【名前】ルルーシュ・ランペルージ
【出典】コードギアス 反逆のルルーシュ
【性別】男

【人物】
本名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。黒髪と紫の瞳の少年。神聖ブリタニア帝国第99代唯一皇帝。
卓越した頭脳と古今東西の戦略知識に通じた頭脳派。反面、基礎体力においては持久力に乏しくこれは一般的な女子を相手にしてすら負けかねないものであるらしい。
性格そのものは理知・理性的ではあるが自らの能力の高さを自覚している分自尊心も高い。元来は正義感が強く実直であり、困窮する弱者を放っておけない優しさや情の厚さも併せ持っている。生い立ちの境遇ゆえにか家族や身内と認めた仲間に対しての思いやりは強く、時に重要な局面においてそれに左右されかねない甘さもある。しかし自らの敵対者や無責任な傍観者などに対する怒りや憎悪も強く、良くも悪くも感情の起伏は激しい。
自らを冷静に客観視できる視点を持っており、前述の頭脳の高さも合わせゲームは得意であり、中でもチェスの指し手としての腕前はかなりのものである。
その生涯は”嘘”によって成り立っており、彼自身の言葉通り「世界を壊し、創り出す」人生の真意を知る者は少ない。
持論や信念として、「戦略が戦術に負けることはない」、「王が動かなければ部下が付いてこない」、「撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ」等がある



【眼】
「ギアス」
他者の思考に干渉する「王の力」。ルルーシュの持つギアスは左目(今回の参戦時期では両目)を媒介とし視線を合わせることによって他者にあらゆる命令を一度だけ実行させる「絶対遵守の力」である。使用の際には彼の目に赤い鳥のような紋様が浮かび上がり、光情報として相手の網膜へとそれを叩き込むことにより成立する。幾つかの制限に基づく使用条件を有するが、しかしそれ故にその強制力の効果は非常に強く、自らのアイデンティティや信念、忌避感や生存本能すらも捻じ曲げてそれを実行させられる。
かつては使用のON・OFFの切り替えも出来たが、現在は能力を使用し続け力が強まり過ぎたためOFFに出来ず、特殊なコンタクトレンズをすることにより普段はギアスの暴発を防止している。
この力はルルーシュ自身の「思い通りにならない世界を思い通りにしたい」という願いが具現化したものであり、根本には「人と繋がりたい」という絆を求める思いも込められている。


【本ロワでの動向】
本編終了後からの参戦。仮面の反逆者ゼロの持つ刃に貫かれ悪逆皇帝としての自らの役割とその生涯を終えたと思った直後からの参戦。
突然の想定外の事態に大いに戸惑いはしたものの、「撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ」の信念の元に世界を敵に回した悪逆皇帝としてではなくこの殺し合いを打破する反逆者として立ち上がることを決意する。
そんな彼の前に現れたのは古明地さとり――人の心を読むことが出来る「覚(さとり)」の妖怪であった。
読心能力者にはかつて煮え湯を飲まされた経験があり、知略と時にハッタリを武器にしていたルルーシュからしてみれば相性の悪い相手だと言えた。事実、自分の思考の尽くを先回りしたかのような発言をしてくるさとりに対しルルーシュは警戒を顕にする。
ギアスをかけるか迷うものの心が読まれている以上は対処される公算の方が高い。互いに譲れず千日手の如き睨み合いに最初に終止符を打ったのはさとりの方であった。
彼女が言うには秒間で異なる思考を十も二十もされ続けるのは流石に鬱陶しいとのこと。敵対の意思はないと述べる彼女に警戒そのものは解けぬままそれでも監視の意味も込めて同行を許可する。
道中、(主にルルーシュの方が)牽制し合うギスギスした会話を交わしていた二人であったが、不意に話が妹のことに及んだ時に空気は一変する。互いに最愛の妹がいかに可愛いかを主張し合う彼らはいつの間にか殺し合いという状況すら忘れるかのように話を弾ませ打ち解けあうこととなる。
シスコンとしての絆を深め合った二人は互いがその自らの能力ゆえにいつしか孤独となった境遇であることを知る。さとりは尋ねる、その力を得たことに後悔はなかったのかと。
行動と選択の結果には常に責任が伴う。のっぴきならない状況で魔女と契約を交わしたことが発端とはいえ、それを受け入れその道へと進むことを選んだのは自らの意志だ。ならばそれに悔いはないし抱いてもいけない。
「王の力はお前を孤独にする」……その結末を受け入れたのならば、むしろ自分はその孤独こそを誇らなければならない。世界の敵であった悪逆皇帝の真意は黒衣の仮面の内にのみ。そうあるべきだしそうでなければならなかったのだから。
自らの生涯その孤独の最期を是と示したルルーシュに、それが偽り無き本心であることを読み取ったさとりは不思議な人間だと幾ばくかの関心を示していたようにも見えた。

打ち解けあった二人が次に遭遇したのはルルーシュとそう歳も変わらぬ少年――神峰翔太であった。
殺し合いに乗る意志を持たぬ神峰とは順調に協力し合うことが出来る、そう思っていたルルーシュであったが思わぬところで想定外の事態は起こる。
なんとこの神峰翔太もまた読心能力者。さとりがそれに気づいたのと同時にこちらもそれに気づいた神峰。両者は互いに牽制し合うかのように睨み合う。
つい先程の自分たちのような事態にそれを収めるためにルルーシュが割って入り頭と胃を痛めたのは言うまでもない。
それでもどうにかこうにか事態を収めた三人は全員の情報の共有のために自己紹介や知人の有無、そして支給品の確認へと入る。
そう言えば未だに支給品を確認していなかったという自らの迂闊さを戒めながら、取り出した支給品にルルーシュは驚愕した。
ルルーシュのバッグから溢れ出るように出てきたのは大量のズボン。501隊員のズボンセット@ストパン……それがルルーシュの支給品であった。
大量に湧き出てきたズボン(パンツ)に唖然として固まるルルーシュと神峰。蔑むような目で彼らを見るさとりという珍光景が生まれることとなった。

そんな事態から気を取り直した彼らにしかしロワ始まって以来の最大の危機が訪れる。
うちはマダラ。参加者中最大の実力者の一人との遭遇である。参戦時期の為か熱心に殺し合うやる気こそなかったが気が立っていたのか八つ当たりで喧嘩を吹っかけてきそうな不良のような様子であり、当然このメンバーでまともに戦えるような相手ではない。
あわや絶体絶命と思われたが、さとりと神峰による読心連携プレイ、そしてルルーシュのハッタリ上等のテロリスト時代に鍛え上げられた口車により、奇跡的に殺し合いは話し合い(マダラによる柱間を語る会)へとシフトする。
尚、絵面や話の内容そのものはギャグのようにも見えるが、実際は命懸けの薄氷の均衡の上に成立していたため内心は皆大真面目であった。
しかしマダラによる柱間布教が始まって数時間、延々と未だに語り尽きる様子など一向もなく続くマダラの話にルルーシュたちのストレスは反比例するかのように増大していく。

マダラ「……ふん、青二才が。お前は扉間と同じだな」
ルルーシュ「トビラマ……?」
マダラ「ああ。姑息で卑劣な、俺が最も嫌いな忍の名さ」

いい加減、苛立ちによる我慢の限界に達したルルーシュは遂に強硬策へと打って出る。
一瞬の隙を突きルルーシュはマダラへと絶対遵守の力たるギアスをかけることに成功する。

「他の参加者に柱間の素晴らしさを知らしめろ」――それがマダラへとルルーシュがかけたギアスの内容である。

ギアスを受けたマダラはそれを承知したように今まで延々と続けていた柱間布教を打ち切りその場を去って行く。
扱いに困る危険人物を一応は無力化して放逐できたことに安堵するルルーシュたちではあったが、そもそも参加者ではなく壁に向かって話していろにでもしてた方が良かったんじゃない? とは後の古明地さとりの言である。
彼女のこの言葉の通りルルーシュによるこのギアスの命令内容が後にこのロワそのものを左右することになろうとは、彼ら自身やメタな視点での読み手も含め誰もこの時点で予見できたものはいなかった。(※詳しくは魔眼ロワ用語集を参照)


マダラの放逐を終えたルルーシュたちはこれにて漸く情報を整理して本格的な対主催活動へと移れると安堵しかけるも、しかし無慈悲にロワ会場に響き渡ったのは殺し合いから六時間が経過したこととその間の犠牲者を知らせる第一回放送であった。
開始から六時間、マダラの布教のせいで大きく事態に対して出遅れているという事実に苛立ちと焦りを募らすルルーシュ。
幸いにも知り合いの名こそ呼ばれることはなかったものの、この六時間の間に死んだ者の数は零ではない。殺し合いの打破という目的のためにも協力できる対主催派の減少は避けたい。
なにより出遅れ気味な自分たちは情報面で他の参加者に大きく劣っている。早急に他の参加者を見つけ出し接触することを目的に行動を開始する。
……尤も、持ち前の持久力の無さが露呈し一行の行軍において最も足を引っ張っていたのは皮肉にもルルーシュ自身であったが。

兎にも角にも参加者の探索を続けていたルルーシュたちが次に出会ったのは氷帝学園中等部テニス部部長跡部景吾。そして彼のお付きで氷帝コール要員を務める珍獣ネコアルクとネコアルク・カオスであった。
珍妙な一人と二匹のパーティに当初こそ警戒を抱きかけるルルーシュたちであったが、生意気な態度のデカさと噛みあわない珍妙な言動が目立つものの彼らも一応対主催。さとりと神峰の読心能力でその裏を取ったルルーシュは彼らと交渉に入る。
仮にも世界征服を成し遂げた超大国の皇帝を相手に一歩も引けを取らぬ豪胆な態度を見せる自称王様(キング)を気取る中学生。こいつ本当にこれでナナリ―と同年代なのかと呆れつつも彼らとの情報交換をスムーズに執り行う。
驚いたのは彼らが少し前に既にマダラと出会い柱間布教を受けていたということだった。ギアスの効果が正常に作動していることを確認しつつも仕事の速すぎるマダラに呆れたのは言うまでもない。
必要な情報は大方手に入り、彼らが真実無害でありどちらかと言えば保護されるべき弱者(ルルーシュはテニヌプレイヤーのデタラメさを話半分に受け取っていた)であるため放置しておくことも出来ない。
何か身を守れる武器は持っていないのかと尋ねるルルーシュに跡部はテニスラケットとボールさえあれば十分だと平然と答える。いまいち真剣味が欠けていないかと苛立ちつつもルルーシュは自分たちの持ち物にそんなものはあっただろうかと探し始める。
因みに変態の誤解を受けることを考慮しパンツセットは既に破棄済みであった。
しかし大量のパンツセットの陰に隠れて見落としていたのか、再びバックの底を漁ったルルーシュが見つけて取り出したのは一本の教鞭のような棒だった。
これはいったいに何に使うアイテムなのかと首を傾げかけた瞬間、ルルーシュはまるで急に貧血にでもなったかのように卒倒してしまった。
スーパー宝貝『太極図』。並の仙道ですら扱い切れぬそれを知らぬとはいえ不用意に触ってしまったため軒並に体力を吸い取られてしまったのだ。
基礎スペックがもやしでありただでさえ行軍で体力を大きく消耗していたルルーシュはそのまま意識を失ってしまったのだ。
意識を失う直前、慌てる神峰や太極図を興味深げに凝視するさとり。そして、

跡部「ツルスケでねーの?」

と面白おかしく他人事のように笑いながら事態を考察している跡部の腹立たしい姿が妙に鮮明に脳裏へと焼き付いていた。


次にルルーシュが意識を取り戻したのは会場にあった温泉施設でだった。
看病をしてくれていたさとりや神峰に状況を問いただすとどうもあれからルルーシュが倒れた後、自分を背負って彼らはここまで移動してきたらしい。
世話をかけたと謝罪と礼を述べるルルーシュに、しかしさとりも神峰も嫌な顔一つ見せることもなく仲間なんだから助け合うのは当然のことだと返すのみ。
読心能力を有し、そしてルルーシュ自身も彼らには自らの経歴は偽りなく語っている。とても信用のおけるような人生を歩んできたわけでもない自分に全幅の信頼を寄せて支えてくれる彼らにルルーシュは改めて感謝の念を胸中で述べた。

怪我の功名とでも言うのだろうか、現在この温泉施設にはルルーシュたち一行以外にもかなりの数の対主催派の参加者が滞在していた。
彼らを相手に更なる情報収集を行うため、疲労がまだ残る病み上がりの身体を押してルルーシュは各参加者との情報交換へと移る。
皆つかぬ間の休息を温泉や卓球やエロ本争奪などで過ごす中、ルルーシュは他の参加者から得た情報を基にそれを整理しながら自分なりの考察へと入っていた。
この殺し合いに巻き込まれた参加者の共通点とは何か? 様々な情報の観点からルルーシュはこれを『眼』ではなかろうかと推理する。
奇しくも同時期、摩多羅夜行もまた同じような結論へと至っていたのだが、この時点でこれに正確に気づいていたのは未だルルーシュと夜行の二人だけであった。
様々な能力を有する特殊な眼……仮に『魔眼』とでも統一するこれらを主催者は何故求めているのか?
そもそも主催者とは何者なのか? 薬師寺天膳?……否、あれはどう考えても自分たちの注目をそちらへと向けるためのブラフ、道化に過ぎないのだろう。
ならばいったい黒幕とは何者なのか? あの恐るべきうちはマダラすらも掌中にて転がし殺し合いへと参加させる。それはいったいどれ程の怪物なのか。

ルルーシュ「―――まさか!?……いや、可能性は零ではないはずだ」

ここでルルーシュはある恐るべき発想へと至っていた。
うちはマダラ。参加者屈指の実力を誇る恐るべき怪物。だが奴は頂点ではない。あれ程の怪物を下し、その実力で心酔させた男が一人だけいる。
それは他ならぬマダラ自身が嬉々としてまるで我が事のように誇らしく語っていたではないか。

ルルーシュ「……千手、柱間」

文句なく危険人物の筆頭であるマダラをこの殺し合いへと放逐し、そして飼い馴らしている人物。
最も可能性が高く、そして疑わしき男。
名簿には彼が頭目を務めているらしい木ノ葉隠れの里の忍が7名記載されている。内マダラの同族であるうちは一族に至っては4名だ。これは恐らく参加者の知り合いという枠の中でも最多人数のはずである。
マダラが実は黒幕と繋がっており、そして黒幕の正体が本当に柱間だとすれば、この露骨に贔屓めいた多すぎる人数比にも納得がいく。
うちはマダラは主催の尖兵! そして裏で糸を引く黒幕は千手柱間……!?

……無論、見当違いもいいところの大暴投な的外れ推理である。
しかし休息を惜しんでの疲労も取れぬ病み上がりでの考察。殺し合いという極限状況下での閉鎖空間での限られた情報。
そして黒幕たちが会場中に仕込んでいた誤解を誘発させるブラフの数々。
何よりうちはマダラというルルーシュ自身が直に脅威として遭遇した具体例として分かり易過ぎるくらいの恐怖の対象。
いつものように健康状態が万全で冷静でありさえすれば。
さとりや神峰を無事に生還させてやりたいという彼らの命を自分が預かっているという強すぎる責任感が、皮肉にも逆効果となってルルーシュを空回せていた。

それでも自らの穴のあり過ぎる考察を見返す時間さえあればまた違う結論に達していたのかもしれないが、残酷にも運命はそれを許さなかった。
ルルーシュがそんな勘違いへと至っていたほぼ同時期。温泉施設を今度はガンQが襲撃をかけてきたのである。
突然の奇襲、浮足立つ対主催。ルルーシュも皆に慌てるなと指示を飛ばそうとするも間髪入れずに続く追い打ちはもはや戦況を覆させることすら困難な程に混迷を極めていた。
さとりや神峰と逸れないように逃げるのが精一杯で、不気味なガンQの姿にさとり共々にテンパりがら這う這うの体でルルーシュたちは逃げ出した。
しかし途中、自分とそう歳も変わらぬメアリ・クラリッサ・クリスティに走りで追い抜かれたどころか、あまつさえ体力尽きて倒れた自分を彼女に背負われて逃げるという致命的な醜態を曝してしまった。

自尊心を痛く傷つけられ、漸く結成できると思われた大規模対主催集団(チーム名は新生黒の騎士団と密かに決めていた)の結成を逃すことになってしまった。歯噛みし苛立ちを抑えるのは難しいことではあったが、それでも何とか共に脱出し残った面子には説明しておくべきだろうとルルーシュは先程思い至った自説を彼らへと語る。
皆当然のように半信半疑ではあったものの、零ではない可能性として保留しておくべきとしてマダラと柱間を警戒すべき人物のリストに付け加えておくことにした。

その後、メアリやペガサスと共に邪眼の梟ミネルヴァとの一連の出来事に関わり、立会人として一人と一羽の儚くも幸福であった最期を見届ける。
彼らの死に報いるためにもルルーシュは殺し合いの打破を改めて誓う。


しかし第二回放送……残酷な運命の報せがルルーシュを襲う。
列記される犠牲者の名の中に含まれていた弟の名にルルーシュは衝撃を受けた。
ロロ・ランペルージ。再会してかつての侘びと礼を伝えたかった大切な弟。
自分の与り知らぬどこかで再び身内が死んだという事実にルルーシュは激しい後悔と悲しみ、そして怒りを抱いていた。
激しい自己嫌悪と主催者やロロを殺した下手人への憎悪がルルーシュの胸を焦がす。だがそんな彼を道を踏み外さぬように支えたのは、やはりさとりと神峰であった。
心が読める二人だからこそ、かつてのように心を殺して修羅にならんとした彼を踏み止まらせることが出来た。
自分たちは傍にいる。いなくならない。お前も魔王にはさせない。
強い決意でそう説得してくる彼らの決意に根負けする形でルルーシュは激情を抑え込んだ。
傍にいてくれる……常に孤独に戦い続けてきた彼にとってそれは何よりも嬉しい言葉だったと感謝の念を胸中でのみ告げながら……


放送の後にルルーシュたちはアルクェイド・ブリュンスタッドを探す遠野志貴と出会った。
ここに至るまでに数々の戦いを続けていたのだろう、既にして限界の近い志貴をルルーシュたちは介抱する。
人間でありながら人外の吸血鬼であるアルクェイドを愛する志貴。アルクェイドとは温泉施設の一件で知り合い情報交換は済ませていたので志貴のことも彼女から聞いて知っている。
人外の女と言われればルルーシュが真っ先に思い浮かべるのはあの不死の魔女だ。自分と彼女は愛だの恋だのそう明確にできるような関係ではなかったが、しかしルルーシュとてその手の感情と一切無縁であったわけでもない。
初恋の相手だったユーフェミアをこの手にかけた時の苦々しい後悔は今も忘れらない。こんな自分を好きだと言ってくれたシャーリーは死ぬべき人間ではなかったはずなのに自分の取り巻く事情に巻き込まれ犠牲となった。
あの時のスザクの涙、そして自分自身の涙。それらを思い返せば返すほどにルルーシュは志貴に自分たちと同じ轍は踏ませたくないと強く思った。
志貴をアルクェイドと逢わせてやりたい。どちらにせよ強力な対主催として期待できるアルクェイドとは再び合流しておきたかった以上、ルルーシュも志貴に協力することにした。

一行は参加者間の行方の情報を手がかりにアルクェイドを探す。
途中、マダラの柱間教布教がいよいよもって本格的に神格化されてきていることを知り、参加者間に柱間は黒幕の可能性ありという見解を流布し、アンチ柱間活動にも力を注ぐ。余談だが、これに対しマダラが必死に弁解活動を行ったり、情報の錯綜が扉間再評価運動に繋がったり、もうワケの分からない情報の混乱が生まれたりもした。

どうにかこうにかルルーシュ一行は遂にアルクェイドを見つけ出すも、しかし待っていたのは暴走しかけたアルクェイドの姿。
彼女を正気に戻そうと奔走する志貴。ルルーシュ達もまたそれに協力し力を合わせる。
状況は困難を極めるも何とかアルクェイドの暴走を抑え込むことに成功した一行は、これで漸く本当に二人が再会できたのだという事実に安堵する。

だがそこに間を置かず襲撃を仕掛けてくるものが一人。志貴とアルクェイドを付け狙う遠野四季ことミハエル・ロア・バルダムヨォンだった。
吸血衝動を何とか抑え込んだとはいえ消耗の激しいアルクェイド。そんな彼女を守ろうと彼女以上に既にボロボロの状態の志貴。
二人を庇い前へと出たのはルルーシュだった。そこにある幸せを理不尽にぶち壊そうとする四季。身勝手な復讐鬼の相手は同じ穴のムジナたる自分のような男こそが相応しい。
四季からすればルルーシュなど邪魔なだけの眼中にない存在だった。しかしルルーシュには絶対遵守の王の力――ギアスがある。

ルルーシュ「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる。――過去へと消えろ、遠野四季!」

お前は二人の現在とこれからの未来には必要ない存在だ、と四季の全てを否定したギアスを叩き込む。
ルルーシュのギアスは四季の記憶を奪い取り、その精神をも破壊する。
だがルルーシュのギアスが壊したのはあくまでも肉体の主であった遠野四季の記憶と精神。
彼の魂へと寄生しそもそも彼を狂わせた元凶たる吸血鬼ロア。ルルーシュのギアスは皮肉にも四季を殺すことと引き換えにロアを覚醒させることとなる。
思わぬ事態に動揺を示す一行。覚醒したロアによって窮地に陥った彼らを救ったのはその場に乱入してきた摩多羅夜行であった。
最高位の求道の神格であり、死後を裁く閻魔を体現する夜行を相手には相性的な不利を悟ったのか、ロアは戦況に見切りをつけて逃亡する。
窮地を救われた礼を夜行へと述べながら、出会った彼と情報交換を行う。
夜行がルルーシュとかなり同位の考察へと至っていることに驚きながらも、どうやら夜行はマダラの柱間教に関心を抱いている様子だったのでアンチ柱間活動の見解を流布しておくことにした。

一連の出来事に一応の区切りがついたので志貴たちにこれからどうするかをルルーシュは尋ねた。
志貴とアルクェイドはロアをこのまま放置しておくことは出来ず、そして夜行がロアを追うとのことらしいので同行を頼むとのこと。
身軽な単独行動を望んだ夜行ではあったが、志貴の直死の魔眼やアルクェイドの吸血鬼の真祖の姫君という背景に興味を抱いたのか一時的な身柄預かりに同意を示す。
ルルーシュ一行はロワ打破の為のまだ見ぬ協力可能な参加者たちの探索の為、彼らとの再会を約束し一旦別れることとなった。


そして運命の第三回放送……その直前。
ここまでロクな休息もなく活動してきたこともあり、ルルーシュたち三人は手近な施設にて放送が始まるまで休息を取ることにする。
もうすぐ始まるだろう三回目の放送。果たして何人の名が呼ばれることになるだろうか。
自分と同じくこの殺し合いに巻き込まれている忠義の騎士ジェレミア・ゴッドバルト。彼の名が呼ばれないことを願い、そして出来るだけ早くジェレミアとも合流しようと思いも新たにしていた矢先。
唐突に背中に生まれた痛みを凌駕した灼熱感。自分の背後を見て唖然としているさとりと神峰。
振り返ったルルーシュが目にしたのは、何らかの刃物で自分を刺した見知らぬ男。
殺し合いへと乗ったマーダー……菊田。この施設に隠れ潜みルルーシュたちが油断したのを見計らい襲撃をかけてきたのだ。
驚きや痛みはあったが幸いにも傷は浅い。反撃に移るべく行動しかけたルルーシュは、しかし唐突にそのまま地面へと倒れる。
突然の事態に驚きながらルルーシュの名を叫び走り寄ってくる二人。ルルーシュを刺した刃物……不気味な動物の牙のようなものを手元で弄びながら不敵に笑う菊田。
自身へと起こった異常………これは、毒か!?
バジリスクの牙。本来ならば即死相当の猛毒は、しかし制限によるものかルルーシュの身体の自由と意識を徐々に奪いながらもそれを認識する僅かの間をルルーシュへと与えた。
現状の把握と理解。そして自分が取らねばならぬ決断。
半ば反射的にルルーシュは即決し、行った。
ルルーシュは――


――駆け寄ってくるさとりと神峰の二人へと、ギアスをかけた。


『――生きろ!』

強く念じて彼らへと命じた……否、願ったのはその一言。
ルルーシュは彼らをこの場から逃がすためにギアスをかけたのだ。

菊田はその体格も動きも戦い慣れしているのは明らか。
何より手に持つバジリスクの牙は掠るだけでも致命傷になりかねない危険な武器。
さとりと神峰の二人では敵わない。十中八九、殺される。
ルルーシュは既に毒に冒されたこの身が助からぬことを察していた。そしてだからこそ、助からないならまだ助かる可能性がある友を救うべく全てを賭けた。

ルルーシュのギアスは絶対遵守の力。あらゆる他者の意思すら捻じ曲げ従わせる王の力。
この力を使い、ルルーシュは数え切れない人間の意思を捻じ曲げ、時にはその人生すらも破綻させた。
誰に言われずとも分かっている。この力は他の何よりも卑劣で度し難い、許されざる悪魔の力だ。
最大の親友にも、最愛の妹にすらも、彼らの意思すら捻じ曲げて、自分の都合を押し通してギアスをかけた。
だからルルーシュはこの殺し合いが始まった時、密かに決めていたのだ。
今度こそ、本当に心から信頼できる友がこの殺し合いの中で出来たとすれば。

そんな彼らには絶対、ギアスは使うまいと。

一度たりとも口にはしなかった。だが常に傍にいて自分の心が見える彼らには分かっていたはずだ。
ルルーシュ・ランペルージは古明地さとりと神峰翔太にだけは決してギアスは使わない。
彼ら二人も疑うべくもなく信じていたその誓いを、その禁忌を、
ルルーシュは――――破った。


生きろと命じたそのギアス。その内容以上にその行為そのものが信じられないといったように彼らは固まり、踏み止まった。
それは強すぎる強制力を持つルルーシュのギアスにかけられた制限なのか。
あるいはそのギアスに反してでもルルーシュを救わんと抗おうとした二人の意思だったのか。
どちらにせよ一瞬の隙だらけとも言える停滞を菊田が見逃す道理もない。
ルルーシュを捨て置き彼らへと向かおうとする菊田。しかし信じられないことにルルーシュは死に物狂いで菊田へとしがみ付きそれを阻む。
もう全身に毒は回り切っている。放っておいても余命など数秒足らず。ましてやルルーシュの身体能力など全参加者中でも下から数えた方が早い程度のものだ。
体格差から何から何まで歴然の菊田を止められる道理などない。そんなものは他ならぬルルーシュ自身が一番分かっていたはずだ。
だがその時のしがみ付き鬼気迫るルルーシュには道理を超えた何かがあった。
既にして喉など潰れているはずであった。だが絞り出すように苦鳴の中から最後の言葉をルルーシュは上げていた。

ルルーシュ「……ッ……はや……く…ッ……行けッ!」

それは命令というよりも、既に懇願であった。
だが最後のルルーシュのその言葉が通じたのか、止まっていた二人が動き出し一目散にその場から逃げ出した。
菊田が怒声を上げてルルーシュを引き剥がそうとするも、それでも僅か数秒だけでも彼らが逃げ切れる余裕を稼ぐために必死になってしがみ付く。
それでも十秒ももたなかっただろう。だがそれはルルーシュの人生において最も誇らしい十秒であった。
蹴り飛ばされたルルーシュは倒れ込み、そしてもう二度と立ち上がることは出来なかった。


随分と似合わない無様を晒した。これは本来ならば自分ではなくスザクのような性格の奴が取るべき行動だ。
らしくない、本当にらしくないと苦笑を浮かべようとするも、それすらもはや出来ない。
悪逆皇帝とまで呼ばれ、人心無き魔王の如く恐れられた男の最期がこの様か。
当然不本意だ。ぶっ壊すと決めたはずのこの殺し合いの大局に影響を与えられず。
ロロの仇も討てず、マダラには意趣返しの一つも出来ず、黒幕であろう柱間には一矢報いることすら出来ていない。
志半ばでの敗北。嗚呼、本当に苦々しく不本意だ。受け入れ難い。
何よりも……また、友にギアスを使ってしまった。
さとりと神峰は怒るだろうか。恨むだろうか。憎むだろうか。
……まあそれは当然だろう、仕方がない。
どのような言い訳を並べようと、自分は友と認め、彼らもまたそう認めてくれたかけがえのない存在を裏切り、その意思を捻じ曲げた。
最低の裏切りだ。自分が彼らの立場なら、これで絶縁を突き付けられても仕方ないと納得できるものだ。

だがそれでも………死なせたくなかった。

全てが嘘の人生を歩んできた自分などを信じてくれた。最期には誰も傍に残らなかった、残さなかった自分のような男に対し、傍にいると言ってくれた。
人心などとうの昔に捨てたはずの魔王である自分に、まさか魔王になるななどと言ってくるとは。
本当におかしくて、バカな奴ら。奇妙な奴らだった。
本当に俺にはもったいない友達だった。
だからあいつらだけは……死なせたくなかった。
傲慢で身勝手この上ない我が儘だ。自分の都合を押し付けて彼らに呪いを押し付けているのとそれは同じだ。
だから……彼らは自分を恨んでくれていいと思う。
ルルーシュ・ランペルージ、否、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアはどこまでいっても嘘つきだ。
世界すら騙した大嘘つきに、この土壇場で彼らもまた騙された。それだけのことだ。
友情など所詮は上辺だけのもの。儚く消える泡沫の夢と同じものだ。
それでいい。そう割り切ってくれればいい。
それで少しでも彼らの心の重荷が軽くなるなら、ルルーシュはそれを喜んで受け入れるつもりだった。


「王の力はお前を孤独にする」
かつて不死の魔女C.C.は契約を交わす時にルルーシュに対してそう予言した。
事実、その言葉通りにルルーシュはその力を用いて王となり、悪逆非道の魔王として歴史に名を刻み、僅かな理解者と共犯者だけを真実を共有する者として、たった一人で生涯を終えた。
そして予期せぬこの二度目の生。再び出会った多くの仲間。かけがえのない二人の友。結果はどうあれ過程においては最善を尽くしてきたはずだとそう思う。
そして最期は……また、一人。
だがルルーシュに哀しみはなかった。これは自分に訪れるべき相応しい最期だと思っていたから。
道連れはいらない。自分の選択した行動の結果には自分自身で責任を持つ。
気高く反逆すると誓った遺志は友と仲間達へと託した。彼らならば心配ない。
だから――これでいい。
そう信じて、ルルーシュ・ランペルージは二度目の僅かな生涯を終えた。


大局で見れば、ルルーシュが成し遂げたことは決して多くはない。
勘違いと誤情報に踊らされ、黒幕でもない存在を黒幕と信じたまま誤情報を流布させたり、
期せずしてマダラにかけてしまったギアスはこの後に最大の惨劇を起こす切欠にもなる。
結果で見れば対主催を志した参加者たちは敗北し、黒幕を打倒することも叶わなかった。
自らの矜持を曲げてまで、友情を失うことを覚悟してまで友にかけたギアスもまた果たされることはなかった。
プラスよりもむしろマイナス面ばかりが顕著に目立ってしまうかのような、そんな結果。
ルルーシュ・ランペルージの反逆は失敗に終わり、新封神計画に囚われた彼と仲間たちの魂もまた救済されることはない。
道化のように踊らされ、敗北し、救いはない。
その結果が変わることはもはやない。


だがそれでも、かけがえのない出会いがあった。誇ってもいい思い出があった。
魔王と呼ばれた少年は嘘で塗り固めた自分の人生を見抜きながら、それでも離れることなく寄り添ってくれる友と出会えた。
気高い反逆の意志を、魔王としてではなく人として貫き通し、そして最期にそれを友へと託すことも出来た。
古明地さとりも神峰翔太も、彼らがかかった『生きろ』というギアスを完遂することは叶わなかったが、それがあったおかげもあり最終局面まで生き残り、最後まで反逆の意志を示し続けた。
『王の力』は確かにルルーシュを孤独にした。だが彼らの間に結ばれた絆がそれで断ち切られたわけでも決してない。

解放されることのない封神台の内部にて、バツの悪い表情で二人を迎えることになったルルーシュが、
ビンタと拳骨を一発ずつ喰らいながら、それでもこれでチャラだと笑って許すさとりと神峰に迎えられる。
あるいは閉じられた救いのない死後にでも、それぐらいの”if”はあったのかもしれない。

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最終更新:2014年06月17日 16:36