【名前】
キング
【出典】
混沌ロワ
【性別】男
【年齢】29歳
【人物】
ヒーローが組織化されランク分けされる『ワンパンマン』世界において、最上位の「S級」第7位に属するヒーロー。左目に爪牙の三本傷、歴戦の威容を秘めた強面、寡黙ながら恐ろしいまでのオーラと規格外の実力とを兼ね備え、ABCランクとは別次元的な能力者(バケモノ)揃いのS級の中でも、単純な強さのみで“地上最強の男”として恐れられている。戦闘態勢や高揚状態に入ると、「キングエンジン」と呼ばれる内燃鼓動を周囲へ響かせることで有名で、これを聞いて生きて帰った悪人怪人はいない。
…という周囲からの勘違いをされているヒーロー。実際はゲームフリークで自宅にいるのが好きなだけの、ちょっとコワモテなただのオタクに過ぎない。S級ヒーローの座に収まっているものの、それは他のヒーロー(サイタマ)が強大な敵の数々を倒した場に居合わせ、功績が彼のものと誤認された結果によるもの(片目の三本傷はその時に襲われてついた傷)で、本人は流されるようにそうなってしまっただけだった。「キングエンジン」は単に緊張や恐怖による心臓の鼓動が周りに聞こえているだけ。戦闘力はないに等しい。本人としても申し訳ない情けないと思いつつも、生活の糧とするためにずるずると設定を引っ張ってきている状況。普段はS級の威光と自身の風聞を利用したハッタリで何とか怪人との相対をやり過ごしている。(以上、混沌ロワ記事から引用)
出展である混沌ロワでは、サイタマと出会う前からの参戦であり、かなり悲惨で皮肉な末路を辿った。詳細は元記事を。
【本ロワでのあらすじ】
混沌ロワ(1th)より参戦。
ろくに知り合いもいない会場において、持ち前の強面とオーラのせいで会う相手会う相手から軒並み警戒される。
攻撃を受けることがない代わりに誰かと同行もできず、途方に暮れながらあちこちを心細くさ迷っていた(のちに「キングさんぼっち期間」と称されるこの道中では、大魔王ケストラーや
マスターテリオンなどのとんでもない相手と序盤から遭遇したりしていたが、彼らをもキングエンジンとオーラで怯ませるという地味にすごいことをやっていた。)。
しかしやがて、魔王ゼロことゼロ(ナイトメア・オブ・ナナリー)@
オールジャンルロワ1の率いる集団と遭遇。農家のおばさん、ひで(
オールジャンルロワ2)というアクの強すぎるキャラたちに続く真っ当な強者ポジションとして見込まれ、ようやく対主催集団に加入する。
とはいえ、元々はゼロも誤情報により孤立していた身であり、ひでもオールジャンル1の同人物が悪行を繰り返していたせいで警戒され、農家のおばさんは時折唐突に片言が悪化するため意思疎通が難しいという何重苦かわからないグループであったため、そこへさらに人相の超悪い顔に傷持ちの危険な男が加わったとあって、他の対主催との協力は絶望的。さらに、煽動マーダーによって流された悪評と誤解が状況を悪化させた。
とうとう、魔王一行はひでを恨んでいる
ヒトガタグソクムシ、
仮面・覆面ロワにおけるあれこれでゼロを警戒するモードレッドや
狛村左陣たちを始めとする参加者たちと何巴かの戦いに発展する。キングはというと、モードレッドと渡り合うおばさんや、「ヒエー!」「ああ!逃れられない!(カルマ)」等と叫びながら走り回るひでを尻目に、鳴り止まないキングエンジンで以て攻撃を避け、奔走していた(=心臓バクバク言わせながらただ逃げ惑っていた)。
ところが、その乱戦のさなか、こちらは元のロワでゼロと交流のあったために騒ぎを聞いて駆けつけてきた星宮ケイト(ヴィニエイラ)が、ゼロへの攻撃から彼を庇って死亡。ちょうど逃走を提案しようとやってきていたキングは、『光あまねく優しい世界に』と題されたこの回で息絶える彼女とゼロの最後の会話の場面を目撃してしまい、大きなショックを受ける。
このヴィニエイラの死がきっかけでゼロへの誤解が解けた狛村が加入することになったが、息つく暇もなく針目縫による襲撃が発生。ひでの覚醒や狛村の協力もあって針目は撃退できたものの、今度は針目の洗脳に抗った農家のおばさんを失う事態となった。
出展の違いはあれど、狛村とゼロの両方にとって大切な存在であったヴィニエイラと、ゼロの最初の仲間であったおばさんの死。
戦いの後、重苦しい雰囲気に包まれるチーム内で、キングは凄まじい居心地の悪さに心臓をドキドキさせながらも、怪我を負っている狛村を見かねて、濡らしたハンカチを差し出すが……
キング「あの…これよかったら…」
狛村「これは…かたじけない、礼を言…」
「なん……だと……!?」
キング「…?」ドッドッドッドッドッドッドッドッ
狛村「凄まじいまでの霊圧……貴公は一体…!」
どういうわけかキングエンジンに霊圧を誤認させる作用があったため、狛村からも強者と誤解される。
その後、暴走した
ジャンヌ・ダルク@
オリロワ3の襲来においても、戦闘中キングは失神しそうになりながら隅で震えていたのだが、戦闘後には、
ゼロ「フッ、成程な。戦闘に加わらなかったのは、安易に手を出せばこちらが巻き込まれる危険性があったからか」
狛村「確かに。あの桁外れな霊圧といい、貴公ほどの強者ならば有り得ぬ話ではないな」
キング「えっ、いや…」
天使ひで「ワーオ!おじさん凄い人なんだ~(ホモガキ特有の純粋な瞳)」
キング「は、はは……」ドッドッドッドッドッドッドッドッ
などとひたすら好意的な解釈をされ、冷や汗をかいていた。
他にも、ゼロと狛村が「カードゲーム」について大真面目に見当違いの方向で考察やツッコミを行っている傍らで、(あー、トレーディングカードゲームかぁ…そんなにやりこんではないけど家にけっこうあったな…)などと思い出しながら、解説を加えるべきなのか延々逡巡するなど、無駄に胃を痛くしながら、コメディじみた一幕も展開している。
ただし、魔王ゼロチームの面々は、キングをただ表面的に解釈はしなかった。ゼロはかなり早い時期からキング自身が葛藤や悩みを抱えていることも薄々と気づいていたし、狛村は強者とキングを認めたからこそ、「貴公の正義は何だ?」と真正面から問うてきた。ひでもまた、ホモガキ特有の純粋さでヒーローとしてのキングに憧憬を見せ、無自覚ながら狛村同様の「問い」を突き付ける形となった。
キング(俺の正義……か)
狛村の問いかけに、キングは何も答えられない。しかしその脳裏には、かつて自分を助けてくれた名も知らぬ一人の男の背が、ふとよぎっていた。
その後、魔王ゼロチームは、数々の誤解や戦闘に翻弄されながらも協力し合って様々な局面を切り抜けていったが、中盤において、小保方マザー戦を始めとする大戦闘の陰で漁夫の利を得ようとするデビルひで&マルクと対峙。
ここにおいても、キングは恐怖に駆られながら固まっていたが、一つの転機となったのが、ひでの戦いだった。
愛する
ひで子を救うため、エンジェルひでとしてデビルひでとの戦いに挑むひで。自分をヒーローとして純粋に尊敬してくれた彼の決死の戦いを見たキングは、不利を悟ったデビルひでがひで子を人質にしようとした局面で、歯を食いしばって思わず走り出していた。そして、攻撃の余波を食らいながら、気絶したひで子を担いで必死で逃げだし、このことが、身を犠牲にしたエンジェルひでの勝利へと繋がった。愛する者が尊敬するヒーローに救い出されたことに安心したひでは、存在を相殺するかの如く、デビルひでを道連れに、笑って消滅していったのだ。
助けるでなく、結局は、逃げることしかできなかった。そんな情けない自分へ、消えていくひでが最期に「ありがとう」と言い残したのを、キングは知っていた。
――違う、違うんだ。ごめん。俺は、俺はヒーローなんかじゃない。
――俺は、こんなに、弱い――。
涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃに濡らしながら、ボロボロになりながら、ひで子を背負って戦場を駆けていくキングの肩を、その時、ポン、とすれ違った誰かが叩いて、声をかけた。
「ナイスファイト」
え、と振り返った時―――そこには、誰もいなかった。
ただ、誰かがマントを翻し、守るべき誰かの下へと飛び立ったかのような風だけが残されていた。
それが、傷を負いながら、自分の代わりに強大なる敵・東京王を引き受けた緑谷出久のもとへ向かいゆく“ハゲマント”ことサイタマであったこと。
元の世界でもまだハゲマントとしてのサイタマとは会ってすらいないキングには、そんなことは、知る由もなかった。
それでも。肩を叩く感触と、「ナイスファイト」という声は、キングの脳裏に消えないものとして残されたのだった。
そして、ロワイアルも終盤に近付いていく。
仮面・覆面ロワでの悲劇を生みだした死の兵器フレイヤ――その存在に気づいた狛村が一人で止めに行こうとするのを、ゼロがヴィニエイラの言葉を重ねて一喝したとき、キングもまた、ゼロのもとで息絶えていった少女の顔を思い出しながら、狛村を一人にするつもりはないということを告げた。
その後、主催との戦いを残すのみになり、魔王ゼロチームは、決戦前にひと時の語らいの座を囲む。
その席でキングはとうとう、ゼロと狛村とに、打ち明けた。
S級ヒーロー・キングの真実を。
自分が本当は、ヒーローでもなんでもない、ただの一般人であることを。
――失望されてもいい。怒号を受けてもいい。
それでも、この二人には、嘘をついたままでいたくはなかった。
しかし、ゼロと狛村から返ってきたのは―――
「それがどうした。お前はお前だろう、キング」
「貴公の正義は、そのようなところには無い。改めて言うまでも無く、な」
それまでと何一つ変わらないまま、笑って言葉を返してくれた二人に、キングは、胸のうちからこみ上げてくる熱いものを抑えながら、改めて、宣言する。
「俺も…俺の思う『正義』ってのを、やってみようと思う…
……逃げずに、な」
今ここに、キングという一人の男として。
主催戦が始まる。
全てを破壊するフレイヤを抑えに赴く二人と再会を約束してしばし別れ、ひで子を信頼する対主催に託したキングは、「自分にできること」を、探し、キングエンジンを駆使しながら、助けられる参加者を助けていった。
そして、乱戦のさなかで、キングは、一人の少年の姿を遠目に見る。
絶望的なほどの数の敵を前に、倒れた友人の傍に立ち、諦めずに戦う、一人の少年を。
がくがくと震える膝を抑え、キングは、キングエンジンを全開にして、彼――緑谷出久のもとへと走った。
エンジンの鼓動で星人の気を引き、デクのOFAフルカウルによる迎撃を援護。協力して星人@GANTZの群れを蹴散らすと、キングはデクの口から、
モモンガを初めとして推察されたこの殺し合いの背後に蠢く「プレイヤー」の存在についての話を聞かされる。
敵に囲まれ、道を阻まれながらも、デクに道を切り開いてもらいながら、キングはなんと、単身、たどり着いた。
「プレイヤー」たる一角――神星人@GANTZの在る、〈真理の部屋〉へと。
それは、恐らく神星人による気まぐれ、或いは機械の乱数のような「偶然」、いずれにせよ、そのようなものだったのだろう。
きっと、強者ではたどり着けなかった。
キングが、強者の皮を被っただけの、どうしようもなく弱い、取るに足りない存在だったからこそ。
その場所は、神星人は、路傍の見慣れた蟻をなにげなく抓みあげて観察し、捨てるようなつもりで、彼を「許可した」のだ。
事実、神星人は、キングのことを知っていた。
S級ヒーロー・キングの正体を。彼の物語を、人生を。
塵芥に過ぎない数多のデータの中の数列の一つとして、淡々と語って見せた。ヒトの命、「登場人物たち」の生にも死にも意味はないと。彼ら上位存在の観点で。
キングの周りに、数百点クラスの化け物じみた星人をあっさりと出現させ、会場への星人の転送をほんのひと時止め、また動かし、彼らは、キングに「理解」させようとした。
この催しの中の生死の無意味さを。全ては掌の上で組み換わるだけの、同質量の総体の状態変化に過ぎないと。
――しかし、キングは。
ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ
ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ
「あんたたちのやってることも、その御大層な高説も――」ドッドッドッドッドッドッドッドッ
ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ
「お、俺は、認めるわけには、いかない――――」ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ
ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ
ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ
語り始めるキング。
鳴り響くキングエンジン。
しかし、神星人には、それが取るに足りぬ強がりと、心音だとわかっていた。
だからこそ。
キングが、「何ら脅威でない」「塵芥の中でも特に何でもない」存在だったからこそ。
全てを指先で左右できる神星人は、「それ」を消し飛ばさずにいてしまったのかもしれない。
キングが神星人と対話している間――――いつの間にか、星人の転送は、止まったままになっていた。
ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ
ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ
(…何もかも間違ってやがる
俺は嘘の塊のような男
あの時も あの時も…
そして、ここへ来てからもそうだった)
ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ
(……でも)
震えながら、神星人へ向かってしゃべり続ける彼の脳裏に、「あの日」の光景が、去来する。
ズタズタになりながら、ボロボロになりながら、キングを助けてくれた、一人の男。その言葉。
――『怪人はやっつけたぞ 大丈夫か?』
――『俺? う~ん、まぁ…』
(俺だって……)ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ
――『趣味でヒーロー目指してる者だ』
『いつかヒーローが現れたら 多分それ俺だぜ』
(俺だって…ヒーローに…!!!)ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ
……キングの時間稼ぎは、結果的に、多大な効果をもたらした。
彼と神星人との対話とも呼べぬ対話の間に、「自我」に目覚めた〈モウソウノセカイジュ〉――プレイヤーたちの想定にない存在となったものの干渉によって、神星人は彼の告げた塵芥とまるで変わらないあっけなさで、葬り去られたのだった。
制御を失い、崩壊する星人転送システム。
神星人の統御していた部分のシステムが停止し、主催の計画に入った亀裂が、開いていく。
(……俺は……少しでも…やれたのか……)
へたりこんだキングは、差した影に、上を見上げる。
自分の傍でコントロールを失った巨大な最後の星人――途方もないスケールと、最後の悪意たる怪物が、全身を蠕動させ、泡を吹き散らし、自分へと大腕を振り下ろす。
(俺は、少しでも……)
それを、彼は、スローモーションの映像を見るように見つめて―――
フェイバリット マジシリーズ
――――必殺“本気英雄継承”
デ ト ロ イ ト
DETROIT……
SMAAAAAAAAASH!!!!!!
星人が、爆散した。
一撃で。
右ストレートの「ワンパンチ」で。
拳を振りぬいた“ヒーロー”が、キングの前に降り立つ。
「僕が………来た!!」
緑谷出久は、そう言って、ボロボロの体で、振り返って笑って見せた。
その笑顔に、その背中に。その拳に。
――いつかヒーローが現れたら 多分それ俺だぜ
なぜその台詞が、そして、この会場で自分の肩を叩いた「誰か」の声が重なったのか、わからない。
それでも、キングは、耐えられずに、涙をぼろぼろと零しながら、嗚咽した。
不思議そうに助け起こすデクの手を握り、ありがとうと呟きながら。
この回のタイトル「キング:オリジン/僕のヒーロー」は、投下の最後にコールされた。
主催戦後。
帰還したキングは、狛村と、ゼロと再会し、三人となってしまった魔王ゼロチームとして、最後の別れを告げ合った。
ゼロの素顔に驚き、頭を下げる狛村に慌て、そして、三人、拳を合わせ。
こみ上げる万感の思いを、ぐっと飲み込んで。いつまでも尽きそうにない別れを惜しむ台詞は、明日への一歩で置き去りにして。
――ヒーロー・キングは、元の世界へと帰還する。
最終更新:2024年01月16日 12:17