね」
「そんなの無理だよ…」
「そう? 素質はあると思うけど」
「え? そうなんだ…」
「あたしの趣味じゃないけどね」
「なんだ…」
「残念がってはくれるんだ」
「え?」
「ううん。あたしの願いごとにしか興味ないのかと思ってたから」
「ああ、そうだ。願いごと、決まった?」
「はぁ…結局それかい…」
「じゃ、雨やませてよ」
「そんなの待ってたら、いつかはやむよ」
「じゃ、やんだら、願いが叶ったことになって、あんたは家に帰れる。ここにも二度と来なくて済

む、と。そういうことでいい?」
「ダメだよ…。あのさ、相楽さん…僕は真剣なんだ」
「はぁ…みたいねぇ。あたしって、一体、あなたにどんな話しをして、感銘を受けてもらえたのか

しら?」
「え…」
「病院での話。教えてよ。あたし、忘れたから」
「それは…僕もよく覚えてないけど」
「はぁ? あっきれたぁ…。あんた、あたしの話を聞いたから、頑張って病気を克服できたんでし

ょ?」
「うん、そうだけど」
「それを忘れられるなんて…大した説法だったのね」
呆れたように言われた。
「あのさ…」
「なによ」
「話の内容じゃなくて、きっと、相楽さんと話せたことに意味があったんだよ」
「どうして?」
「相楽さんってさ、前向きだから」
「まぁね…それはよく言われるわ。あーあ、むやみに知らない人と話すもんじゃないわねぇ」
「ごめん…」
「だから、謝るなら、来ないの」
「じゃ、謝らない」
「はぁ…。授業始まるから、もういくわ。後一時間、辛抱してるのよ?」
「うん」


その日も、相楽さんの帰りを校門で待っていた。
それが日常になっていた。
そして、毎日のように首を絞められたり、蹴られたりした。
今日も、そうされるだろうか。
でも、なんだか、それもいいような気がしていた。
「お」
そんな僕を見つけて、寄ってくる男子がいた。
「この前のストーカーくんじゃん」
五十嵐さんだった。
「また、相楽を待ってんの?」
「うん」
「君、変質者には見えないんだけど」
「変質者じゃないです」
「ありゃ、そうなの。でも、相楽の奴が好きで待ってるんだろ?」
「いえ、そういうわけでもないんです」
「え?」
「僕は、相楽さんに昔、お世話になった人間なので、その恩返しをしようと思ってるんです」
「ふぅん。それで付きまとってたのか」
「あいつのことが好きってわけでもなかったのか…。じゃあ、頼みたいことがあるんだけどさ、ち

ょっといいかな」
「え?」

そこには、別の高校の制服を着た女生徒が待っていた。
「あいつの女友達に頼むのも、気が引けてさ…。こういうのは男のほうがいいと思って」
なんのことだかさっぱりわからない。
「相楽が俺のこと、慕ってくれてるのはわかってる。でも、俺、こうして彼女がいるんだ。最近は

相楽も積極的になってきてるし…時間の問題かと思って。今のうちにそれとなく伝えてやってもら

えないかな。俺も面と向かって言われたら、どう答えていいかわからないしさ…」
「五十嵐くんは、みんなにいい顔しすぎるんだよ」
彼女がそう言った。
「それは、性分なんだ、勘弁。だからさ…な」
五十嵐さんは僕の肩を叩いた。
「彼女がいるって伝えればいいんですか」
「そ。でも、気を回してあげてくれよな。あんまり傷つけないように」
「そんな器用なことできません。きっと、事実だけ伝えることになると思います」
「ありゃ…困ったな」
「それはもう、仕方ないんじゃない?」
彼女が言った。
「でも、きっと…そのほうがいいよな?」
五十嵐くんは彼女に確認した。
「うん。これからも一緒に学校で過ごしていくんでしょ」
「だな。じゃ、君…ええと、名前はなんて言ったっけか」
「志麻です」
「志麻くん、本当にすまないけど、よろしく頼むよ」

僕は相良さんの帰りを校門で待ち続けた。
「はぁ…」
ため息をつく。
僕は、彼女の願いを叶えるどころか…
まるで彼女に不幸を運んでくる疫病神のようだった。
こんなことになるんなら、あの五十嵐という人の話を聞かなければ良かった。
でも、頼まれてしまったからには、それを告げなければいけない。
五十嵐という人は誠意を持って、僕に頼んできた。なら、誠意を持って、それに応えなければなら

なかった。
ああ、でも…
「はぁ…」
「どうしたの、しけた顔して」
相楽さんの声。
いつもなら自然と心が弾むはずが、今は、どすんと重しを乗せられたかのようだった。
「ほんと、いくら言っても、あんた、毎日ここに来るのね。あーあ、仕方ないか…。あたしが願い

ごと、決めないんだもんね」
「そうだね…」
「ほんとに元気ないわね?あたしの前では、無理してでも元気でいなさいよ。恩人なんでしょ?」
「うん」
「っていうのも、無理な注文よね。誰だって、落ち込む時はあるものね。どれ。お姉さんが話を聞

いてあげよう。相談なさい」
言って、胸を叩いた。
「………」
「ほら、言ってみなさい。恋でもした?」
「そうかもしれない…」
「えっ、マジっ?」
「今、かなり適当に言ってみたんだけどさ…。そういうこと、疎いって言ってたのに、すごいじゃ

ない。でも、それでどうして落ち込んでるの?」
「それは…、僕はその人に…悲しい報告をしなければいけないから」
「どうして?」
「…頼まれたから」
「そんなことしないといけない義理があるの?」
「ないけど…。でも、それは、今言ったほうがいいって、その人も言ってたから…」
「はぁん…大体見当がついた。あんたの恋してる子には、好きな人がいるのね。それで、その相手

にはその気がない、あるいは、彼女がいる。それを伝えてくれって、頼まれたのね」
「よく…わかるね…」
「わかるわよ、そんなの。でも、あんた…本当に純粋な奴ね」
「そうなのかな…」
「普通の男なら、それって、逆に喜ぶことよ?」
「どうして?」
「だって、好きな人が振られるわけでしょ?」
「そんなの悲しいよ」
「振られなかったら、あんた、ずっとその子を見てるだけなのよ?」
「え…?」
「つまり、自分にもチャンスが巡ってきたってわけじゃない。その子、好きな人がいなくなっちゃ

うのよ?失恋のショックを抱えて。 そんな時、その子のそばにいて慰めてあげたら、その子、あ

んたのことを選んじゃうかもよ。そう考えると、ほら、悪いことじゃないって思えない?」
「思えるわけないよっ!!」
「え…」
彼女が言葉を失うほど…
それほど、僕は大声をあげていた。
「思えるわけない…。相楽さんが、僕の立場だったら、そう思うの? 思えるの?その人のこと好

きなのに…好きなのに…」
「ごめん…」
相楽さんは謝った。
「あたしの周りにいる奴…ユキとかサキとかはさ…。そういう風に前向きに考える奴ばっかだから

…、一緒にしちゃった…。でも、あんたは違うよね。ごめんね」
「ううん、僕のほうこそごめん。怒ったりして…」
「いいのよ。その純粋さは大切にして。ずっと、ずっと持ってて。あたしはさ…、嫌いじゃないか

ら。好きだから。………」
「………」
僕らは黙り込んでしまう。
そこへ…
「お―――い、おふたりさ―――ん」
坂の下から呼ぶ声。
僕たちは、振り返る。
そこに、五十嵐さんと…そして、他校の彼女がいた。
「ダブルデート、いくか―――?」
彼女がもうっ、とその肘をこついた。
「じょーだ―――ん、じゃあな――――っ」
肩を並べて、去っていった。
「………」
五十嵐さんの中では、最初からこういう段取りだったんだ。
僕が相楽さんに告げた頃を見計らって、ふたりで現われて、去っていく。
そうすれば、明日からも、自然に相楽さんと笑って話し合えると思ってたんだ。
でも…
僕はまだ言ってなかった。
「あ…、あたし、馬鹿だ…」
相楽さんは呆然と立ちつくしたまま言った。
「それって、あたしのことだったんだ…………」
そして…
坂を走り去った。
僕が追いつけないほどの速さで。
「志麻 1995年4月part1」をウィキ内検索
LINE
シェア
Tweet
きっさんらが
記事メニュー
「メニュー3」は管理者からの閲覧のみ許可しています。

ログイン

ログイン
記事メニュー2
「メニュー3」は管理者からの閲覧のみ許可しています。

ログイン

ログイン
人気記事ランキング
  1. I've Never Been To Me
  2. Take on me
もっと見る
最近更新されたページ
  • 6305日前

    主な登場人物
  • 6305日前

    ニコニコ動画関連
  • 6485日前

    おまけ 関白宣言
  • 6485日前

    まいじゃすてぃす
  • 6485日前

    読み方のススメ
  • 6485日前

    おまけ スタンド・バイ・ミー
  • 6485日前

    志麻 1995年4月part2
  • 6485日前

    2003年4月15日(火)part2
  • 6485日前

    志麻 1995年4月part1
  • 6485日前

    2003年4月14日(月)
もっと見る
人気記事ランキング
  1. I've Never Been To Me
  2. Take on me
もっと見る
最近更新されたページ
  • 6305日前

    主な登場人物
  • 6305日前

    ニコニコ動画関連
  • 6485日前

    おまけ 関白宣言
  • 6485日前

    まいじゃすてぃす
  • 6485日前

    読み方のススメ
  • 6485日前

    おまけ スタンド・バイ・ミー
  • 6485日前

    志麻 1995年4月part2
  • 6485日前

    2003年4月15日(火)part2
  • 6485日前

    志麻 1995年4月part1
  • 6485日前

    2003年4月14日(月)
もっと見る
ウィキ募集バナー
新規Wikiランキング

最近作成されたWikiのアクセスランキングです。見るだけでなく加筆してみよう!

  1. MadTown GTA (Beta) まとめウィキ
  2. AviUtl2のWiki
  3. R.E.P.O. 日本語解説Wiki
  4. シュガードール情報まとめウィキ
  5. 機動戦士ガンダム EXTREME VS.2 INFINITEBOOST wiki
  6. ソードランページ @ 非公式wiki
  7. シミュグラ2Wiki(Simulation Of Grand2)GTARP
  8. ドラゴンボール Sparking! ZERO 攻略Wiki
  9. 星飼いの詩@ ウィキ
  10. ヒカマーWiki
もっと見る
人気Wikiランキング

atwikiでよく見られているWikiのランキングです。新しい情報を発見してみよう!

  1. アニヲタWiki(仮)
  2. ストグラ まとめ @ウィキ
  3. ゲームカタログ@Wiki ~名作からクソゲーまで~
  4. 初音ミク Wiki
  5. 検索してはいけない言葉 @ ウィキ
  6. 発車メロディーwiki
  7. 機動戦士ガンダム バトルオペレーション2攻略Wiki 3rd Season
  8. Grand Theft Auto V(グランドセフトオート5)GTA5 & GTAオンライン 情報・攻略wiki
  9. オレカバトル アプリ版 @ ウィキ
  10. 英傑大戦wiki
もっと見る
全体ページランキング

最近アクセスの多かったページランキングです。話題のページを見に行こう!

  1. 参加者一覧 - ストグラ まとめ @ウィキ
  2. モンスター一覧_第2章 - モンスター烈伝オレカバトル2@wiki
  3. 魔獣トゲイラ - バトルロイヤルR+α ファンフィクション(二次創作など)総合wiki
  4. 高崎線 - 発車メロディーwiki
  5. 近藤旬子 - 馬主データベース@Wiki
  6. 地獄のデザイナーさん1 - 【トレパク】 きりつき 検証まとめwiki 【地獄のデザイナーさん】
  7. 召喚 - PATAPON(パタポン) wiki
  8. 細田守 - アニヲタWiki(仮)
  9. ステージ攻略 - パタポン2 ドンチャカ♪@うぃき
  10. 鬼レンチャン(レベル順) - 鬼レンチャンWiki
もっと見る

  • このWikiのTOPへ
  • 全ページ一覧
  • アットウィキTOP
  • 利用規約
  • プライバシーポリシー

2019 AtWiki, Inc.