九条学園の正体


学園が作られた目的は優れた能力や権力を持った学生を卒業と同時に洗脳してアケボノの私兵や勢力拡大、他の闇組織への人身売買であり、学園を偽装した非人道的施設である。
厳密には秘密組織『アケボノ』のボスにして全宇宙支配を目論む男、ドゥーチェが独断で建てた施設であり、学園長として据えられたアケボノ第四位のシェイクスピアを除いてアケボノのメンバーは関与していない。
アケボノのメンバー全員がドゥーチェのように宇宙支配を狙っているわけではないので、知れ渡れば離反されていただろう。
教員である葉風皐月に帝野王信、丸井ミフネやトーテンタンツァも学園の正体までは知らなかった。
(トーテンタンツァはシェイクスピアと個人的な繋がりはあるが、彼が学園長とまでは知らなかった)

トーテンタンツァのような危険人物を教師に据えたり、十傑生のようなヒエラルキーを設けたのは歪な環境の中で学生たちを競わせて能力を成長させるためである。
心の傷がそのまま能力上昇に繋がるやもしれぬ皆無性能力者などが良い例である。
上述したように優秀な生徒や異能者は卒業と同時に秘密裏に洗脳されて本人の意志と関係なくアケボノの組織入りもしくは闇組織への商品として売られてしまう。
生徒の中にはヒーロー活動をしている学生もいるが、仮に殺し合いが起こらず卒業した暁に待つのはドゥーチェの私兵……望まぬ悪の手先である。
能力いかんによっては闇の魔人衆の誰かが死亡(粛正)した際の交代要員にドゥーチェはするつもりだったようであり、特に十傑生はその候補者だった。

……え? 異能や戦闘力・学力の高さ云々はまだしも、ただの大金持ちである黄金院桜や優しさで人気を勝ち得た国木田友子までアケボノの交代要員にして良いのか?
と思う者もいるかもしれない。
これに関しての考察として、黄金院は人の心を買収できるほどの圧倒的『財力』を有しており、すなわち大いに恵まれた生まれを勝ち取った『強運』の持ち主である。
事実、『武力』『人望』の2項目だけで十傑生に入っていた盛田の舎弟の人望を金の力だけでゴッソリ奪い取って、盛田を十傑生から転落させた実績を持っており、『運も実力のうち』を地で行ってるとも言える。
彼女の財力自体もアケボノの勢力拡大・財源確保に役立つだろうと考えれば、後に洗脳して手駒に加えることにも利があるだろう。
では能力も生まれも平凡な国木田はどうなのかと言えば、優しさだけで人気(=人望)を勝ち取り十傑生に上り詰めたのは言い換えればそれだけの『カリスマ性』を有していることになるのではないか?
もし彼女が洗脳し、その優しさによって慕う者達を味方に付け、扇動すれば、それだけでアケボノは戦力・労力を獲得できるのである。
黄金院と国木田の両者の能力は、考えようによっては最悪一国を揺るがしかない可能性もあるので、ある意味では戦闘力を有した異能者より遥かに厄介である。

ちなみに九条学園のOBであり能力の優秀さ故に十傑生候補だった警部補の漣昇星は中途退学だったために洗脳を免れた。
仮に彼の我が弱く、退学せずに十傑生に入っていたら間違いなく洗脳を受けていただろう。


また学園にシン=ムラカミやシェリング=フォードなどの闇の魔人衆が学生として紛れている。
これには理由があり、ムラカミは能力だけを見るとドゥーチェを上回る力を秘めた人口の『真祖』であり、その強すぎる能力のコントロール方法を秘密裏に研究するべく、あえて学園に通学させている。
ムラカミをコントロールできればアケボノは更なる躍進をし、力の解明が進めば同じ真祖であるドゥーチェの能力も拡大できるからだ。
そのために様々な異能者が集う学園はムラカミの能力研究にも役に立つと判断したのだろう。
スパイのシェリングについては嘘の情報をGBIにあえて持ち帰らせて学園の危険性を秘匿するためである。
九条学園にアケボノは関与していない、もしくは関与していても然したる危険性はなく重大な施設ではないと外部に思わせるのが理想的か。
この辺はゲーム作品『メタルギア』におけるソリッド・スネークに施したBIG BOSSの計画……潜入したスネークに偽の情報を掴ませて帰還させ、BIG BOSS自体が事件の黒幕であることを隠す計画を想像するとわかりやすいかもしれない。

ではなぜ、ドゥーチェはアケボノ第四位にして『最狂』のシェイクスピアが学園長にしたのか?
理由は組織での方針決めができるほどの発言力や、作戦指揮ができるほどの頭脳の持ち主であり、人の死に関してもおちゃらけた態度を取る冷血漢であるから……だけではない。
そのくらいならばドゥーチェ本人や同じエージェントであり高い能力を持つエムリアでも九条学園の管理運営はできる。
重要な決め手は彼の『脚本』に書いた内容を実現する=『因果律さえ操る』能力が九条学園の運営・管理に必要だったのである。
例えば、「絶対に九条学園の秘密が知れ渡ることがない」と書けば、あら不思議。
本当に誰も九条学園の正体を知ることなく、尻尾も掴めないまま日常を過ごすのだ。
名探偵であるシェリングが学園にいながら正体に今まで気付けなかったのは能力の問題ではなく、証拠を見つけられないように因果律を操作されたためである。
また、あまりに都合の悪い者は「事故死した」「病気で急死した」と脚本に書けば足のつかない関節的な暗殺も可能である。
このようにシェイクスピアはアケボノエージェントで誰よりも隠蔽・暗殺・監視・工作に向いており、任命するだけの理由はあったのである。

しかし、ここで誤算が生じる。
明智優月が慕っていた女子学生はシェイクスピアの脚本による因果律操作を、ゲームのプレイ中にバグをつくように、打ち破って学園の正体を知ってしまったのである。
ちょうどロワ本編中でも脚本にない行動をとった「葉風美織」のように。
だがこれが祟って彼女は学園の正体を他者に明かす前に暗殺されてしまう。
慕っていた明智優月は彼女の遺言で学園には危険な秘密があり、悪い組織の一員が学生や教師の中に紛れていることを教えられ、学園そのものへの復讐である学園崩壊を狙うようになる。
だが学園がどのように危険か、危険人物は誰なのかまでは具体的に教えられなかったため、疑心暗鬼に駆られた明智は学生・教員など学園に関わる者全てに無差別な不信を抱いてしまった。
シェイクスピアに学園の正体が知られないように因果律を操作されているため、世間に公表しようにも女子学生の遺言以上の証拠は何も見つからず、見ようによっては多くの学生や教師が共謀して事実の隠蔽を謀っているようにも見えるので余計に明智の疑心暗鬼は加速していく。
彼が対主催に説得されるまでは敵が誰かもわからず、結果的に誰ひとり殺さなかったとはいえマーダー化をさせてしまったのである。

このシェイクスピアの脚本を打ち破った女子学生の存在は九条学園閉鎖もといアケボノ組織離散の危機であったが、その女子学生の暗殺もほどなく遂行され、ドゥーチェの計画は揺らぐことはなかった。
だが完璧に見えた計画も、アケボノ創設にも関わった科学者アン・ノウと接触したシェイクスピアが離反したことにより台無しになり、バトルロワイアルを開いた結果としてアケボノは壊滅。
ドゥーチェやシェイクスピアも死亡したので九条学園は閉鎖されることになった。

しかしなぜ学園長のシェイクスピアはアケボノを裏切ってまでロワを開催したのか?
その謎を考察したものを下記に書いたので参照していただきたい。


シェイクスピアの真の目的


最終決戦にて明かされたシェイクスピアの能力とは脚本に書いた内容を実現する、因果律を操作する能力であった。
その能力の前には真祖となり強大な力を手に入れたマルガレッテの命すら簡単に奪われるほどであり、これにアン・ノウ(デッド・ギュウジ)も加えて全ての対主催を苦戦させた。
最後はシェリングに憑依したフォードの犠牲によって脚本が改竄されミラスによって破壊、シェイクスピアは因果律により一時的に蘇った亡者の手によって死亡する、アン・ノウも撃破され辛くも対主催は勝利することになる。
しかしシェリングが後日譚にて脚本を回収した際に、恐ろしい事実が発覚する。

それは脚本の最後のページに『××日(ロワ開始日)から一週間後に全ての異能者の力が暴走して世界が滅びる』というものだった。
脚本が破壊されなければこの文章の内容は確実に実行された。
『赤の男』がデュランに言っていた「異能者が世界を滅ぼす」、とはこれに関する予言だったのだろう。
そしてメアリーズが語った精霊のお告げで賜った7邪人の出現以上のとてつもない悲劇とは、バトロワそのもののことではなく、シェイクスピアの脚本による世界の終焉のことだったのだ。



シェイクスピアとは元々どういう男だったのか。
彼は元々は脚本家を目指す真面目な青年であった。
しかし書いたことが何でも実現する「脚本ノート」を手に入れたことにより、彼の価値観論理観等が完全に狂ってしまった。
因果律を操り未来の改変もできるということは事実上の世界最強の異能者であり、ただの真面目なだけの人間がそれだけの力を一辺に手にしてしまったらそうなるのも無理はない。

そしてある日、上述の「世界が滅びる」という内容の文を、狂気のまま、もしくは単なるやけっぱちか深酒の勢いで書いてしまったのだろう。
書いてしまった理由は定かではないし、ここでは書いた動機はあまり重要ではないので割愛するが、このまま放置すると世界が本当に滅んでしまうので、シェイクスピアは脚本に書いた内容を消そうとする。

ここでシェイクスピアは自分の失敗に気づく。
この魔法の脚本ノートは一度でも書き込んでしまうと絶対に取り消せないことに。
それは書いた本人であるシェイクスピアも例外ではなかった。
消そうにも消えない文字に焦るシェイクスピア。
このままでは自分のせいで世界が滅んでしまう。
文字を消せないなら脚本そのものを焼くなり破くなりで破壊しようとするが、以前に自分をより最強の異能者にするため、そして脚本を狙われるという弱点を解消するために「脚本は絶対に破壊できない」と書き込んでしまったためにどんな手を使っても破壊できなくなってしまった。
後付けで「世界はやっぱり滅びない」と書こうにも、よりによって最後のページの最後の行に書いてしまったのでそれもできない。
ならばロワ本編で対主催が書いたように「運命は人の手で変えられる」とでも書けばいいではないかと思われるが、脚本自体が絶対性の喪失を拒否する性質があるのか、似たようなことを書こうとするとペンや指が折れてしまうなどのトラブルが必ず起きたらしい。
その証拠に滅亡阻止を書こうとした一部ページがインクと血でドロドロに汚れていた
シェイクスピアを絶対的な者にした魔法の脚本ノートが、一転して世界を滅ぼす呪いの代物と化してしまったのだ。

焦燥するシェイクスピアは、とある研究所で生まれたあらゆる異能者・人外を打倒できるナイ・プライミッツの存在を知る。
彼女の異能殺しの力さえあれば脚本も破壊できると思ったのだ。
彼女は元々は対能力者用の試験管ベイビーだったが、強すぎるがゆえに失敗作のモルモット故に処理されそうになるもとある良心持ちの科学者に拾われ、家族同然に育てられていた。
どうしても脚本を壊さないといけないシェイクスピアは形振り構っていられず、脚本の確実な破壊及びナイの実力を100%以上に発揮させるべく「遊び」と称して彼女の義理の家族を奪う。
家族を奪われてナイに恨まれるようになるが、それこそ彼の目論見通りであり、力を暴走させて、本当にあらゆる異能を殺せる存在に昇華できた。
(ちなみに家族を奪われる前はロワ本編時ほどのパワーは発揮できなかった。暴走前の彼女に破壊を頼み込むだけではダメだったようだ。
また、シェイクスピアが世界の破滅を望んでいるならナイに接触せず、そうでなくともナイが邪魔ならば暴走する前に殺しているハズである)
目論見ではナイによって脚本は破壊される……ハズであった。

ダメだったのだ。
あらゆる能力者に対する絶対的殺害権、能力無効化、書き換えも彼女の前には一切無力 。
例え能力者がただの銃で撃とうが、殴ろうが、刀で斬ろうが、「能力者」が使うだけで一切喝采通用しなくなる。
そして能力者の指令や意志を継いだ「無能力者」の攻撃も「能力者」と言うラインを繋いでしまう為に、一切その攻撃は通用しないという理不尽な能力を持った彼女でも脚本は破壊できず、それどころか脚本に沿った行動をとり始めてしまう始末。
ナイは確かに対異能に関してはずば抜けた力の持ち主であったが、脚本の持つ因果律の力はそれを遥かに上回っており、次元が違いすぎたのだ。
消しゴムで鉛筆の黒鉛は消せても、ペンのインクは消せないのと同じである。

ナイを使った目論見は失敗に終わる。
この様子では似たような異能殺しの力を持った『赤の男』でも脚本の破壊は不可能だろう。
刻一刻と迫るタイムリミット、浪費される時間。
脚本の力を使って銀河レベルの情報網や優れた異能者・科学力が集う秘密結社アケボノの創設に関わったりしたが、結局無敵になってしまった脚本を破壊する方法は見つからなかった。
もはやこれまでだと思った彼はより深い狂気と京楽に走り、どうせ世界が滅びるなら狂気のままに楽しもうと、危険人物であるトーテンタンツァや天間しあん、蛭摩や神崎と手を組んで悪事に走ったりした。
そしてシェイクスピアはアケボノや手を組んだ悪党共に脚本によって世界が滅びることを教えなかった。
どうせどんな能力でも脚本の破壊はできず、頑なに信じない者や自棄に走る者、滅びを利用しようとする者が出てくるだけだろうと思ったのだ。
それくらいなら世界の終焉を隠し、終わりが来るまで徹底的に遊び尽くすことを彼は選択した。


だがある日、彼に転機が訪れる。
彼が暇つぶしがてらに学園長を務めていた九条学園にてイレギュラーが発生した。
上述の「九条学園の正体」でも語れらた「明智優月が慕っていた女子学生」の存在である。
彼女は絶対であるハズの脚本の因果律を打ち破り、九条学園の正体を知ってしまったのである。
それは突然の異常事態であったが、自分の目的を思い出したシェイクスピアは彼女なら脚本を破壊できるかもしれないと踏み、確保に乗り出そうとするが、それは一足遅くドゥーチェの差し金によって彼女は暗殺されてしまう。
女子学生を確保できなかったシェイクスピアだったが、彼女の存在は彼に一縷の希望を見出した。
絶対と思われた『脚本』にも予期しないバグや抜け穴があるのだと。
歪な環境ゆえに学生の能力・異能力を育てるのに適した九条学園だからこそ生じたイレギュラーだったのだ。
脚本が必ずしも絶対ではないと意気揚々としていたシェイクスピアだが、世界滅亡までのタイムリミットはすぐそこまで迫っていた。
次のイレギュラーが九条学園に現れるまで待っている時間はない。
時間が残されていないことに大いに焦ったシェイクスピアに、アケボノ創設にも関わったアン・ノウが接触してくる。
復讐を既に果たした彼は優れた知能と能力を持ちながらも、虚無感に苛まれていた。
この虚無感を晴らすために何か「ワクワクを思い出せそうな」良い闘争はできないかと、とにかく面白いことを二人でできないかというのが彼の要望であり、脚本家であるシェイクスピアのアイデアを聞きにきたのだ。

そこでシェイクスピアの脳裏に電気が走った。
九条学園は歪な環境で生徒の能力を育てることができ、その中で女子学生というイレギュラーが産まれた。
ならばより歪な環境ならば脚本を打ち破れるイレギュラーはもっと多く、早く誕生するのではないかとシェイクスピアは思い浮かんだのだ。
そのために世界が滅びるまでの短期間の間に殺し合いというド歪な環境で脚本を破壊できそうなイレギュラーを覚醒させる計画、「バトルロワイアル」の開催を決意する。
アン・ノウにはあくまで殺し合いを楽しむ残酷ショー、そして首輪解除などでルールを打ち破った参加者との対戦を楽しむのが目的とだけ伝え、向こうもシェイクスピアの真意までは興味なかったので二人は計画を始めるようになった。
もちろん、九条学園の生徒を勝手に持ち出せばドゥーチェへの裏切りになるので、いっそのことアケボノという組織を裏切ってロワを開催した。
世界が滅びるかも知れない一大事に地位など何の意味もないのだから。

参加者にはイレギュラー因子を持ちそうな者、もしくは参加者のイレギュラー因子を育てる障害になりそうな者を可能な限り投入する。
かつて自分の手で人生を狂わせたナイや『赤の男』もその一貫であり、彼女らという壁を越えられないようなら脚本の破壊は絶対に不可能である。
参加者にやたら名前の長ったらしい究極完全超高等波動次元縮退進化生命体ネオ・ケイオス・ディ・レムルース・トラペゾヘドロン・アンリミテッドを入れたのも、字数の多さ故に脚本のバグを誘発させるのが目的だったのかもしれない。(でなければ、一般のファンタジー生物に過ぎないくせに名前が長くて脚本に書きづらい究太郎を逆ギレしてまで登用する意味がわからない。その生物を参加者にしたいなら同種の別の個体を参加者にすればいいだけの話である)


ロワ開催日までにオリロワ5で起こる脚本を整え、いよいよ九条学園の地下バトロワは開催された。
全参加者は全て脚本通りに動くが、この筋書きに逆らった者は脚本を破壊できる可能性も見せたイレギュラーとなる。
正直、イレギュラーを探すにしても部の悪い賭けだが、他に選択肢はなかった。
0.1%でも滅びを回避できる確率があるのはロワだけだったのである。

そして美織を始め、脚本にない行動を取る参加者は現れ始めた。
これに対してアン・ノウはロワが瓦解してしまうことを恐れたが、シェイクスピア自身はそれこそが目的だったので焦るアン・ノウに対して余裕の表情で答えていた。

最終決戦時にて参加者の主催への怒りと不確定要素・イレギュラー因子は最高潮に達する。
次々と脚本にない覚醒をする参加者に表面上は焦りながらも喜びを感じるシェイクスピア。
これで対主催が脚本を壊せないようなら世界は滅びる、しかし不確定要素を味方につけて破壊できれば世界の滅びは阻止できるのだ。

そして運命の時はきた。
死闘の末に改竄された挙句撃ち抜かれたことで、とうとう『脚本』は破壊された。
破壊された時に生じた因果律の暴走か、それとも破壊させるように仕向けた持ち主への脚本自体の報復か、黄泉から召喚された赤の男、ナイ、原大人等になぶり殺しにされてシェイクスピア自身も脚本の道連れのように死亡する。
しかしその中でシェイクスピアは憑き物が落ちたように微笑んでいた。
「ああ・・・・・・これでやっと終われる。もうクソ脚本なんて書く必要もないんだ・・・・・・」と。

シェイクスピアはロワを開いた目的を、この「バトルロワイヤル」という物語の完成と最終決戦に参加した者達に言った。
対主催はこれを脚本に書かれた悲劇的な結末をシェイクスピアが望んでいるとばかり思っていたが、実際の望みは脚本を乗り越えた結末……「最悪の運命(シナリオ)は人の手で変えられる――」という実証であり、それこそシェイクスピアが書きたかったシナリオ(脚本)だったのだ。


画して脚本が破壊されることで最後のページにあった『××日(ロワ開始日)から一週間後に全ての異能者の力が暴走して世界が滅びる』は実現せず、異能者の力は暴走することなく世界も滅びなかった。
シェイクスピアの真の目的とは運命を変えられそうな不確定要素たち(参加者)を集めて『シナリオ』を打ち破り、狂気の果てに書いてしまった世界滅亡シナリオを阻止することが狙いだったのでは?
というのがシェリングの推理である。
もっともシェイクスピア本人が死んだので真相は闇の中であり、彼は単に狂っていただけで本当に楽しむことが目的でロワを開催したかもしれず、最期の笑顔も狂ってるが故の意味のない表情や演技である可能性も捨てきれない。
ただしその場合、脚本によって世界が滅ぶことを教えなかった理由がわからなくなる。
世界の滅びやそれを回避する目的を明かしてしまうと、参加者が絶望もしくは同情して攻撃の手を緩めてしまうと思ったのか?

しかし目的は世界の滅亡阻止でも、そこに行き着くまでの犠牲者を生み出したのはシェイクスピアでもあり、彼に非がないとは言えず、そもそも世界が滅ぶなどとんでもない内容を書いたのもシェイクスピア本人であり、彼の罪は重い。
それが死んで償う前提の行動だとしても亡くなった者達は二度と帰ってこないのだ。


一方、仮にシェリングの推理通りであるなら結局は「運命は人の手で変えられる」と言いつつ、参加者はシェイクスピアの手のひらの上で踊っていただけではないか? と思う者も多いかもしれない。
が、それは違う。
なぜならシェイクスピア自身も脚本の持ち主でありながら、脚本に書かれた最悪の運命を変えようとした者の一人になるからである。
彼もまたシナリオを作る脚本家ではなく、シナリオに抗う登場人物の一人だったのだ。

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最終更新:2016年12月16日 23:02