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『紅い嫉妬』

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rozen-yuri

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『紅い嫉妬』


「水銀燈、ご本読んでほしいの」

 水銀燈のドレスの裾を、ちょっぴり遠慮がちに引っ張って、雛苺は言った。その表情を一言で言えば無邪気、だった。

「はいはい。分かったわぁ」

 水銀燈の表情は、普段と変わらずツン、としたものだが、決して雛苺を邪魔とは思っていない。そんな表情だった。
 このような状態が始まったのは、今から一週間くらい前の事。巴の家に行こうとした雛苺が迷子になっていた時、水銀燈が桜田家まで無傷で運んでくれたのだ。しかも、雛苺が泣いている時にあやしてくれていたらしい。普段の彼女からは、想像も出来なかった。
 それから、雛苺はすっかり水銀燈になついたのだった。

「何が良いのぉ?」
「んとねー…これが良い!」

 こんな光景、誰が想像しただろうか。それほど、珍しい事だった。
 最初は、水銀燈の作戦なのでは、と疑う者もいたが、今では誰一人疑う者もなく、その光景を見守っていた。
 ――約一名を除いて。

「…………」

 二人から、少し離れたソファに座る、紅いドレスに身を包んだ人形。手には分厚い本を持ち、その本に目を通しているのだろうと誰もが思う。だが、人形――真紅の視線は、和やかな雛苺と水銀燈に向けられていた。

「……………」

 とんでもない不機嫌な表情で。

「……雛苺」
「なーに?真紅」
「紅茶を煎れて来なさい。…今すぐ」
「ふぇ?でも、今水銀燈にご本を……」
「いいから煎れて来なさいっ!!」

 真紅自身さえも驚く、大きな声が響いた。

「…!!は、はいなのー!」

 雛苺もかなり驚いていたようで、ビクリと体を震わせ、風の如く台所に向かった。

「……雛苺と喧嘩でもしたぁ?」
「……別に」
「……でも、貴方絶対怒ってるでしょぉ」
「……気のせいよ」

 気のせい。その一言で切り捨てた。けれど、異常なのは自身も気付いていた。
 何故か、雛苺が他の子と仲良くしているのが許せなかった。しかも、最近は水銀燈になついているので、怒りは増幅されていた。

「い、煎れてきたの!」

 雛苺の本能が早く行かなければ、と告げているらしく、いつもより早くお茶は出された。

「……あの、真紅?」

 恐る恐る、真紅の顔色を伺う雛苺。
 何処か怯えている雛苺の考えとは裏腹に、真紅は優しい笑みと言葉を溢した。
「……ありがとう」
「……ふぇ?」

 一瞬戸惑う雛苺だが、すぐに笑顔になり、えへへと笑った。

「水銀燈!ご本の続き読んでー!」
「え、えぇ」

 水銀燈は心の中で溜め息を吐いた。この先、暫く耐えなければと思う。雛苺に嫉妬、水銀燈に敵意を向ける紅い人形の視線に。



end
 

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