迷宮よりガレヴァントゥーナ
皇国発足以前を取り扱った歴史専門書から児童向けに刊行された絵本まで、最も一般的なものとして描かれているガレヴァントゥーナの想像図。
概要
迷宮より来たるもの。
思考と渇望を顕す、事象存在の一。
様々な伝承に顔を見せどもその実態は杳として知れない、神代の魔獣。
願う者の召喚に応え、彼の知らぬ知識か召喚者の魂と引き換えに、願いを叶えるとされている。
以下、詳細については調査を鋭意継続中。
関連事項
暴帝の秘術について
彼の理論の基礎。世界を欺き理を弄くり、無いはずのものを存在させ、起きぬはずの事を起こす。
騙し絵。空間歪曲。単なる迷宮を創り出すだけではなく、法則や現象、存在そのものを歪ませる。
世界干渉の一端。魂の欠片の状態を完全に固定し、変化させない事で魔法・異能の一切を封じる。
最秘奥。世界に実在の確証を問い質し、相手の存在自体を否定し消失させる。
事象展開『実存証明の破綻』
そして星と三つ子の月は滅びの狂想曲を謳う
発生についての一伝承(トゥルシィ=アーキィによる覚え書きNo.31784より一部抜粋)
(前略)
ガレヴァントゥーナは、その生態はおろか、姿も、実在するか否かすらもが未だ明らかになっていない事象存在である。
魔道書から民間の御伽噺まで、文献中には記述が数多く確認できるのだが、その内容はいずれも一定せず、また実際の目撃情報については全く存在していないと言って良い。
この魔獣について、今、私の手元に興味深い資料がある。
先ほど発掘が開始されたある遺跡から出土した、一枚の石版。
その遺跡の年代より更に古い時代の風聞について刻まれたものであるが、その中にガレヴァントゥーナの名が登場している。
信憑性に関しては現段階では何とも言えないが、ガレヴァントゥーナに関する現在最古の記録として、その物語のあらましを簡単に記しておく。
※
かつて、広大な版図を誇った帝國があった。
その何代目かの皇帝ガレヴァントゥーナは当代に並ぶ者の無い程の魔術師であり、類稀なる才能と情熱を持っていた。
臣も民も、この皇帝の下で帝國は一層の繁栄を見るだろうと信じていた。
だが、彼の情熱の全ては真理の探求と魔術師としての自己の向上にのみ向けられていた。
時を置かずして、他者を顧みない彼の治世によって国は荒れ果て、人心は荒廃した。
やがて臣全てを己の儀式の生贄として虐殺した彼は、王宮に結界を張って不可侵とし、そこで研究に没頭する。
民は、或いは飢えて死に、或いは争い合って死に、僅かに残った者は国外に救いを求めて旅立ち、国土は無人の荒野と化した。
何も無くなった荒野の只中にぽつんと聳え立つ王宮。
結界に守られ、何者も入る事の出来ないそこで只ひたすらに研鑽を続ける魔術師の御伽噺だけが、遠き地にて囁かれ続けた。
だが数百年か数千年かが経ったある日、そこに眠るはずの宝を当て込んだ盗掘団が王宮に辿り着いた時、結界も主の姿もそこには無かったという。
おびただしい数の書物も、ありとあらゆる聖物・呪物も、生け贄たちの累々たる屍すらそのまま残っていたが、宮殿は幾霜の果てに客人の歓迎をも忘却した廃墟の様を呈していた。
※
民を捧げ、国土を捧げ、時を捧げ、心までも捧げ尽くしたその果て、遂に彼の皇帝は事象の領域にその手をかけ、現世から姿を消したのだ、とその石版は伝える。
もしもここに記された通りだとするならば、ガレヴァントゥーナはかつて人であったという驚くべき事実が存在する事になる。
資質ある者が気が遠くなるほどの犠牲と時間を支払ったとして、人が己が手で事象存在に等しい域へ達するなどという事は果たして可能なのであろうか。
この疑問は、
(後略)
最終更新:2013年05月20日 02:05