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『甘えても良いですか?』

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rozen-yuri

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『甘えても良いですか?』


 ぼんやりと、はっきりしない意識で上を見上げると、空は今にも泣きそうな程暗かった。きっと何分もたたずに、空は泣き出すだろう。
 でも、待っていなきゃ。愛する人が、帰ってくるまで。
 次第に、アスファルトに黒い水玉模様が浮かんだ。

―――――

「あー…やっぱり降ってきたなぁ…」

 屋根の下から空を見上げると、空の殆んどが雨雲に支配されていた。そしてその雨雲は、滝のような雨を降らせていた。

「傘持ってきて無いし……翠星石に電話しようかな……」

 手には『風邪薬』と書かれた袋が握られていた。自分の使命は、この袋を薔薇水晶の家に持っていく事。濡らす訳にはいかなかった。

「…でも、家から此処までは早くても十五分、……」

 暫く考えた後、着ていた上着を一旦脱ぎ、袋を包んだ。そして意を決して走り出した。

「はぁ…はぁっ…」

 ただひたすら目的地に向かって走っていた。一秒でも長く、彼女の側にいたくて。
 けれど、彼女を思わぬ場所で目にした。

「は、薔薇水晶!?」

 部屋で安静に、と言っておいた筈の彼女は、玄関の前に座り込んでいた。

「…そ…せ…せき…?」

 半分瞼に閉ざされた瞳は、しっかり蒼星石を捕えた。まるで、すがるように抱きついた。

「…あった、かい…」
「薔薇水晶……」

 彼女の体は、芯から冷えていた。恐らく、先程の雨にずっと打たれていたのだろう。

「…どうして部屋にいなかったの…?」
「…玄関で、おかえり、て…言い、たくて……」

 ふいに、彼女の瞼はゆっくり下がっていった。

「…おかえ…り、なさ……」

 そのまま意識を闇に落とし、体を蒼星石に預けた。

―――――

「もうあんな無茶しちゃダメだからね?」
「……はい」

 およそ二日後。薔薇水晶の体調は大分良くなり、ご飯もちゃんと食べられる程回復していた。
 体調が良くなって待っていたのは、蒼星石の説教だったが。

「ごめん、なさい。…でも、私…なんであんな事したのかな…?」
「覚えてないの?」

 薔薇水晶は頷いた。
 不思議そうに首を傾げる薔薇水晶だが、蒼星石はなんとなく分かったような気がした。
 昔、自分がまだ小さい頃。風邪をひいてしまった時、姉である翠星石に甘えていた事があった。辛くて、苦しくて、誰かに側にいてほしい。ただひたすらそう願っていた。
 薔薇水晶にも、同じ思いをさせてしまったのではないか。そう思った。

「……蒼星石?」

 再び不思議そうに目をパチクリさせる薔薇水晶。気付けば、薔薇水晶は蒼星石の腕の中にいた。

「……………」

 それから何もやりとりはなく、薔薇水晶は蒼星石に行為に無言で甘えた。
 何故だか、ずっと欲しがっていたような温もりに抱かれて、薔薇水晶は目を閉じた。


end 
 

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