OP
闇の中にいた。
深い闇だ。
一寸すら先が見えない。
余りの暗さに、自身すら見えない。
これに似た闇に、僕は覚えがあった。
それは、ハーゴンを討つ旅で何度も見た死の闇か。
いや、違う。
これは多くの守るべき人々の、命を懸けて守った人々の、疑いと猜疑の目。
この冷たく絶望的な、人の闇だ――――。
一寸すら先が見えない。
余りの暗さに、自身すら見えない。
これに似た闇に、僕は覚えがあった。
それは、ハーゴンを討つ旅で何度も見た死の闇か。
いや、違う。
これは多くの守るべき人々の、命を懸けて守った人々の、疑いと猜疑の目。
この冷たく絶望的な、人の闇だ――――。
「――――――はッ」
深い闇から、慌てたように目を覚ます。
だが、目を覚ました先に広がったのも一面の闇だった。
余りにも夢に似た黒い風景に、今だ夢の中にいるのではないかと錯覚しそうになる。
それでも何とか眼を凝らせば、薄らと人影が見える。
人がいる。
人がいる。
何人もの人がいる。
大きな影、小さな影。
影に覆われ顔こそ判別できないものの多種多様の人間がいた。
だが、目を覚ました先に広がったのも一面の闇だった。
余りにも夢に似た黒い風景に、今だ夢の中にいるのではないかと錯覚しそうになる。
それでも何とか眼を凝らせば、薄らと人影が見える。
人がいる。
人がいる。
何人もの人がいる。
大きな影、小さな影。
影に覆われ顔こそ判別できないものの多種多様の人間がいた。
「おはよう諸君」
声が響いた。
同時に暗闇の一角、見上げる高台に光が灯る。
闇を穿つ光の下、現れたのは神父だった。
神父の両脇には二つの影が見える。
一つはこの暗闇の中でも眩い程の輝きを放つ黄金の騎士だった。
騎士は笑みを浮かべながら、紅蓮ような紅い双眸で眼下の我等を見つめている。
もう一つは禍々しい赤槍を手にした蒼い槍兵だった。
槍兵は不満気な表情で、どこでもなく明後日の方向を見つめていた。
同時に暗闇の一角、見上げる高台に光が灯る。
闇を穿つ光の下、現れたのは神父だった。
神父の両脇には二つの影が見える。
一つはこの暗闇の中でも眩い程の輝きを放つ黄金の騎士だった。
騎士は笑みを浮かべながら、紅蓮ような紅い双眸で眼下の我等を見つめている。
もう一つは禍々しい赤槍を手にした蒼い槍兵だった。
槍兵は不満気な表情で、どこでもなく明後日の方向を見つめていた。
「早速だが、今から君達には殺し合いをしてもらう」
突然の衝撃とも言える神父の発言。
だが集められた人間のざわめきは思いのほか少ない。
いや、むしろ膨れ上がってゆくのは警戒と敵意か。
だが集められた人間のざわめきは思いのほか少ない。
いや、むしろ膨れ上がってゆくのは警戒と敵意か。
「フザケるなよ。人間。
誇り高き竜族の王たるこの竜王が、何故貴様等如きに指図されねばならん?
まして殺し合いなど、戯言も大概にせよ」
誇り高き竜族の王たるこの竜王が、何故貴様等如きに指図されねばならん?
まして殺し合いなど、戯言も大概にせよ」
始めにその敵意を表に向き出し、名乗りを上げたのは、かつて自分の先祖が戦ったと言う竜の王。
その高名を聞いた黄金の騎士は真紅の眼を細めた。
その内に沸きあがる感情は怒りか、騎士の空気が目に見えて張り詰めてゆく。
その高名を聞いた黄金の騎士は真紅の眼を細めた。
その内に沸きあがる感情は怒りか、騎士の空気が目に見えて張り詰めてゆく。
「たわけ。天上天下に真なる王は我独り。
有象無象の雑種ごときが王を名乗るとは、何たる不埒。
その罪、万死に値するぞ」
有象無象の雑種ごときが王を名乗るとは、何たる不埒。
その罪、万死に値するぞ」
騎士が指を鳴らす。
それを合図に騎士の後方の空間がグニャリと渦を巻いた。
その歪み、数にして十三。
全ての歪みからは例外なく、見るも絢爛な武器が顔を出していた。
かつて、幾多の武具を扱ってきた自分には理解できる。
宙に浮かぶその全てが、ロトの剣に匹敵する程の掛け値なしの宝剣、宝具の類だった。
それを合図に騎士の後方の空間がグニャリと渦を巻いた。
その歪み、数にして十三。
全ての歪みからは例外なく、見るも絢爛な武器が顔を出していた。
かつて、幾多の武具を扱ってきた自分には理解できる。
宙に浮かぶその全てが、ロトの剣に匹敵する程の掛け値なしの宝剣、宝具の類だった。
「ギルガメッシュ」
静止するような神父の呼びかけを、黄金の騎士は鼻で返す。
「ふん。どうせ実演に一人は必要なのだろう?
ならば、我がここでこの雑種を戒めても問題なかろう?」
ならば、我がここでこの雑種を戒めても問題なかろう?」
「この私が雑種だと? 無礼者めが!
この竜王に対しその無礼。万死に値するのは貴様ほうだ!
見るが良い。これが竜の王たる我の真の姿よ――――!」
この竜王に対しその無礼。万死に値するのは貴様ほうだ!
見るが良い。これが竜の王たる我の真の姿よ――――!」
人間の殻を破り捨て、その名通り竜王の姿が竜へと変わってゆく。
覇者たる風格と威厳を兼ね備えたその双眸は見るもの全てを威圧する。
その巨体と強力を前に、対峙するものは絶望しか抱くことができないだろう。
これが、先祖が打ち倒したと言う竜の王、真の姿か。
だがそれを目の前にしても黄金の騎士の余裕は変わらない。
覇者たる風格と威厳を兼ね備えたその双眸は見るもの全てを威圧する。
その巨体と強力を前に、対峙するものは絶望しか抱くことができないだろう。
これが、先祖が打ち倒したと言う竜の王、真の姿か。
だがそれを目の前にしても黄金の騎士の余裕は変わらない。
「ほう。巨大な蜥蜴もいたものよな。
だが、その醜さ見るに耐えん。早々に消えろ雑種。
せめて死に様でこの我を興じさせよ」
だが、その醜さ見るに耐えん。早々に消えろ雑種。
せめて死に様でこの我を興じさせよ」
号令一下、閃光のように十三の宝具が打ち出された。
無造作に放たれるそれは絶対の死を持った魔弾だった。
その早さと数に避けるは叶わず。
その破壊力は直撃すれば待つのは死しかない。
無造作に放たれるそれは絶対の死を持った魔弾だった。
その早さと数に避けるは叶わず。
その破壊力は直撃すれば待つのは死しかない。
だが、その魔弾を前にしても、なお竜の王は最強だった。
獰猛に振るわれる両腕に、打ち出される魔弾は悉く叩き落とされる。
光り輝く宝具の雨も、彼の竜王を前にしては石礫も同然だ。
前に踏み出すその足取りは一瞬たりとも止まることはない。
そして、ついにその足は神父と騎士のいる高台まで後二歩と迫り、
獰猛に振るわれる両腕に、打ち出される魔弾は悉く叩き落とされる。
光り輝く宝具の雨も、彼の竜王を前にしては石礫も同然だ。
前に踏み出すその足取りは一瞬たりとも止まることはない。
そして、ついにその足は神父と騎士のいる高台まで後二歩と迫り、
「――――天の鎖(エルキドゥ)」
天から現れた無数の鎖に全身を絡め取られた。
だが、その行為は無意味だろう。
彼の竜王を拘束するなど、いかなる道具、魔術を用いても不可能だ。
その認識は竜王当人も同じなのか、鎖を引き千切らんと力を込める。
だが、その考えはすぐさま裏切られる事になった。
竜王の力を受けても、鎖はただ軋みを上げるだけ一向に破壊される気配を見せない。
何たることか、その鎖は完全に竜王の行動を律している。
それでも騎士は、不満気に僅かに眉を顰める。
だが、その行為は無意味だろう。
彼の竜王を拘束するなど、いかなる道具、魔術を用いても不可能だ。
その認識は竜王当人も同じなのか、鎖を引き千切らんと力を込める。
だが、その考えはすぐさま裏切られる事になった。
竜王の力を受けても、鎖はただ軋みを上げるだけ一向に破壊される気配を見せない。
何たることか、その鎖は完全に竜王の行動を律している。
それでも騎士は、不満気に僅かに眉を顰める。
「……よもや我が鎖が軋みを上げるとはな。かつて天の雄牛すら束縛した鎖なのだが」
「先ほどから蜥蜴だの牛だの雑種だの……。フザけるなよ、人間ッ!!
私は誇り高き竜の王、竜王だッ!! 人間如きにこの私が縛れると思っているのかァ!」
私は誇り高き竜の王、竜王だッ!! 人間如きにこの私が縛れると思っているのかァ!」
騎士の度重なる無礼な発言に、狗のように鎖に縛られるこれ以上ない屈辱に、ついに竜王の怒りが爆発した。
火がついたように竜王が暴れ狂い、その勢いに天の鎖が悲鳴を上げる。
火がついたように竜王が暴れ狂い、その勢いに天の鎖が悲鳴を上げる。
「チッ――――」
騎士は思わず舌を打ち、空間を掴むように拳を握り締め鎖に力を込めた。
暴れ狂う竜王に、押さえ込む騎士。
その力は全くの互角。
ここに来て竜と騎士の戦いは膠着状態を向かえた。
暴れ狂う竜王に、押さえ込む騎士。
その力は全くの互角。
ここに来て竜と騎士の戦いは膠着状態を向かえた。
「――――ランサー」
そこに響く神父の声。
答えるように蒼い槍兵が躍り出た。
赤槍を構え、神速の動きで竜王へと一瞬で肉薄する。
答えるように蒼い槍兵が躍り出た。
赤槍を構え、神速の動きで竜王へと一瞬で肉薄する。
それは、余りにもあっけない一撃だった。
槍兵は天の鎖に拘束された竜王に向けて槍を一突き。
竜王の巨体に点が穿たれた。
ただ、それだけ。
ただ、それだけで最強を誇った竜王は息絶えた。
槍兵は天の鎖に拘束された竜王に向けて槍を一突き。
竜王の巨体に点が穿たれた。
ただ、それだけ。
ただ、それだけで最強を誇った竜王は息絶えた。
巨大な竜王には余りにも不釣合いな小さな点は、正確にその心臓を破壊していた。
「ご苦労だった。ランサー」
「…………けっ。命令は守るさ。例えそれがどんなに気に食わないもんだったとしてもな」
そう吐き捨て、竜王を仕留めた槍兵は不満を押し殺した表情で踵を返す。
「言峰……余計な真似を」
獲物を奪われた黄金の騎士は、その不快な感情を隠そうともせず、怒りも露に神父を睨んだ。
「まだ説明の途中なのだ、これ以上時間をかけられても困る」
時間をかけすぎた事実は認めているのか、騎士は大きく舌を打つ。
そして、そのまま何も言わず、思いのほかあっさりと黄金の騎士は引き下がった。
そして、そのまま何も言わず、思いのほかあっさりと黄金の騎士は引き下がった。
「さて、では説明を再開しよう。
諸君にはとある小島で殺し合いを行ってもらう。
制限時間は特には設けてはいない、最後の一人になるまでこの殺し合いは続けってもらう。
最後の一人となった優勝者は帰還の権利と、どんな願いでも一つだけ叶える権利が与えられる。
叶えたい願いがある者は、暴力、知略、運、己のあらゆる力を持って殺し合いに励むといい」
諸君にはとある小島で殺し合いを行ってもらう。
制限時間は特には設けてはいない、最後の一人になるまでこの殺し合いは続けってもらう。
最後の一人となった優勝者は帰還の権利と、どんな願いでも一つだけ叶える権利が与えられる。
叶えたい願いがある者は、暴力、知略、運、己のあらゆる力を持って殺し合いに励むといい」
天上から神父の声が響く。
思わず寒気が蟻の様に全身を這い回る。
これから殺し合いを行うと言う事実にではない。
愉しげに、謡うように演説を続けるその姿を、一瞬でも神聖なる神の使い見えたことに寒気がしたのだ。
思わず寒気が蟻の様に全身を這い回る。
これから殺し合いを行うと言う事実にではない。
愉しげに、謡うように演説を続けるその姿を、一瞬でも神聖なる神の使い見えたことに寒気がしたのだ。
「六時間ごとに死者と禁止エリアの発表を発表する放送を行う。
禁止エリアとは文字通り進入禁止の区画のことだ、発表より二時間後に発動することになる。
発動した禁止エリアに進入してしまうと――」
禁止エリアとは文字通り進入禁止の区画のことだ、発表より二時間後に発動することになる。
発動した禁止エリアに進入してしまうと――」
篭ったような爆発音が響いた。
同時に、横たわる竜王の野太い首が綺麗に吹き飛んだ。
気付けば自身の首元にも冷たい鉄の感触。
これが目覚めたときからここにいる全員に付けられていた物だとしたら。
それは、つまりあの時、暴れまわる竜王を殺そうと思えば何時でも殺せたということ。
それをしなかったのは、自分達の力を見せつけるための演出だったと言う訳だ。
なるほど、それは効果的な演出だったのだろう。
実際、竜王程の化物がアレほどあっさりと屠り去られたその事実に、誰もが動けずにいたのだから。
自身もただ内に沸き出る感情に囚われて動けずいる。
その感情は己以上の化物を目の当たりにした恐怖か。
それとも、己以上の化物に出会えた歓喜だろうか。
同時に、横たわる竜王の野太い首が綺麗に吹き飛んだ。
気付けば自身の首元にも冷たい鉄の感触。
これが目覚めたときからここにいる全員に付けられていた物だとしたら。
それは、つまりあの時、暴れまわる竜王を殺そうと思えば何時でも殺せたということ。
それをしなかったのは、自分達の力を見せつけるための演出だったと言う訳だ。
なるほど、それは効果的な演出だったのだろう。
実際、竜王程の化物がアレほどあっさりと屠り去られたその事実に、誰もが動けずにいたのだから。
自身もただ内に沸き出る感情に囚われて動けずいる。
その感情は己以上の化物を目の当たりにした恐怖か。
それとも、己以上の化物に出会えた歓喜だろうか。
「――このよう君達の首が吹き飛ぶ事になる。
その他にも、会場から脱出を試みたり、無理矢理引き剥がそうとした場合も爆発するので気を付けてくれたまえ。
参加者にはサバイバルに必要な最低限の道具と食料、そして各人に異なった武器をいくつか支給する。
では、これより君等を会場へと転送するが、何か質問はあるかね?」
その他にも、会場から脱出を試みたり、無理矢理引き剥がそうとした場合も爆発するので気を付けてくれたまえ。
参加者にはサバイバルに必要な最低限の道具と食料、そして各人に異なった武器をいくつか支給する。
では、これより君等を会場へと転送するが、何か質問はあるかね?」
淡々と、誰の戸惑いも意に介すことなく神父は演説を終えた。
その神父の問いに声を上げる者は誰一人としていない。
その会場は水を打ったような静けさに包まれた。
その神父の問いに声を上げる者は誰一人としていない。
その会場は水を打ったような静けさに包まれた。
「クス、クスクスクスクス」
水を打った静けさの中から、哄笑が響いた。
「わざわざ移動なんざしなくても、手っ取り早くこの場でおっ始めちまえばいいじゃねぇか」
群集から一歩前に出たのは髪を逆立てた赤い鬼。
神をも恐れず、赤鬼は愉う。
神をも恐れず、赤鬼は愉う。
「……ふむ。こちらにも事情といものがあるのでな。
すまないが、殺し合いは会場まで我慢してもらうほかない」
すまないが、殺し合いは会場まで我慢してもらうほかない」
「ハッ! これだけ美味そうな奴らがゴロゴロいるんだ。我慢しろってほうが無理ってもんだぜ。
特に、貴様は極上だ。涎が出ちまいそうだ!」
特に、貴様は極上だ。涎が出ちまいそうだ!」
言って、舌を舐めずり赤鬼は黄金の騎士を指差す。
赤鬼の恋焦がれる乙女の眼差しを受けた黄金の騎士は、クッと喉を鳴らして返し。
赤鬼の恋焦がれる乙女の眼差しを受けた黄金の騎士は、クッと喉を鳴らして返し。
「あまり、そのような目で此方を見つめるな。殺してしまいそうになる」
赤鬼と対峙し、その熱い眼差しを真正面から受け止めた。
見つめあう鬼と騎士は互いに満足気にニヤリと口を歪める。
見つめあう鬼と騎士は互いに満足気にニヤリと口を歪める。
「――――喰うぜッ!」
鬼が叫んだ。
両腕を天高く掲げたその姿は獲物を狙う獣のよう。
対する騎士は指をすり合わせた片腕を掲げる。
見つめあう二人の空間が闘気に押し潰され醜く歪んでゆく。
傍から見ているだけで気絶しそうな重圧が世界を侵食してゆく。
その永遠のような対峙は一瞬、弾けるように鬼が駆けた。
待ちきれぬと言わんばかりに、愚直なまでに最短距離を突き進む。
両腕を天高く掲げたその姿は獲物を狙う獣のよう。
対する騎士は指をすり合わせた片腕を掲げる。
見つめあう二人の空間が闘気に押し潰され醜く歪んでゆく。
傍から見ているだけで気絶しそうな重圧が世界を侵食してゆく。
その永遠のような対峙は一瞬、弾けるように鬼が駆けた。
待ちきれぬと言わんばかりに、愚直なまでに最短距離を突き進む。
「なッ――――!?」
驚愕は鬼と騎士、両方の物だった。
それは如何な魔法か。
赤鬼が踏み出た先に、唐突に出現した黒い渦。
その黒渦は、まるで黒い旅の扉のようだ。
それは如何な魔法か。
赤鬼が踏み出た先に、唐突に出現した黒い渦。
その黒渦は、まるで黒い旅の扉のようだ。
「オヤジッ!!」
「ちィッ――――!!」
自らの勢いを止めれず、そのまま赤鬼は黒渦に飲み込まれその姿を完全に消失した。
「――――――言峰」
その言葉に明らかな殺気を混ぜながら、騎士は神父を睨む。
「これ以上我の愉しみを邪魔するようならば、いかにお前とて容赦はせんぞ」
「なに心配せずとも、彼には一足早く会場に向かってもらっただけだ。
決着はあちらで存分に付ければいい」
決着はあちらで存分に付ければいい」
悪びれるでもなく神父は言う。
「…………ふん。まあ良かろう。
ならば我も一足先に向かうとしよう」
ならば我も一足先に向かうとしよう」
そう言って、黄金の騎士は黒渦に自ら近づいていった。
「雑種共、一秒と生きながらえたいのならば、精々この我と出会わぬ幸運を祈るがいい」
最後にそんな捨て台詞を残し、眩いばかりの黄金は黒渦に飲まれ跡形もなく消え去った。
残ったのは神父と槍兵と哀れな生け贄達。
残ったのは神父と槍兵と哀れな生け贄達。
「さて、それでは君達も会場へお送りしよう」
パチンと指鳴りの音。
それを合図に足下に現れる黒い渦。
それを合図に足下に現れる黒い渦。
沈んでゆく。
呑まれてゆく。
呑まれてゆく。
嗚呼……闇に落ちて行く。
天上には光に照らされる神の使い。
足下には自らを呑む暗い闇。
足下には自らを呑む暗い闇。
僕はかつて闇の中にいた。
そして、今も闇の中にいる。
そして、今も闇の中にいる。
――――闇を越えた向こうには、光があるのではなかったか。
【竜王@ドラゴンクエストモンスターズ+ 死亡】
【GAME START】