一撃だ
僅かな月明かりが零れ、不気味な雰囲気を醸し出す夜の森。
ましてのこの場は命を賭けた殺し合いの舞台、その不気味さは一入だろう。
そんな森を不愉快な顔で歩く男が一人。
月明かりに輝く白髪と眼光。
その歩みに恐れはない。
彼こそ、全国のストリートファイターを集め強さを競い合わせる”深道ランキング”その頂点に立つ男。
深道ランキング一位。
現代最強のストリートファイター。
ましてのこの場は命を賭けた殺し合いの舞台、その不気味さは一入だろう。
そんな森を不愉快な顔で歩く男が一人。
月明かりに輝く白髪と眼光。
その歩みに恐れはない。
彼こそ、全国のストリートファイターを集め強さを競い合わせる”深道ランキング”その頂点に立つ男。
深道ランキング一位。
現代最強のストリートファイター。
――――――ジョンスリー。
ジョンスリーが不愉快な理由は実に単純だった。
演説をしていたあの神父が、深道以上に気に食わなかったからだ。
この舞台は完全に外界から切り離された別一箇の世界だ。
正義も愛も、ここでは何の役にも立たない。
作り上げたあの神父はさぞ満足だろう。
だからこそ、この悪趣味な催しも気に食わない。
演説をしていたあの神父が、深道以上に気に食わなかったからだ。
この舞台は完全に外界から切り離された別一箇の世界だ。
正義も愛も、ここでは何の役にも立たない。
作り上げたあの神父はさぞ満足だろう。
だからこそ、この悪趣味な催しも気に食わない。
とは言え、この状況はどうしようもない。
リーの力では抜け出そうにも方法がないのだ。
だからリーは風の吹くまま歩き始めた。
別段、目的地があるわけでもない。
ただ、動いていれば、そのうち何処かにたどり着くだろう。
リーの力では抜け出そうにも方法がないのだ。
だからリーは風の吹くまま歩き始めた。
別段、目的地があるわけでもない。
ただ、動いていれば、そのうち何処かにたどり着くだろう。
そして、たどり着いたのは、少し開けた森の隙間。
そこでリーは出会ってはならない、蒼い影と出会った。
そこでリーは出会ってはならない、蒼い影と出会った。
「……わりぃな。出会った以上見逃すわけにはいかねぇんだ。
――――――死んでくれ」
――――――死んでくれ」
蒼い影――――ランサーは出会い頭に容赦も情緒もなく、死の宣告を告げる。
やる気もなさげな態度とは裏腹に、ビリビリと伝わってくる殺気。
冷酷なまでの死の気配を放つランサーは紛れもない化物だった。
竜王を相手に見せつけたその実力、忘れられるわけもない。
リーの目の前にいる男は人間ではない。
おそらくは人間に似た別の何かだ。
生き永らえたいならば、それは関わっては行けないモノだった。
やる気もなさげな態度とは裏腹に、ビリビリと伝わってくる殺気。
冷酷なまでの死の気配を放つランサーは紛れもない化物だった。
竜王を相手に見せつけたその実力、忘れられるわけもない。
リーの目の前にいる男は人間ではない。
おそらくは人間に似た別の何かだ。
生き永らえたいならば、それは関わっては行けないモノだった。
「……ま、退けないわな」
だが、その絶対的な死を放つ怪物を前にしても、ジョンスリーは一歩も退かない、媚びない、省みない。
勝利の確信があるわけではない。
決して死を恐れぬわけでもない。
だが、ジョンスリーにはプライドがある。
飛びっきりの”安いプライド”が。
それにしがみついている限り、化物とだって、怪物とだって、何とだって戦える。
勝利の確信があるわけではない。
決して死を恐れぬわけでもない。
だが、ジョンスリーにはプライドがある。
飛びっきりの”安いプライド”が。
それにしがみついている限り、化物とだって、怪物とだって、何とだって戦える。
「さて、化物退治と行こうか」
鋭く貫く瞳で、青い死の象徴を睨む。
ランサーはそのリーの眼光を受けて、初めて張り付いたような表情を崩し笑みを零した。
向けられるその目は狩られるだけの兎の目ではなかった。
それは、獲物を狩る狼の目だ。
ランサーの目の前にいる男は、紛れもない戦士だった。
互いに一流の戦士と戦士。
ならば、これは真っ当な戦士と戦士の決闘。
そこに躊躇いなど入る余地は一欠も無いだろう。
ランサーはそのリーの眼光を受けて、初めて張り付いたような表情を崩し笑みを零した。
向けられるその目は狩られるだけの兎の目ではなかった。
それは、獲物を狩る狼の目だ。
ランサーの目の前にいる男は、紛れもない戦士だった。
互いに一流の戦士と戦士。
ならば、これは真っ当な戦士と戦士の決闘。
そこに躊躇いなど入る余地は一欠も無いだろう。
「最初に出会ったのが、貴様のような男で良かったぜ」
ランサーは槍の穂先を地面に向け、その四隅にルーンを刻み陣を張る。
その儀式を、訝しげに見つめながらリーが口を開いた。
その儀式を、訝しげに見つめながらリーが口を開いた。
「なんだそりゃ? なにかのおまじないか?」
「ま、似たようなもんだ」
その呪いの名は“四枝の浅瀬(アトゴウラ)”
その陣を布いた戦士に敗走は許されず。
その陣を見た戦士に、退却は許されない。
赤枝の騎士に伝わる、一騎討ちの大禁戒。
その陣を布いた戦士に敗走は許されず。
その陣を見た戦士に、退却は許されない。
赤枝の騎士に伝わる、一騎討ちの大禁戒。
「ランサーのサーヴァント、クーフーリン。
その心臓――――貰い受ける」
その心臓――――貰い受ける」
完成した陣の中でランサーは仕切りなおすように一度だけ槍を薙ぎ払う。
これは英雄同士が凌ぎを削る聖杯戦争ではない、故に、その真名を隠す必要もない。
堂々と名乗りを上げ、存分に戦うことができる。
彼にとって、それが唯一この舞台における幸運だった。
これは英雄同士が凌ぎを削る聖杯戦争ではない、故に、その真名を隠す必要もない。
堂々と名乗りを上げ、存分に戦うことができる。
彼にとって、それが唯一この舞台における幸運だった。
「……わざわざ名乗りを上げるってのは柄じゃないんだが、まあ、いいさ。
ジョンス・リー。たいそれた肩書きなんざねぇ、ただの八極拳士だ」
ジョンス・リー。たいそれた肩書きなんざねぇ、ただの八極拳士だ」
名乗りを返し、深く重心を下げリーが構える。
いつ何時、取るは変わらず八極の構え。
八極拳――――それは八方の極遠にまで達する威力で敵の門を打ち開く拳。
八極拳士に二の撃はいらず、目指すは常に一撃必殺。
いつ何時、取るは変わらず八極の構え。
八極拳――――それは八方の極遠にまで達する威力で敵の門を打ち開く拳。
八極拳士に二の撃はいらず、目指すは常に一撃必殺。
「おら、来いよ、どうせ一撃だ」
極めしは八極の打。
絶対の信頼と自信を置く一撃は、まさに必殺。
いかなる技が来ようとも全て落とす。
いかなる敵も一撃の下に吹き飛ばす。
距離は既にジョンス・リーの制空権。
絶対の信頼と自信を置く一撃は、まさに必殺。
いかなる技が来ようとも全て落とす。
いかなる敵も一撃の下に吹き飛ばす。
距離は既にジョンス・リーの制空権。
「返すぜ、ジョンス・リー」
リーの放つその闘気の重圧。
リーの放つその眼光の鋭さ。
それこそ、まさにランサーの求めた物。
ランサーは満足げに口を吊り上げた。
だが、呪いの槍を両腕に構えると、その顔は一瞬で戦士のそれに変わる。
四枝の浅瀬(アトゴウラ)の誓いに様子見はない。
こちらも狙うは一撃必殺。
最大の一撃を以て、目前の敵を粉砕する。
リーの放つその眼光の鋭さ。
それこそ、まさにランサーの求めた物。
ランサーは満足げに口を吊り上げた。
だが、呪いの槍を両腕に構えると、その顔は一瞬で戦士のそれに変わる。
四枝の浅瀬(アトゴウラ)の誓いに様子見はない。
こちらも狙うは一撃必殺。
最大の一撃を以て、目前の敵を粉砕する。
「―――――――、一撃だ」
空気が凍る。
ランサーの姿勢が低くなった。
その身さえ槍と成し、一撃を穿つべく腕に力を籠める。
ランサーの持つ赤い魔槍を中心に、魔力が渦となって鳴動する。
ランサーの姿勢が低くなった。
その身さえ槍と成し、一撃を穿つべく腕に力を籠める。
ランサーの持つ赤い魔槍を中心に、魔力が渦となって鳴動する。
「刺し穿つ(ゲイ)――――――」
リーが動く。
その一歩に大地が揺れた。
踏み出したその震脚に耐え切れず、大地がその破片を散らせた。
牽制や小細工など不要。
目指すは常に、相手の正面、中心、ド真ん中。
その一歩に大地が揺れた。
踏み出したその震脚に耐え切れず、大地がその破片を散らせた。
牽制や小細工など不要。
目指すは常に、相手の正面、中心、ド真ん中。
「――――死棘の槍(ボルク)」
赤い槍の真名が解放される。
稲妻の如き鋭さで、心臓を穿つ呪いの槍が放たれた。
稲妻の如き鋭さで、心臓を穿つ呪いの槍が放たれた。
対するリーは呪いの槍を紙一重で躱わさんと体を半身に捻り、同時に鳩尾を見定め肘を打ち込む。
放たれたその技こそ、ジョンス・リーが最も信頼を置き、最も得意としいている技、裡門。
放たれたその技こそ、ジョンス・リーが最も信頼を置き、最も得意としいている技、裡門。
互いの点と点が交錯する。
花火のように舞い散る命の火花。
それは一瞬にも満たない、刹那の攻防だった。
花火のように舞い散る命の火花。
それは一瞬にも満たない、刹那の攻防だった。
――――勝負は決した。
ぶっ飛んだのはランサーだった。
吹き飛ばされた体は後方の大樹にぶち当たる。
それでもなお、その勢いは止まらない。
そのまま大樹をへし折りながら宙を舞う。
吹き飛ばされた体は後方の大樹にぶち当たる。
それでもなお、その勢いは止まらない。
そのまま大樹をへし折りながら宙を舞う。
「グハ…………ッ」
その勢いを止めたのは、幾メートルと吹き飛ばされた後だった。
口から血の混じった胃液が吐き出される。
鳩尾に打ち込まれた一撃からは、ありったけの勁を叩きこまれていた。
それは、何たる衝撃か。
幾多の戦場を駆け巡ったケルトの大英雄、クーフーリンにして最大級と言わしめる衝撃だった。
これ程の一撃、いかなる功夫の果てにたどり着くのか。
咄嗟に全身のバネをしならせ衝撃を殺したとはいえ、意識を失っていないのは奇跡と言えた。
だが、まだ立てる。まだ、動ける。
いかなるダメージを負おうとも、生きている以上ランサーは戦える。
この、生き汚さことこの男の最大の武器。
ランサーはまだ戦える。
口から血の混じった胃液が吐き出される。
鳩尾に打ち込まれた一撃からは、ありったけの勁を叩きこまれていた。
それは、何たる衝撃か。
幾多の戦場を駆け巡ったケルトの大英雄、クーフーリンにして最大級と言わしめる衝撃だった。
これ程の一撃、いかなる功夫の果てにたどり着くのか。
咄嗟に全身のバネをしならせ衝撃を殺したとはいえ、意識を失っていないのは奇跡と言えた。
だが、まだ立てる。まだ、動ける。
いかなるダメージを負おうとも、生きている以上ランサーは戦える。
この、生き汚さことこの男の最大の武器。
ランサーはまだ戦える。
だが、勝負は決した。
そう、ランサーがあの魔槍の真名を解き放った時点で、この勝負は決していた。
ランサーを吹き飛ばしたリーは、あり得ない光景を目撃していた。
躱わしたはずの、使い手すらいない槍が突如軌道を変えたのだ。
いや、そうではない。
まるで、初めからそうであったのだと錯覚するほど、余りにも自然な軌跡で槍は心臓に向かっている。
確かにリーは魔槍を躱わした。
それ故に、その一撃は余りにも奇怪だった。
躱わしたはずの、使い手すらいない槍が突如軌道を変えたのだ。
いや、そうではない。
まるで、初めからそうであったのだと錯覚するほど、余りにも自然な軌跡で槍は心臓に向かっている。
確かにリーは魔槍を躱わした。
それ故に、その一撃は余りにも奇怪だった。
それは因果の槍。
その槍は真名と共に放たれた時点で、心臓を貫いてるという結果を持ってしまう。
つまり、槍を放つという過程を経て心臓を貫くという結果を得るのではなく。
既に心臓を貫いている結果に、槍の軌跡が後付けで辻褄を合わせるのだ。
それは、過程と結果の因果が逆転した、解き放たれれば必ず心臓を貫く呪いの槍。
心臓を貫く結果を持った槍は、術者が吹き飛ばされたところで、その責務を果たす為に疾駆する。
迫り来る魔の棘。
その余りにも出鱈目な一撃を防御する術は無い。
稲妻より早く奔る魔槍が心臓に被弾した。
リーの口からゴポリと赤い血が吐き出される。
そしてそのまま、ジョンス・リーはその場に倒れこんだ。
その槍は真名と共に放たれた時点で、心臓を貫いてるという結果を持ってしまう。
つまり、槍を放つという過程を経て心臓を貫くという結果を得るのではなく。
既に心臓を貫いている結果に、槍の軌跡が後付けで辻褄を合わせるのだ。
それは、過程と結果の因果が逆転した、解き放たれれば必ず心臓を貫く呪いの槍。
心臓を貫く結果を持った槍は、術者が吹き飛ばされたところで、その責務を果たす為に疾駆する。
迫り来る魔の棘。
その余りにも出鱈目な一撃を防御する術は無い。
稲妻より早く奔る魔槍が心臓に被弾した。
リーの口からゴポリと赤い血が吐き出される。
そしてそのまま、ジョンス・リーはその場に倒れこんだ。
そう、勝負は決した。
勝利したのはランサーだった。
ランサーはダメージを気にしながら、何とか吹き飛ばされた距離を戻った。
そこには心臓に槍を受け、倒れこむリーの姿があった。
ランサーは何も言わない。
勝者が敗者にかける言葉は無い。
いや、言葉など交わす必要はなかった。
そこには心臓に槍を受け、倒れこむリーの姿があった。
ランサーは何も言わない。
勝者が敗者にかける言葉は無い。
いや、言葉など交わす必要はなかった。
あの一撃には全てがあった。
ジョンスリーという男の生き方、プライド、強さ。
その在り方、その全てが刻まれていた。
一瞬にも満たない接触だったが、確かにそれはランサーの内に刻まれた。
ジョンスリーという男の生き方、プライド、強さ。
その在り方、その全てが刻まれていた。
一瞬にも満たない接触だったが、確かにそれはランサーの内に刻まれた。
だから、既に言葉など交わす必要はなかった。
ランサーは何も言わず、物言わぬリーから槍を引き抜きその場を後にした。
ランサーは何も言わず、物言わぬリーから槍を引き抜きその場を後にした。
【F-7 森の中/一日目・深夜】
【ランサー@Fate】
[状態] 鳩尾にダメージ特大
[装備] ゲイボルク@Fate
[道具] 荷物一式
[思考] 1:ジョンス・リーから受けたダメージの回復
2:参加者の抹殺。しかし、乗り気じゃないので詮索はそこそこに
[状態] 鳩尾にダメージ特大
[装備] ゲイボルク@Fate
[道具] 荷物一式
[思考] 1:ジョンス・リーから受けたダメージの回復
2:参加者の抹殺。しかし、乗り気じゃないので詮索はそこそこに
【ジョンス・リー@エアマスター 死亡】
【残り 29名】
【ジョンス・リーの支給品と荷物はその場に放置されています】
【残り 29名】
【ジョンス・リーの支給品と荷物はその場に放置されています】