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『深夜零時』

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rozen-yuri

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『深夜零時』


 太陽の姿はなく、そろそろ日付が変わる夜中の頃。
 いつもは既に夢の中なのだが、今日は珍しくソファに座り、ボーっとテレビの画面を眺めていた。
 内容はよく分からないけれど。

「………暇」

 何故かベッドに入っても、眠れなかった。いつもはすんなり眠れるのに。理由も分からぬまま、ただ時間だけが過ぎていった。

「………蒼星石…まだ、起きてるかな…?」

 ふと、愛しい人の顔が出てきた。なんとなく声が聞きたくなり、薔薇水晶は蒼星石の携帯に電話をかけるべく、自分の携帯の短縮コールのボタンを押した。
 だが、聞こえてきたのはコールの音ではなく、電話が切れた音だった。

「……ありゃ…電話、中……」

 ちょっぴり残念そうな表情で、携帯を下ろした。だが、これで起きていると分かったので、落ち込む事は無かった。

「………そろそろ」

 暫くして、携帯のリダイヤルを押した。
 だが。

「……まだ、電話中………」

 ふぅ、と溜め息を一つ溢して、携帯をソファに投げた。
 ちょっぴり肌寒く感じてきたので、あったかいココアでも飲もう、と台所に向かった。

「……ココア…ココア…………無い……」

 どうやら使いきったまま、買い置きしていなかったらしい。

「……はぁ………」

 大きな溜め息を溢し、ソファに深く座り込んだ。
 真横にある携帯を拾い、再びリダイヤルを押した。
 けれど、やはり聞こえてくるのは電話中の音だった。

「……ぐすん…」

 何だか蒼星石に避けられているような気がして、悲しくなってきた。そんな確証は無いのに、思い込んでしまうと止まらなかった。

「…ひぐ……ぐす……そ、うせ…………」

 呟きをかき消すように、携帯の着信音が流れた。薔薇水晶は無意識に携帯を取った。その着信音が、愛する人のものとは気付かず。

「…もし、もし……」
『あ、薔薇水晶?』
「! 蒼星、石…」
『……あれ、薔薇水晶…ひょっとして泣いてる?』
「な、泣いてなんか…ないよ…っ……ずっと、電話してたのに…繋がらなかった…だけだもん……」
『………僕達、同じ事してたみたいだね』

 そんな言葉の後、蒼星石の微かな笑い声が聞こえた。

「……ふぇ?」
『僕もね、ずっと薔薇水晶に電話してたんだ。でもなかなか繋がらなくてさ』
「……そう、だったんですか…」

 そう聞いた瞬間、薔薇水晶の中にあった悲しみや、涙が急に引いていくのが分かった。

『そういえば、電話した用件は?』
「! ……えっと……」

 今思えば、電話したのはほど無意識であり、特に用件がある訳では無かったのだ。

「……そ、蒼星石は…?」
『え、僕?……あ、明日暇かなぁ…って思って…』
「…明日、ですか…?」
『う、うん…。一緒に買い物でもどうかなー…なんて……』
「……はい、一緒に行きましょう…。何を…買うんですか…?」
『大したものじゃ無いんだけど、ココア飲もうとしたら無くってさ。買いに行こうかなぁ、って』

 携帯の向こうから、アハハ、と誤魔化すような笑い声が聞こえた。
 薔薇水晶はくす、と笑い、優しい笑顔で言った。

「…私も、ココア…買いに行こうと…思ってました…」

 暫く会話は続き、電話がかかってきてから三十分程たつと、漸く電話は終わった。

「…えへへ……明日は、デート……」

 携帯を胸に抱き、スキップしそうな足取りで自分の部屋のベッドに潜り込んだ。
 何気無く時計を見ると、短針は十二と一の間を。長針は六をさしていた。

「もう…こんな時間……早く、寝なきゃ…」

 電気を消して、瞼を閉じた。さっきは全然眠れなかったのに、今回はすんなりと眠りについた。
 開かれたままの携帯の画面には、着信履歴、恋人、0:00と表示されていた。


end

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